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第二百一話 vs精霊騎士、四

今回もハクの戦いがメインです!

では第二百一話です!

 バチバチと稲妻を走らせながら俺の目の前に佇むクガは先程までとはまったく違う容姿を携えながら俺を睨みつけていた。

 その気配は根源を振るう時のキラと比べても遜色ないレベルで俺の背筋を一瞬で凍り付かせ、精霊という存在の偉大さを存分に示しているようだ。

 とはいえキラにあれほど自信満々に啖呵を切った以上引き下がることは出来ないので、俺はそのまま神妃化の出力を上げエルテナと絶離剣をクガに向け戦闘態勢を作った。


「この姿はかつての俺であれば実現不可能だっただろう。だが今は、人間の存在を理解し憎悪を力に変えることができる!それは俺に新たな力を与え覚醒させたのだ!」


 クガは両手を大きく開きながら声高らかにそう叫びを上げた。

 おそらくクガは星神が与えた力を自ら手に入れたものと勘違いしているようだ。高々感情の起伏だけで実力が上昇するはずがない。


「だったらそれを俺に見せて見ろよ。精霊の力ってやつを教えてくれ」


 俺はリアの口調が乗り移る寸前レベルまで力を開放すると、そのまま全速力でクガに接近し二本の剣を同時に振り下ろした。


「はああああああ!!!」


 さすがにクガもあの絶離剣の力を一度体験しているので今回はその腕で攻撃を受けず、後ろに飛びのく形で回避した。


「いい動きだな、その力何故隠していた?」


「生憎と初めから全力でいく主義はないからな」


 するとクガは俺の言葉を聞き届けた瞬間、口を大きく上げ笑みを作りながら、自分の力を試すように右手を差し出し攻撃を開始した。


「空絶」


 その言葉がクガの口から放たれた瞬間、俺の体をとてつもない衝撃が襲う。

 それは魔力を帯びた攻撃のようで空気を限りなく圧縮した弾丸が無数に打ち込まれたような感覚だった。


「がはあああああああ!?」


 俺は声を上げながらも歯を食いしばり、左手に握られているエルテナをクガの腹を薙ぐ形で振りぬく。

 それは見事にクガの腹を切り裂き大きなダメージを与えた。


「ぐっ!?」


 精霊というのは人間と違い特段血が通っているわけはないので、切り裂かれたところで鮮血が噴き出るわけではなく、光の残滓のようなものが噴出するだけのようだ。

 俺はそのまま身をくねらせる様な形で地面に足をつけ、勢いよく蹴りだすとクガの目の前に移動するような形で接近する。

 エルテナと絶離剣を交互に動かしながらクガを切り刻むように攻撃を仕掛け態勢を崩し、その攻撃によって生じた隙に渾身の一撃を叩き込んだ。


「そこだ!」


「な!?」


 クガが見せたその隙に俺は右足を一度折りたたんでから、猛スピードで突き出し衝撃を伝える。

 しかしそれはその一連の動作ごとクガに読まれていたようで、右足の攻撃を受け止めたクガは勢いよく俺の体ごと振り回し、投げ飛ばした。


「はあ!!!」


「ッ!?」


 投げ出された俺は咄嗟に空中を浮遊しようとするが、俺に追随してきたクガがまたしても魔力を滲ませて俺を襲ってくる。


「空剣撃!」


 クガが放ったそれは視認できない空気の刃を生成しているようで、無数に作り出されたそれは全て俺の腹に突き刺さる。


「ぎゃああああああああああ!?」


 下手に形を持った物質ではない分、あまり痛くはないのかと思っていたが、その刃は見事に俺の体を貫通しており、大量の血液を放出させた。神妃化による再生とクガの攻撃が反発しあって更なる痛みを俺に伝えてくる。

 半ば気が狂いそうなほどの痛みが走ったが、俺は瞬間的に事象の生成を使用してその刃を跡形もなく消し去るとその流れで自分の傷も治し、再びクガと向き合う形で対峙する。

 やはりこのクガという精霊騎士は強い。

 それこそキラや神核と並ぶほど強力な力を有している。神歌を使うほどではないが、ここまで神妃化の出力を上げなければついていけないというシチュエーションははっきり言ってかなり珍しい状況だった。

 しかもこのクガという存在を完全に殺してしまうかすらもまだ悩んでいるのだ。キラに私情を挟むなと自分で言ったくせにこの様というのは非常に情けない。

 するとクガが依然余裕な態度を取りながら俺に話しかけてきた。


「精霊である俺とそれなりに打ち合えていることは誉めてやろう。だがそれでもまだ、キラの主というには力が足りないな」


「ほう、それはどういう意味だ?」


 俺がそう問い返した瞬間、クガは先程までとは桁違いの魔力を放出させこちらに攻撃を仕掛けてきた。


空の破滅は世の再生カイセイノモトニナニヲトウ


 瞬間、空気の流れが止まったかと思うとこの場に存在する空気という空気が動かなくなった。それは何を表しているかいうと、この場にあるすべての空気が停止したことによって俺の周りにある空気すらも固まってしまいまったく身動きが取れなくなったのだ。

 こ、これはまずいな……。

 俺は必死にその拘束を振りほどこうとするが、どれだけ力を入れようともビクともせず体が動き出す気配もない。

 さらに空間の空気の流れが止まっているということは当然、声も出ないし呼吸すらできない。つまり明確な命のタイムリミットというやつを突きつけられたのだ。

 だが、それを実行したクガは時間を稼ごうとはせず俺に近づきながら再び空気の弾丸を突き出してくる。どうやらクガだけはその力の影響を受けないらしく、身動きも自由なようだ。

 その攻撃が俺に直撃した瞬間、再び空気流れが元に戻り大気が動き出す。


「があああああああ!?」


 痛みによる叫び声がようやく喉から発せられ、口から大量の血が溢れだす。血の味が口の中に広がり、内臓のいくつかが破裂したようだ。

 ここまでくればこのクガが何を司っている精霊なのかというのは簡単に推察できる。精霊は基本的に六属性に分類されているため、今までクガ使ってきた攻撃を見るにその属性は風ないし空というところだろう。唯一属性持たない精霊はキラだけなのでクガはその例外にはとらわれない。


「ほう、それだけの傷を受けながらもまだ立つか。しぶとさだけは一人前だな」


 クガは血反吐を吐いている俺を見つめながらそう呟いた。


「そう簡単に死なないのが売りなんでね………」


 神妃の力がどんな傷を受けようともじわじわと再生していくので耐久力という面ではかなり自信がある。とはいえ全身を粉々に破壊されたり、再起不能な攻撃を受けた場合はまた変わってくるのだが。


「ではもう一度行くぞ?空の破滅は世の再生カイセイノモトニナニヲトウ


 クガはまたしても先程と同じように空気の流れを完全に止めてきた。

 だが、同じ技を二度もくらう俺ではない。

 俺は身動きが取れない状態で今出せる全力の力を込めてその空間を突き破る。それは完全に力技だが、それでもその空気の停止を打ち破ることが出来たようで、クガの表情に驚きの色が走った。


「なに!?」


 仮にも元の世界で絶対最強の名を持っていたリアの力を使っているのだ。能力的にも出力的にも不可能なことはまずない。


「自分の能力に過信しすぎているのはお前も一緒だな」


 俺は再び動き出した空気の中を駆け巡りその体に二本の剣を叩き込んでいく。


「ぎゃああああああ!?」


 クガの体は俺の無数の連撃によってその姿はボロボロになっていき見るも無残な状態に変化していく。

 このレベルの戦いになれば一瞬の油断が全ての勝敗を左右させることすらある。そして今はまさにそのような状況が出来上がっていた。


「どうした?精霊騎士ってやつの強さはそんなものか?」


 俺はそう言いながらもクガに対して剣を振るいダメージを与え続ける。


「くっ!?そのような無粋な攻撃で俺を倒せると思うな!」


 そう叫んだクガは俺の体ごと吹き飛ばすかのような暴風を巻き起こし、自ら俺との距離を離した。

 どうやらクガの方も今の攻撃で大分消耗しており、いくら傷を治せるといってもその疲労だけはどんどん溜まっていっているようだ。

 そこで俺は一つ気になっていたことをクガに問いかけてみることにした。


「お前とあの精霊たちは一体どんな関係なんだ?いくら精霊騎士だからといってもあれだけの量の精霊を統括するのは難しいだろう?」


 するとクガはますます不機嫌そうな表情を浮かべ返答してくる。


「そのようなことを貴様に話すと思うか?ここで死ぬ貴様に話すことなど一つもない!」

 クガは俺から受けた傷を全て再生させ再び魔力を集中しだした。


空の終焉は開拓の戦タソガレノソラハヨミヘノテガミ!」


 その精霊特有の力はクガの体に宿っている魔力の大半を消費し、ある現象を引き起こした。

 それは空に一つの巨大な空気の塊を出現させ、膨大な威力をもった天球が作り上げられていたのだ。


「これで貴様は終わりだ!精霊と人間の実力の違い、とくと味わうがいい!!!」


 クガは俺に対してそう叫ぶと今持てる全力でその空塊を放ってきた。その空塊は周囲にある空気をどんどん巻き込み威力を上昇させ俺に向かってくる。

 俺はその攻撃を見ながらそろそろリミッターを解除しなければいけないな、と思い始めていた。

 確かにクガは強力なのだが、それでもやはり全力状態のキラやサシリや俺と戦った星神の使徒と比べると全体的な性能はやはり劣っている。

 それはおそらく星神に無理矢理力を与えられた代償であり、それこそが今回クガが持っている唯一の弱点だった。

 エルテナと絶離剣を腰の鞘に戻し、右手を真っすぐその空塊に向けると一瞬だけキラの渾身の根源を打ち破った時の力を開放した。

 俺の手に触れた空塊は一瞬にして、その形を保てなくなり消滅し、光となって消えていく。


「な、なにをした!?」


 力のほとんどを使い果たしたクガが膝をつきながらそう呟く。


「なにって、力の差を見せつけただけだが?」


 俺はそんなクガに上から目線でそう呟くとクガにゆっくりと近づいていき、エルテナを再度抜くとそれをクガの首に突きつけた。


「終わりだ、精霊騎士。星神に操られているようでは俺どころかキラにすら見放されるぞ?」


 クガは俯きながら俺の言葉には反応せず、じっと体の動きを止めている。

 俺はこの精霊騎士をこれからどうしようか考えていたのだが、その瞬間、俺の背後から一匹の精霊が自らの力で攻撃を放ってきた。

 それはごく普通の精霊でクガに引っ付いてきていた大量の精霊の一匹のようだ。その攻撃をエルテナで払いのけると、そのタイミングを狙っていたようにクガが再び立ち上がり攻撃を仕掛けてきた。


「人間ごときに精霊である俺が負けるはずがない!!!」


 完全な不意打ちに若干戸惑った俺がだが意を決してその首を落とすことを決め剣を振るおうとする。

 しかしそれを遮るように一人の存在が俺とクガの戦いに割り込んできた。

 それは虹色の髪を持ち、精霊たちの頂点に立つ存在。

 つまり。


「こいつの最後はやはり私にやらせてくれ、マスター」


 精霊騎士クガの主であった精霊女王キラだった。

 

次回はもう一度キラサイドに戻ります!

誤字、脱字がありましたらお教えください!


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