第六十二話 第二神核の本気
今回も第二神核戦です!
では第六十二話です!
「ぐあっ!?」
俺は物凄いスピードで迫ってきた神核を両手の剣で受ける。
しかしそれは見事に弾き飛ばされ、ステージの壁に激突する。
魔術も魔法も効かず、十二階神の力さえも通らない。まさかここまでの強さだとは思っていなかった。
完全な誤算だ。それに少しとはいえエリアとの試合のせいで俺の体力は消耗している。これはかなりきつい。
俺は咄嗟に魔眼を使用し、前方の地面の土を巻き上がらせる。
『無駄なことを!』
そうだ、無駄なことだ。
だがそれでも少しだけ時間がほしい!
神核はその大きな翼で砂埃を吹き飛ばすと、俺に先程の青いブレスを吐いてきた。あれは戦火の花と戦火の砂時計を破った攻撃だ。油断は出来ない。
俺は咄嗟に、リーザグラムに魔力を流すと、その剣でブレスを断ち切った。
そして俺は次の攻撃に繋げる。
「青の章!」
その攻撃は黒の章のような連続技ではなく、一撃。
ただしそれはとてつもない威力の斬撃と魔力が込められており、生半可な防御では直ぐに砕け散る。もともとこの技はリーザグラム用に作り出した技で、その同調の力を効率よく発揮するために、一撃という少ない攻撃で最大の威力が出せるように調整されている。
俺はその一刀を全力で神核に叩き込んだ。
「これならどうだああああああ!」
『ぬうう!?』
それは真っ直ぐに神核に迫り、その体を切り裂く。
青白い光の太刀は神核の体を間違いなく捉え、赤い鮮血を吹き出させた。
『ぐっっっああああ!?』
ようやく一撃。
神核の体にダメージが入った瞬間だった。
しかし神核は直ぐに態勢を立て直すと、空気を圧縮した弾丸を放ってきた。
『こしゃくなあああ!』
それはゆうに音速を越えており、俺は避ける暇もなく吹き飛ばされた。
「ぐああああああ、あああああ!?」
あの再起性は竜の体から来るものなのか?
もはや生物の動きではない。
まさに神の領域。
こんな化け物がまだあと三体いると考えると肝が冷えるぜ…………。
俺は震える足をなんとか立ち上がらせると、魔眼に全力で力を込める。おそらく神核に直接死を叩き込むことは出来ないだろうが、一瞬ひるませるくらいは出来るはずだ。
魔眼は俺の意思に反応し、強く輝く。
それは神核に向けられ、土埃が晴れた瞬間、奴の目を捉えた。
『な、なに!?そ、それは、まさか!』
予想どおり神核の身がほんの一瞬だけ強張る。俺はその瞬間に複数回、転移を使用し神核に迫った。
初めの一刀は神核の腹、次は翼、次は脳天。
俺は一回の攻撃のたびに転移を繰り返し攻撃する。無制限移動による攻撃はさすがの神核も予測できないようで、されるがままに俺の攻撃を受けている。
『ぐああああああ!くそ!ちょこまかと動きおって!』
神核は俺を捕らえようと、腕や尻尾を使って攻撃するがそれは全てギリギリのところで俺の転移で回避されてしまう。
当然俺のほうも一太刀につき転移を使用しているので、魔力は問題ないが座標指定が少しずつずれてきている。
それは神核の攻撃を完璧に避けていたはずの体を、わずかに鈍らせ神核の腕が俺の頬を掠めた。
「チッ!」
俺はこのままでは致命的な一撃を喰らってしまうと判断し、一度転移で距離をとった。
神核はブンブンと頭を振って、俺を見つめなおすと、明らかに敵意をむき出しにし動き出した。
『人間風情がなめるなよ!』
「こっちの台詞だ、神核!」
そう言うと俺はさらにギアを一段上げ神核と切り結ぶ。
神核は近づきざまにとてつもない重力を俺に叩き込んできた。おそらくこれも自然操作の恩恵なのだろう。重力は星の引力によって齎されいる。であれば超自然法則として、神核は利用できるのだろう。
だが俺はそれはラオとの戦いで経験済みだ。
俺はリーザグラムでその力ごと切り払うと、体をコマのように一回転捻ると、その遠心力を利用し神核に切りかかる。
それは神核が作り出した、巨大な雹の嵐によって阻まれた。
「まったく厄介だな、その力!」
今まで観察してきて、この自然操作という能力について俺はある程度理解してきていた。
自然操作という力は、神核の意思によっても動く力ではあるが、無意識のうちに発動してる能力でもあるのだ。
よって神核はある程度の防御をそのシステムに任せている。また能力を使う際は基本ノータイムで発動でき、気配はまったく感じられない。
自然現象を操っているのでそれに気配なんてあるはずもなく、気配探知はまったく役に立たないようだ。
だがそれは強力だが、言い換えればそれだけなのである。
第一神核のように何度倒しても蘇ってくるわけではない。ゆえに単純な火力勝負だ。そうなれば俺のするべきことも見えてくる。
俺は全力で二本の愛剣に魔力を注ぎ込むとそのまま再びあの技を使用した。
「青の章!」
この攻撃は俺の剣技のなかでもかなり威力が高い部類に入るのだ。
であれば、これを只管連発する。
『一度見せた技など通用すると思うな!』
神核はそう言うと、ブレスと腕の爪を上手く使い青の章をいなしていく。
しかしこの攻撃はそう簡単なものではない。
『な、なに!?この斬撃……全て違う波長だと!?』
そう、紛いなりにもこの技はリーザグラム用に開発されているのだ。その攻撃の波長がただ単純な攻撃なはずがない。
『だが、この程度!』
神核はさらに攻撃のスピードを上げるが、俺の青の章の嵐のほうが一歩速い。青の章は連続で放てる技ではないが、エルテナでもその技を使っているので、一回ずつ交互に打ち出す形になる。だが俺の絶対速度が速すぎるために、それが剣の嵐と化しているのだ。
『ぎゃあああああああ!』
ついに神核が苦悶の声をあげる。
俺はそのまま神核に接近して、その腹を思いっきり蹴飛ばした。
「はっ!!!」
それは見事にヒットし、神核の体を観客席に吹き飛ばした。
『お、おのれ、人間。まさかここまでやるとは………』
「まだ続ける気か?」
俺は傷だらけになった神核を見つめそう呟いた。初めは俺のほうが押されていたが、今は完全に形勢が逆転している。このまま戦っていても奴の体力が先に尽きるだろう。
すると神核はいきなり声をあげて笑い出した。
『ハハハハハハハハハハハ!!!』
「なにがおかしい?」
『いや、なに。これほどまでに強い者出会ったのは何百年ぶりだろうか!実に愉快だ!』
「なにが言いたい?」
『ようやく私も本気を出せるということだ』
瞬間、神核の体が光りだした。
それは瞬く間に神核の体を覆いつくし、闘技場を白い光が包む。
その中心には空間を壊すが如き魔力が渦巻き、力の渦を巻き起こした。
風は雷を、熱は火を、波は力を呼びよせ、ステージを激震させた。
「ぐ!?な、何が起こるって言うんだ!?」
俺は腕を目にあて、衝撃に耐えながら、その光景を見つめた。
しばらくしてその暴風が鳴り止んだとき、その中心に立っていたのは俺はおろか、観客席にいるアリエスたちも予想できないものだった。
それは真っ黒な着物のような服を着ており、長く黒い髪の先端は鮮血のように赤く、両目は俺の目よりも赤黒い。爪は通常より少しばかり長く竜の名残を感じさせた。
そう、そこに立っていたのは黒髪をなびかせた一人の女性だった。
「私は竜人の祖と言っただろう?ゆえにこの姿が私の本気。………では第二ラウンドといこうか、災厄者?」
そう元竜の神核は笑いながら呟いたのだった。
「ぐあっ!?」
人型になった神核は先程の竜の姿のときよりも格段に強くなっていた。
竜の状態ならば、かろうじて俺のほうがスピードで勝っていたのだが、もはやそれすらも凌駕されている。
俺は転移を必死に連発しながら攻撃に耐えているが、どんどん押されてきている。
竜から、人型になったことで速さだけでなく攻撃力も上がっているようで、俺の体に溜まっていくダメージは時間が経つにつれ増えていった。
「どうした?この程度か災厄者?………その神格の本性を私に見せてみろ」
そういいながら神核は俺に拳を突き出してくる。
俺はそれをエルテナでなんとか受け、リーザグラムを振りかぶった。
しかし神核の残ったもう片方の腕の爪が俺の腹を切り裂く。
「ぐ、ぐあああ!」
そのまま神核は俺に地面を叩き割るかのような蹴りを放ってきた。
「ぬるい、ぬるい、ぬるい!その程度で人類を滅ぼせると思うなよ、人間!」
「だから、滅ぼす気はないって言ってるだろうが!」
俺は吹き飛ばされざまにリーザグラムで斬撃を放つ。その攻撃は青の章並みの魔力を込めた一撃だったが、それをいとも簡単に神核は弾き返す。
そして神核は上空から俺の体目掛けて、全力のパンチを放ってきた。
「ぐあああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
それは俺の内臓を破壊し、骨を木っ端微塵に砕いた。
こ、これは、まずい…………。
魔力はまだ尽きていないが、傷の痛さで頭がどうにかなりそうだ………。
俺は、右手を蔵の中に突っ込み、あの神宝を取り出した。
「万象狂い………。頼んだ………」
その緑色に輝く槍は、俺の言葉に呼応するように光だし、俺の痛みや傷、疲れを吹き飛ばす。
「ほう、これはまた珍しいものを持っておるな。………だが、それでいつまで持つ?」
万象狂いは一度出すだけで空間を壊してしまうので、俺はすぐさま蔵の中にしまい、リーザグラムも同時に蔵に投げ込むと、エルテナだけを構え、神核の目の前に立った。
「お前は、なぜそこまでして俺を殺したい?星神に言われたからか?第一神核は星神とお前達神核は、仲が悪いって言っていたぞ?」
「まさにその通りだ。だが、人類の脅威になる存在をたかがその程度の理由で見逃すと思うか?星神に関しては、お前という爆弾を処理した後でいくらでも相手に出来る」
「俺も一応、その人類の一人だと思うが?」
「ほざけ、お前は既に人であって人でない。そのにじみ出る神格が証拠だ」
どうやらどう頑張っても説得は無理らしい。
だがこのまま戦っていても、俺が押され負けるだけだ。
ならば、もう迷っていられないだろう。
『リア、器の力を使う。いいな?』
『………まあ、仕方ないのじゃ。主様は神妃の力を身に宿したくはなさそうじゃしな………。いいじゃろう、存分にやるのじゃ!』
『あ、あれは、本当に最後の奥の手としておいて置くよ。でないとこいつより強い奴が来たときに対処できない』
俺はリアにそう言うと、もう一度神核を見つめ口をあけた。
「ならば、俺はお前をここで切る。悪いが、決定事項だ」
「は!何を言うかと思えば、今まで私に手も足も出なかったやつが頭に乗るなよ?その神格ごと消し炭にしてやろう!」
俺はそのまま少しだけ俯くと、ルモス村でシラとシルを買うために魔物を倒したときに使った気配探知に続く妃の器の二番目の能力の名前を口にした。
「気配創造」
こうして第二神核との戦いが最終ラウンドに突入する。
ついに二番目の能力が明らかになりました!
次回はこの能力でハクが無双します!
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