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第二百七十三話 集結、三

今回は久々にSSSランク冒険者が全員集まります!

では第二百七十三話です!

「へえ、天下の朱の神さんはパーティー全員でご登場ってか。気合入ってるじゃねえか」


 俺たちが若干遅れ気味で転移を使い冒険者ギルド、つまりギルド本部へ当直すると既にそこには俺以外のSSSランク冒険者が全員揃っていた。特段イロアは他のSSSランク冒険者がいるとは言っていなかったはずだが、どうやらこのタイミングでその全員を招集したらしい。

 で、今俺たちパーティーに声をかけてきたのはSSSランク冒険者序列四位のザッハーだ。相変わらず態度は変わっていないようで足を交差させながらテーブルの上に投げ出している。


「お前らだってわざわざご丁寧に全員集合とか、自由奔放なSSSランク冒険者とは思えないぞ?」


 俺はそう言いながら一つだけ開けられている席に腰を下ろした。用意されていた場所はギルド内でもかなり奥まった場所でなかなか人目もあまり向けられないところのようだ。

ちなみにアリエスたちの座る席は設けられてなかったので俺がその席に着いた瞬間、キラを先頭にギルド文部内を見学している。一応何度か来たことのある場所だがここは世界最大の冒険者ギルドなだけあって、常に変化し続けている。掲示板であったり冒険者の顔、さらには魔物の精算所といった部分が代表的だろう。ゆえにアリエスたちは物珍しそうな顔をしながらしばらく席を外している。


「それはそれだけ事態が緊迫しているということだよ、ハク君」


 対して俺の声尾に応えてきたのは序列第一位のジュナスだ。

 こちらも変わらずむかつくほどのイケメンである。さらに以前会った時よりも若干雰囲気が変わっておりどこか強者の匂いを漂わせていた。


「わかってる。で、一応シルヴィニクス王国騎士団長も連れてきたが問題はないんだろう?」


「ああ、それはむしろ喜ばしいことだ。椅子はそこにあるのを使えばいい」


 イロアはそう言うと自分の隣にある机から椅子を一つ引き抜いてシーナを座らせた。シーナは勧められた席に腰を落ち着けるとそのまま軽く頭を下げながら挨拶を交わす。


「私以外の面々は皆知り合いのようなので、私だけ少し自己紹介をさせてもらう。シルヴィニクス王国近衛隊騎士団長シーナ=ガイルだ。イロアやハク君とは少し面識がある。よろしく」


 その言葉にSSSランク冒険者たちは首を少しだけ下げるような形で頷くと、以前と変わらないようにイロアが話し合いを進めていく。


「ここに集まってもらったのは言うまでもないと思うが、これから開戦されるオナミス帝国との戦争についてだ。一応皆には一通りの説明はしてあるが、また新たな情報を入手した者もいるだろう。できればシーナも含めて情報交換をしておきたい」


 今までの俺たちは主要な都市を帝国から守る形で監視してきた。俺であれば学園王国、イロアならば獣国ジェレラートといった具合だ。

それに人によってはパーティーや部下を持っている場合がある。その者たちが集めた情報というのも貴重になってくるはずだ。


「んじゃ、初めは私から行くよー」


 するとそのイロアの言葉に相も変わらず果物を頬張っている序列五位のイナアが声を上げた。イナアはシルヴィニクス王国が担当で獣国に移動する際に一度報告は聞いている。つまりそれから何か新しい情報があれば話してくるだろう。


「私のところは特に問題なかったかな。帝国の兵がやってくることもなかったし、そもそも帝国の名前すら聞こえなかったよ。ただ強いて言うなら、魔物の動きがちょっと変だったかな?」


「魔物だぁ?」


 イナアの言葉にザッハーは明らかに信じていないような反応を示す。


「うん。なんて言うかちょっとだけ怯えてるような感じだったよ。シルヴィニクス王国周辺の魔物はそうでもなかったけど、帝国付近に住んでいる魔物がたまたま王国にやってきた姿を見たんだけど相当疲弊してた」


 疲弊ね………。

 俺はその光景を実際に目撃したわけではないので何とも言えないが、この能天気なイナアがそこまで言うのならかなり目に見えて変化が見て取れたということだろう。

 魔物は基本的にそこまで知能レベルは高くない。もちろんクビロのように土地神クラスまでいけば話は変わるのだが、普通の魔物であれば生存本能のままに生きていると言っても過言ではないだろう。ゆえに人里に侵入するし人間だって襲う。

 だがその魔物が精神的に疲弊するという事態は正直言ってかなりおかしな事態だ。それこそ圧倒的な恐怖でも与えない限りそのようなことにはならないだろう。


「ふむ、それは興味深い話だね。イロア、君はどう思う?」


「今は何とも言えないな。それが果たして帝国の影響なのか、はたまたまったく別の要因なのか。現段階での判断は難しい」


 ジュナスの問いに対してイロアはそう呟くと、イナアに向けて視線を流す。するとイナアはそれに気が付いたようで大きな声で返答を返した。


「私からは以上だよ。まあ私のところはそんなに変わったことはなかったって感じかなー」


 その言葉が空気を伝わり音として消えていくと、そのタイミングを見計らうかのようにザッハーが声を発する。


「なら次は俺だな。俺は知っていると思うがエルヴィニア秘境の守護を務めていた。はっきり言って俺自身はその場所から動いてねえから何の情報もないんだが、部下が面白そうな話を持ってきたんだ」


「というと?」


 ジュナスがそう聞き返すとザッハーは待ってましたと言わんばかりに両手を開きながら饒舌に口を動かしていく。


「奴ら、何でも洞窟や第一、第二ダンジョン内に潜って魔石の採集をしているらしいぜ。聞くところによれば、第一ダンジョンの中にある巨大な魔石もほぼ全てなくなっているそうだ」


「なに!?」


 俺はその言葉に対して大きな反応を示した。

 魔石というのは文字通り魔力が宿った功績だ。それは魔力回復薬や魔剣、さらには魔術や魔法の発動補助道具として使われる。そのためその価値はかなり高くそう簡単には手に入らないことで有名だ。

 だが危険地帯であるダンジョンや洞窟内というのはまだ未知のエリアが多く取りつくされてない場合がある。つまりはその魔石を帝国は狙ったということだろう。

 第三、第四、第五ダンジョンはそもそも一般人が入れないような仕組みが出来上がっている。第三ダンジョンは秘境の中にあり門番が付いており第四ダンジョンはシンフォガリア学園が管理している。また第五ダンジョンは数多くの危険な情報とその場所の秘匿性が高いため見つけることすらできない。

 よって魔石採集の標的となったのは第一、第二ダンジョンということだろう。

 まして今回はその第一ダンジョン内にある神核が力の源としていた巨大な魔石まで取られてしまった。そこまでするということ自体何か企んでいるに違いないだろう。


「へー、あの魔石を撤去しちゃうなんてそれはまた思い切ったことをするね、帝国も」


「とはいえあの魔石は膨大な力を保有していたはずだ。それを使用しなければならないということは、それ相応の何かを仕掛けてくるということか」


 イナアに続いてイロアが見解を述べていく。


「まあ、そういうことだ。俺はあんな秘境にいたからそこまでの情報はもってねえ。だから語れるのはこれくらいだな」


 ザッハーはそう言うとそのまま足を下に降ろし、丁度横を通りかかったギルドスタッフに対して酒を注文している。

 昼間から酒というのはあまり褒められたものではないが、人の生活習慣に口を出すわけにはいかないので黙っておく。

 ましてこいつの場合、口を開けば暴言しか出てきそうにないしな………。


「では次は順番的にハク君だね、よろしく頼むよ」


 俺はジュナスにそう言われ我に返ると今魔dネオ記憶を辿るように話を続けていく。


「俺は学園王国を担当していたが諸事情あって獣国に移動していた。とはいえ使い魔もしっかり置いていったし観察は滞りない。おそらく俺の情報の大半は既にイロアから聞いているだろうからその説明は省く。で、新たな情報というわけでもないが俺の使い魔が収集したものを今から話す」


「ああ、ではさっそく教えてくれ」


 シーナの隣に座っているイロアは俺に対して向き直ると依然真剣な表情のままそう呟いてきた。


「学園王国の周りは特に異常なし。帝国兵の姿もおかしな動きもなかったみたいだ。ちなみにその使い魔は索敵範囲が広いゆえに帝国周辺の動きも見ていたらしいが、そこでも魔力の揺れはないし、新たに勇者を召喚した痕跡もないらしい。ゆえに俺はまったく動きがないというのはおかしいと思っていたのだが」


「学園王国周辺以外で動いてたってわけか」


 俺はザッハーが返してきた言葉に頷く。

 イナアとザッハーの話を聞けば上手く俺たちに悟らせないように帝国は動いているように見える。当然帝国から一番近い学園王国の近くでは極力変な動きは見せず、自国の周辺でも魔術や魔法の類は発動していない。

 だがそれでも帝国は着々と準備を進めていたということだ。


「そうすると帝国は私たちの動きを読んでいるということになるのか?」


 イロアは若干汗を滲ませながら俺にそう問いかけてくる。

 確かにそう考えることも可能だ。星神が絡んでいる以上、全ての動向を見渡せるあいつにとって俺たちの動きを帝国に伝えることも簡単に出来るはずだ。

 しかし今までの星神の行動を考えるとそんな面倒くさいことをやるのか?という疑問を同時に出てきてしまう。なにせ俺を殺すのに自分は姿を現さず神核を駒として使ってくるような奴だ。帝国に勇者召喚の方法を教えても俺たちの細かい動向まで押しているとは到底考えられない。

 であれば帝国自らが俺たちの動きを監視している線もあるが。


「いやそれはないだろう。僕もそれなりに気を配っていたけれど索敵用の魔術魔法の類は観測できなかった。それこそハク君並みの規格外な存在がいなければそれは不可能な話だよ」


 お、おう……。

 そこまですっぱり規格外と呼ばれてしまうとなかなか反応に困るな……。もはや俺はこいつらの目に化け物としてしか映っていないのかもしれない。


「ということはたまたま我々の動きと重ならなかったということか?」


「まあそうだろうね。そもそも僕たちの目的は情報収集ではなく都市の保護だ。一点に留まっている以上、鉢合わせるほうが珍しいだろう」


 ジュナスは落ち着いた声でそう呟くとイロアを納得させ、話をさらに進める。


「よし、次はイロア、君の報告だ」


 まだ俺の報告に言いたいことがありそうな顔をしていたイロアはその言葉に対してすぐに表情を引き締めると、ジュナスに頷きを返して口を動かし始める。


「では私の報告に移ろう」


 そしてイロアが報告を開始し、まだこの話し合いは続いていくのだった。


次回もこの話し合いは続きます!

誤字、脱字がありましたらお教えください!


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