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第二百七十二話 集結、二

今回はシーナがメインとなります!

では第二百七十二話です!

「いや、本当にすまない。私もまさかこんなことになるとは思ってなかったんだ」


 俺たちは最終的にシーナの要求を飲み込み自分たちのスイートルームの中に招き入れた。荷物は後で王城に取りに行くらしい。

 さすがにスイートルームと言っても九人分の部屋はなく、八つの部屋しかなかったためキラが俺に部屋に移動する形で落ち着いた。はっきり言ってそれも大問題なのだがキラは何と言っても全体に俺の部屋に侵入してくるので、もはや諦めている。

 一番すごかったときには俺が青天膜を張って寝ているにも関わらず根源をぶっぱなしそれを打ち砕いて侵入してくるのだ。そんな危険な存在を足止めできるはずがない。

 というわけでキラが使う予定だった部屋にシーナが入りひとまずは落ち着いたのだ。


「まあ、多分お前にも色々事情があるんだろうけど一応説明してもらうぞ」


「ああ、というのも単純に今回の遠征に私以外の女性が一人もいないのだ。遠征のメンバー表を見たときは愕然としたさ。まして王城に割り当てられている部屋も仕切り一枚だけで男の部下と同じ部屋だし、さすがに私でもあれは耐えられない」


 ああ、そ、それは災難でしたね………。

 シーナは俺の目から見ても騎士団長とは思えないほど綺麗な容姿をしている。かりに上司だとしても襲われない可能性もゼロとは言えない。

 まあ仮にそうなったとしても一瞬でシーナに殺されそうだが。

 男の俺は特に部屋に着いたからと言ってやることはなく、リビングでシーナの話を聞いているがアリエスたち女性陣は何やら服の整理や準備があるとかなんとか言って部屋に籠っている。俺と同じくまったくそういうものに興味のないキラはふわふわと空中を浮きながら居眠りをしていた。


「そういうことなら別に気にしなくていい。存分に泊っていけ。どうせ料金も普通の値段だし、一人増えたところで大した差じゃないさ」


「そう言ってくれると助かる。………で、今回の遠征の件だが」


「ああ、どこまで聞いている?」


 ここでようやくシーナの口から今回の戦争の話がこぼれ始める。シーナとは先日シルヴィニクス王国国王の推薦状を取りに行ったときに顔を合わせているが、そのときはこのような話題は上がらなかった。ということはシーナも俺たちと同じくらいのタイミングでこの情報を知ったということになる。


「残り二週間で開戦されるということぐらいしか私には伝わっていない。まあこれもイロアから聞いたことだがな。陛下からは帝国を打ち倒すようにとしか聞かされていないのだ」


 それはまた何とも不親切だな。

 おそらくあの国王のことだから俺やイロアが全て話すだろうとでも思っているのだろうが、せめて自分の部下ぐらいには話しておけよと思ってしまう。


「今回の戦いはおそらく前に学園王国で行われたような小規模の戦争ではなく全面戦争になるはずだ。勇者も出てくるし、それを超える奴も一人確認されている」


「そ、それは君でも倒すのは難しいのか?」


 俺が言っているのはアリスのことだ。あいつとの実力差ははっきり言って、俺のほうが完全に勝っている。だが俺という妃の器が行動を縛ってくる以上その叩きの結末はまだ予想できない。


「さあな。ただ簡単ではないというところだ。下手をすれば死ぬことだって視野にいれなければならない。それだけの相手だ」


「…………なるほど。であればこれだけの戦力が集められているのも納得できるな」


「お前はイロアと知り合いみたいだが、そのイロアを含めて今この国にはどれだけの戦力が集まっているんだ?」


 気配探知である程度強力な気配を持っている連中の存在は把握しているが、それでも細かい部分には探りを入れていない。ゆえに確認しておきたいことなのだ。


「そうだな、まずはSSSランク冒険者は君を含めて全員が集結している。イロアも君の少し前に入国したよ。私とイロアは前に何度か任務で仕事をしたことがあってそこで知り合ったんだ。で、残りだが言うまでもなくシルヴィニクス王国と学園王国の騎士団、それと隣国の兵士たち。後は冒険者くらいだな。数的に五万は集まっている。まあその半分が冒険者であるがゆえに先程のような事態をまねているのだがな」


 五万か………。

 多いとも言えないし少ないとも言えない数字だな。

 この世界の総人口は俺にはわからないが元の世界ほど多くはないはずだ。それを考えると竜人族や天翼族、さらには獣人族といった比較的珍しい種族が参戦していない今、むしろ五万も集まったというのはいい方なのかもしれない。


「そいつらの準備はもう整っているのか?」


「まあ王国から遣わされている私たちは問題ないが、冒険者はまだ統率がとれていないのが現状だ。SSSランク冒険者の第一位であるジュナスもあまり表に立つような人間ではないし、イロアが到着したのも今日の早朝だ。イロアが先導しない限りまとまってはくれないだろう」


 このあたりが冒険者の性質を良く表している部分かもしれない。基本的に国の政治にさえ囚われない冒険者はその動きを制限するものがない。当然犯罪を犯せば法に罰せられるのだが、それ以外であれば自由の身だ。それがギルドの招集とはいえこうも大量に集まってしまうと、統率を取るもの一苦労だろう。

 かといってシラとシルに頼んで統制の檻を使用するわけにもいかない。あくまで冒険者は自主的に戦いに参加している。そこに強制力を働かせるような力を持ち込めばそれこそ内部崩壊を起こしかねないのだ。

 冒険者はこのような非常事態には積極的に動かなければいけない決まりがある。とはいえそれは上位ランクを持つ者に適応されることが多く下位ランカーにはあまり関係のない話なのだ。しかし今回はどうやらほんとの特例らしく世の中にいる殆どの冒険者が集結しているらしい。


「ならとりあえずはイロアに会うしかないか」


「まあそういうことになるな。おそらく各陣営の首脳陣を集めて会合も開かれるだろう。一応だが国を代表して出てきている者たちもいる。軽率な行動はできない」


 今から開戦されようとしている戦はオナミス帝国を潰す戦闘だ。当然戦場は国外の荒野のような場所で繰り広げると思うが、その対象である皇帝を打ち取らなければ戦いは終わらない。そして協力してくる国々たちはみんなこぞってそのラストアタックという栄光をつかみ取りたいはずだ。

 特に学園王国とシルヴィニクス王国以外の国々はそれを武器にもっと国土を広げたいと思っていてもおかしくはない。

 今結成された舞台は決して同盟ではない。たまたま利害が一致しただけの寄せ集めだ。ゆえに裏切る可能性もあるし反撃してくる場合だってあるだろう。つまり、この準備期間の間からその動向には目を配らせておく必要があるということだ。


「その会合はいつ開かれるか決まったのか?」


「いや、それはまだだ。何度も言うように皆イロアの到着を待っていたのだ。ゆえに具体的なことはまだ何も決まっていない」


「そうか」


 俺はイロアの言葉に頷くと、先程から宿の屋根の上にチラついている気配を感じ取ると、そいつらに対して言葉を投げつけた。


「おい、お前らも何か報告があるなら早く言ってこい。今は少しでも情報がほしいんだ」


 するとそんな俺の言葉に反応するように屋根を通過してこの学園王国の見張りを指せていた二人が俺たちの前に姿を現した。


「まったく人使いが荒いわねえー。どんどんオリジナルの神妃に似てきたわ」


「でもこれも今の神妃さんのいいところだと思いますぅ!やっぱり私たちの上に立つ人は強くないとぉ」


「な、なんだ!?彼女たちは!?」


 いきなりの登場でシーナは目を丸くしながらその二人の姿を見つめている。

 ああ、そういえばシーナはこいつらの姿を見るのは初めてか。なら紹介しておくのも悪くないかもしれない。


「まあ使い魔みたいなものだ。俺がこの学園王国にいない間、この国を見張ってもらってたってところだな。フレイヤとパンドラ。ああ、小さいほうがパンドラな」


「小さいは余計ですよぅ!神妃さん!」


「そ、そう、なのか?ま、まあ今さら君のやることに驚きはしないが、なんというか、その可愛いな……」


 シーナはパーティーメンバーと同じようにパンドラに対して目を光らせると若干顔を赤くして目を細めている。

 うーん、どうしてパンドラばっかりこうも人気なのかねえ。一応フレイヤも美の女神として存在していたはずなんだけど……。


「一応は余計よ。ちゃんと私は美しいの!あなた達に見る目がないだけだわ」


 あ、やっべ、心の声漏れてたか。

 俺は慌てて口を閉ざすと、慎重に口を動かしフレイヤたちに俺たちが学園王国を離れていたときの状況を報告してもらう。


「で、何か変わったところはなかったか?」


「特に何も。魔力の乱れもないし、新たに召喚陣が作られた形跡も感じられない。強いて言えば帝国のあたりで人の動きが活発になったぐらいかしら」


「それもおそらくこの戦争のためですぅ。やたらと鉱山や洞窟といった場所に出入りしていたみたいなのでぇ」


「そ、そんなことまでわかるのか……」


 シーナはその二人の発言に感激しながら目を輝かせているが、俺はまったく逆の反応を示していた。

 確かに物資の動きは納得できる。武器を作るのにも鉄は必要だし、魔力回復薬の下となっている魔石は洞窟の暗い場所でしか生成されない。ゆえにその行動は全て意味のあることだろう。

 しかしそれだけでいいのか?

 間違いなくこちら側が来るときに向けて準備をしているのは気が付いているはずだ。それなのに新たな勇者を召喚するわけでもなく、魔術を設置してくるわけでもないとなるとさすがに不気味に感じてしまう。

 罠か?いや、そう考えさせること自体が罠なのか?

 それともそんなことをしなくても勝つ自信があるのか?

 何にしても今の段階ではまだ情報不足だ。まだ開戦まで二週間もある。この間に動きを見せてくるかもしれない。

 俺はそのままフレイヤとパンドラを今までと同じように監視につくように命令し立ち去らせると、再びシーナに向き直って会話を再開しようした。

 だがここで不意に念話が脳内に流れ込んでくる。


『ハク君、イロアだ。聞こえるか?聞こえたら返事をしてくれ』


「ああ、聞こえているぞ。どうした?」


『君もこの街に着いたのだろう?ならばさっそく会って話がしたのだが』


「了解だ。場所は前みたいにギルドでいいな?丁度シーナもいるから一緒に連れて行く」


『シーナ?………ああ、騎士団長か。いいだろう、彼女なら私も信用して話すことができる』


「まあ、お前らってかなり似てるもんな」


「『そうか?』」


 俺がそう冗談混じりにそう答えると二人同時に真剣な表情で返答してくる。

 あ、いや、そんな真面目に返されても逆に俺が困るんですけど………。


『まあ、それはさておき今から三十分後にギルドで落ち合おう。詳しい話はまたそこで』


 イロアはそう言うと風の速さで念話を切りあげた。念話はその性質上盗聴されるおそれもあるのであまり長く話したくなかったのかもしれない。

 俺とシーナはその念話が終了するとえらく時間がかかっているアリエスたちの準備が終わるまで、他愛もない世間話に花を咲かせるのだった。

 ちなみにアリエスたちの準備はその後も続きイロアとの待ち合わせにギリギリになったというのは言うまでもない。


次回は久しぶりのSSランク冒険者全員集合になります!

誤字、脱字がありましたらお教えください!


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