表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
299/1020

第二百九十八話 絶望

かなり体力的に厳しかったですが投稿します!

では第二百九十八話です!


『そ、それはどういうことじゃ………?』


 突如として出現した星神が発した言葉に驚きが隠せない俺たちは依然として固まっていたが、俺の中にいたリアはいち早く我に返り星神にその言葉の意味を問い返した。その声は少しだけ震えており、俺の心に動揺の色を伝えてくる。

 しかし星神はさらに顔を歪め、嬉しさを滲ませた顔をこちらに向けると口角を上げながら話し始めた。


「おや、これはこれは。初めまして、いやお久しぶりというところかな、神妃リアスリオン。まさかと思うけど、今の状態ではなく昔の最強であったあなたが、たかが作り出された神々十二体にその存在を二つに分けられるほどのダメージを負うと本当に思っていたのかな?」


『わ、私は神話大戦の時………。出せる全力で戦ったのじゃ!そこに手を抜く余地など絶対になかった!』


 リアから伝えられて聞いているのは、真話大戦が起きる遥か昔に全ての原点であるリアと十二階神がぶつかった神話大戦という戦いがあったということだ。そこではリアの体は再生不能なダメージを負い、力と存在も二つに分離されてしまったらしい。それこそがアリスのような二妃を生み出すきっかけとなり妃の器である俺を作り出す要因となった。

 だがリアの言っているようにその神話大戦はリアが手加減できるほど甘い戦いではなかったはずだ。十二階神の実力は俺自身がよくわかっている。それを踏まえるといくらリアといえどそう簡単に対処できないだろう。

 だが。


「ああ。あなたはその時出せる全力で戦っていた。それは間違いないよ。でもそれがあなたの全力だったというのは些か無理がある。全ての頂点に立っていたあなたは高々神々の集団に後れを取るほど弱くはなかった」


『だから、何故そういう結論になるのじゃ!!!』


 リアは珍しく声を荒げると、星神に対して怒りを露わにし、大きな声でそう呟く。リアにすればかつての自分を見下されているような感覚となり不快なのだろう。


「まあ、いいか。今の僕は気分がいいから語ってあげるよ。どうやら本当に『鍵』のことは忘れているようだし、君たちに絶望を与えるには丁度いい。………かつて、こことは別の世界でおきた神々の戦いである神話大戦は十二人の神と一人の神妃の大戦だ。その戦いはそのまま進めば神妃の圧勝で終わるはずだったけど、神妃は安全策としてその大戦が起きる直前にとある最強の神宝を作り出していた。それこそがこの『カラバリビアの鍵』だよ。これは創造と同時に神妃の下から離れ時空を飛翔してしまうという欠陥を抱えていたんだ。さらにその力は強大ゆえ神妃の力を知らずに削り取るだけでなく、その『鍵』そのものの記憶すら吹き飛ばすという事態まで引き起こした。それゆえに神妃は自分でも気が付かないうちに弱体化した状態で神話大戦に挑み、敗北したというわけさ」


 …………。

 そ、それが真話大戦よりも前におきた神々の戦いである神話大戦の真実………。

 ましてその情報がリアの記憶にも残っていないという異常事態は余計に俺たちの頭を混乱させていった。

 リアは俺の中で言葉を失っており、半ば茫然としながら佇んでいる。

 本当ならばそんな得体の知れない話を信用するなんて馬鹿らしいのだが、今星神が握っているカラバリビアの鍵と呼ばれている神宝からは間違いなくリアの力が溢れ出ていた。それが全ての決定打となり俺たちを納得させている。

 さらによく考えれば、神妃の力をフルに使える今の俺の実力を考えると十二階神に苦戦するというのはなかなか考えられない。真話大戦の時はまだ気配探知や気配創造しか使えなかったがゆえにその強大さを認識していたが、神妃の力を考えるとあのレベルの連中は容易く倒せなければ逆におかしいのだ。

 星神は一通り話し終えると、カラバリビアの鍵を再び握り締め今度は俺に視線を投げかけるとそのままニヤリと微笑み姿を消した。

 いや、消えてのではない、移動したのだ。

 それはもはや俺の目でも捉えられないほど早かったため、消えたように見えただけである。

 瞬間、俺たちパーティーが集まっている中心に星神がとてつもない爆風を纏わせながら降り立った。


「「「「「きゃあ!?」」」」」」


「ぐっ!?」


『うぬ!?』


「があああああ!?」


 それは気を失っていたアリエスを含めたパーティー全員を吹き飛ばし放射線状に散らばらせる。もはや動くことのできない俺にとってその一撃は重たすぎる攻撃でまたしても口から大量の血を吐き出してしまう。

 見ると一応メンバーは意識を失ってはおらず、苦しそうにしながらも起き上がろうと必死に身もだえている。


「それじゃあ、まずは手始めに面倒ごとから片づけようか」


 地面に降り立った星神は今まで見てきた顔の中でも一番不気味な笑いを顔に滲ませると、一度だけ俺の顔を覗き見ると、またしても空間に掻き消えるように姿を消す。

 だが次に現れた場所は俺の近くではなく、俺と同じように吹き飛ばされたキラの背後だった。


「な!?」


 キラはその動きに驚いたような表情を見せるが、早すぎる動きについていくことが出来ない。


「まずは君からだ、精霊女王。大人しく無知の渦に沈んでくれ」


 その瞬間、星神はキラの体に触れたかと思うといきなり黒い力をキラに注ぎ込んでいく。


「が!?……………あ、あ、ああ………」


 その攻撃をくらったキラは目を見開きながら体を震わせ、そのまま地面に倒れこんでしまう。


「「「「「「キラ!!!」」」」」」


 俺たちはそんなキラに対して一斉に声をかけるがキラは一向に目覚めようとしない。

 すると地面に転がっている俺の左腕が何故か急に熱を帯び痛みを走らせた。みるとそこにはキラと契約した際の契約印が浮かび上がっており、その契約印が音を立てながら消失していく。


「な、なん、なんだ、これは…………」


「精霊との契約は記憶を交えることで行われるものだ。それ以前に君の仲間たちは君の中で大きな柱となっている。だがそれは君が今まで彼らと培ってきた記憶だけが繋ぎ止めているものだ。それを消すと、どういうことになるかわからない君じゃないだろう?」


「お、おい…………。ま、ま、まさか、お前は………」


 星神の言葉は俺の脳内に高速で嫌な考えを書き込んでいく。それは俺にとって身を焼かれるよりも辛い現実であった。


「さあ、あと六人かな?あの白髪の少女の記憶は既に消しておいたし、残りもすぐに終わらせるとしよう」


 俺はその言葉を聞いた途端、出来る限り大きな声を上げて残っているパーティーメンバーに対して声を放った。


「み、みんな…………!で、出来るだけ、遠くに、逃げろ!!!」


 その声を聴いたメンバーたちは一瞬で事態を察したのか皆がバラバラの方向に走っていく。

 だがそれでも星神という化け物から逃げられるはずがなかった。


「次は君たちだ」


「ッ!?」


『早すぎるのじゃ!?』


 次にターゲットにされたのはクビロを抱えて逃げていたシルで、悲鳴を上げる暇もない速度で星神の攻撃をくらって倒れ伏してしまう。それはクビロも同じようで既に意識と記憶は消されているようだ。


「貴様あああああああ!!!」


 俺は血反吐を吐きながらなんとか立ち上がろうとするが、それでも俺の体はいうことをきかない。すぐさま膝の力が抜けて前方に倒れ伏してしまう。


「まだまだ行くよ?」


 そんな俺には目を向けることもなく星神は次々とパーティーメンバーの記憶を消去していく。

 エリアにルルン、果てにはイレギュラーの一角であるサシリすら追い付かれてしまい、記憶を消されてしまった。

 残されたのはシラだけになったがシラ何故か俺の下に駆け寄ってくると俺の体を抱き上げるようにして肩を貸してくる。


「ば、馬鹿………!お、お前も、逃げろ………!記憶を消されるぞ!!!」


「私はハク様のメイドです!どんな時も私はハク様をお守りします!」


 シラの表情は既に溢れ出る涙で濡れていたが、その目だけはまだ諦めていないようで必死に俺を抱えながら前へ前へと歩き出していく。

 しかし、そんな悠長な時間を星神が与えてくれるはずがない。


「君で最後だ」


 星神はシラに対して再び黒いオーラを纏わせた攻撃を放つ。それは寸分たがわずシラの体を打ち抜き、俺を支えていた体が急に力なく倒れてしまった。

 だがシラは意識を失う直前、俺に向かって霞んだ目を向けながら懸命に言葉を発してくる。


「お………に、げ、ください………。ハク様………」


 その顔から流れ落ちた涙は、血だらけになった俺の服をさらに濡らし染みを作った。

 目の前で崩れ去っていく仲間の姿を見せられた俺は一瞬で頭の中を真っ白にさせられたような気分の陥り、シラの言葉に返答することすらできない。


「これで終わったね。どうだい?自分の仲間の記憶が全て消され振り出しに戻った気分は?僕としては最高に愉快だ!!!だけど、まだ僕のショーは終わらないよ?」


「な、何を、す、する気だ?」


「このままだとまた君たちは集まって僕の邪魔をしてくる。だからもう二度と集結しないように世界に施しをかけるのさ。こんな風にね?」


 星神はそう言うと指を大きな音を立てながら鳴らし、何かの力を発動する。それは俺の体に悪寒を走らせるだけでなくねっとりとした感覚を伝えてくると、次の瞬間にはそれが全て消失した。


「これで君という存在を覚えている者はこの世界にはいなくなった。で、最後に君の元パーティーメンバーたちを元居た場所に戻せば終了だ」


「や、やめろ…………。やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 俺は今出せ全力の叫びを空に打ち出すように轟かせるとエルテナ掴み取り、その中に宿っている「ある力」を発動させるために力を籠める。

 だがそれよりも先に星神は俺が使用している転移のようなものを容赦なく発動し、アリエスたち計八人の移動を実行した。

 それはつつがなく完了し、戦場に残されているのは既に戦争を終え自らの国に帰ろうとしている軍隊と冒険者、そして離れたところにいる俺と星神、それと気を失っているアリスの三人だけになってしまった。


「ふ、ふふ、ふはははははははははははははははははははははははははははは!!!まったくもって愉快だよ!ここまで自分の策が完璧だと逆に怖くなってしまうね。さあ、一人だけになってしまった君はこれからどうするのかな?そのボロボロの体で僕に戦いを挑むかい?それとも仲間たちを再び集めるために旅にでるのかな?いやいや、仮にも神妃の力を全て持っている君がそんな情けないことをするのかな?ふひひひひひひひ!それを想像するだけでも面白いね!この『鍵』の力は本当に素晴らしい。まさかいとも簡単に記憶消去も転移もこなしてしまうとは、僕が力を使う必要すらないというのは恐れ入ったよ。これはあなたに感謝すべきだね、神妃リアスリオン!」


「貴様!貴様貴様貴様ああああああああああああああ!!!よくも!よくもよくもよくも!!」


 俺は地面を何度も殴りつけながら奥歯をかみ砕くくらい強い力を込めてそう叫んだ。だがそんなことをしても仲間たちが戻って来るわけはなく、それは無情にも空に消えていってしまう。

 するとここで星神は空中に浮かび上がり、もう一度俺に目線を向けると清々しい表情を俺に向けながら再び俺に言葉を発してくる。


「これで準備は整った。ここから本番だよ、ハク=リアスリオン。君の選択がこの世界に住む人類の行く末を決めることになるんだ。しっかり聞いておくといい」


 星神は地面に倒れている俺にそう呟くと、さらに話を続けていく。




「ではその話をする前にまず僕の正体から話しておこう。僕の名前はオルナミリス。かつて君たちがいた世界、つまり神妃が作り出した世界にいた神々の中の一角。それも最底辺の『再生』を司っていた神だ」




 その言葉は怒りで埋め尽くされている俺の脳内にさらなる衝撃をもたらしたのだった。


パーティー完全崩壊。

このお話を入れるときは非常に悩みました。主人公最強でご都合主義が蔓延しているこの作品においてこのような展開を持ち込んでいいものなのか、今でも少し躊躇いを感じています。

しかしこの展開はプロットの段階からずっと消えなかった案でして今後の展開を考えると一度パーティーを壊滅させる必要があったのです。


次回は星神とはなにか、さらに残っているあの方が………。

誤字、脱字がありましたらお教えください!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ