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第九十二話 第三神核、二

今回はガッツリ戦闘パートです!

では第九十二話です!

 俺たちの目の前に姿を現したその神核はなんというか神核らしくない気の弱そうな少年の姿をしていた。

 服装は紐でくくられるように取り付けられた紐サンダルと、短めのマント。上半身は手をスッポリ覆ってしまうほどの長めのティーシャツ。下半身は対極的に膝小僧を見せるくらいの短パン。

 いかにも駆け出しの冒険者というような服装だった。

 容姿は少し短めの黒髪に何本か深緑色の毛束が混ざっており、毛先は俺の髪と同じようにグラデーションがかかっている。

 俺はその神核の容姿に惑わされないようにしながら、神核の質問に答えた。


「どうせ信じないんだろうけど、俺たちは別に人類を滅ぼす気はない。お前が仕掛けてこなければこちらに戦闘の意思はないぞ」


 するとその神核は一瞬だけ戸惑ったような表情をすると、すぐさま目つきをもとに戻し、俺に言葉を放った。


「…………。う、嘘をついてもだめ………。星神は君達が……災厄者だって……い、言ってた……」


 やはりダメか。

 第一、第二神核のときもそうだったが一度洗脳されてしまうと、それを解かない限りこちらの話を聞くことはないようだ。

 俺はその様子を確認すると両手の剣を構え、神核に突きつけた。


「そうか。なら戦うしかないな」


「うん………。て、抵抗しなかったら………楽に死ねるから……」


 その瞬間、神核の身にまとう空気が一瞬にして変化する。それは先程までのおどおどしたものではなく、禍々しい気迫。俺たちの喉元を切り裂くように発せられたそれは、神核の体からあふれ出すと、その表情を大きく歪めていた。


「さっさとくたばりやがれえええ!!!」


 瞬間、神核の表情が明らかに変わり口調も荒々しいものに変化する。

 神核はいつの間にか展開した黒色の片手剣で俺に切りかかってきた。


「ッッッ!?」


 それは狂いもなく俺の心臓目掛けて突き出される。俺はそれを二本の剣を交差して何とか弾き返すと、次の攻撃に繋げた。


「お前、人が変わりすぎじゃないか?」


「ハッ!俺は根っからの戦闘狂なのさ!!!あんなグジグジした俺は本当の俺じゃないぜ?」

 そう言うと俺はエルテナを一度地面にたたきつけ砂埃を上げると、転移で奴の背中に回りこみ斬り付ける。


「狙いが見え見えなんだよ!!!」


 神核はたやすくその剣を弾き返すと、またもや俺の心臓を狙って剣を振るう。

 しかし、俺の顔は笑っていた。

 なぜなら、この場にいて神核と戦っているのは俺だけではないのだから。


「頼むぜ、皆」


 その瞬間、神核の頭上に莫大な魔力と根源が集中する。


閑地万却の雷(ティタグラム)!」


根源の明かり(フルエテハイトナレ)!」


 それはアリエスの魔術とキラの能力であり、今まで見ていた中では一番の威力を誇っている技だ。


「チッ!」


 神核はその攻撃に気がつくと俺に向けていた剣を収め、上空の攻撃になにやら幾何学模様がたくさん書かれた魔方陣を展開した。


「消滅しろ!」


 その神核の言葉はこの部屋中に轟き、現象を具現化する。それはすぐさまキラたちの攻撃に作用して、跡形もなくその魔術と根源を吹き飛ばした。


「くっ!」


「やはり効かないか」


 アリエスとキラはお互い初めからわかっていたかのように顔を顰め悔しそうな表情を浮かべた。


「精霊女王………。よもやお前が人間の味方に成り下がっているとはな!血迷ったか?」


 神核がキラを睨みつけながら怒鳴るように声をあげる。


「お前には一生わからんよ。星神に操られているだけのお前ではな」


 瞬間、態勢を立て直した俺は神核に向かって突き進む。今回は二本の剣を同時に振るい、剣技を発動させた。


黒の章(インフィニティー)!」


「チッ!」


 その攻撃は空間の空気を振動させ轟音を周囲に響かせながら、神核に迫る。剣線は綺麗な弧を描き、連続で神核の体を切り刻んでいく。

 はずだった。


「甘いぜ、災厄者!」


 俺が黒の章(インフィニティー)を開始した直後、すぐさま神核は俺の二本の剣を俺よりも速いスピードで弾き返した。


「な!?」


 黒の章(インフィニティー)を越えてくるスピードなんて普通叩きだせるものじゃないぞ!?

 と、俺は内心神核の攻撃に舌を巻きながら、さらなる追撃に身構える。

 すると俺の後ろからまたしても膨大な魔力が膨れ上がる。


『主だけを見ておると痛い目にあうぞ?』


 それは無数の黒い刃を生成し、一斉に神核目掛けて雨のごとく降り注いだ。その攻撃はアリエスたちのさらに後ろで完全にもとの姿に戻っているクビロの攻撃だった。


「ちまちまちまちま、うぜえんだよ!」


 神核は右手に構えた黒い片手剣でその刃に斬撃を放つと、その全てを消滅させた。

 だが攻撃はまだ終わらない。


「ならこれならどうだ?」


 その瞬間クビロが作り出した刃とまったく同じ座標に青白く輝く大量の剣が出現する。それは俺が気配創造で作り出したもので、言っちゃ悪いがクビロのそれよりも遥かに強力な攻撃である。

 だがこれを前にしても神核は余裕の表情を崩さず、笑いながらこう呟いた。


「へえ、なかなかおもしれえ攻撃じゃねえか。だがまだまだだ!」


 俺はその言葉を聞きつつも全力でその剣たちを振り下ろす。気配創造は俺の持つ能力のなかでもかなり強力な部類に入る。もちろんこの技は全力で使用するとあのリアさえも倒す力を秘めているので、ある程度力は抜いているのだが、それでも第二神核を倒すほどの威力は持っているのだ。

 しかしその剣は第三神核に当たる寸前でなにかに潰されるかのごとく消え失せた。


「なんだと!?」


 俺は思わず驚きの声を上げてしまう。

 それが俺の体に一瞬の隙を生み、神核の攻撃を許してしまった。


「何驚いてんだ?背後ががら空きだぜ」


 俺はその言葉に反応するように急いで振り返るのだが、当然間に合うはずもなく黒い片手剣の攻撃を受けてしまう。


「ぐがああああああ!?」


 それは俺のわき腹の肉を絶ち、骨を砕いたあと俺の体を猛スピードで吹き飛ばし壁に激突させた。

 傷口からはドバドバと血が流れ出し、意識を朦朧とさせる。


「は、ハクにぃ!」


「「ハク様!」」


 アリエスとシラ、シルが急いで俺の元に駆け寄ってくる。俺はなんとかエルテナを使い体を起こすと、アリエスたちに向き直った。


「いつつつ………。大丈夫だ……。気にしなくていい。それより奴は……」


 俺が前線を離脱したことによって今はどうなっているのか、俺は初めにそれを確認した。


「キラとエリア姉が戦ってる。キラは心配なさそうだけど、エリア姉が少しだけ押されてるみたい……」


 さすがのエリアといっても俺の黒の章(インフィニティー)を防ぐ相手には少々分が悪いようだ。


「そ、それより、ハク様!傷が……」


「ん?」


 俺はシラにそういわれて自分のわき腹に出来た傷をまじまじと確認する。神妃の力で自動的に回復してはいるようだが、明らかにその直りが遅い。血も既に辺りを真っ赤に染めるほどあふれ出しており、何も知らない人がみれば卒倒してしまうレベルだろう。

 おそらく神核が持つあの黒い剣か、神核自身の能力なのだろうが、このままでは出血多量で死んでしまうので、急いで完治の言霊で回復する。

 それは第一神核の死の呪いほど強力なものではなく、言霊だけで傷は跡形もなく消え去った。


「ふう……。さてどうするか………」


 俺はその場で剣を構えながら、状況の整理を始めた。

 黒の章(インフィニティー)を越える剣速を持ち、なおかつ気配創造やキラの根源、アリエスが放ったリアの魔術。それら全てが通用しない。

 これは正直言ってかなり厳しい。

 とはいっても俺の目から見てあれはただ単に腕力だけで打ち消しているようではなさそうなのである。第二神核も、物理的な力だけなら自分が一番だ、と言っていたくらいなので、あの現象には何かタネがあるはずだ。


「リア、あいつの力について何かわかることはないか?」


 俺は戦闘のスペシャリストである相棒に意見を求めた。


『むう………。主様の気配創造が消されたとき、どちらかと言えばあれは潰されたというより勝手に消滅した、というような感覚だったのじゃ。ゆえに世界の物理法則を捻じ曲げる様な力のような気がするのう』


「あ、それで言うと私もさっき閑地万却の雷(ティタグラム)を使ったとき、何でかわからないけどいきなり魔力を通す道が消えたの。普通なにか別の力によって相殺されるときは魔力の道は最後までなくならないのに、あの時はそれが真っ先になくなったよ」


 ふむ。物理法則に干渉する能力で、なおかつ現象ではなくその根幹を消滅させる能力か。

 俺が知っている似たような力は万象狂い(リライクラス)くらいだが、あれほどの力は感じなかった。

 であれば局所的にその事象を書き換えているのか?

 うーん、なんにしてもこれだけの情報ではまだわからない。

 俺はおう結論づけると勢いよくその場を後にし神核に接近した。

 目の前ではキラとエリアがなんとかその神核を食い止めていた。


「意外だな。それほどの力を持つのに星神などに洗脳されるとは」


「まったくです!少しはこちらの気持ちになってほしいものです!」


「ハッ!知ったことか。それに俺は星神に操られてなんかいねえ!俺は自分の意思で災厄者を殺すんだよう!」


「その台詞、第一、第二神核も同じこと言ってたぞ?」


 俺はその瞬間から戦闘に復帰する。エリアが受けていた剣を弾き飛ばし、その剣を受けた。エリアにはそのまま下がるように支持をだし、俺とキラの二人がかりで神核の相手をする。


「へえ、お前案外しぶといんだな。あの攻撃は大分深く入ったはずだが?」


「生憎とあの程度の攻撃で死ねれば苦労はないんでな。借りは返させて貰うぜ」

 瞬間、俺は先程よりさらにギアをあげ神核と切り結ぶ。キラはその合間から根源を放ち続けた。

 俺の剣は右肩、左足、右胴、左腕、右足の順で剣が放たれ、もはや音速の速さを軽々と凌駕し、空気ごと切り刻んでいく。


「くっ!?いい攻撃するようになったじゃないか!」


 その言葉を境にさらに神核の表情が明るくなり、さらにスピードが上がる。


「まあそういう寝言は寝てから言うことだ」


 キラが新たに根源を神核に解き放つ。おそらく放つタイミングを窺っていたのだろう。明らかに今までとは違う気配がその身に宿っている。


根源の創生ゲンショハキジョウニシテゲンジツ!」


 それは大量の光の矢を全方向から神核に向けて、放たれた。

 その攻撃は俺も今まで見たことがなく、その圧倒的な火力に少しだけ震えてしまった。

 さすがだな、キラ。

 俺はそう思いながら、これは間違いなく神核にダメージが通るはずだという確信を持ちながら、できるだけ距離を取る。


「な、なに!?」


 神核は驚愕の色を顔に浮かべ回避を試みるが、もう遅い。

 次の瞬間、爆音とともにキラの攻撃が神核に直撃した。

 それは酸素を空気中から吹き飛ばし、砂埃さえも時が止まったかのように消滅した。

 俺はキラの元に駆け寄ると、その爆心地をじっと見つめた。


「今ので少しは効いているといいが」


「……………」


 俺がそう問いかけるもキラは依然として無言だった。しかし次第にその表情がゆがみ始め眉間に皺がよっていく。

 俺はすかさず気配探知を使用し、その存在を確認する。

 するとそこには。




「い、今のは、き、効いたぜ、精霊女王おおおおおおお!!!」


 まったくダメージを負ってない神核が雄たけびを上げてそこに佇んでいた。


「俺の能力は『破壊』。万物は俺の意思に従って全て壊されるんだよ!!!」


 神核は自らその能力の詳細を高らかに口にした。


 それを聞いた俺たちは顔をしかめながら次の作戦を必死で練り始めるのだった。


次回も神核との戦闘です!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

次回の更新は明日になります!

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