第二百六十二話 ありえない再会、三
今回はハクとアリスの戦いがメインとなります!
では第二百六十二話です!
『今回は特別じゃ。主様と私の力も神宝も使わせてやる。今の主様では動揺しすぎて、おそらく殺されてしまうじゃろう。ゆえにお前を表に出した。その意味を理解して戦うがよい』
「ふん、お前も気に入らねえがあのクソ女はもっと気にいらねえ。ありがたく使わせてもらうぜ」
今回リアはハクが通常の精神状態で戦うことが出来ないと判断し、無理矢理ハクの中に眠っているもう一人のハクを呼び出したのだ。本来、そのハクは気配殺しの力しか振るうことが出来ないがリアが今回に限って神妃の力を使用させることを許した。
つまりはそうせざるを得ない相手であるということだ、このアリスという少女の強さは。
「へえ、あなたとは初めて会うかな?」
アリスが明らかに雰囲気が変わったハクを見てそう呟く。
「馬鹿が。十三年前に一度会ってるだろうが。あれのせいで俺がどんだけ苦しみを背負ったと思っていやがる」
「ふふふ、確かにそうだったね。それじゃあ、あなたとも久しぶりの再会というわけだ」
「だったら、どうする?」
「当然、殺すよ?」
アリスはそう呟くと目で捉えることのできないスピードでハクに接近し二妃の力で作り出した青い光の剣をハクに目掛けて振るってくる。それは風すらも両断するような力とスピードでたとえSSSランク冒険者であっても一撃で仕留められてしまうであろう攻撃だった。
しかしハクは一歩も動かず、左手に握られていた絶離剣をその剣に向けて触れさせた。
「ほう、確かになかなかの強さだな。剣線はおろか気配すら遮断して近づいてくるとは、星神とやらも面倒なものを復活させてくれたものだ」
「あなたこそ、さっきまでのハクとは全然違うね。本当に殺すことだけが得意みたいな感じがする」
ハクはその後、絶離剣の力でその剣を叩き折るとそのままアリスの体を切り刻むように剣を振るっていく。それは本来ならば避けることすら不可能なほど素早い連撃だったのだが、アリスは涼しい顔で回避してしまった。
(チッ!さすがにこの器が動きを鈍らせてくるか………。まだ余裕があるが、それでもおそらく殺すことは出来ない。殺せるだけの力があるのに殺せないっていうのは面倒だな)
元のハクがアリスを気配殺しで殺すことができたのは、神妃の権限とアリスの承諾があったからだ。今表層に出てきているハクは神妃の力が使えるといっても普段から使っているわけではないので扱いきれていない。ましてアリスの許可などあるはずもない。ゆえに今のハクがどれだけ頑張ろうとアリスに傷を負わせることは出来ても命を奪うことは妃の器が阻止してしまうのだ。
(まあ、だからといってやり様がないわけではないがな)
ハクは先程から続いている神妃化の出力をさらに上昇させるとアリスと同レベルの速度で接近し、攻撃を仕掛ける。
しかしそれはアリスも同じようで再び光の剣を作り出すとそれをハクに向けて放ってくる。
そのぶつかり合いはたかが剣が触れただけなのに中央広場の地面を隆起させ爆風と轟音を響かせた。飛び散る瓦礫の破片は気絶しているアリエスたちに当たりそうになるが、それはハクが発動している気配殺しの力によって体に当たる前に消滅する。
気配殺しは何も生き物だけに有効な能力ではない。
世界にあるどんなものでもその存在を消去してしまえる力なのだ。ゆえに有機物だろうが無機物だろうが能力だろうが神だろうが殺せる。
今のハクが唯一完璧に使いこなせる能力であるため、ハクはそれをこの空間全てに使用していたのだ。
当然これほどまでの戦闘が巻き起これば獣国の住民たちが詰め寄ってきてしまう。しかしそれは元のハクの力を使うことが出来る今のハクの青天膜によって行く手を遮られるような形で中央広場から締め出されていた。
「そんな周りばかり気にしててもいいのかな?」
「あ?」
「いくらあなたでも使っているのはハクの体なんだから私を殺せないでしょ?」
「あいつの体じゃなくて、元は俺の体だ。間違うんじゃねえ!………にしても俺もなんとなくお前のことがわかってきたぜ。お前アリスであってアリスじゃないな?」
「ふふふ、それはノーコメントでいかせてもらかな」
その瞬間、アリスの動きはさらにスピードが上がり風の音だけが鳴り響き始める。
(また速くなったか。確かにこれは元の世界で見たアリスの強さじゃないな………)
「もらった」
するとハクの背後からいきなり声が聞こえたと思うと剣を構え勝利を確信したような顔を下アリスが迫ってきていた。
おそらくその剣には今まで以上の出力で二妃の力が宿っているのだろう。今のハクでもその危険性は見た瞬間理解できた。
だが。
「そんな程度で俺を倒せると思わないことだな」
「な!?」
ハクはその剣を空いている右手でつかみ取ると、そのまま手のひらに力を入れ握りつぶした。
「確かに俺は神妃の力をあいつみたいに存分に使うことは出来ないが、気配殺しの一点だけは別だ。ある程度出力を調整して自分の防御に回すことだってできるんだぜ?」
気配殺しは本来ならば何かを殺すことに特化した能力だ。しかしハクはその威力を調整し、自らの体を覆うように張り巡らせるように展開しアリスの剣を受け止めたのだ。
「やっぱりあなたは厄介ね。でもそれがまた楽しいかな」
「命の取り合いで楽しいなんて、お前は俺かよ」
「ふふふ、そうかもね。だって私たちは十三年前一緒に公園で遊んだ仲だもの。性格だって似るかもしれないよ?」
「ぬかせ。誰が好き好んでお前みたいなクソ女と同じ性格になるか。いい加減その口閉じねえと本気でその体叩き折るぞ?」
「また面白い冗談だね。でもそんな威勢のいい言葉それでも言えるかな?」
アリスはそう呟くと青く輝く空に向けて右手を伸ばすと、二妃の力を身に纏わせ発動の文言を唱えた。
「姫の哄笑」
それは上空に大量の光球を作り出し、色々な色に輝き始めるとこの中央広場全てを破壊するかのように降り注いできた。
「チッ!今度はアリエスたちが狙いか。つくづく汚ねえことをしやがる」
このままでは青天膜に守られている野次馬たちはまだしも広場内で気を失っているアリエスたちはその巻き添えをくらってしまう。さすがに気配殺しといえど広範囲に使用しているためこの攻撃の威力までは殺しきれない。ということは必然的にハクはアリエスたちを守りに入らなければならなくなる。
つまりアリスはそれを理解してこの攻撃を選択したのだ。
「どうかな、この攻撃は?私を攻撃するのもいいけど、そうしたら大切な仲間のみんなは一瞬ではじけ飛んじゃうよ?」
今のアリスはかつての十二階神を遥かに凌駕する力を身に着け、全力のキラにも匹敵する強さを持っている。
そんな攻撃が無防備なアリエスたちに当てられようものなら命すら吹き飛ばしてしまうだろう。
「まあ、俺はお前よりアリエスたちの方が好感は持てる。つまり当然お前の思惑通り仲間を守るわけだが……」
ハクはそう言うと右手を差し出し中指と親指をくっつけるようにして勢いよくはじくと、そのタイミングと同時にアリスの力に向けて自分の力をぶつけた。
刹那、それは見事にアリスの光球を破壊し攻撃が放たれる前に全ての力を粉砕した。
「…………何をしたの?」
「お前はあいつが使う気配殺ししか見たことがねえからそういう反応をするんだよ。気配殺しっていうのはこのクソ神妃ですら再現不可能な力だ。その能力が高々二妃の力を打ち砕けないと思うなよ?」
ハクが今やったことはかつてエルヴィニア秘境にてエルフたちを拘束していた鎖を破壊した時に使用したものだ。
つまり気配殺しは特段その物体に触れずとも空間を伝わるようにして発動できる。そしてアリスの記憶にある気配殺しの出力など、今のハクは簡単に凌駕出来るということなのだ。
するとアリスはここで初めて面白くなさそうな顔をすると一度力を収め徐に話し始めた。
「ねえ、ハク。私は確かにオルナミリス様に復活させてもらったけど、別にあなたを殺したいわけじゃないのよ」
「はあ?さっき手始めに殺すとか言ったの誰だよ?」
「それは久しぶりの再会で漏れた照れ隠しよ。私たちは真話大戦で血にまみれて戦った仲だし、あれくらいのブラックジョークは当たり前でしょ?」
「………で、何が言いたい?」
「だから、私もあなたのパーティーに入れてくれると嬉しいな。異世界での旅なんて面白そうだし、一度やってみたかったの!」
アリスはそう言うと軽そうな足取りでハクの下へ駆けよっていく。その顔は完全にかつてのアリスのものに戻っており、眩しいくらいの笑顔が浮かんでいた。
「ねえ、いいでしょ?私たちはそういう関係じゃない?」
「………ま、まあ確かに殺してしまったお前ともう一度話してみたいと思っていたのは事実だ」
「でしょでしょだったら、さっそく……」
「とでも言うと思ったかクソ女」
その瞬間、ハクは腕に張り付いていたアリスを剥がし、その鳩尾に拳を叩きこんだ。妃の器が必死にそれを邪魔しようとするがそれでもその動きは止まらなかった。
「ガハッ!?」
アリスはそのまま物凄いスピードで地面を転がりながら吹き飛ばされてしまう。
「一応言っておくと今の言葉は嘘じゃないぞ?俺じゃないが甘ちゃんのあいつは本気でそう思っているらしいからな。まあそれもお前が本当のアリスだったらの話だが。そもそも殺し合いで挨拶してくるパーティーメンバーなんて俺でも願い下げだ。そのくだらねぇ芝居はいいから戦いの続きをやるのか、そうじゃないのか早々に決めたらどうだ?」
「ぐっ………。いいよ、そんなに死にたいならさっさと殺してあげる。もう少し遊んでもいいかなって思ってたけど、あなたに隙を見せたら危なそうだし」
「賢明な判断だが、俺はそう簡単に殺せないぞ?仮にも神妃が宿っている体だ。生半可な攻撃じゃすぐに再生する」
「わかってるよ、そんなこと。でも私だって対策くらい考えてある」
するとアリスは再び二妃の力を放出すると、それを使いいくつもの剣を作り出すとその剣に赤色のオーラを纏わせていく。
それはハクが気配創造で刃を作るときの光景に似ていたが、それよりも遥かに殺気と殺意が込められていた。
その剣たちは次第に赤黒い光を放っていき不気味な力を宿していく。
「ほう、絶離剣の再現ときたか。なかなか物騒なことをするじゃねえか」
「これなら、あなたがどれだけ強力な力で防ごうが私の攻撃は通る。神妃の体っていってもさすがにこれだけの攻撃を受けたらタダじゃすまないでしょ?」
アリスが展開している剣たちはハクが言ったように絶離剣と同じ防御不可の属性が付与された光剣だった。つまりオリジナルの絶離剣には敵わないが、レプリカであるアリエスの剣くらいの力を宿していることになる。
「いいだろう。だったら俺の気配殺しと力比べといこうじゃねえか」
「それじゃあ、行くよ?姫の絶笑!」
その瞬間、二妃の力と妃の器最強の能力がぶつかり、獣国全体を大きく揺らすのだった。
次回はハクとアリス戦いが決着を迎えます!
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