表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
857/1020

第一話 新たな力と始まり

今回はハクの視点でお送りします!

では第一話です!

「俺もそろそろ動き出すかな」


 アリエスが他の世界に行きたいと言ってこの世界から飛び立った後、俺はテンジカの上に立ちながらそう呟いていた。

 アリエスが向かった世界は時間の経過がかなり早い。それこそこの世界で一日経つころ

には向こうで十年ほど時間が進んでいるはずだ。となると、ここに帰って来る頃にはアリエスは十年以上の月日の経験を積んで来ることになる。

 であればその隣に立つものとして、このまま何もせずぼーっとしているわけにはいかない、というのが俺の考えだった。


「つってもなー。一体何をすればいいんだ………?俺もアリエスみたいに他の世界に行ってみるか?いやー、でも俺が行くとそれこそ問題になりそうだし………。というかそもそも俺の力に耐えられる世界自体が少ないよな」


 俺の力はすでに常識を超えてしまっているのだ。自分で言うのもなんだが、全世界の中で最上位に位置している自負がある。そんな存在がいきなり普通の世界に現れてその力を振るったらどうなるか、そんなことは考える必要もないくらいわかりきっている。

 この世界でさえ初めは神妃化の力にすら耐えられなかったのだ。究極神妃が作り出した世界であるはずのこの世界がどうしてそんな軟弱だったのか、と聞かれると少々困ってしまうのだが、ともかく全盛期のリアすら凌駕する力を持った俺がおいそれと他の世界に出向くことは難しいということなのだ。

 というわけで、俺は大きなため息をつきながら肩を回して最終的に行き着いた結論を口に出していく。


「はあ………。結局、俺は一人で修行でもしてるしかないか………。他の世界に行ってみたいのはやまやまだけど、さすがに迷惑はかけたくないしな。………それに」


 俺はそこで言葉を切ると、俺だけが掌握できる世界を己の魔力で形成していく。それは俺でさえ不完全な状態でしか発動できない、まさに究極神妃だけにゆるされた禁忌の力だった。


「………空想の箱庭」


 次の瞬間、世界を空が塗りつぶし、俺専用の空間が展開されていく。同時に体内から大量の魔力が減っていく感覚が走ってくるが、今は気にしない。

 空想の箱庭とは、究極新妃と究極神妃になることのできる存在だけが使える空想天園という力の劣化版だ。この力は一定の神格を持ち、それなりの魔力量があれば誰だって発動できる。

 とはいえ完全版の空想天園とは違い、莫大な魔力消費と機能の制限などが付きまとってくるため、あまり好んで使用するものはいないというのが現状だ。

 キラやアリスも発動できるが、その発動時間は持って数分。俺でも一日発動させるだけで限界。

 という色々と不完全な能力であったりするのがこの空想の箱庭という力だ。

 とはいえ、完全に外界とのアクセスを遮断でき、自分の専用の空間が作れると言う点はなかなかに重宝している。今回もその目的で俺はこの力を発動したのだから。


「よし、それじゃあ、そろそろ始めるか」


 俺はそう呟くと青空が広がる空間の中で軽く準備運動を始めると、白いローブを脱ぎ捨てて体を軽くしていく。そして気配殺しや気配創造などの力を少しだけ撃ち放った後、首をコキコキと鳴らしておもむろに口を開いていった。


「よーし、せっかくの機会だし、今日の修行は本腰を入れるかな。本当ならキラやサシリあたりと一緒に組手したいところだけど、今は逆に一人だからこそできる修行ってやつをしよう。となるとやっぱり………」


 そう呟いた俺は頭の中に「とある力」を思い浮かべる。

 それは俺が持つ力の中で最も強力で、最も危険な力だ。下手をすれば体がぶっ飛ぶぐらいじゃ済まないダメージを負ってしまうだろう。いくら能力で体力を回復させることができるからといって、外傷ではなく能力の反動からくるダメージは油断できない。それこそ二度と立てなくなってしまう可能性すら秘めている。

 ゆえにこの力を発動させるときは、それ相応の覚悟と周りに誰もいないことが最低条件だった。

 ………多分、この空想の箱庭でさえ「あの力」は吹き飛ばすはず。とはいえこれ以上安全な空間を作ることは俺にはできない。アリエスがいない今、誰にも見られてないこのタイミングで鍛錬するのがベスト。

 だ、だけどなあ………。

 俺は心の中で顔をしかめながら肩を落としてこんなことをぼやいていった。


「前に発動したときはなんとかみんなに隠せたけど、間違いなく体がボロボロになるんだよなあ………。前は針で刺されるような筋肉痛が襲ってきたし………。本音を言うとこんな力使いたくないっていうのが正直なところだけど………」


 でも、だめだ。

 俺はその考えを否定する。

 薄々勘付いていたことがある。

 俺は強大な力を持つがゆえに、何かとトラブルに巻き込まれやすい体質らしい。それはつまりいつ、どこで、どんなやつに襲われるかわからないということだ。

 襲われるのが俺であれば別に構わない。

 でもそれが俺じゃなかったら?隻腕の救団との一件のように、アリエスが、大切な仲間が襲われたら?

 俺は正義の味方じゃない。世界にいる全ての存在を救えるほど器用じゃないし、できるとも思っていない。俺が救えるのは俺に見えている人たちだけ。

 でも、そんな人たちを救うには、どれだけ力があっても無駄にはならない。広い世界の中、俺を超える存在がいつこの俺たちに剣を向けて来るかわからないのだ。

 そんな時のためにも、俺は強くなり続けるしかない。幸いこの体とこの存在は、まだ成長の余地がある。究極神妃が感情を持ってしまったがゆえにリアになったのだったら、そのリアの力を引き継いでいる俺も究極神妃に迫るだけの力を持つことができるということ。現にいまの俺がリアよりも強くなっていることがその証拠だ。

 であれば、もうなりふり構ってられない。俺がやるべきなのは、ただ誰よりも強くあろうとすること、それだけなのだ。

 ゆえに俺はゆっくりと目を閉じて雑念を振り払うと、意識を集中しながら体の中に眠っている「とある力」を呼び起こしていった。


「………ふう。………いくぞ!」


 そして次の瞬間。

 俺は目を見開いた。同時に世界を揺らすような膨大な魔力が俺の体の中から放出されていく。


「………はああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ、だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 髪が伸びる。金色の髪が腰あたりまで長くなり、神の気配を見にまとっていく。そして次にその髪が金色から白色に変わっていった。

 それによって神の気配が薄くなり、人としての限界を超えた姿が作られていく。

 人神化。

 俺が数年前に完全神妃化よりもさらに上の力として生み出した一つの極致。

 一切のダメージを受け付けず、神破りを重ねがけすれば「真・気配殺し」すら使用できうる俺の最強形態。

 今までであればこの姿が俺の切り札だった。現に覚醒したユノアを除けば、この力に勝てる存在はこの世にいない。それこそ究極神妃クラスの力を持ち出さない限り、この俺は倒せないだろう。

 だが。

 この先に、この果てに何もないかと言われると、そうではない。

 それが俺の答えだった。


「ぐっ、がああっ!………ま、まだ、だ!まだ、上がる!この先に、この力を極めた先に、俺は!………ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 この力を初めて発動させた時とは今の俺では力の規模が違っている。それを考えれば能力の反動は少ないはずだ。

 だがそれでも体に無理を強いているのは変わらない。体中の血管が浮き出て、額には大粒の汗が滲んでいく。足は震え、とてつもない倦怠感が襲いかかってきた。

 しかしそれを振り払って俺は前に進む。

 修行とはこういうものだ。生易しいものでは決してない。辛く、苦しい鍛錬の先に、それを耐え抜いた先に力を得る権利が与えられる。

 ゆえに俺は耐えた。耐えて、耐えて、耐えて。

 そして完成させる。


「ぐぐぐっ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!っ、だあああっ!!!」


 俺の雄叫びが舞った後。

 世界に静寂が降りた。それだけじゃない。

 空想の箱庭自体が崩壊し始め、俺という存在を受け入れられなくなっていく。

 だがそれを、俺は己の力で一瞬にして修復した。体からこぼれ出る圧倒的な力をもって、その崩壊を塗りつぶしたのだ。

 呼吸が落ち着く。

 バチバチを火花を散らしている俺の気配と魔力は、空想の箱庭の壁に亀裂を走らせながら弾けていった。

 長かった髪は短くなり、毛束のいくつかが逆立っている状態。加えてその毛先は薄い黒色に染まって降り、白から黒にグラデーションするような光を放ちながら輝いていた。

 これが、これこそが、俺が新たに開拓した新天地。

 人神化を超える最強の姿。

 俺はそんな力を確かめるように両手を閉じたり開けたりしながら、口を動かしていく。


「………成功したか。本当に、身にあまる力だな。今なら眼圧だけで世界を何百個も壊せそうだ。それに妙に心が落ち着いている。人神化を使っていた時は、誰かに急かされるような精神状態だったのに、今はとても静かだ」


 そう呟いた俺はあらかじめ使用していた浮遊の力を切って、空想の箱庭の床に足をつけていく。実際に体を動かしてこの力を試してみたいと思ったからだ。

 だが。


「ッ!?な、なに!?」


 俺が足を床につけた瞬間、体から溢れ出るその膨大な力によって箱庭が崩れ出してしまった。その崩壊は徐々に広がっていき、世界全体が壊れ出してしまう。

 とはいえ。

 心配する必要はない。

 先ほどと同じようにその崩壊という概念ごと消してしまえば万事解決する。そう俺は思っていた。

 のだが。


「えっ………?」


 体の力が抜けた。

 一気に魔力が消失する。

 変身も自動的に解除され、元の金髪姿に戻ってしまった。


「ま、まさ、か、じ、時間、切れ、か………!?」


 どうやら、というかやはり、この力はまだ俺には早かったらしい。確かに発動すること自体は成功したものの、その姿を維持する力はまだ俺にはなかったようだ。

 魔力と気配を使い果たした俺は、そのまま空想の箱庭が崩壊する裂け目に落ちていってしまう。そこから逃れようと一生懸命体を動かそうとするが、体は言うことを聞かない。それどころか意識すら揺らぎ始めてしまった。

 ま、まずい………!

 こ、このままじゃ、箱庭が勝手に崩壊して俺は地面に突き落とされることになっちまう………!

 箱庭が崩壊するのはいい。所詮能力で生み出した空間だ。それがなくなったところで何の支障もない。

 だが足場を失った俺は別だ。テンジカに乗っていたことによって箱庭の座標は空高くに固定されている。ということはその箱庭が消失すると俺はそのまま地面に落下することになり、もしその落下点が街や国だと大騒ぎになってしまうのだ。

 ゆえに俺はなんとか態勢を整えて少しでも被害の少ないようにしようと考えていたのだが、そんな俺の背後から思いもよらないものが出現する。


「な、なに!?こ、これは、なんだっ………!?」


 真っ白な腕。

 それが箱庭の裂け目から現れた。

 いや、違う。よくみるとそれは箱庭の裂け目ではなく、世界自体の裂け目から伸びてきているものだった。

 ま、まさか、箱庭の壁を飛び越えて俺の力が世界に穴をあけちまったのか!?い、いや、それにしても、こんな腕が伸びてくるなんて聞いてないぞ!?

 世界の壁、つまり次元境界が壊れると、世界が崩壊するだけでなく、他の世界と擬似的に繋がってしまうことになる。今回の場合、それほど大きな穴ではないため放っておいても世界自体がその穴を修復するだろうが、その穴から勝手に伸びてきているその腕は俺の体を掴み取ると、その穴の先にあるどこかに持ち帰ろうとしているようだった。


「がっ!ま、待て、って!な、なんで、俺を………!?」


 抗おうとする。

 だが抗う力すら俺には残されていない。

 ゆえに俺の意識はそこで途絶えた。そのまま体がどこかへ持ち去られていく感覚だけが走り、急な浮遊感と倦怠感に襲われてしまう。


 そして次の目を覚ます場所こそが、俺の新たな物語を紡ぐ世界だった。


 こうして、アリエスがいない間に俺はまたしてもドラブルに巻き込まれてしまう。今回は愚かにも自分が招いた失態だが、その腕が連れて行く先で俺は、また新たな人たちと出会うことになる。




 だがそこは血の匂いが漂っている世界だった。


次回は今回の主人公的ポジションの子に焦点を当てます!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

次回の更新は明日の午後九時になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ