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第三十八話 国王との交渉

今回は若干展開が早いです!

すみません!

では第三十八話です!

 というわけでなぜか、シルヴィニクス王国王城に向かうことになった俺たちは、近衛騎士団副団長ダリル=ザクスにつれられて王との謁見の間に通されることとなった。

 いや、なんでこんなことになりますかね?気分はライトノベルの巻き込まれ体質の主人公ですよ、まったく!

 まず首が痛くなるほど高くそびえ立った白亜の門を潜り、クビロの本来の姿がすっぽり入りそうな扉をまたぎ王城に招かれた。

 その中はどこもかしこも大理石と黄金で埋め尽くされており、正直庶民の俺からすれば目を背けたくなるほど眩しかった。王城にこれだけの資金を投入しても、国民の生活は維持されているのだから、よほどこの国の王は政治の回し方が上手いのかもしれない。

 そして俺たちはそのあとも迷路のような通路を渡り歩き、幾度かの扉を越え、ようやく謁見の間にたどり着いた。

 アリエスは、王城に入ってから俺の右手をずっと握っており緊張の色が感じられており、わがメイドのシラとシルは俺の後を無表情でついてきている。

 シルは普段感情をあまり表に出すほうではないのだが、それでも顔面蒼白になっており、シラに至っては歩いている足がかすかに震えている。

 かくいう俺も緊張はしてないはずもなく、内心、早く帰りてー、と愚痴り続けている。

 なんといっても今回ご対面するのは一国の王様だぜ?エリアのような王女様ならまだしも、国のトップにいきなりわけもわからず呼び出されたのだ。緊張しないわけがない。

 まあ俺たちの中で緊張してないやつといえば。


『ふむ、なかなかの造りじゃな!気に入ったのじゃこの城!ハハハ!』


『アリエス、そんなに緊張しなくてもいいのじゃ。いざというときはわしが全て喰らってやるからのう』


 まさに人外の領域にいる二人だった。

 確かにリアはもとの世界では頂点中の頂点だったわけだし、恐れるにたらん!って感じなんだろうけど。クビロにしたって地の土地神なんて言われてたんだ。たかだか人間ごときに恐怖なんて感じないのだろう。

 でも俺は小心者なので緊張してますけどね!


「では、これから謁見の間にはいる。くれぐれも粗相のないように」


 勝手につれてきておいてよく言うぜ………。

 そして俺たちは開かれた扉に吸い込まれるように足を踏み入れた。

 そこはたくさんの窓から太陽の光が差し込み、玉座を照らし出していた。またその玉座を取り囲むように十個の椅子が並べられており、そこには国王の臣下らしき人達がずらっと並んでいた。当然その中央にはシルヴィニクス王の姿もあり、白髪と金髪が混ざった様な頭髪と深く掘り込まれたような貫禄のある顔、鍛え抜かれている体と赤い高級そうなマントを羽織っていた。

 俺たちはとりあえずダリルさんの後をついていき頭を垂れておく。

 ま、こうでもしないとなんか怒られそうだしね!こういうのは元の世界のアニメで学習済みさ!


「陛下、ハク=リアスリオン殿とそのお仲間をお連れしました」


 するとダリルさんは頭を下げながら、そう報告した。


「うむ、ご苦労。ではお前は普段どうりの仕事に戻ってよいぞ。下がるがよい」


「はっ!」


 そういうとダリルさんは直ぐに立ち上がり、この謁見の間から退出した。


「して、そなたたちもご苦労であった。頭を上げてかまわんぞ?」


 と、まあ言われたので俺はその言葉に従い、顔をあげる。少しだけ後ろをチラッと見たが、シラの顔がもう見たことないほど恐怖と緊張でぐしゃぐしゃになっていた。

 俺はその顔を見た瞬間吹き出しそうになってしまったが、ギリギリのところで押しとどめ視線を前に戻す。

 しかしそのおかげで、俺の緊張は少しだけほぐれいつもの様な思考が働くようになった。

 グッジョブ!シラ!

 と、俺は心のなかで親指を立てるサインをする。

 そして国王が次の言葉を紡ぎだした。


「今回、ここに来てもらったのは他でもない、そなたたちの噂の真偽を確かめたかったのだ」


 おそらくその噂とはクビロと神核を倒したことだろう。やはり二人ともこの世界においてかなり名が通っている存在であり、それを一人の人間が倒したというのはかなり有名になっているようだ。

 それも国王の耳に届くくらいに。


「そなたたちは、地の土地神(ミラルタ)と第一ダンジョンの神核を倒したというのは本当か?」


「ええ、本当です。それに関しましてはルモス村の冒険者ギルドのギルドマスターに聞いてもらえば確認がとれると思います」


「ふむ………なるほどな。では今ここでそれを証明してみせよ。シーナを呼べ」


 そう国王は言うと、なにやら後ろに控えていた兵士の一人が謁見の間を出て行き誰かを探しに行った。

数分後、再び扉が開くと、全身をフルプレートの鎧で身を包んだ女性の剣士が現れる。


「陛下、なにかお呼びでしょうか?」


 その女性剣士は国王の前で跪くとそう呟いたのだった。


「うむ、少しそこの者と手合わせをしてほしい、殺してはダメだからな?」


 おいおいおいおい!なぜそういう展開になる!?

 ギルマスに確認すればいいって言ったじゃないか!?


「は、はあ、この者とですか………。畏まりました。陛下のご命令とあれば」


「そういうことだ、そなたが本当に朱の神と呼ばれているハク=リアスリオンならば、この王国最強の騎士団長シーナを倒してみせよ。そなたが朱の神を主張するなら拒否権はないぞ?」


 ははーん。どうやらこの王様は俺の存在を疑っているらしいな。あれだけのワイバーンを倒しておいてなおも疑われるとは、なかなかに辛辣だ。

 まあ正直、俺は偽者です!すみません!といって逃げ出してもいいのだが、それではいったいどんな噂が立つかわからないので、俺はその場から立ち上がり、その騎士団長と呼ばれた女性の前に立つ。

 その女性は普段剣を握っているのも信じられないくらい線が細い体をしており、長い赤髪の髪を流した、とても美人な剣士さんだった。


「いいでしょう。その要望にお答えします」


 すると目の前の女性剣士は、すっと腰のレイピアを抜くと俺に真っ直ぐ構えてきた。


「陛下からのご命令だ。こちらも全力で行かせて貰う。覚悟はいいな?」


 そう剣士さんが構えた瞬間、国王を取り囲んでいた臣下たちが小声で騒ぎ出した。


「へ、陛下!さ、さすがにやりすぎです!いくらなんでもシーナを相手にできるわけありません!」


「そ、そうです!あ、あの者が仮に偽者でも怪我をさせるのはまずいです!」


 そういう臣下たちを横目に、国王は口元を歪め返答した。


「怪我をすれば宮廷魔道師に治療させればいいし、なによりあのものは自分で戦うと決めたのだ。もう引くことはできん」


 俺はその言葉を右耳から引くと、俺に真っ直ぐ剣を構えている女性をじっと見つめていた。俺が見ているのは、彼女のもつレイピアの先端。そこに自分の全ての視線を集中させている。


「どうした?その腰の剣を抜かないのか?」


「わからないか?お前ごとき剣を抜く必要さえないんだよ」


 もちろん、俺も腰にエルテナをさしてはいるが、こいつごときの相手に抜く必要はない。

 みると、臣下たちが手を目に当ててあちゃーと言った風に頭を抱えている。おそらくあいつらの頭の中にはこの女性剣士が負ける光景など想像できていないのだろう。


「ほう、そいつは随分と余裕だな。この私がよもや、そんなことを言われる日がくるとはな。後悔するなよ………?」


 その瞬間、その女性剣士は俺にレイピアを突き出し、飛び掛ってきた。

 俺が見ているのはただ一点。その一点に神経を集中させる。

 俺とその女性剣士の距離があと一歩で届くという距離に近づいたとき、俺はついに行動を起こした。

 まずその突き出されたレイピアの腹を拳の平で軽く突き飛ばし、その剣線をそらす。そしてそのまま俺は威力が落ちた剣先を右腕で掴み取り、女性剣士をこちらに引き寄せた。

 そのままレイピアを奪い取り、態勢を崩している女性剣士の足を払いながら一回転させるとそのまま顔の目の前に奪い取ったレイピアを突きつけた。


「俺の勝ちだな」


「ッ!!!!…………ああ、私の負けだ」


 俺は勝負の決着がつくとレイピアを女性剣士に返し、そのまま国王のほうに向き直った。みれば臣下たちは揃いもそろって全員口をあけて固まっている。


「これでいいですか?シルヴィニクス王?」


 すると俺がそう言った瞬間、国王は途端に笑い出した。


「はははははははは!あっぱれじゃ!まさかシーナが数秒も持たずに負けてしまうとはな。どうやら噂は本当だったようだな。疑って悪かった」


 なにが疑って悪かっただ、人をいきなり呼び出しておいて着いたかと思えばすぐに模擬戦。ふざけた性根をしてやがるぜ……。


「で、あなたは俺たちに何か用なんですか?俺たちもあまり暇ではないんですよ?」


「き、貴様!陛下の前で無礼だぞ!」


 無礼もなにもあるか。どちらかといえばお前たちが無礼だろうに。


「よい、かまわん。………で、そうじゃな。私たちはそなたらに用がある。その話をしよう。………地の土地神(ミラルタ)と神核を倒したそなたらの実力はとても素晴らしいものじゃ、それほどの力、たかが冒険者においておくのはもったいないと思ってな。つまり何がいいたいかと言うと………」


「俺を勧誘してるんですか?」


「うむ、身も蓋もなく言えばな。もちろん待遇は最高のものを用意するし、何一つ不自由はさせんよ。どうだろうか?」


 まさかの王国からの勧誘。正直言えば願ってもないことなのだが、あいにくと俺たちはやらなければいけないことがある。それを無視して仕事に就いてしまうことはできない。

 もしそんなことをしてしまえば、俺を信じてついてきた仲間たちを裏切ってしまう。

 それだけは絶対にしたくない。


「生憎ですが、俺たちにはやらなければいけないことがあります。俺たちはそのために旅をしているのです。それを蔑ろにはできません」


「ふむ………、聞くとなにやら第二ダンジョンに行きたいらしいではないか。あそこは今わが国で封鎖しておる。もしこちらに入ってくれればすぐにでも入室の許可を出すが?」


「それは魔武道祭が終われば自動的に解除されるのでしょう?であればそれまで待つだけです」


「ならばこの場でそなたの仲間たちに手を出すといったらどうする?」


 その瞬間、警備についていた兵士たちが一斉に足踏みをした。それは部屋中に響き渡り俺たちを威嚇した。

 だがその空気をさらにどす黒い空気が揉み消した。


「その言葉、言う相手を間違えるなよ?もし俺の仲間に手を出せば、一瞬でこの国を壊滅させてやる。俺は貴様らにつく気は端からないんだよ」


 俺はその言葉とともに圧倒的な殺気を放った。それは臣下と兵士の足を折り、国王の顔を引きつらせた。


「わ、わかったわかった。今のはなしじゃ。そなたなら本気でこの国を壊滅できそうじゃからな。だからその殺気を収めてくれ……」


 そう言われたので俺は半ば仕方なく、殺気を仕舞い再び国王に問いかけた。


「用という用がそれだけならこれで失礼します。時間が惜しいので」


 俺はそう言うとアリエスたちのところに向かおうとする。


「ま、まだじゃ!もう一つ用件がある。………コホン。そなたたちには娘のエリアを助けてもらった恩がある。その話じゃ」


「それは別に偶々通りかかっただけなので、お礼とかそういうのはいらないですよ?」


「そうは言ってもな、国王としてこのまま何もせず恩人を帰すわけには行かないのじゃ………。そこで考えたのじゃが。そなたら魔武道祭には出んのか?」


「特段出る気はありませんけど、それがなにか?」


「うむ、それの優勝商品が今回はとあるアイテムなのだが、もしそなたらが勝てばもう一つ商品を付けようと思ってな、どうかの?」


 ………強引だな。というかあきらかに思惑が駄々漏れだ。

 俺はそれについて突っ込んでみる。


「それはただ単に、俺を出場させて集客を増やそうとしているだけでは?」


「そ、そんなことはないぞ………。ただ娘のエリアがどうしてもそなたの戦っている姿を見たいといってな。親としてはそれを叶えたいのじゃ………。」


 同じじゃねええか!

 理由としては大して変わってねえよ!


「…………それにしても俺たちには参加するメリットがありません」


「だから、追加で商品を一つつけようと思うのじゃ。なんならそなたの言うことをなんでも一つ聞くというのでもよいぞ?」


 ほう、ほうほう。

 これはいいことを聞いたぜ。その権利を上手く使えば今後の旅がもっとスムーズに進むかもしれない。

 正直それは確かにありがたいな。

 第二ダンジョンに入れない今、することがなかったのは確かなのだ。であれば参加するのも悪くないかもしれない。


「はあ…………。いいでしょう。そのかわり、今言ったこと忘れないでくださいね」


「ああ、もちろんじゃ。そなたの出場手続きはこちらでしておこう。大会は二日後じゃ。それまでに一度、闘技場のほうまで参加票を取りに行けばいい。それで参加資格は得られるからの」


「わかりました。では俺たちはこれにて失礼します」


 そして俺たちはそのまま王城を後にした。

 どうやら俺たちはまさかの、魔武道祭に参加することになりそうです。


次回は魔武道祭までの二日を描きます!

誤字、脱字があればお教えください!

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