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第二百二十一話 学園王国vsオナミス帝国、二

今回は帝国との戦闘がスタートします!

では第二百二十一話です!

 パンドラの攻撃は見事に帝国軍に直撃し、兵士の大半を無力化した。

 あの箱の中身は俺自身も手を加えているもので意識だけをごっそり刈り取るという傷つけずに気を失わせるにはうってつけの技なのだ。

 箱から放たれた紫色のオーラはすぐさま帝国兵を取り囲み体の自由を奪う。その光景は見ている側である俺たちでさえ君の悪いものであり、伊達に神々が災厄を詰め込んだだけはあるようだ。


「ぱ、パンドラちゃんってかわいい顔して結構えげつないことするんだね………」


 アリエスが若干顔を引きつらせながらそう呟いてくる。


「そうか?別に傷つけてないし、命だって奪ってない。ヘルやフレイヤのほうがよっぽど危険な技を持っていると思うんだが」


 俺はアリエスの問いにさも当然と言わんばかりの声色で返答した。


「そうですよぅ!私なんてまだまだ小さいものですぅ。あのクソジジイに比べれば大したことないですよぅ!」


 ああ、クソジジイまで言っちゃいますか。

 まあ確かにパンドラを下界に遣わせた神はジジイだし、性癖悪いし、力だけの肉団子ではあるけれど、まさか異世界に来てまで馬鹿にされるとは思っていないだろう。

 俺はそんな哀れな神の顔を思い浮かべながら、戦闘態勢を作り前に進みだす。


「よし、今ので大分帝国軍の戦力は削がれただろう。ここからは作戦通り動くぞ?」


「「「「「「「うん!」はい!」はい……!」了解です!」オッケー!」ああ」任せて」


 俺の言葉に勢いよく頷いたメンバーたちは各々が自らの役目を全うするために動き始めた。

 アリエス、エリア、ルルンは残っている帝国兵を前線で叩き伏せ、シラとシルは冒険者たちの援護。そして俺とキラ、サシリは勇者たちの殲滅。

 全三方向に散らばっていく俺たちが合図となり学園王国対オナミス帝国との全面戦争が開幕したのだった。







 俺とキラそしてサシリは横一線に並ぶような形で勇者たちに接近していた。

 すでに俺の気配探知には十一人の勇者全員の気配が捉えられている。それはパンドラの箱を受けてもまったく平気なようでダメージを受けている様子もない。


「はあ………。意外としぶとい奴らなのだな、勇者というのは」


 キラが高速で走りながらそう呟いてくる。


「まあな。でなければエルヴィニアでボコボコにされているのにわざわざ学園王国に乗り込んだりしてこないだろう」


 実際、エルヴィニアでは俺やキラ、ヘルなどがその鼻っ柱を叩き折るかのように蹴散らし見事撃退しているのだが、それでも勇者たちは帝国に付き従っているらしく、今回も攻めてきているようだ。


「勇者とかいう連中は、私たちがこの学園にいること知ってるのかしら?」


 唯一勇者に会ったことがないサシリは首を傾げながら不思議そうな表情を浮かべている。


「それはわからないが、知ってなきゃこんな殺気を滲ませてはこないんじゃないか?」


 どうやら勇者たちは俺たちが近づいてきていることに気が付いているようで、この距離からでも明確な敵意が空間を伝って感じとれてしまう。


「どちらにせよ、全員吹き飛ばすだけだ。殺さない限りどんなことをしてもいいのだろう、マスター?」


「ああ、命さえ残っていれば好きなことをすればいい。普通の兵士ならもう少し手加減してやるところだが、あいつらは少々物分かりが悪いからな。お灸をすえる意味もこめて派手にやってしまえ」


 俺はキラに笑いながらそう呟くと、両隣にいるキラとサシリは同時に口角を吊り上げ自信満々な表情で頷いた。


「「了解だ」したわ」


 すると、キラはいきなり腕に根源を集め始めると、そのまま目の前に見え始めた帝国兵と勇者に向かって根源を打ち放った。


「では一発、開戦の挨拶でもしておこう。根源の明かり(フルエテハイトナレ)


 その差し出されたキラの腕から膨大な力を含む虹色の光が放出され、帝国軍を一気に飲み込んでいく。

 だが勇者たちはその攻撃を受けてもダメージを受けていないようで、二本の足でしっかりと佇んでおり、こちらに殺気を放ってきている。

 俺たちはその勇者の前に姿を現すと、戦闘態勢を作り同じくらいの殺気を放出させ睨みつけた。


「随分と暇みたいだな、勇者っていうのは」


 すると十一人いる勇者の中の以前俺と戦った少年が前に進み出てきて、憎悪の感情を滲ませながら返答してくる。


「黙れ、ハク=リアスリオン。お前にはたっぷりとエルヴィニアでの借りを返してやる」


「ほう、俺の名前を知っていたか。誰から聞いたんだ?」


「教えるわけないだろう。お前はここで僕に殺されるんだから!」


 その瞬間、その勇者は俺に向かって猛スピードで突っ込んできた。そのスピードは以前よりも格段に速くなっており、成長を感じられた。


「おっと」


 俺は奴が繰り出して生きた攻撃をエルテナで受けながら、それをはじき返し左手に握っているリーザグラムを振るう。

 しかしそれは身を翻したことによってかわされてしまう。


「へえ、随分腕を上げたんだな」


 俺はある程度の距離を保ちながらそう呟く。


「余裕な態度を取れるのも今のうちだ!」


 その言葉が発せられた瞬間、その勇者の後ろから残っている十人の勇者が一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 つまり全員で俺という存在を潰そうという考えなのだろう。もしこれが普通の人間を相手にしているのであれば問題なくそのリンチ作戦は上手くいっただろうが、今回の相手はそんなものが通じる相手ではない。

 まして俺は一人で戦っているわけではないのだ。


「妾を無視してマスターに攻撃とはいい度胸だな、人間?」


「そんなに早く消されたいなら、お望み通り消してあげる」


 俺の目の前に颯爽と現れたキラとサシリがその勇者たちを迎え撃つ。キラは根源を放ち、サシリは血の力でその勇者たちを吹き飛ばす。


「くっ!?」


 さすがにこの二人の攻撃は勇者にもそれなりに通っているようで、苦しそうな表情を浮かべながら後退する。


「おそらく、あの二人は俺を狙ってくるはずだ。キラとサシリは残っている勇者を頼む」


 俺は依然戦った二人の男女に目線を向けながらそう呟いた。


「心得た。では暴れるとしよう」


「了解。ハクも頑張ってね」


「ああ」


 俺はサシリの言葉に頷くと、身に宿らせている神妃化の力を少しだけ上昇させ、笑いながらその勇者たちに向かい合ったのだった。


「さあ、どっからでもかかってくるんだな。俺がお前たちに力の使い方とその意味を教えてやる」







 その三人の姿を眺めていたアリエスたちも続々と行動し始めていた。


「私たちも行こう」


「ええ。私たちはパンドラちゃんの倒しきれなかった帝国兵を倒せばいいんですよね?」


「そうだよー。んじゃあ、早速行きますか!」


 アリエスは魔本を、エリアは持ち前の片手剣を、ルルンはレイピアを抜いてハクたちに追随するような形で攻撃を開始した。

 残っている帝国兵といってもその大半はパンドラの箱によって弱っているのでさほど強力というわけでもない。全体として五千人いればいいほうだろう。

 その戦力を先頭で蹴散らすのがアリエスたち三人の役目だ。

 数は減ったものの帝国兵は限りなく湧いてくるように学園王国に攻めてきている。いくら騎士団や魔導師、冒険者がいるからといって油断はできない。

 残されているシラとシルは当然冒険者の助太刀に入るというものの、アリエスたちがその戦力をこれからどれだけ減らせるかがこの戦いにおいて重要になってくるのだ。

 アリエスは勢いよく魔本を開くと、ハクたちに当たらないように注意しながらお得意の魔術を使用する。


氷の終焉(アイスインフェルノ)!」


 瞬間、帝国兵たちの頭上に巨大な魔法陣が現れ、それが空気さえ凍らせえるような冷気を帯び始める。そしてアリエスの魔力が注ぎ込まれえると、雪原の大地をひっくり返したような雪と氷の雪崩が音を立てて降り注いだ。


「ぎゃああああああああああ!?」


 帝国兵たちの絶叫が戦場に轟き、その体を押しつぶした。しかしその雪と氷は帝国兵の意識を刈り取った瞬間、跡形もなくなり消えてしまう。というのもこれはハクとの打ち合わせで話していたことであり、緊急でない限り極力人は殺さないというルールが決められていたのだ。人をあまり傷つけたがらないハクらしい発想といえばそうなのだが、基本的にアリエスたちも流血沙汰というのは好きではないので二つ返事で頷いたのだ。

 仮にあのままアリエスの氷の終焉(アイスインフェルノ)が残り続けていたら、低体温症や凍傷によってそのものたちの命が危ぶまれてしまう。

 つまり今回の戦いはいかに傷つけず、敵を無力化するかがカギになってくるのだ。

 その魔術を見届けていたエリアとルルンもそれに続く形で剣を振るっていく。西洋剣に本来峰打ちという概念はないのだが、エリアは剣の腹の部分で殴り、ルルンはレイピアの柄を突き立てる形で兵士を気絶させていく。

 はっきり言ってそれは並大抵の技術でできるものではないのだが、現実離れした二人の実力はそれを簡単にやってのけていった。


「エリアちゃん、随分といい動きするようになったねー。エルヴィニアで見たときより格段に上達してるよ」


「そういうルルンだって今まで以上に磨きがかかってるじゃないですか。人のこと言えませんよ」


「そりゃあ、私には剣しか取り柄がないからねー。少しでもハク君の役に立つには自分の得意なことを伸ばすしかないでしょ?」


「それは同感ですね。では、行きますよ?」


「お!いいね、そろそろやっちゃう?」


 そう声を合わせたエリアとルルンは二人で背中をくっつけるような態勢になると、そのまま円を描くような形で動き始めた。

 それは一方が一方を追いかけるような形で動いており、その旋風は周囲に群がっている兵士たちの意識をまるでシュレッダーのように握りつぶしていく。二人の描く円は次第に風を纏っていき、周囲の空気すら巻き込んで大きくなっており、容赦なく帝国兵を吹き飛ばしていった。

 この技はまだ名前は決まっていないものの、ハクにばれないようにエリアとルルンが密かに編み出したもので、今までは実験段階でしかなかったのだが今日はついにそれがお披露目になったのだ。


「正直言えばハク様に見てもらいたかったですね」


「まあねー。でもまだまだ見せるタイミングはあるみたいだよ?」


 ルルンはそう言うと、目の前にさらに群がっている帝国兵を指さしてそう呟いた。


「はあ………。エルヴィニアのときも思いましたが、よくもまあ高々一回の遠征でこれだけの兵を投入してきますね。我が国ではもう少し戦略的に動かしますが………」


「大方勇者君たちに期待してるんだよ、きっと」


 その言葉を聞いたエリアはまるでハクが浮かべるような笑みを顔に出しながら、自分の体に魔力を流しつつ言葉を口にした。


「でしたらその期待を打ち砕いで差し上げましょう」


「そうだね。それがいいよ」


 エリアとルルンは再び魔力を充填し始めているアリエスを横目に眺めながら、剣を軽くぶつけ合うと沸き上がってきた帝国兵に向けて剣を繰り出していくのだった。



次回はキラの戦闘を描きます!

誤字、脱字がありましたらお教えください!


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