第二百十三話 第四神核、四
今回で第四神核戦は終了です!
ハクの無双をお楽しみください!
では第二百十三話です!
「はあ!」
「ふん!」
クビロが第四神核が作り出した魔物たちを抑えている間、俺は当の第四神核と拳を交えていた。
もはや剣や能力も使用しない単純な殴り合いが続いている。
拳と拳、蹴りと蹴りが衝突し空気を振動させこの空間自体を揺らし、爆音とともに繰り出される攻撃は両者一歩も譲らない攻防を展開していた。
俺は神核が放ってくる拳に自らの拳を当てながらその攻撃を防ぎつつ、転移で背後に回りながら空きになっている背中に踵から足を叩き落とす。
「後ろがおろそかだぞ?」
「ぐっ!?」
神核は避ける間もなく俺の攻撃を受けてしまい地面に叩きつけられる。
しかし神核はその寸前で俺の足首をつかみ取り、体を捻るような形で俺の体を投げ飛ばした。
「な!?」
「お返しだな」
俺は咄嗟にエルテナを抜き地面に突き刺す形でその衝撃を殺し、なんとか踏みとどまる。
ったく、攻撃すればすぐにこれだからな、油断も隙も無い。
にしても。
「お前、本気を出すんじゃなかったのか?」
先程この第四神核は本気をみせるとか言っていたのだが、それにしてはあまり動きが変わっていないのだ。
それこそまるで時間を稼いでいるような気すらしてしまう。
「そのうちな。焦らなくてもいずれ見せてやる」
神核はよくわからない笑みを浮かべながらそう呟くと、再び俺に接近してきた。
「だったら嫌でもその本気を出させてやるよ!」
そう叫んだ俺は今まで以上の速さで神核を迎え撃つ。
突き出された拳を首を傾けるだけで回避し、その腕をつかみ取る。そしてそのままこちらに引き付けるような形で引っ張り鳩尾めがけて拳を叩きこむ。
「がはっ!?」
「どうした?神核っていうのはこんな程度なのか?」
俺はそう言うと掴んでいる奴の右腕を捻るような形で背中に回し、関節技を決める。
「がああああ!?」
そして空中に体を浮かせ自分の足を奴の首に巻き付け完全に動きを封じ、奴の耳元で言葉をささやく。
「このまま本気とやらをみせないと遠慮なくここで殺すぞ?俺としては早めに決着をつけたいから願ったり叶ったりなんだが」
神核は苦しそうな表情を浮かべながらも、まだ表情はあきらめておらず必死に俺の拘束を振り払おうとしている。
「まだだ!俺は貴様ごときには負けん!」
「だったら早くその力とやらをみせて見ろ。でなければ」
俺はそう言うと絶離剣を取り出しそれを奴の首元に突きつける。
「その首飛ばすぞ?」
その声は明確な殺気と圧倒的な気配を帯びており、一瞬だったがこの空間の温度を急激に低下させた。
すると神核は俺の予想に反していきなり笑い出しだし、今まで感じたことのない力で俺を吹き飛ばした。
「なに!?」
後方に飛ばされた俺は何度かバク転しながらその勢いを殺し、体の動きを止める。
「は、ははははははは!まったくさすがは災厄者というところか。もう少しだけ粘ろうと思っていたが、どうやらその猶予もないらしい」
何がおかしいのかわからないが神核は実に嬉しそうな表情でそう言葉を呟く。俺としては何が起きようとも絶対に叩き潰すことには変わりないため本気であろうがなかろうが関係ないのだが、何か隠しているというのは戦闘において危険なので出来るだけ早めにつぶしておきたいのだ。
「御託はいい。やるのかやらないのか、はっきりしたらどうだ?」
「言われなくても見せてやるとも、今すぐな」
神核はそう言うと全身に走っている黄色いラインから膨大な力を放出すると、その力をさらに高め身体能力を底上げした。
それは床に埋まっている石畳の岩を余波だけで持ち上げてしまうほど強力なようで、小さな石は既に空中に巻き上げられている。
ピリピリと肌を焼くその力は既に人の領域にはおらず神の領域にたどり着いているようで、神格のような神々しさまで滲みださせているようだ。
「へえ、確かにとんでもないな。………だが、それでもまだ俺には多分届かないぞ?」
そう、確かに神核は身に宿っている力を今まで以上に開放しているが、それでも今の俺に追い付くにはまだ足りない。それだけ神妃化の出力を上げて俺は戦っているのだ。
しかし神核はそれすら予想済みといった顔を浮かべ俺の問いに返答してくる。
「わかっているとも。ゆえに切り札を使う」
「切り札?」
神核はそう言うと何やら気味の悪い力を纏わせるとそれをこの部屋の天井に打ち放なった。それは上空にいるアリエスたちに伸びており、意識を失っている体を襲う。
「お前!一体何を!」
俺は慌ててその力を打ち払おうと絶離剣を振るうおうとするが、その前にその力に吹き飛ばされてしまう。
「くっ!?」
すると神核は優越な表情を浮かべながら話し出した。
「何のために貴様の仲間たちをあの場所に固定していたと思っている?貴様と分断するだけが目的だと思ったか?悪いがそのような甘い考えは持ち合わせていない」
「お前な!」
俺はなおも神核に接近しようとするが、膨大な力が神核の体に流れ込んでおり近づくことすらできない。
「まったく、素晴らしいな貴様の仲間は。俺の力がどんどん上がっていくぞ!」
どうやら今の神核はアリエスたちから吸い取った力を自分の糧としているようで、どんどんその力を増幅させていく。
対して力を奪われているアリエスたちは先程よりも顔色を悪くしており、もはや息をすることすら苦しそうな表情に変わっていた。
俺は出来るだけ神核に力を渡さないように気配創造の出力を上げるが、それでも奴の力は増えていくばかりで手の打ちようがなくなってしまっている。
「ふはははははははは!どうだ!これこそが俺の本気、真の姿だ!行くぞ災厄者、貴様は自分の仲間の力によってうち滅ぼされるのだ」
「何が、真の姿だ!所詮は貰い物の力でほざいてんじゃねえ!」
俺は神核が発する暴力のような力場を何とか突破すると、その体めがけて拳を振るう。
だが。
「遅いぞ、人間?」
「な!?」
その瞬間、拳を受け止められた俺の腹にかつてないほどの衝撃が走った。
「がああああああああああああ!?」
見ればそこには神核の腕が突き刺さっており内臓どころか骨すらも一撃で粉砕している。
「ふむ、やはりイレギュラーの二人から吸い取った力というのは偉大なものだ。湧き出るように力が出てくるぞ」
神核はそう呟くと勢いよく俺の腹から腕を引き抜き、俺の体ごと足で吹き飛ばす。地面を何度も転がり、大量の血をまき散らしながらどうにか衝撃を殺して動きを止めた俺は傷を治しながら、この事態について考えていた。
はっきり言ってこれは予想外だ。
今までの敵は基本的に自分が持っている力を使って戦うことが多かったが、この神核はあろうことかアリエスたちの体力を吸収してパワーアップするという外道な方法を使ってきている。殺し合いに外道も何もないのかもしれないが、勝利に貪欲な第四神核ならではの策とも言えるかもしれない。
とはいえこのままでは俺が奴を倒す前にアリエスたちの体力が尽きてしまう。体力が尽きれば待っているのは死だけだ。
そんなものパーティーのリーダーとしとても容認できることではない。
ならばやることは一つだ、全力をもって叩き潰すしかない。
『リア、少しだけ上げるぞ?』
『まあ、仕方がないのう。おそらく今のあやつには十二階神ごときの力では通用せんじゃろうし、かといって相性のいい神宝を探している暇もないしな。だが、それを上げすぎると取り返しのつかんことになるぞ?』
『ああ、わかってる』
俺はリアに一応確認を取ると目を一度閉じ、力を集中する。
その瞬間、俺の中に入っていた神妃の力が急激に上昇し、より髪の姿に近づく。
今まで神妃化の影響で髪金髪に変わっていたのだが、今はさらにその髪が伸び自分の肩よりも少しだけ長くなっている。
その見た目は以前よりさらにリアに近いものとなっており、顔までは変わっていないがそれでも雰囲気は大分リアに近づいているようだ。
「ほう、貴様も本気モードというわけか。面白い、面白いぞ、災厄者!」
神核はまるで自分の力を試したいと言わんばかりに両腕を広げそう言葉を口にする。
しかし俺はリアの口調が完全に乗り移った状態で冷たく切り捨てる。
「黙っていろ、下種が。自らの力でないその劣悪な気配は見るに堪えん。今すぐ眼前から消してやる」
俺はそう言うと足すら動かさず、一瞬で奴の背後に回り込むとその肉体に容赦なく腕を突き出し肉を穿つ。
「があああああああああああ!?ば、馬鹿な!?この俺が見えなかっただと!?」
「これで終わると思うなよ?」
その腕を引き抜き、次の攻撃に移ろうとした瞬間、神核も負けてはいないようですぐさま振り返ると、膨大な力を帯びさせた拳を俺に放ってきた。
「貴様の仲間の力だ、これで大人しく消えろ!」
しかし、その攻撃は俺の体に届く前に消滅する。
「な、ぎゃあああああああああああ!?」
俺が発する空気に触れただけで、神核の腕は跡形もなく消し飛びその根元から大量の血を流して大きなダメージを与えた。
というのも俺の今の状態というのは、神妃化の出力をさらに一歩上の段階に引き上げたものだ。これは上げれば上げるほどかつてのリアの気配に近づいていき、その力は天井を知らずに上り続ける。
そしてそれは今の状態ほどになってしまえば、放出している気配だけでその存在を消してしまえるほどの力を身に着けることができるのだ。
「雑魚は雑魚だ。それを理解できぬから他人の力を搾取するような真似を平然とやってのける。それは器という盃に許容できぬ真水を注ぎ続けるようなものだ。そんな扱いきれぬ力を振りかざしたところで、理を保てるはずがなかろう」
「だ、だまれ人間!いくら貴様が神の領域い近づこうが所詮は人間だ。俺のように世界から作り出された本当の神には敵うはずがない!」
神核はその言葉と同時に、クビロに相手をさせていた魔物を消滅させ、先程俺の相手をさせていた三体の神核を量産し俺に差し向けてきた。
「この状況はどうする?さすがにこの量の神核は貴様も戦ったことはないだろう?」
『主!』
クビロが俺の身を案じて声を上げるが、俺は一切動じず神核を睨みつける。
「先程も言ったはずだ。そんな愚物を並べたところで俺に二度目はないとな」
俺はそう呟くと真っ直ぐ右腕を差し出し、五本の指を順番に下ろし何かを握りつぶすような仕草を実行する。
そして最後の親指が閉じられた瞬間、大量に湧き出ていた神核と、アリエスたちから吸い取っていた第四神核の力場が消滅した。
「ば、馬鹿なああああああああああ!?」
「所詮は偽物、贋作の集合体だ。真贋の差すら埋められぬようでは到底神の域には届くはずがない。いい加減その煮え切った頭を稼働させることだ」
そのまま俺は差し出している右腕を不意に動かし、神核の残っている左腕を切り落とす。それは特段剣やナイフを使っているわけではなく、それこそが必然であるかのように自然な動きで落下した。
「ぎゃああああああああ!?」
「終いだ、神核。精々自分の行いを記憶に留め悔い続け、心に罪悪の杭でも打ち付けておくがいい」
俺はその言葉と同時に両腕がなくなった神核の頭を掴み上げ、その体の中に入っている星神の力を握りつぶす。
ガラス玉の破砕音のようなものが空間に響き渡り、第四神核との戦闘は終幕した。
力を抜いた俺は何かの線が切れたかのようにふらつき、地面に倒れそうになってしまうが、そこを見守っていたクビロが俺の体を受け止める。
『さすがじゃのう主は。アリエスたちの力を吸収した相手にまで勝ってしまうとは、おそれいったのじゃ』
「そ、それは………いい、からはやく、アリエス……たち、を……」
やはり神妃化というのは体にかなりの負担をかけているらしく、相当なダメージが今の俺には返ってきていた。
残っている力でなんとか事象の生成を使いアリエスたちの拘束を解き、その体力を全快させる。
しかし、それを使用した瞬間、俺の意識は闇の中に沈み気を失うのだった。
あと少しだけこの第四神核のエピソードは続きます!
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次回の更新は今日の午後五時以降です!




