表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/1020

第二十話 メイドが増えた!

ようやくこの姉妹の話に決着がつきます!

では第二十話です!

 しばらくして部屋の中からアリエスの「もう、入っていいよー」という声がしたので俺はドアノブを回し中に入った。


「おお!」


 俺はその光景を見た瞬間、思わず声を上げてしまった。

 俺が服を用意しておいてなんなんだが、十六歳ほどの少女は薄く桃色がかったカーディガンに水色のワンピース姿で、長い髪の肩に垂れ下がっている部分はリボンで結ばれていた。はたまた七歳ほどの少女の場合はオフショルダーの黒のティーシャツと白のミニスカートである。髪は短いのでお下げにしてある。

 いや、二人とも野次馬が押し寄せるだけあってとても綺麗だ。

 うん、鼻血でもでそうなくらいだ。

 すると姉妹の姉であろう少女が俺に話しかけてきた。


「あ、あの……。これは一体どういうことでしょうか?」


「うん?いやだから俺たちは別にお前らを奴隷にするつもりはないぞ?なんなら今すぐここから立ち去っても何も言わない。まあだから奴隷の首輪なんてくだらないものを破壊したんだが……」


「そうそう!私たちはあなたたちを助けたくて奴隷商に行ったんだよ!だから心配しなくていいの!」


 俺はアリエスの言葉に大きく頷くととりあえず自己紹介を開始した。


「んじゃ、改めて自己紹介をしておこうか。俺の名前はハク=リアスリオン。冒険者をやっている。よろしくな」


「私の名前はアリエス=フィルファだよ。歳は十歳。この町の公爵家の娘だけど今はハクにぃに付いていってるから、堅苦しくしないでね!よろしく!」


『わしの名前はクビロじゃ。主に完膚なきまでに負け今は主の従僕のような存在じゃ。まあ一般的にわしは地の土地神(ミラルタ)なんて呼ばれとる、よろしくな』


『最後は私じゃ!姿は見えんじゃろうが、私は主様と同化しておるがゆえ、それは許してほしいのじゃ。名前はリアスリオンという。まあ皆リアと呼んでおるからお主らもそう呼ぶがよいぞ!』


 と、俺、アリエス、クビロ、リアの順で自己紹介を済ませる。

 すると二人は目を白黒させて、信じられないというような表情で。


地の土地神(ミラルタ)!?なんでそんなものがここに!?というか空中から声がしたんだけど!?」


「お姉ちゃん……。あの蛇かわいい……」


 とまあ二者二様の反応を示した。


「さて、今度はそっちの番だぜ?俺たちはお前たちを買っておきながら、名前を知らないんだ」


 そうすると急に身なりを整えて、丁寧にその姉妹は話し出した。


「も、申し遅れました!私はシラ=ミルリスと言います。歳は十六歳です。あ、あのこのたびは助けていただいて本当にありがとうございます。数々のご無礼お許しください」


「シル=ミルリスです……。七歳です……。助けてくれてありがとうございました…」


 おおう……。さっきとは物凄い変わりようだな。まあ首輪も外したし服も与え傷も治しているから、当たり前と言えばそうなのかもしれないが、さすがに対応に困るな……。


「シラにシルだな、よし、覚えたぞ。一応なんで俺たちがお前たちを助けたのか経緯を聞くか?」


「は、はい!お願いします!」


 そうして俺は昨日から現在までの出来事を話し出した。

 俺が話をしている最中、さすが獣人族なだけあり、ピョコピョコと頭の上から生えた耳が動いており尻尾もふさふさと揺れ動いていた。

これが噂に聞くケモ耳か!!!と思いながらも俺は冷静を装い話を続けた。

 その全てを話し終わったころには既に一時間ほど時間が経過していた。





「そ、そんなことが…………。ほ、本当にありがとうございました!」


「ありがとうございました……」


 俺の話を聞き終わると同時にシラとシルは頭を思いっきり下げた。それはもう部屋の床をぶち壊さん勢いで、かつてカラキさんが見せたスライディング土下座を彷彿とさせるものだった。


「いや、もう大丈夫だから……。頼むから頭を上げてくれ。それとこれからどうする?一応俺たちはさっきも言ったように昼飯を食べに行くが、お前たちも来るか?もちろんお金はこっちで持つから」


 するとシラは顔の前で両手をぶんぶんと振り、あわてながら返答した。


「い、いえ、そんな申し訳ないことは出来ません!ただでさえ奴隷商から私たちを解放するために大金を使っていただいているのに、これ以上迷惑をかけることは出来ません!」


 しかしそのシラの言葉とは裏腹に、目の前の二人から、グーと清清しいほどいい音で腹の音がなり響いた。


『『「「あ……」」』』


 俺たちの視線はシラとシル一斉に向けられ、目の前の二人は顔を真っ赤に染め上げた。シラに至っては顔をうつむけて肩をワナワナと震えさせている。


「ほらな?体は正直なんだよ。それに心配しなくてもお金を払うのは俺じゃない。もっと太っ腹な人に頼むから大丈夫だ」



「で、では……お願いします……」


 もう最後のほうは消えかけてろくに聞こえなかったが、まあ同意を得たということでそろそろ行くとしよう。

 え?どこへ行くのかって?そりゃもちろん……。


「よし、それじゃあ行くぞ。とりあえずは冒険者ギルドだ。シラとシルに関しては耳と尻尾は幻術で隠しておくから心配するな?……それじゃ行くぞ!今日の昼飯はご馳走だ!」


『『「おーーーー!!」』なのじゃ!』


 セルカさん、後は頼んだぜ?

 そのやけにテンションの高い俺たちを見て、シラとシルは少しだけ笑ったのだった。

 俺はそれが少し嬉しかった。





 場所は変わってとあるルモス村の飲食店。

 俺は目の前惨劇に、片手にお茶の入ったカップを持ちながら頬を引きつらせていた。

 ガツガツガツ、という音がふさわしいほど、目の前の四人は料理にくらいついている。そのうち二人はシラ、シル姉妹だ。

 なんでも獣人族というのは人一倍食べるらしく、奴隷商にいたときは満足に食事もできていなかったため、当然と言えば当然なのだが、もう既に二人の隣には皿のタワーが何本も立ち始めている。

 まあこれは仕方がないだろう。それぐらい腹が減っていたんだろうし、それはむしろ当然だ。うん、これはいい。何も問題はない。

 しかし……。

 俺は自分の隣にいる少女と黒い蛇に視線を向けた。


「なあ、あ、アリエス?……お前ってそんなに食べる奴だっけ?」


 そう、シラたちとタメを張るように皿の壁を築いていたのはアリエスだった。俺が知る限りアリエスはこんなにも食べていた記憶はない。いつもなら「今日はこれくらいでいいや」と言って箸をおくのだが、今日はその箸が止まらない。


「そして!クビロ!お前が一番異常だ!なんでそんな体で自分より大きい料理をいくつも食べられる!?」


 そして今回の一番のイレギュラーはクビロだ。普段「あまり人間の料理は好かんのじゃ」とか行ってたくせに思いっきり食べてるじゃないか!

 しかも量で言ったらこいつが一番多い。


「えーだっふぇ、いふもふぁえんりょしふぇおさえふぇたんだよー」


 うん?なになに?いつもは遠慮して抑えていた、だと!?

 女の子なら食べる量を抑えるのは当然かもしれないが、リミッターを切った途端、増えすぎじゃありませんかねアリエスさん!?


『うむ、人間の料理などと思っていたが食べてみるとこれがなかなかいけるのじゃ。いわゆる食わず嫌いただっだということじゃな』


 うん、やっぱり、お前が一番たちが悪いよ……。

 一応、俺の部屋を出てからどうなったかと言うと、俺たちはシラとシルを連れ宣言どおり冒険者ギルドにいるセルカさんの前に姿を現した。無事に二人を助けられたという報告をすると嬉しそうにセルカは笑顔を作った。それはいつものように何か裏のあるような表情ではなく、セルカさんの本心から漏れ出たものであると、見て取れた。

 そして約束どおり飯を奢ってもらいに来ました、と言うと、セルカさんはその豊満な胸を張って、「まかせておいてよ!好きなだけ食べな!」といい、今に至る。

 初めこそセルカさんは料理を頬張る俺たちを暖かく見守っていたが、途中から雲行きが怪しくなってくると、徐々に顔から血の気が引いていき、今は完全にテーブルに倒れ伏している。


「シラ、シル。料理は上手いか?」


「はい!こんなにおいしい料理は久しぶりに食べました!」


「とっても……おいしい……!」


「そうかそれはよかった。………ほら、セルカさん。二人もこうやって言っているんですから、少しぐらい顔を上げたらどうですか?」


 するとセルカさんは死んだような顔で、どうにか首から上を持ち上げて返答した。


「あ、あのねえ……。普通の飲食店でこんなに長い伝票みたことある?」


「いえ、ありませんけど?」


「うがーー!好きなだけ食べていいって言った自分が恨めしい!」


 その言葉を聞いていたシラ、シルがその手を止め恐る恐るセルカに聞いてきた。


「あ、あの、すみません……。やっぱり自分で払いましょうか?今は無一文なので、借金して返すことになりますが……」


「ご、ごめんなさい……」


 すると途端に、セルカさんが体を起こし、慌てだした。


「い、いや、いいんだ!私は前々から貯金していてね!そこから引き出せばこのくらい微々たる物なんだ!だ、だから好きなだけ食べていいんだよ!」


「本当ですか!それじゃあ、店員さーん!これもう一枚くださーい!」


「わ、私もほしい……」


「あ、二人ともずるい!私もくださーい!」


『わしも、まだ食べるぞ!』


 その瞬間、セルカさんの口からなにか白いもやのようなものが出た気がした。

 ご愁傷さまです……。ご冥福をお祈りします……。

 そしてセルカさんはテーブルに頭をつけたまま、真面目な話をしだした。


「それで、シラちゃんとシルちゃんはこれからどうするんだい?獣人族だと色々不便かも知れないけれど、私に出来ることがあれば全力で応えよう」


 まーたそんなことを言って……。この人は学習しないのか?

 その言葉を聞いたシラとシルは再び手を止めて、神妙な顔つきで返答する。


「それは……。そうですね……。でもやはり獣人族は随分嫌われていますし、その差別が少ない冒険者になっても、あまりいい未来は待っていないような気がします……」


「まあ、それもそうだね……」


 そう、冒険者というのは差別という言葉からはかなりかけ離れている。なぜかと言うと、一言で言ってしまえば単純に興味がないのだ。もちろんシラやシルのような美人の獣人族ともなれば別の意味で別格なのだが、だからといって種族で差別するものは少ない。

 冒険者は常に強さを求めている。ゆえにそんな些細な問題には気にしてられないのだ。なにせ常に命を懸けながら戦う職業だ。そんなことに思考を持っていかれていては。直ぐに戦場で命を落とす。つまりはそういうことなのだ。

 するとセルカさんは何かを思いついたように顔の前に人差し指を立て、衝撃の発言を口にした。


「なら、ハク君についていけばいい。彼なら幻術も使えるし、獣人族というのもある程度隠せるだろう。どうかな?」


「え!?そ、それは願ってもないことですけど、いいんですか?」


 そう言うとシラとシルは、今度は俺のほうに顔を向けてきた。

 くそ、またはめやがったよ、この人……。

 おそらく、これも全てセルカさんの計画のうちなんだろう。

 まったくどっちが滅茶苦茶なんだか……。


「うーん、どうする?皆?」


「私は別にいいよ。人数が増えると楽しいしね!」


『わしは主が決めたことには従うだけじゃ』


『私も異議はないぞ。主様の好きにするがいい』


 ………………お前らもうちょっと自分の意志を持ってもいいと思うんだが……。

 にしても………。まあ別にいいか。一応昨日の魔物の討伐金はまだ余裕があるし、しばらくは何とかなるだろう?

 しかし、俺はもう一つどうしても聞いておかないといけないことがある。


「ちょっと、その前に。シラ、一つ聞いてもいいか?」


「はい?」


「お前たちは盗賊に捕まる前はどこにいたんだ?どこか自分の故郷とか、そういうのはないのか?」


 そう、もし二人に故郷がありそこで両親が待っているというのなら、そこまで送り届けなければいけない。


「い、いえ……。私たちは物心付いたときから親はいませんでした……。かといって人里に下りるわけにもいかなくて、しかたなく森の中でひっそりと暮らしていました。そこには数多くの獣人族がいたのですが、あるとき魔物に襲われて殆どの仲間は死んでしまいました。それから生き延びた私たちは誰も近寄らないような森の奥で生活していたんです。……しかし次第にそれも辛くなってきたので、唯一獣人族の人権が保障される、獣国ジェレラートに行こうと森を出たところで盗賊に捕まってしまったのです……。ですから私たちに故郷というものはすでにないんです……」


「そ、そうか……。それは辛いことを思い出させてしまったな。悪い」


「そ、そんないいんです。奴隷商から助けていただいただけで幸せなんです!」


 そして、痺れを切らしたようにセルカさんが追い討ちをかけてくる。


「で、どうするんだいハク君?シラちゃんとシルちゃんを連れて行くかい?」


 まあ、親もおらず、故郷もないと言うのなら変な話、なんの気兼ねなく付いてこられるか……。

 まあ皆もいいって言ってるし大丈夫か。


「よし、別に付いてきてもいいぞ。ただし俺たちについてくるなら何か仕事をしてもらうぞ?さすがに、ニートを連れて行く気はないからな」


 アリエスはまだ発展途上だが、それでも一応冒険者登録もしたので稼ぎは出る。それにクビロとリアは戦闘のサポートをしているので、一応俺の仲間は役割をこなしているのだ。


「あ、ありがとうございます!…………仕事に関してでしたら私たち姉妹はハク様たちの『メイド』ということでどうでしょう?」


 ……は?

 メイド!?

 なんじゃそりゃーーーー!


「幸い、私たち姉妹は森の中にいたときにメイドの経験があります。ですので皆様のお世話をするということでどうでしょう?」


 ま、まじか……。

 こ、こいつは想定外だ……。


「ハハハ、いいじゃないか!ハク君のパーティーは戦闘向けのメンバーだらけだからね。案外悪くないんじゃないのかい?」


「そ、そうなんだろうか?……でもいいのか?それじゃ半分奴隷みたいなものじゃないのか?」

 すると心外だ、と言わんばかりにシラとシルは首を振り、


「いえいえ、私たちの意志でハク様に仕えるのですから全然違います!これは私たちがやりたくてやっていることなので!」


「う、うん……。私もハク様のお世話する……」


 うーん、まあいいのか?

 確かにこの二人を戦場に出すのは気が引けるし、何かないかとは思っていたんだけれど、まさかメイドとは。

 世界とは広いものだ。………色々な意味で。


「よ、よしわかった……。その方向で頼む……」


 そう言うと目の前の姉妹は、今まで見たことのない笑顔でこう言うのだった。


「はい!お任せくださいハク様!」


「お任せくださいハク様……!」


 そんあこんなで俺の仲間に新たにメイドが二人増えました。

 にしても最近俺の仲間増えすぎじゃない!?


次回はほのぼの日常系のお話になります!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ