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第十九話 救出

活動報告でも書かせていただきましたが、このたびTwitterを開設させていただきました!

そちらもあわせてよろしくお願いします!

それと、すみません!昨日は今回でこの獣人族の二人の話は終わると言いましたがもう一回分続きそうです!

では第十九話です!

 俺とアリエスはその後朝食を済ませると直ぐに奴隷商に向かった。その間に俺は昨日何があったのかアリエスに話した。

 バビリで魔物を大量に集めた後、俺は妃の器の能力を使ってその魔物たちを瞬殺した。正直このルモス村の周辺の魔物をほぼ全て集めてしまったらしく、しばらくは魔物の討伐依頼は出せそうにないらしい。

 その数一万体。

 予定では八千体であったが、あの獣人族の二人を買った途端、生活が出来ません!なんてことになると非常に困るので少し多めに倒しておいた。

 食う飯がないっていうのは嫌だからね!食欲は抑えられないのだ!

 で、それから約一時間後、俺は倒した魔物を蔵にしまい、冒険者ギルドに戻ってきた。その足で、昼間とはうって変わって静寂が流れているプチ闘技場のような精算所に討伐した魔物を流し込んだ。その際とてつもない轟音と地震が起きたためちょっとした騒ぎになってしまったのだが。

 セルカさんに至っては、「まったく!無茶苦茶だな君は!」なんて言いながら急いで精算に取り掛かっていた。

 さすがに一人では骨が折れるだろうと思い俺や他のギルド職員も手伝ったのだが、ふとセルカさんの方を見るとどこか嬉しそうだった。とはいえゴブリンだけならまだしもバビリはあらゆる場所から多種多様な魔物を集めてしまった。どうやら同じクラスの魔物でも若干買い取り金額が違うようで、仕分け作業は困難を極めた。

 そんなこんなで、翌日の朝までかかってしまったわけだが、精算作業を終えるとそこにいた仕分け作業を手伝っている人たいちの顔は晴れやかだった。

 いうなれば徹夜で残業をやり遂げたサラリーマンのように。

 それは俺自身も同じようでただ同じ作業を一万回繰り返すのは非常にしんどかったのだが、やりきったあとはとても清清しかった。

 そして、俺はセルカさんから今回の討伐金額である四百万キラプラス、俺が意図的に増やした魔物分の金額二百万を受け取った。実際端数があったのだが、それは迷惑をかけたギルドへの御礼ということで寄付しておいた。

 セルカさんは俺に討伐金を渡す際に、


「本当に、君は凄いな……。なんでもやり遂げてしまう……。あとは……頼んだよ」


 そう言ってきた。


「ええ、お金も手に入りましたし、これで心置きなくあの二人を助けに行けます」


「それにしても、ハク君。あの二人を解放した後はどうするんだい?まさか助けたきり、何もしないというわけではないだろうね?」


 心外だな。それではわざわざ大金をはたいて助けた意味がないではないか。


「まさか。うーん、でもそうですね……。とりあえず本人たちの意思を尊重していきたいとは思っています。まあ俺が考えるのはそれからですね」


「そうかい。なら、安心だ。なにかと君はお節介だからね」


 そう言うとセルカさんは口に手を当てて笑い出した。


「……それ、どういう意味ですか……」


「いやーなに、気にすることはないよ。君は今のままが一番いい。……あ、その短剣は君にあげるよ。もう私には必要ないものだしね」


「また、含みのあることを……。……いいんですか?これそこそこいいものでしょう?」


 そう、このバビリはそれこそ武器屋で売ればそれなりにいい値段が付くはずなのだ。なにせ俺の魔力に見事耐え切ってみせた。それは生半可な武器では成しえることではない。


「いいのさ、それもダンジョンの中で拾ったものだしね。それに君のほうが上手くつかいそうだ」


 ふむ、では一応貰っておくか……。まあまた金に困ることもあるかもしれないし……。


「そら、早く帰らないとアリエスちゃんが心配してるんじゃないか?」


「そうですね、では失礼します。今度は人数が二人増えてやってきますよ。飯、覚悟しておいてくださいね?」


「ハハハ……。心得た。いつでもおいで。私はいつでもここにいるから」


 そして俺はアリエスがいるであろう宿に転移したのだった。





 で、現在。

 俺はアリエスにことの顛末を伝えきると、アリエスは急にプクーッと頬を膨らまして俺に少し怒ってきた。


「もう!またハクにぃったら物凄く危険なことして!そんなんじゃ、命がいくつあっても足りないよ!」


「ハハ、き、気をつけます……」


 なんで俺は怒られてるんだろう……。

 なんか悲しくなってくるなー……。少女に頭をぺこぺこ下げる青年。はたから見れば物凄い奇怪な光景が出来上がっていた。


『まあ半分自業自得じゃからな。今回はアリエスが正しいと思うのじゃ』


『おい!リア!お前は一体どっちの味方なんだ!』


『そりゃ、私はか弱い者の味方じゃぞ?主様のような魔物虐殺魔のような奴にかける言葉など持ち合わせておらんわい……。ハハハ』


 くそー俺には味方は誰一人いないのか!?

 あ、そうだ。クビロ!お前は俺の味方だよな!?


『さすがに今回はアリエスに同意なのじゃ。魔物一万体?そんなもんと戦ったらわしでもただではすまんわい』


 はい、結局悪いのは全部俺でした……。

 ということで歩くこと数分、ようやく昨日の奴隷商に到着した。

 そこには昨日と同じようにむさ苦しい男衆が列を成しており、俺たちはその後ろに並び自分たちの番を待った。

 まったく朝からせいの出ることで……。その活力を少しは村の復興に役立ててほしいものだ。

もちろんあの忌々しい看板はまだ立っており、今回は本気であの二人を買いに来たので全力で叩き折る。

 そしてまたもや三十分後。俺たちの番になり、店員に案内され例の部屋の前に通された。

 そこにはあの店長がまるで部屋を見張るように、仁王立ちで立っていた。


「ん?あなたは……。朱の神殿ではありませんか!またご来店していただきましてありがとうございます。で、今回はどのような用件で?」


「その二人を買いに来た。金ならある。今すぐ手続きしろ」


「そうですかそうですか!ありがとうございます。直ぐにご用意しますね。……にしても昨日の今日でよく資金を用意できましたね?なんでも昨晩大量の魔物が冒険者ギルドに流れ込んだそうですが、もしやそれはあなたが……?」


「まあそんなところだ。いいから早くしろ、俺は気が長くはないぞ?」

 俺は少しだけ威圧を混ぜた声でその店長に問いかけた。


「は、はい。了解しました。ではこちらの部屋にてお待ちください……」


 そして俺たちはなにやら応接間のようなところに通された。

 そこは畳八畳分ほどの広さで、長机と簡素な家具が並べられている部屋だった。おそらく奴隷買取の手続きはこの部屋で執り行っているのだろう。

 しばらくすると先程の店長が、獣人族の二人を連れて部屋に入ってきた。


「お待たせしました。こちらが商品になります。お間違いないですか?」


 ぐ、こ、この店長。人間を商品と言ったか。ますます気に入らない奴だ。


「ああ、問題ない」


「でしたら、こちらの書類にサインをお願いします。それと基本的に奴隷になった者の首には奴隷の首輪が取り付けられています。基本的にこれは一生取り外すことは出来ません。これは奴隷が主人に逆らおうとすると激痛が走り、場合によっては命さえ奪います。この書類はその主人を私からあなたに書き換えるものです」


 奴隷の首輪……。本当にそんなものがあるとは。しかも一生外せないだと?

 よくみると、二人の首には黒く重たそうな首輪が取り付けられていた。それを見たアリエスは卒倒しそうになるが、クビロがなんとかそれを支えている。

 俺は差し出された書類に一通り目を通し、ペンを持って自分の名前を書き綴っていく。


「これでいいか?」


「はい、問題ありません。最後にお代のほうなのですが……」


「ああ、きっかり一千万キラあるはずだ、確認してくれ」


 そう言って俺は机の上に、金貨が入った麻袋を置く。


「はい、こちらも確かに。これよりこの二人はあなたのものになります。これからも何かあればうちにお立ち寄りください」


 二度と来るか!

 そしてその店長は立ち上がり、今俺が買い取った二人の隣に立ち、


「ほら、挨拶せんか!これからお前らの主人はあの方だ。粗相のないようにな」


 あろうことか俺に挨拶なるものを促したのだ。

 すると、十六歳ほどに見える少女のほうが、妹であろう少女の頭に手をあて二人同時に頭を下げてきた。


「よ、よ、よろしく、お、お願いします……。ご主人様……」


 その表情は誰から見ても明白で、激しい憎悪にまみれていた。

 それもそうだろう。得体の知れない盗賊に襲われ、奴隷商に売り飛ばされた挙句、どこの馬の骨かもわからないような奴に買われるのだ。むしろその感情は普通と言えよう。


「ああ、よろしく。それでは店主、これにて失礼する」


「はい、これからもご贔屓にお願いします」


 そして俺たちは獣人族の二人を連れて奴隷商から出て行ったのだった。




 にしてもこれからどうするか……。

 この二人は約一日の間民衆の目に晒されていた。このまま連れて行くと目立つだろうから、一応幻術はかけてあるが、とりあえず落ち着いて話せる場所に移動しなければならないだろう。

 というわけで、とりあえず俺たちが滞在している宿に戻ることにした。

 部屋に着くといきなり十六歳くらいの少女がいきなり叫びだした。


「なんの目的で私たちを買ったのか知らないけど襲うなら私だけにしなさい!この子には手を出さないで!」


 そう言うと妹であろう少女を庇うように抱きしめると、その後俺を殺すかのような目でにらんできた。

 おおう………。これは警戒されているな。

 これは早めに解いといたほうがよさそうだ。

 そして俺は蔵からあるものを取り出す。


「絶離剣レプリカ」


 その瞬間俺の手には赤黒い一本の長剣が握られていた。

 そう、これは絶滅する乖離の剣(アニシオン)のレプリカだ。本来絶滅する乖離の剣(アニシオン)は強力すぎて現界させるのも憚れるものなのだが、こいつはその模造品。

 それでもエルテナより遥かに強力なのだが、今回これを取り出したのはある理由がある。


「動くなよ?」


 そう俺は獣人族の二人に呟くと一瞬で背後に回りこみ、二人の首についていた奴隷の首輪を切り飛ばした。

 この絶滅する乖離のアニシオンの能力は防御不能。いかなるものであってもこの絶離剣のまえでは紙ぺら同然になる。それは術式や世の摂理の同様で、場合によっては物理法則さえも切り伏せる。

 今回はそのレプリカだ。オリジナルまでとはいかないまでも奴隷の首輪くらいならばなんの問題なく安全に取り外せる。


「「え?」」


 いきなりの出来事で二人は驚いているようで、表情が固まっていた。

 そして俺は次に二人の体を言霊で綺麗にし、服をさくっと作り出すとそれをアリエスに預けた。


「服はアリエスに預けたからそれを着てくれ。それが終わったら飯だ。二人とも腹減ってるだろ?俺は別に二人を奴隷として使うために買ったんじゃない。くわしくは後ではなすが、今は俺がお前たちに危害を加える気はない、ということだけ覚えておいてくれ。んじゃ、アリエス頼むぞ」


「うん!まかせて!」


 そう言うと俺はその部屋から大人しく出て行く。

 そしてそこには呆然と立ち尽くす二人の獣人族が残されていた。


次回はようやくこの話が終わります。それから二、三話日常パートをお送りし、その後第一章最後のストーリーに突入します。間違いなく戦闘ラッシュになるのでお楽しみに!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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