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第二百十二話 第四神核、三

今回はやっとハクに反撃の兆しが出てきます!

では第二百十二話です!

 第四神核の生み出したかつての神核たちが一斉に俺に攻撃を仕掛けてきた。目には光が宿っておらず外見も、部屋と同じように漆黒の肉体に変化しておりかつての神々しい輝きは失われてしまっている。

 代わりにまがまがしいほどの殺気を滲ませており、その感情は直接力に変換されているようだ。

 動きやスタイルは俺が戦ったときと変わっていないようで、能力と武器までもが完全再現されている。

 ダンジョン潜入時は大人数で押し切れる戦いを予想していたのだが、今では完全に立場が逆転されてしまい徐々に押され始めるという状況が展開されていた。


「がああああ!?」


 第一神核の二本の槍が俺の腕を穿ち壁に固定させる。溢れ出る血は床を真っ赤に染めてしまい、激痛とともに肉がギリギリと切り刻まれていく。

 その隙に第三神格が大人しい表情から好戦的な態度に変化させ俺の体に高速の打撃を叩き込んでいく。


「あああああああああ!!!」


 俺はさすがにこのままでは危険だと判断し、気配創造の刃を放ち神核たちを出来るだけ後退させ、拘束から何とか抜け出す。


「はあ、はあ、はあ。ったく、なんて面倒な奴らを呼び出してるんだ……」


「どうした?過去に戦った相手だろう?災厄者であればこの程度造作もないと思っていたが?」


 あの野郎、高見の見物とはいいご身分だな……。

 とはいえこのシチュエーションはかなり厳しい。一体だけでも十二階神と匹敵するほどの強さを持っているのにそれが四体もこの空間に集中しているのだ。それがどれだけ危険な状況だというかは言わずともわかるだろう。

 幸いしているのは捕まっているアリエスたちに攻撃が伸びていないといことか………。

 俺はそう思考を整えながら事象の生成を使用し傷を完全に再生させ腰にささっているエルテナを取り出し、正面に構える。

 第四神核は先程までと違い攻撃してくることはなく、作り出された三人の神核たちが俺の相手をしていた。

 とりあえずこの三体を倒さないことには目的である第四神核と戦うことはできないので、なんとかしてこの状況を覆さなければならない。

 とはいっても具体的な対抗策があるわけでもないので、どうしようか頭を悩ませるしかなかった。


『わかっておるな主様?第二神核はまだしも第一、第三神核は剣技や絶離剣でしか倒せんぞ?』


「ああ、わかってる。にしてもあの三体が同時に襲い掛かってくるなんて正直考えたくないけどな」


 俺は額に汗を滲ませながらそう呟くと、神核たちが動き出す前に行動を開始した。

 まず、先程俺の拘束を解くために使った気配創造の刃をそのまま第二神核に放つ。それはあくまで囮なので避けられることを前提にした攻撃だ。

 第二神核はその力の危険性を悟ったのか、すぐさまその場から離れる。俺はその隙に手薄になっている第一神核の背後に転移し例の剣技を使用し、奴の体を切り裂いた。


赤の章(エリアブレイク)!」


 赤い光を帯びたエルテナは俺の意思に従うように第一神核の不死性を空間から切り離すと、それと同時に神核の体を両断する。


「ほう」


 腕を組みながらその光景を見ていた第四神核が少しだけ驚いたような声を上げるが、このままで終わる俺じゃない。

 第一神核が消滅したことを確認した俺は、神妃化によって次元境界を底上げし蔵の中に仕舞った絶離剣をもう一度取り出す。

 そしてそれとエルテナを持ちながら高速で第三神核に近づき、剣の雨を繰り出した。


黒の章(インフィニティー)!」


 基本的に第三神核において絶離剣というのは猛毒と同じような効力を示すので、一撃当たっただけでも致命傷レベルのダメージを負うのだが今回はそんなことまったく気にせず木っ端微塵に擦る勢いで愛剣を振るい続けた。

 弱点がわかっているというのは、やはり初見のときとは天と地ほど事態の進展が早いようで、一瞬の攻防で二体の神核を屠ることに成功する。

 残っているのは第二神核だけなのだが、第二神核は静かに俯き力を充填させるといきなり人型に変化し、フルパワーの姿に変身した。


「くっ!?いつ見てもバカげたパワーだ」


 やはり第二神核自ら言っていたようにその力だけは全神核一強いようで、人間の姿になった神格はその力を容赦なく俺に振るってきた。

 エルテナと絶離剣は早々に仕舞い、拳を第二神核に突きつける。それは第二神核も同じようで俺に合わせるようにその体を動かし応戦してくる。

 爆音が空中に鳴り響き空間を揺らすが、それはより一層俺たち戦闘を激化させていき、その振動さえも運動エネルギーに変換して足を動かす。

 俺はそろそろ決着をつけるために全力の一撃を神核に突き付け攻撃を放った。


「はああああ!!!」


 だが、それは第二神核も同じようで俺をまったく同様の動きをしながら拳をぶつけ合う。

 しかし神妃化している俺は第二神核の腕力を軽く上回っているので、若干俺の拳に押されるような形で態勢を崩した。

 そこに俺が第一、第三神核を倒しているときに使った気配創造をもう一度使用し、その体に深く穿たせる。

 これもシルヴィニア王国で戦ったときと同じ結末であり、気配創造という物体に必ず備わっている気配を根幹から破壊した。


「なかなかやるな、災厄者よ。初めは拍子抜けかと思ったが、そうお一筋縄ではいかないらしいな」


 第四神核は組んでいた腕を再び下ろし、すぐさま戦闘態勢に入る。


「俺も一つわかったことがある」


「なに?」

 

 俺は荒れている息を整えながら神格を睨み話し続ける。


「お前のこの力、存在の逆流だっけか。それ今この世にいない奴しか対象にできないだろう?」


「ッ!」


 おかしな話なのだ。本当に俺を殺したければ神核ではなくキラやサシリ、それこそ星神を呼び出してしまえばいい。わざわざ俺に倒された連中じゃなくとも強い奴はまだまだたくさんいる。

 しかし奴はそうはしなかった。その能力の名前からも推察できるように、あくまでもこの世界に今いないものだけが奴の力で効果対象なのだろう。神核は宝玉となり俺の服の中に入っているが、それでも今は消耗しているので半分死んでいるようなものだ。

 ゆえに奴は神核を自分の能力で作り出すことで俺を倒そうとしたということだろう。


「お前は今までこの世界で倒されてきた存在の中でも最強クラスの存在を探し、結果として同じ神核を思いついた。そしてそれを俺に仕向け攻撃の種とした。違うか?」


 神核は眉間に深々と皺を寄せながら、俺を見つめしばらくジッと身構えていたのだが、大きく息を吐くと渋々といった表情で俺の言葉に頷いた。


「その通りだ。俺の力はあくまでもこの世に存在していたものだけが対象になる。今この世界に生きているものは呼び出せない」


 つまり疑似的なアンデット作成のようなものだろう。もしかすれば第四層での骨の女王もこいつが作り出したものなのかもしれない。


「だが、それだからといって俺が貴様に負ける道理はないぞ?」


 すると第四神核はまたしても膨大な魔力を迸らせ大量の魔物たちを作りだした。

 中には第三層で見かけたような古代種も混ざっているようで、通常の魔物とは大きく強化されているようだった。

 俺はその光景を見ながら少しだけ笑みを浮かべると、神核に向かってようやく俺が隠していたとっておきを開陳しだす。


「確かに俺がここにいる魔物全てを相手にしながらお前を戦うのは少々厳しいかもしれないが、一つお前は見逃している」


「なんだと?」


「お前はアリエスたちをよくわからない術式で拘束しその体力を奪っているのかもしれないが、その術中にかかっていない奴がいることに気付いているか?」


「何を今さら、それは貴様だろう?」


 第四神核は不思議そうな顔をしながら俺にそう返答してくる。

 まあ、普通に考えればそうだな。

 だがお前が神核や魔物を呼び出しているように、俺だって共に戦ってくれる仲間のカードは持ってるんだぜ?


「違うな。まったくもって違う。いいか?何も俺のパーティーには人間だけしかいないなんてことは一言も言ってないんだぜ?」


「まさか!?」


「久しぶりに暴れていいぞ、クビロ!」


 俺はさりげなく俺の髪の中に隠れていた地の土地神(ミラルタ)そう声をかける。


『まあ、このレベルの魔物たちであればいくらでも蹴散らしてやるわい』


 クビロはすぐさま地面に降り立つとそのまま通常の姿に戻り、地上の支配者たる圧倒的な気配を放出させた。


「な!?地の土地神(ミラルタ)だと!?確かに貴様のパーティーにはその存在がいることはわかっていたが、今になって出てくるか!」


 クビロは初めアリエスの髪の中に隠れていたのだが、アリエスたちが拘束された瞬間に、咄嗟にクビロは避難しており気配を消しながら、戦っている俺に近づき髪の中に隠れたのだ。

 それを俺はこのタイミングで切り出した。

 神核相手ではさすがのクビロも荷が重いし、かといってアリエスたちを助けようにもその小さな体では救出しようにもできないので、俺は今のタイミングで群がっている大量の魔物の処理を頼んだのだ。


「それじゃあ、頼むぜ?」


『ああ、任せておくのじゃ』


 クビロは巨大な体をくねらせるように動かすと戦闘態勢に入り、魔力を集中しだした。クビロがよく使用する影の力のようで、どうやらクビロはいつも以上に気合が入っているようだ。


『アリエスたちをあのような目に合わせておいてただで済むとは思わないことじゃ』


 クビロはそう殺気だった言葉を呟くと瞬間的に魔力を増幅させお得意技である影の祀りを発動した。

 クビロの力はこの部屋の色と同じような黒の触手を大量に出現させ沸き上がっている魔物たちを次々と葬っていく。

 いくら古代種であっても地上に生きる魔物の頂点に君臨するクビロには叶わないようで、見るも無残にその体を砕かれていった。


「ぐっ!?な、ならばあいつから倒してしまえばいいだけのこと!」


「させるかよ」


「がああああああああ!?」


 俺は新たな標的をクビロに定めた第四神核の動きを遮るように、奴の体を吹き飛ばし神妃化の出力を上げる。


「悪いがお前の相手はこの俺だ。効率を考えるのもいいが、目の前の相手から目を逸らすなよ?」


「………いいだろう。ならば当初の予定通り貴様から倒すとしよう!」


「言っておくが二度も同じ手が通用する俺じゃないからな?また神核を呼び寄せたところで、今度は一瞬で消し飛ばしてやる」


「ふん、その必要はない。なぜなら貴様はこの俺の本気によってここで死ぬのだから!」


「ようやく本気ってか。なら見せてみろよその力を」


 俺はチラッと意識を失っているアリエスたちに視線を這わせその様子を確認する。

 気絶しているものの常に体力を吸われているというのはかなり負担になっているようで、全員が顔色を悪くし青ざめかけていた。


 もう少し待っててくれ、今すぐ終わらせるから。

 俺は心のなかでそう呟くと、目を大きく見開き神核に全力で攻撃を仕掛けた。


 さあ、反撃開始だ!


次回は本気の神核とハクの戦いです!

誤字、脱字がありましたらお教えください!


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