第二十五話 ハクの実力
神核との戦闘です!
ですがハクは無双します!でもまだ決着はつかないので安心してください!
今さら気づいたのですが小説評価の位置って最新話の最後にあるんですねwこれはなかなか発見できません!
評価、感想もお待ちしております!
では第二十五話です!
「本当に死なないのかよ……」
俺の前には、首をコキコキと鳴らしながら平然と立つ神核がいた。
先程俺が切り飛ばした体は既に再生しており、何もなかったかのように槍を振り回している。
「俺の不死性は如何なるものでも打ち破れない。大人しく殺されるがいい」
「……。さっきの冒険者たちは殺さなかったくせによく言うぜ。さてはお前、人類の守護者だから人を殺せないんじゃないのか?」
そう言って俺は変な冗談をぶっこんでみる。もちろんそんなはずはないのだが、少しからかって様子を見てみることにした。
「あれは俺の始末対象ではない。あれはあいつらが勝手に襲い掛かってきたから反撃しただけだ。まあ貴様は別だがな」
その瞬間、またもや神核の姿が消えた。
それは上空百メートル以上高く飛び上がり、右手の槍を打ちはなってきた。
「ぐっ!?」
俺は咄嗟に両手の二本の剣を交差させ、正面からその攻撃を受ける。槍は俺の剣たちに激突すると俺の腕にとてつもない衝撃を流し込んできた。既に奴の手から離れているのにその威力は落ちる気配がない。地面についている足が土にめり込み、隆起させる。それは爆風を巻き起こし、周囲にクレーターを作り上げた。
「ぐ、ぐぐぐ、…………う、うらぁぁぁ!!」
そして俺は全力で放たれた槍を弾き飛ばすと、転移で奴と同じ上空に立ち、左手の絶離剣レプリカを振り下ろす。
絶離剣レプリカであれば基本的にどんなものでも切り落とすことが出来る。だから俺はあえて奴の左手に残る槍の腹をめがけて、剣をたたきつけた。
しかし、それはキンッという音を立ててなにかに反発するようにはじかれた。
「な、なに!?」
神核は俺のその一瞬のスキに体をひねらせ、俺の顔に回し蹴りを放ってきた。当然俺は回避することができないので遥か下の地面に叩きつけられれる。
「ぐああああぁぁぁ!!!」
地面を揺らすほどの衝撃とともに俺は地面にめり込んだ。そこからなんとか立ち上がると奴がいたであろう上空に目を凝らす。
しかしそこには既に誰もいなかった。
ま、まずい!まさかもう……。
「余所見とは随分余裕だな」
奴は俺の背後に移動していた。その右手には先程はなった槍がもう握られており、その槍が俺の背中に突きつけられる。
俺は咄嗟に氷塊を形成し槍の軌道をずらし、なんとかその攻撃から逃れ体勢を立て直した。しかしまだ追撃は収まらない。
なぜ絶離剣がはじかれたのかわからないが、俺は二本の剣を振るい続ける。幾度も金属と金属がぶつかり合う音が響き、その一合一合が空気を裂き地面をえぐる。基本的に俺は二刀流スタイルではないのだが、相手が槍の二刀流なのでこちらが一本だけでは手数で押し負けてしまう。そのため無理やり二刀流で戦っているのだが、これがなかなか難しい。
やつのように無茶な動きを可能にする体であれば、自分の力にしたがって動くだけで最適な剣線を描き出すのだが、俺の体はあくまで人間だ。いくら神妃の力を行使できるとはいえ人間の限界を超える動きは出来ない。
そのため今の状態は確実に押されていた。
なんとか一太刀一太刀、はじき返しているがいずれは押されきってしまうだろう。しかもこいつには不死性という厄介極まりない能力が纏わりついている。
このままではまずいと判断した俺はクビロの時に使用した、あの能力を解放した。
「戦火の花!」
すると途端にあたり一面、極彩色の花が咲き乱れる。そしてその神気は神核を飲み込み生気を奪い取る。
「ほう、これが貴様の神格の力か。なかなかのものだが、これでは俺は倒せんぞ」
「んなこと、わかってるんだよ!」
そう言って俺はその花々にさらに能力を上掛けしていく。
「戦火の砂時計!」
戦火の砂時計。これも十二階神の序列十位の女神が使っていた能力で、自身の時間と相手の時間をコントロールする能力だ。この能力は戦火の花とあわせて使用することで、相手の生気の吸収時間を極端に早めることに使用する。
いくら不死性を持っていようと、命を削られる感覚は間違いなくあるはずだ。
俺はその瞬間を、狙う。
「ぬう!?こ、これは力が抜ける……。し、しかし俺の不死性の前ではいくらやっても無駄だ!」
そう、神核の持つ不死性とは、言うなれば無限に命という玉を持っているのと等しい。その玉には明確な命の期限があるのだが、その期限が切れれば直ぐにまた新たな玉がやってきて、死を呼び込むことはない。
しかし、それでもダメージや疲れは蓄積していくのではないかと俺は考えた。本来生気を吸い取られれば、それは体力そのものに直結しており直ぐに命を落とす。だが不死性を持つこいつはそれが繋がっておらず命が無限に溢れている。それはダメージや疲れがたまっていっても死ぬことはないと言うことであり、必ずしも満足に動けるとは限らない。
つまり俺は戦火の花と戦火の砂時計を同時使用することによって神核の命の貯蔵を削るスピードをあげ、精神的ダメージを増やしたのだ。
そしてそのスキに俺は攻撃を仕掛ける。
戦火の砂時計で、自分と奴の時間差を約二倍ほどつけ俺は手に持つ愛剣を猛スピードで振るう。それは荒れ狂う閃光のようで、神核の体を縦横無尽に切り裂き続けた。
「ぐああああああああ!?」
神核が苦悶の声を漏らす。
だが当然ダメージはあっても死ぬことはなく、つけた傷は瞬く間に再生し神核の体を維持させる。
俺はそれを上回るスピードで切り刻んでいく。左肩、右腕、わき腹、鳩尾、右足、手の甲、後頭部、頬。ありとあらゆる部位を剣先で貫いていく。その動きは永遠に止まることを知らず、地面に血の池を作り出していく。
これぞ、俺の剣技。
「黒の章」。
無限に放たれる剣の風は止まることを知らず、相手を地に伏せるまで輝き続ける。その動きは止めることは出来ず、放たれる斬撃は無限の雨と化す。
それが黒の章。
俺が使う技の中で比較的気に入っているものだ。これは基本的に相手が倒れるまで動き続け、時には空を蹴り、光に触れることで成される超高速剣技だ。
「悪いが、地の剣ではお前に勝てそうになかったから少し本気で行かせて貰うぞ!」
そのまま俺は奴の周りを駆け巡る。血が舞い、奴の叫びが木霊する。
「ぐ、ぐあああああ!!!き、貴様!このような、このようなことが許されると思うなーー!!!」
すると次の瞬間、神核は手に握っていた二本の槍で俺の剣をはじき返した。一応戦火の砂時計が聞いているはずだが、それを力技で跳ね除け、俺の剣の嵐から抜け出した。
轟音とともに、耳を劈くような無音の嵐が巻き起こる。
…………。
黒の章でも、効果なしか………。確かにダメージは通っているがそれでは根本的に奴を倒すことには繋がらない。
『むう、厄介じゃのう……。あれだけやっておいて、まだ生きておるとは。これは少々きついかもしれんな主様……』
『そうだな……。しかも何故だか知らないが、絶離剣レプリカが弾かれたし、本当にこいつはそこがしれない……』
「はぁ、はぁ、はぁ……。な、なるほど……。星神が注意を促してくるだけの実力は持っているらしいな……。……ふむ、なるほどなるほど。これは俺も本気を出すしかないようだ」
「本気だと?今まで十分本気そうだったじゃないか?何をほら吹いてんだ?」
俺はその確信があった。神核の額には大粒の汗が滲み、息を切らしている。そもそも奥の手があるのなら俺の黒の章をもっと早く抜け出して、体力が削られる前に俺に攻撃を仕掛けていただろうし、なにより、今までの戦いの経験がそう告げていた。
「フハハハ!まったくもって遺憾だが、その通りだ。もし俺に不死性がなかったなら一瞬にして俺は死んでいたことだろう。それくらいは認めてやる。現に俺は生気を吸われ続けているのだからな」
であればあの神核の余裕はなんなのだろうか?
この空間は戦火の花により封鎖されており、俺が解除しない限り奴はここから出ることは出来ない。それに奴が言ったように今も戦火の花により神核は体力をすわれ続けている。
奴にはこの状況を打破する作戦でもあると言うのだろうか?
「ならば、何故笑う?俺はやろうと思えば先程より強力な一撃をお前にお見舞いすることも出来るんだぞ?」
「だろうな。だからここは一旦引かせてもらうぞ。ここでは俺の力は存分に発揮できないからな」
「撤退だと?言っておくが俺はお前を逃がす気はないぞ。どういうつもりかは知らないがお前はここで終わりだ」
「ぬかせ!不死性がある限り、この場でも貴様に殺されはしないぞ。……だが俺は貴様に興味が湧いた。その圧倒的な神格をいなし、俺をも追い詰めるその力に。だから、ダンジョンに来い。俺はそこで待っている」
は?ダンジョンだと?
派手にダンジョンから出てきておきながら、今さら何をいっているんだこいつは?
「ダンジョンだと?俺はお前がダンジョンに戻るというのなら、お前を襲う気はない。悪いが、お前の遊びに付き合っている暇はない」
「……それは俺がこのまま人々を襲っても変わらんのか?俺であれば村の一つや二つぐらい一瞬で塵にできる。そうなりたくなければ貴様は俺に従うしかないはずだ」
こいつ!?
仮にも人類の守護者の癖に人々を傷つけるだと?
なにとち狂っているんだ!?
「人類の守護者とは思えない言葉だな。そんなにも俺を殺したいか?」
「無論だ。貴様の害は今の戦闘で嫌というほど思い知った。これほどの災厄を野放しにしているほうが人類には悪影響だ」
……。
こいつ本気で言っているのか?明らかに矛盾しているぞ?
俺を殺すために人類に手をかけ、俺がいれば人類は滅ぶ、と言う。それのどこに正当性が見られるだろうか?
これはリアが言っていた、命令や洗脳の可能性も出てきたな。こんなのが素の神核ならばとっくの昔に世界は崩壊していそうだ。
だが事の真相も気にはなるが、村の人たちを盾に取られては俺も引くことが出来ない。もちろんこの状態の神核ならば善戦はできるが、まったく被害を出さずに勝つことができるかと言うと、かなり難しいだろう。
「……。俺がダンジョンにいけば関係のない人達には手を出さないんだな?」
「ああ、俺を誰と心得る、人類の守護者神核だぞ?」
だからそれが矛盾してるんだって……。
「ふん。いいだろう。その考えには乗ってやる。ただし今この空間から逃げることが出来ればな!」
そして俺は戦火の花の出力をさらに上げる。極彩色の花々が輝きを増す。
「それならば問題ない。……『反発の光』!」
神核がその言葉を発した瞬間、俺の体に妙な感覚が走った。
すると、俺が作り出した戦火の花の花々がカラス細工のようにバシャリッと砕け散った。それとともに空間の歪みが元に戻り、閉鎖空間が解除される。
「な!?」
「では待っているぞ、強き災厄者よ。また相見えよう」
そう言って神核は笑みを浮かべると、まるで幽霊のように薄くなり俺の前から消えた。
「…………」
『驚いたのじゃ……。曲りなりにもあの憎たらしい女神の力を一瞬で打ち消すとは……。さすがにあれは私も想定外じゃ』
「そうだな……」
俺はそのリアの言葉に激しく同意した。なぜあれほどの力をこめた戦火の花を破壊することができたのか。これは俺にもよくわからなかった。
そしてそれ以外にも俺は驚いていた。戦闘の終盤は俺が有利だったとはいえ、あまりにも神核は強すぎる。
しかもそれでもまだ全力ではないときた。
これは一度ギルドに帰って作戦を立て直す必要があるだろう。俺はそう思い至ると、転移を使用しルモス村に帰還することにした。
ただ俺の肩にずっと乗っていたクビロはなぜかずっと黙ったままで、なにか考え込んでいる様子だった。
次回は第一ダンジョンに向かいます!そして黙っているクビロはどうしたのか、それをしっかり書ければいいなと思います!
誤字、脱字がありましたらお教えください!