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第二百八十八話 vsオナミス帝国、十

今回はエリアの戦闘回です!

では第二百八十八話です!

一方その頃。

 シラたちが戦っている反対側ではサシリ率いるグループの戦いが繰り広げられていた。そちらのメンバーはサシリ、エリア、ルルン、アリエスの四人。どのメンバーも実力的には申し分なくハクのパーティーの中でも高レベルな実力を持っている人員たちである。

 その中の一人、エリアは自らの担当である勇者に迫っていくとそのまま勢いよく王国の紋章が刻まれた長剣を振り下ろした。


「はああああああああ!!!」


「ぐっ!?」


 その動きはかつて魔武道祭でハクを苦しめた時よりも遥かに強く、素早いものになっており同じく強くなっているであろう勇者の顔を驚愕させた。


「お前はエルヴィニアで一度顔を合わせていたな………。しかしここまでの力は感じなかった。一体何があった?」


「馬鹿にしているんですか?そもそもあの時だって私たちはダンジョンの帰りでかなりの疲労を抱えていました。つまり全力すら出せない私とアリエスをあなた達は万全の状態で戦っていたわけです。それも二対五という圧倒的に有利な状況で」


 エリアの言う通りエルヴィニアで戦った時は第三ダンジョンにハクのパーティーの一員として潜入していた。当然その最奥に潜んでいる神核とも戦い、相当な力を消費した段階で勇者と鉢合わせている。

ましてそこからエリアたちの旅はさらに過酷を極めた。当時の実力のまま固定されているわけがない。


「ということは、今見せているのが本気ということか?」


「まさか。あなた一人に全力なんて出す必要はありません。ハク様をいつでも助けに行けるように体力を温存していくつもりですよ?」


「ふっ。ならばその言葉、後悔させてやる!」


 勇者はエリアの剣を受けながらも力強く弾き飛ばし鋭い剣線を向けながら反撃を開始した。

 エリアは元々剣も魔法も得意ではあるがどちらかと言えば魔法の方が自分のスタンスに合っていると思っている。

 ゆえに勇者との近接戦を受けながらも魔力を溜めながらそれを発動するタイミングを窺っていく。

 しかし勇者もなかなかそのような隙は見せることがなく高速の連撃が続けられていった。エリアはその攻撃の中でも勇者が放ってくる攻撃事態をひたすら観察し、この勇者特有の癖を見極めていく。


(………。どうやら攻撃のモーションの瞬間に、一度大きく息を吸うようですね。それに踏み込んでくる足はいつも右足。これくらいわかれば問題なさそうですね)


 そう頭の中で結論付けたエリアは自らの剣の軌道を瞬間的に変え、勇者が繰り出してくる剣をわざと地面に突き立てさせるように誘導し、固定させる。


「な!?」


「足元がお留守ですよ?」


 そう呟いたエリアはそのまま踏み出された右足を自分の右足で払うように蹴りを繰り出すと、体のバランスを崩した勇者に対して右手に握られている長剣を突き出した。


「があああああああ!?」


 それは見事に勇者の脇腹に突き刺さり、爆風を伴いながら体を後方に吹き飛ばす。

 そしてその流れを生かしたままエリアは自分オリジナルの魔法を発動していく。


六魔光(アーチレイン)!」


 何も握っていないエリアの左腕から放たれたそれは、虹色の光を纏って勇者の体を穿つような光線を放っていく。空気が焼き切れるような感覚と、どこかさわやかな雰囲気が漂ったその不思議な魔法はエリアに脇腹を穿たれた勇者にさらなるダメージを与えた。

 はずだったのだが。


「…………。ようやく使ってきましたか、消滅結界。自分に都合の悪いものだけを排除する不変の能力。一応六属性全ての力を付与した魔法だったのですが、それでも効かないとなるとさすがに厄介ですね」


 勇者はエリアからもたらされた傷口を抑えながらも、エルヴィニアでハクの気配創造を破壊した力を使用し、エリアの魔法をかき消していたのだ。

 砂煙が舞っている中でも勇者の視線は真っ直ぐエリアに向けられており睨んでくる眼光には殺気が滲んでいる。


「ですが、攻略できないというわけでもありませんね」


 エリアはその光景に対して軽く微笑みかけると、勢いよく地面を蹴りだし水色の髪を揺らしながら勇者に接近する。


「ぐっ。な、舐めるなよ……」


 勇者は血が吹きこぼれてくる自身の傷口を気遣いながらも懸命にエリアの攻撃に対応していった。しかしエリアはその持ち前の才能と圧倒的な実力でかつての戦いとは真逆の戦況を作り上げていく。


「あなた達勇者が私たちにしたことは忘れていません。それ以前に今は帝国の参加である以上、私たちの敵であることには変わりません。シルヴィニクス王国第二王女としてあなた達勇者は絶対に逃がしません!」


 エリアの実力はあの魔武道祭が行われた時点でSSSランク冒険者であったラオと遜色ないレベルだった。ハクという規格外の存在が出場していたからこそ準優勝に終わったがそれがなければ間違いなく優勝していたはずだ。

 そのエリアがさらに実力を上げて勇者の前に立ちはだかっている。

 この状況はこの男勇者にとってかなりの危機感を抱かせた。


「そこ、まだ甘いですよ?」


「くっ!?」


 エリアはどんどん動きが鈍くなっていく勇者に対して容赦のない攻撃をかましていった。それは確実に勇者の体を傷つけていきダメージを与える。

 この勇者と戦ったヘルの情報によればこの勇者が扱える消滅結界という技も他の勇者が持っている能力と同じ様にかなりの魔力を消費する技のようで連発は出来ないらしい。

 体の一部分にその力を纏わせることでエリアの攻撃を強制的に終了させてくるときもあるが、なにせエリアの実力自体が飛びぬけているためそれもろくに発動できないのだ。

 すると大きな隙が勇者に現れたのを確認したエリアは右足を勇者の鳩尾に叩き込んで大きく距離を取ると自分の魔力を左手に集め、さらに上位の魔法を放っていく。


六魔の光彩線(ラインエフェクト)!」


 その魔法はエリアの腕から放たれた瞬間、空を覆いつくすかと思われるほど大量の光に分解され、細い糸のようなものが無数に勇者に向かって放たれる。

 これもまたエリアのオリジナル魔法で先程と同じように六属性全ての力が宿っている魔法だ。本来魔法というものは消費魔力も大きい上に威力も絶大なので使用する機会は滅多にない。しかしこのような戦場では破格の威力を発揮するために重宝されるのだが、その中でも魔法は複数の属性が重ねられるほど強力な現象が起きると言われている。

 つまりエリアの魔法は魔法の中ではトップクラスの威力を叩きだすのだ。当然ハクやアリエスのように持っている魔力自体が破格であるとその条件は適用されない場合があるが、六属性全てを操ることができるエリアの魔法は間違いなく最強の魔法なのである。

 しかしその攻撃はまたしても勇者の消滅結界によって阻まれてしまう。


「し、消滅結界!!!」


 とはいうもののやはりかなりのその体には疲労が溜まってきており、反撃する力もないのかその場で膝をつくような形で蹲ってしまった。


(どうやら潮時ですね。何か仕掛けてくる可能性もあるので慎重に行動しますが、それでも大方勝負は決まりました)


 エリアはそう考えるとゆっくりとその勇者の下に歩き出し、剣に六色の魔力を宿らせ接近していく。

 その隣ではまだアリエスもルルンも戦闘を続けており、苦戦はしていないように見えるもののそれなりの力を使って戦っているようだ。

 そのまま勇者のすぐ近くに近づいたエリアはその剣を大きく振りかぶりながら勇者に対して声をかけていく。


「終わりです。エルヴィニアでは私たちが一方的に押されていましたが今回は違ったようですね」


 するとその勇者は今にも切られて死にそうな状況にあるというのに、不意に声を上げて笑い出した。


「ふ、ふ、ふはははははははははは!!!」


「何がおかしいのです?」


「何が?ふふ、それは当然………」


 勇者は一度言葉をそこで切ると、ふらっとその場から立ち上がり勢いよくエリアの顔を睨みつける。


「お前が俺に勝ったと思い込んでいることだよ!」


 その言葉が発せられた瞬間、エリアの頭上から熱気すら感じ取れそうな巨大な光線が音を立てて降り注いだ。


「ッ!?」


 それは触れたものを一瞬にして溶かしてしまうような威力を持っており、突き刺さった地面は半径十メートルほどが消滅してしまっている。

 咄嗟に後方にジャンプしたエリアは何とかその攻撃を避けることが出来たが、一瞬でも遅れていたら確実に体ごと消し飛んでいただろう。


「…………。危ない技を使いますね。それも消滅結界とやらの応用ですか?」


「その通りだ。別に相手の力を打ち消すことだけが消滅じゃない。それを攻撃としてベクトルを変換することによって、絶対的な破壊を呼び込む攻撃に変えられるのだ。まだまだ戦いは終わらせんぞ!」


 エリアは息を切らしながらもそう呟いてくる勇者を眺めながら大きくため息を吐きだし、その言葉に返答する。


「粋がるのもいい加減にしなさい。あなたの残された魔力を考えてもその攻撃を放てるのはおそらくあと一回でしょう?なら、私の最強の魔法を打ち込んでその力もろとも吹き飛ばしてさしあげます!」


 その言葉を大きな声で吐き出したエリアは長剣を腰の鞘に納め、そのまま両手を勇者に向けると魔武道祭で使用したこともある自身の持つ最強の魔法を発動していく。

 それは大地を揺らすように暴力的な魔力であったが、なぜか自然に調和するような波長も持ち合わせており音もたてずに現象が練りあがっていった。


「これで終わりです。六魔の全能奔流(フルバースト)!!!」


 そしてそのエリアの動きに呼応するように勇者もまた自身の残された魔力を全て使い消滅結界を発動する。


「くらえ、消滅結界!!!」


 両者は眩い光を放ちながら二人を視点とする円の中心でぶつかりあい、爆音と爆風を同時に発生させ、超常的な光景を作り出した。

 六色に光る魔法と、神の光と言っても過言ではない白の輝きが激突し拮抗しながらしのぎを削る。

 だがそれもものの数秒と持たずに決壊した。


「な!?ば、馬鹿な!?俺の力が押されているだと!?」


「あなたがどう考えたのかはわかりませんが、そもそも魔力切れ寸前のあなたとフルパワーを出せる私では実力差がありすぎます。それを理解し、私の魔法に焼かれてください」


 その瞬間、勇者が放っていた消滅結界が完全に破壊され、エリアの魔法が勇者の体に突き刺さった。


「があああああああああああああああああああああああああああ!?」


 さすがにエリアも殺すことはせずに急所を外して魔法を放ったのだが、その勇者の体は血だらけで息をすることすら辛そうな表情をしている。

 エリアはそんな光景を目に焼き付けると全身の力を抜いて息を整えた。


「ふう、これでひとまずは終わりですね。エルヴィニアでの借りも返せたことですし、気分的には気持ちがいいです」


 すると完全敗北したはずの勇者の体が、いきなり光り始めそのまま体を薄くしていくと空気に溶け込むかのようにしてその姿を消した。


「…………転移、というわけでもなさそうですね。気配も完全に消滅しましたし、帝国内にもいなさそうです。どうやら、本当に消えたみたいですね」


 エリアはその現象の真相を理解することは出来なかったものの、勇者が消えたことに満足し、他のメンバーの戦いに目を向けていったのだった。


次回はルルンがメインとなります!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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