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第八十六話 特訓と決意

今回はハクたちの戦闘訓練です!

あと少しだけ気持ちの変化があります!

では第八十六話です!

「と、いうわけなんです」


 俺はハルカの屋敷にて第三ダンジョン前に突如出現した階段及び遺跡について説明した。その話をしているとき聞いている全ての人間は終始暗い表情をしており、真剣に第五神核のことを考えているようだ。

 とはいってもあの血塗られた話は正直言って俺でも堪えるほど悲惨な話だ。神核というのはいつだって人類の守護者であり星神に操られない限りその役目を覆すことはないと思っていた。しかし現実は違い、神核といえど世界から生まれた一人の存在であって、体もあれば心もある生き物なのだ。

 俺は出来るだけ詳細にその空間での出来事をルルンたちに話した。

 するとルルンは顎に手を当てたまま神妙は顔つきで話し出す。


「………まさか神核の過去にそんなことがあるなんてね。私自身長い間このダンジョンの門番をやっているけれども神核はおろか、その存在と戦ったという話も聞いたとこがなかったよ。でも、こうなってくるとさすがに色々と考えてしまうかな」


 続けてハルカが口を開く。


「そうですね………。その遺跡というのはおそらく神核の宝玉がなければ開くことはないのですよね?であれば一応こちらでも警戒はしておきますが、今のままで触らないほうがいいでしょう。踏み入るのが怖いというのもそうですが、第五神核がまた攻めてきても困りますしね」


 確かに俺たちがあの遺跡を出た後自動で階段が閉まると同時に俺は自分の能力であの場所を硬く施錠した。それはそう簡単に破られるものではないが、やはり今は目立たせずそのままにしておくのがいいだろう。

 俺はハルカのその言葉に頷くと、これからのことについて話し出した。


「それと、これからについてなんですけど………」


「お、いよいよ第三ダンジョンに挑むのかな?私はいつでも許可は出してあげるよ!」


 準備OKと言わんばかりにルルンがこちらにVサインを送ってくる。

 まあ、直ぐにダンジョンに潜ってもいいのだが、さすがにそれは急ぎすぎているような気がする。少しはみんなと交流する時間を作りたいしな。

 今日は買い物をするばかりで、あまりみんなで関わるということが少なかった。神核を倒すことも大切なのだが、やはりそれよりも俺は仲間を大切にしたい。

 ……………………アリスのような悲しい笑顔をさせたくはないのだ、俺は。

 ということで俺は明日の予定を考えている分だけ口に出す。


「いえ、明日は仲間と少しだけ戦闘訓練をしたいと思います。久しぶりにそういうのもいいかと思いまして」


「いいね!それはとても楽しそうな企画だね!そういうことなら私も混ざっちゃおうかなー。いいかな、ハルカちゃん?」


「ええ、大丈夫ですよ。家には大きめの庭もありますし、そこを使ってもらえば問題はありません」


 仲間との交流というのが暑苦しい戦闘訓練というのはあまり趣がないかもしれないが、やはり戦うことでしか見えてこないものもある。明日はそういうことを見定める日にしようと思ったのだ。


「では、明日はそのような流れで。早朝から始めますのでルルンさんも来るのならお早めに」


「ルルンでいいよ。それに敬語もいらない。あなたは私よりも強いんだから強者として胸を張ってればいいのよ」


 ルルンはそう言うと足早に立ち上がり、そのままハルカの屋敷を後にした。

 前から思っていたことだがルルンはかなり行動力が高いらしい。というか思い至ったら直ぐ行動!といったタイプだろうか。

 まあ嫌いになれない性格なんだけどね、あのアイドル成分がなければ。

 ルルンが去った後、俺たちは軽く夕食を済ませ、各々の部屋に戻った。女子達はなにやらアリエスの部屋に集まって今日買った服を着せ合いしているようだったが、俺は特にやることがなかったため、先程のガラス細工の店で買ったあのペンダントをじっと見つめていた。

 

 あれは確かカーリーを倒し終えたあたりだっただろうか。

 俺は一度アリスにそのずっと首からさげているペンダントはなんなのか、聞いたことがある。

 正直言ってその青いペンダントはアリスの青い双眸と、うり二つでとても似合っていたのだがついつい気になってきいてしまったのだ。


『うん?このペンダント?うーん、これは私のおばあちゃんがくれた形見みたいなものかな。なんでも特殊な石で出来てるらしくて、身につけていると困っているときに助けてくれるんだって。………確かに今回はハクに助けられてるわけだし、このペンダントも馬鹿にはできないかもね』


 アリスは俺の目から一度も視線を話さずにそう呟いた。

 かくいう俺はその美しすぎるアリスの顔を直視できず、顔を赤くしながら苦し紛れにこう言ったような気がする。


『そういうことは俺のいないところでだな………』


『うん?何言ってるのー。聞こえなーい!』


 俺の声は最後まで音になることはなく、そのまま喉の底に沈んでいったのだが、それでもアリスは俺の顔を覗き込んでまた笑顔を振りまいてくる。


『な、なんでもいいだろ!』


『ふふ、照れちゃって。意外に可愛いのね、ハクって』


『照れてねえよ!』


 あの日々は俺にとってとても掛け替えのないものになっている。同時に後悔の杭になっているということも。

 だから。今回は。

 俺の仲間にあのような顔をさせてはいけないのだ。それは神妃の力で解決するものでも、妃の器の力で解決するものでもない。

 全ては俺自身の力で乗り越えなければいけないのだ。

 俺はその考えを頭の中にまとめると、勢いよく立ち上がり軽くシャワーを浴びた後、ひんやりと冷たいベッドに体を沈めた。

 今夜はリアも特に何もしてくることはなく、ずっと黙っていた。もしかすると第五神核にかつての世界の創造者として思うところがあったのかもしれない。

 そうして俺の意識は闇に沈んだ。

 それから一時間ほどしてキラが部屋に戻ってきたのだが、そのキラがずっと左腕に抱きついてきてやはり眠れなかったというのは余談である。











「はあっ!!!」


 アリエスの絶離剣レプリカが俺の喉元に迫る。しかし俺はまったく動くことなくエルテナでその攻撃をいなしていった。

 絶離剣レプリカはその能力ゆえに普通の剣とはぶつけ合わせることが出来ない。俺の持つエルテナの様な特殊な武器もしくは、第一神核のようなルールを無視するような力がなければ一瞬で切り裂かれてしまう。

 ということでアリエスの相手は俺がしているわけだが、アリエスはやはり魔術に頼りすぎていたため剣の心得はまったくなく、身体強化を使ってもなおエリアはおろか、シラやシルのレベルに出さえも到達していなかった。

 絶離剣のような神宝は使用者の最も望む大きさと重量をとるため、今のアリエスでも十分振るうことができるはずなのだが、如何せん剣の流れがブレブレであった。


「ほら、胴に隙ができてるぞ。こんな風に……」


 俺はそう言いながらエルテナをアリエスの胴に滑り込ませる。もちろん当てはしないので心配はないが、それでも自分の体に刃が飛んでくるというのは恐怖を煽るものだ。


「ッッッ!」


 アリエスはその剣を何とか絶離剣で払いのけ、さらに追撃してくる。どうやら構え的に次は俺の足を狙っているようだ。

 本来戦いになれば基本騙し合いが繰り広げられるので、相手にどこを狙っているか悟られてはいけないのだが、当然今のアリエスにそのような芸当は出来ないのでこのように俺に筒抜けになってしまっている。


「行くよ、ハクにぃ!」


「ああ、来い!」


 アリエスはそう意気込むと俺に真っ直ぐに走りこんできた。それの腕にある剣は俺の予想したとおり下段に構えられており、その刃は俺の足を狙っている。

 俺はその剣を軽く弾き返すようにエルテナを下に振るった。

 しかしその瞬間、急にアリエスの持つ絶離剣の軌道が変わった。それはすぐさまアリエスの左肩の上に構えられ俺の肩を狙うように振り下ろされた。


「な!?」


「はああっっっ!!!」


 それは咄嗟にその攻撃に対応すべく、先程とは比べ物にならない速度でエルテナを上段に戻す。それは勢いよくアリエスの剣とぶつかり、軽い衝撃波をおこす。


「さすがだね、ハクにぃ………」


「いや、今のは完全に油断した。一本とられたよ」


 これが戦闘なら今のエルテナの防御が間に合わず俺は切られていただろう。戦闘とはそういった油断が命取りになるとてもシビアなものなのだ。


「よし、とりあえず休憩にしよう。さすがに暑くなってきたからな」


「うん!」


 俺とアリエスはそう言って、少し離れたところにおいてあった水筒に手をつける。

 見ると他のメンバーもどうやら頑張っているようだった。

 一番最初に目に留まったのはキラとエリアである。

 エリアの剣は正直SSSランクに届くかもしれないというレベルなので、今回は魔術と魔法の特訓をしていた。

 といってもエリアが一方的にキラに向かって魔術や魔法を放つだけなのだが、これがなかなかきついのだ。

 なにせ相手をしているのは精霊女王キラである。キラが使う根源は魔術でも魔法でもどちらでもないのだが、それゆえ魔術や魔法では通用しないことが多い。よってそれを戦いの中で模索しながら戦うのだが。


「く!?これでもダメですか!?ならこれならどうです!!!」


「ハハハ!いいぞ、いくらでもかかってくるがいい!!」


 どうやら今のところはキラの圧勝だった。まあ生きてる年数も違えば魔力のコントロールも桁が違うので仕方ないのだが。

 で、もう一つのグループ。

 それはルルンとシラ、シルたちである。

 ルルンはどうやら弟子のシーナとおなじくレイピアを好んで使うようで、その剣線はもはや目で捉えることも難しいくらいだ。さらにルルンは踊るような足裁きで動き続けている。あれでは剣を合わせることすら難しいだろう。

 対するシラとシルは俺があげた短剣「二つは星となりて(サタラリング)日の息吹(・バキ)」というピンク色の夫婦剣を使って応戦していた。

 二つは星となりて(サタラリング)日の息吹(・バキ)とはリアが所有していた神宝の一つで能力は「次元飛ばし」である。

 これは今いる俺たちの世界をアニメーションのように一枚一枚の空間と捉え、その中の一つを時間軸に囚われず切り裂くというものだ。

 これはかなり強力であるのだが、いくら次元飛ばしとはいえ剣を振るう必要があるため使いどころが難しい武器でもある。

 シラが持っているほうの剣には中央に青い一本のラインが入っており、シルのものは同じように黄色いラインが刻み込まれていた。


「ふふん、まだまだ甘いね二人とも!」


「ぐっ!?舐めないでください!」


「いきます………」


 こちらもやはりルルンが押しているようで、なかなかシラたちは一刀と与えることが出来ていない。

 俺はその光景をたっぷりと眺めた後、もう一度エルテナを腰から抜き、さらに蔵からリーザグラムを抜くと、そのまま両手に愛剣を構えてアリエスに向き直った。


「それじゃあ、そろそろ再開するか。今度は二刀流で行くから、覚悟しとけよ?」


 二本の剣を体の前で軽く回しながら俺はアリエスに笑いながら問いかけた。


「うん!どんな攻撃でも当てて見せるから、覚悟してね!」


 アリエスはそう自信満々に応えると、自分も絶離剣を構えお互い距離を取った。

 俺はその光景を目に焼き付けつつこう思う。


 ああ、やっぱりこういうのも悪くないな、と。

 頭の中に金髪の少女の姿を思い浮かべ俺は剣を振るう。


 この世界にお前が一緒にいればもっと楽しかったのかもしれないな。

 と、心のなかでそう呟くとアリエスの剣がもう眼前に迫ってきていた。

 その剣を見つめながら俺は少し笑う。





 異世界だろうがなんだろうが、俺は今を全力で生きよう。

 なんていったって俺には絶対最強の能力があるのだから。


なんか最終回っぽい終わり方ですがまだまだお話は続きますよ!

次回は少し違った視点での語りになります!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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