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第五十五話 準決勝、一

少し早いですが投稿します!

今回はついにハクVSラオになります!

では第五十五話です!

 午後三時。

 第二回戦から一時間後の今。

 一時間かけて第三回戦の全ての試合が終了した。

 第三回戦は一言で言えば、まったく面白味のないものとなった。というのも観客からすれば誰が勝つのかという最も興奮するポイントが戦う前から容易に予想できたのだ。

 そしてその予想は残念ながら外れない。

 つまりこの第三回戦を勝ち抜け準決勝に勝ち上がったのは、俺、ラオ、フードの女性、そしてシードである聖剣士カリス=マリアカである。

 俺は勝ちあがってきた、風魔術使いを出来るだけ手加減しながら気絶させ、ラオはお得意の重力創造(グラビティー)で吹き飛ばし、フードの女性は圧倒的剣捌きで喉元に剣を突きつけ、三回戦を勝利した。

 というわけ、ただ今より準決勝の幕が上がる。

 俺はその身に出来るだけ外に漏らさないように闘気を練り上げていた。トーナメント的に次の俺の相手はあのSSSランク冒険者、ラオその人である。

 これは間違いなく相当な激闘になる。この相手ばかりは俺も能力を使わないといけないかも知れない。

 十二階神の能力は、俺が直接見たものでない能力、つまり十二位、十位、三位、そして十三位の力以外は極端に威力が落ちる。

 ゆえにその力を使えば、いい具合になるかもと一瞬考えたのだが、その考えは直ぐに捨てる。いくら威力がでなくとも十二階神の力だ。それはおいそれと簡単に使うことはできない。まして使い慣れていない技など言語道断である。周りにどれだけの被害を出すかわからない。

 というわけで、俺は一つの違う結論に至った。

 だがこれはラオの実際の実力を見てからでないと、使えない。

 つまりはそれだけ強力なのだ。俺が取ろうとしている結論は。

 俺は会場の整備が整いだすと、腰の剣帯に愛剣をさし、立ち上がった。

 すると隣にいるアリエスが、顔を真っ青にして俺の手を握ってきた。


「は、ハクにぃ………。む、無理かもしれないけど………。あの人と…………戦わないで……」


 その表情は悲しみを通り越して絶望の色に染まりかけていた。


「あ、アリエス?一体どうしたんだ?」


 俺がそう動転していると、メイド服に身を包んだシラがアリエスの横に立ち説明しだした。


「アリエスはハク様があのラオという男に殺されてしまうかも、と危惧しているのです。私も心配はないと、言ったのですが、心の閊えは取れていないようですね………」


 そういうことだったのか。

 今日一日アリエスの表情が暗かったり、ラオの存在に敏感に反応していたのは、それが理由か。

 確かにラオのやつは俺目掛け普通ではありえないほど強力な一撃を放ってきた。それは何の戦闘経験がないものからすればただの斬撃に見えたかもしれないが、アリエスのようにある程度戦闘経験を積んでくると、その異常さが身にしみてわかってしまうのだろう。


「は、ハクにぃ………。し、死なないよね……?私、ハクにぃが死んじゃったら……私!」


 その瞬間アリエスの背後に回りこんでいた、シルがアリエスを抱きしめた。シルのほうが年下のはずなのだが、今は立場が逆転しているように見える。


「大丈夫、大丈夫。ハク様は死なないよ………。だから安心して?ハク様を信じよう?」


 シルはそういいながらアリエスの背中をポンポンと撫でながら諭す。

 するとそれを見ていたシーナとギル、ハルカが近くに寄ってきた。


「心配ない、ハク君はこの私に勝ったんだ。あのような男に負けるわけがない」


「おうよ!それにハクの奴が強いのは一番近くにいたアリエスちゃんが良く知ってるだろ?」


「そうです!ですから私たちはハクさんを信じて待ちましょう!」


「み、みんな…………」


 その言葉にアリエスの青い目からは大粒の涙が零れ落ちている。

 本当にアリエスは涙もろいな。

 俺はそう思いながら、腰にさしている絶離剣レプリカを引き抜きアリエスに渡した。


「え?こ、これどうしたの?ハクにぃ?」


「アリエスに預けとくよ。今の俺には必要ないから」


「え、で、でもこれがないとハクにぃは二刀流で戦えないよ!」


「いいんだ。俺はもともと二刀流で戦うスタイルじゃないし、どうせ使わないんだったら、それはアリエスに持っていてほしい」


 俺は腰をかがめ、アリエスの細い腕にその剣を持たせると、いつものようにアリエスの頭を撫でた。


「…………う、うん。わかった。これは預かっとくね!…………、それじゃ、ハクにぃ頑張ってね!」


 アリエスはそう、俺に今日一番の笑顔を見せると、俺が預けた絶離剣レプリカを大切そうに抱きかかえた。

 俺はその光景を見届けると、足を大きく踏み出し、控え室に向かうのだった。






『で、どうやって戦うのじゃ主様?』


 ステージ前の廊下。

 俺とリアはここで最後の作戦会議をしていた。


「とりあえずはエルテナ一本で戦ってみるよ。それがダメなら、多少の能力も使うけど、本当にやばくなったら、あれを引き抜く」


『………。まあ確かに、あれは神宝でありながら空間との親和性が高いからのう、悪くはないが果たしてそこまでの相手なのかのう?』


「さあな。まあ戦ってみればわかることだ。それと……」


『それと?』


「俺はあいつを絶対に叩きのめす。俺の仲間に一瞬でも恐怖を与えたんだ。許すわけがない」


 すると、リアガ今までで一番楽しそうに、俺の背中を押した。


『ハハハハハ!それでこそ主様じゃ!私に剣をつきたてたときの気配に近づいておるぞ!………ではそれを私にも見せてくれ!あのときの高鳴りをな』


「任せろ」


 俺はそう呟くと、ステージの地面に足を入れたのだった。






 そこには既にラオがいつもの仁王立ちで待ち構えていた。

 青黒い鎧と、赤茶色の片手剣、そして見染み出る膨大な魔力。

 すべてがそのラオという人物の象徴となっている。

 俺はそのままステージの中央にいるラオの下へと近づく。


「ようやくだ。ようやくお前と戦うことが出来る。俺はこのときを楽しみにしていた!お前ほどの強者、神核でもなければこの世に存在していまい!」


「さあ、どうだかな。だが俺もお前には色々と汚い恩がある。それをここで返させてもらうぞ」

 そう言うと俺とラオは、そのまま目線を外さず後ろに跳び下がった。


「さーーーーーーーて!いよいよ始まります!準決勝!数々の激戦を勝ち抜き、この準決勝に駒を進めたのはこの選手たちだーーーーーーーー!まず右コーナー!朱の神ことハク=リアスリオン選手!今までの試合を圧倒的な実力差で勝ち進んできております!次に左コーナー!殲滅剣ラオ=ヴァビロン選手!ラオ選手はその強力な闇魔法で、今までの戦いを無傷のまま切り抜けています!この戦い、果たしてどちらが勝つのか!本当に楽しみです!!!」


 俺はその言葉を聞きながら、全身に魔力を通した。それは体だけでなく右手に構えるエルテナも然り。

 それは次第に体からあふれ出し、周囲の地面や風を巻き上げる。その強力すぎる魔力は次第に小さな稲妻を呼び寄せ、地面を叩く。

 これは、試合という名のケンカだ。

 それも友情を確かめるなんて生ぬるいものではなく、憎悪がむき出しになった、ただの殴り合い。

 するとラオも全身に重力創造(グラビティー)を張り巡らせ、赤茶色の片手剣を中段に構えた。

 その姿はさすがに隙がなく、どの間合いに入っても切られる未来しか見えてこない。

 だが俺は刺し違えても奴を切ると決めている。


「では準決勝、ファーストバトル開始です!」


 その声と同時に、俺はラオの元に駆け出していた。その速度はもはや目に捕らえられるものではなく、風と同化しているかのような速度でラオに肉薄した。

 そのまま俺はラオの片手剣目掛け、エルテナを振り下ろす。

 それはラオお片手剣に見事に命中し、衝撃を流し込む。その斬撃によって観客席と守っている結界が一瞬にして砕け散った。

 俺は予め設置しておいた魔力で、青天膜を発動し、観客たちの安全を確立させる。

 ラオは俺の攻撃に耐えながら、周囲に魔力を迸らせた。

 重力創造(グラビティー)である。

 その最大火力が俺の全身に圧し掛かる。


「ぐっ!?」


 それは俺の全身を重くし、とてつもない力で押さえつけてくる。

 まるで体が鉛になったみたいだ………。

 だがその対策をしてないと思うな!

 ラオはその動きが鈍くなった俺に全力で剣を叩きつけてくる。


「はああああああああああ!」


 俺はその瞬間奴の背後に転移した。

 転移ならば普通の三次元空間の法則には縛られない。ゆえにどれだけ重力が強かろうと関係ない。

 そのままエルテナをラオの首目掛けて振り下ろす。


「ぬ!?」


「これで、どうだ!」


 しかしラオはそれをわかっていたかのように高速で振り返るとエルテナを弾き返した。


「な、なに!?」


「それは前の試合で見せていただろう!そんなものが通用すると思うな!」


 確かにこの転移はシーナ戦のときに一度使用している。しかし、だからと言ってそう簡単に見破れるものではない。

 なんといっても転移だ。どの座標に表れるかも不明な無制限移動。それをあいつはあの一回の転移で見破ったっていうのか……。

 これだから天才は困る!

 瞬間俺はラオの左拳から放たれる重力の塊を、がら空きになった胴めがけまともに喰らってしまった。


「ぐ、がああああああああああああ!」


 俺はそのままステージの壁に激突する。それは一メートルほど壁を突き進みようやく止まった。


「………くそ、あの野郎、本気で殴りやがって……。ますます気に入らないやつだな!」


 俺はそう言うと、魔力を吐き出し周囲の瓦礫を吹き飛ばし、ステージに戻った。


「なかなかの一撃だったはずだが、やはり効いてはいないか」


「ハッ、俺を殺したかったら今の百倍はもってこい!それでも俺は死なないがな」


 瞬間、俺はラオに切りかかった。

 ここで俺がなぜ二刀流と捨てたのかが判明する。

 俺はラオに上段から斜めにエルテナを切り下ろす。しかしそれはラオの片手剣によって弾かれる。

 しかしそれは想定済み。

 そのままエルテナを指の間で滑らせ、体制を変えないまま、今度は右胴を狙いながら切り払う。それも弾かれるがまたしても瞬時に体をひねらせ、次の攻撃につなげていく。

 これが俺が片手剣を好む理由だ。

 二刀流は片手剣を二本持ち、その圧倒的な手数と威力によって戦いを進めるスタイルだが、一つ致命的な弱点が存在する。

 それは剣を弾かれたときの、隙だ。

 二刀流は性質上、片方の剣を動かしているときに、既にもう片方の剣も動作に入る。

 であればこのタイミングで剣を弾き返されれば、その態勢はどうなるか。

 一本の剣が弾き変えされても、もう片方の剣が動きだしている。一見すれば直ぐに攻撃に入れているように見えるが、実際はそうではない。

 中途半端に崩されたその体は至る所に隙を作る。

 それが二刀流の弱点だ。

 しかし片手剣、もとい他の武器ならばそれがない。

 いくら弾かれようと直ぐに態勢を立て直し、次に繋げることも出来る。なれてくれば弾かれること前提で剣を振るい通常では考えられないほどの剣戟を繰り出すことも可能だ。

 まあこれにはかなりの鍛錬を積む必要があるが………。

 とはいえ俺はその性質を利用し、ラオに次々と連撃を放っていく。

 それは次第にラオの鎧に傷をつけ、赤い鮮血を巻き上がらせる。


「ぐあっ!!!」


 そしてついに俺の剣はラオの肉を捕らえた。俺はそのまま勢いを緩めず、全身に魔力を流しながら全力の一撃を叩き込んだ。


「これで終わりだああああああああ!!!」


 俺の一撃はそのままラオの肩に吸い込まれていく。

 しかしその瞬間、ラオの顔が笑っていた。

 その直後、俺の背中にゾワリと舐め回すような悪寒が走る。

 刹那、俺の剣を白い光のレーザーの様なものが弾き返したのだ。それはさらに俺の元へ迫ってきており、俺は咄嗟に体を倒し、地面に転がることでその攻撃を回避した。

 その一撃は、ステージを焼き焦がし、地面を切り裂いており、その攻撃の強力さが伺える。

 俺はこの魔法に一つ心当たりがあった。


「チッ!光魔法か!」


 すると先程まで紫色の光を纏っていたラオの体が、今はその闇魔法の光と、白く輝いた純白の光に包まれていた。


「さあ、まだまだ戦いは終わらせんぞ!!!」


 俺はそのラオの言葉に、こいつは少しやばいな、と毒づき、エルテナを構え直したのだった。


次回もハクVSラオになります!

どうやってハクはラオを攻略するのか、これは書いている作者もわくわくしています!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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[気になる点] 絶離剣って手元に戻るはずなのになんで他人に渡せるの?
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