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第百九十六話 迫り来る災禍

今回からようやく新しいお話に突入します!

では第百九十六話です!

 競技祭の決勝が終わり俺たちシンフォガリア学園の三冠が確定すると、その後は速やかに表彰式が行われた。

 特別観戦席にいたメンバーも次々とステージに降り、なにやら豪華な賞状とトロフィーを受け取って拍手と歓声に包まれながら全学園競技祭は終了した。やはりこの競技祭も閉会式は魔武道祭と同じくかなりあっさりとしているようで、運営委員会の挨拶と件の国王から栄誉賞というものが俺たちに授与されるほどのことしかなく、特段変わったことはなかったのだ。

 ちなみにその栄誉章を渡してくるのが国王ではなく入学式で見た王女様で、珍しくドギマギしてしまったのだが、そんな俺の足をアリエスの踵が踏み砕き、悲鳴を堪えるのに必死になっていたというのは裏話である。

 その後観客席に集まっていた学生や住民たちは何事もなかったかのようにそれぞれ帰路につき三十分後には殆どその姿が見えなくなってしまっていた。

 お祭りというのは始まるときも一瞬だが終わるときも一瞬で、また明日から始まる日常に戻っていくようだ。

 時刻は午後二時を指し示し、そろそろ俺たちも学園に帰ろうとしていたとき、闘技場内の通路で二人の人間が俺たちを待ち伏せていた。それは俺たちもよく見知った者たちで、緊張を解きながら近づく。


「優勝おめでとう。ハク君」


「おめでとう。いい戦いを見させてもらったよ」


「どうも、それはそうとどうして学園長と生徒会長がここに?」


 そう、俺たちを待っていたのはシンフォガリア学園の学園長と生徒会長だった。いわば教師のトップと生徒のトップが揃って目の前に現れているという状況だ。


「いや、学園長としてお祝いの言葉くらいはかけようと思ったのだ。何せこの競技際に君達を出場させたのは私だからな」


「生徒会長としても学園の生徒の栄誉を称えないというのは、おかしな話だと思ってね。だから今こうやって遅れながらも会いに来ているというわけさ」


 いや、全然遅れてはないと思うが……。というかむしろ最速だし、ナンバーワンだし!

 とはいえ、こうやって言葉をかけてくれるのは俺たち的にも嬉しいものだった。卒業のためとはいえ、多少の労力を割いて出場しているのだ。

 褒められたり、お祝いされるというのは気分的にも悪いものではない。


「そうですか。まあ、約束どおり競技祭の全ての種目で優勝してきました。シラフ役員の件も解決しましたし、シンフォガリア学園の地位は巻き戻るのではないですか?」


 俺たちがこの競技祭に出場した理由は卒業の機嫌を早めるということと、王国一優秀と称されるシンフォガリア学園の顔としてその実力を指し示すことだった。

 つまり完璧とも言っていい三冠という結果を残せば間違いなく来年からのシンフォガリア学園は今年とは比べようがないくらい繁栄するだろう。


「ああ、それは本当に感謝している。しかし正直なところこうなってしまうと来年が怖いな。一体どれだけの受験者がくるのやら………」


「そのときは私も卒業していますので、気をつけてくださいね?」


「なに!?そ、そうか、フラン君は今年で卒業か。これは余計に困ったな………」


 意地の悪そうな顔を浮かべるフランに一本取られた学園長は額に手を当てながら呻きを上げている。

 そんな光景を見て俺たちは笑いながら競技祭終了の余韻に浸った。アリエスたちもその雰囲気を楽しんでいるようで終始笑いが耐えない空間が出来上がる。


「それでは、卒業の件はこれで問題ないですね?」


「ああ、それは任せておいてほしい。とはいえ卒業試験期間は卒業から一ヶ月早めに始まる。ゆえに残り一ヶ月くらいで君達はあのダンジョンに入れるようになるというわけだ」


 まあ確かに卒業してからダンジョンに入るというのは少し遅いし、何よりそのときにはもうシンフォガリア学園の生徒ではなくなっているのだ。ダンジョンに仕掛けられている結界がどのような反応を示すかわかったものではない。

 それを考えると一ヶ月前に入れるようになるというのは妥当なラインなのだろう。


「わかりました。そのときになったらまたよろしくお願いします」


「了解した。一応競技祭は終了したが学園の方ではまた催しが続いている。興味があれば行ってみるといい」


 あ、そうなのか。

 丁度腹も空いてきたところだったのでいいかもしれない。

 ………でも、アリエスたち、また食べそうだなー………。今の話を聞いた途端目をキラキラさせてるし。


「というか本当は競技祭を終わらせたくない生徒達が無理矢理続けているだけなんだが………。まあ、これも一つのイベントと思って生徒会は見逃している。見てのとおり教師陣も容認しているみたいなのでな」


 ああ、苦労してますね、生徒会長………。

 おそらく、このフランという少女はすとう優秀な生徒のようだ。周りに気を配り状況を確認し、人を上手く使う。それゆえこの学園長も信頼を寄せているし、生徒会長という大きなポジションにも収まっているのだろう。

 であれば、当然シラフの件についても相当頭を悩ませたはずだ。その原因が全て俺たちにあると考えると少しだけ悪い気持ちになってしまう。特段俺たちが何かをしたわけではないし、シラフに全ての責任があるのだが、それでもそう考えてしまうのは人間として当然だ。

 しかしタッグのときにも話したが、どちらも悪いところはなくお互いに許しあったので、この話題を今さら掘り返す必要はない。

 俺はそう思うと二人に背を向けて学園へ向けて歩き出した。


「それでは、俺たちは学園に向かいますので、また」


「ああ、私達は競技祭の後処理をしてから戻ることにする」


「学園長が真面目に働けば早く終わるだろう」


「フラン君………。それは言わないでくれ………」


 俺たちはそのやり取りのもう一度微笑み返すと闘技場の廊下を歩きその会場を後にした。








「にしても、まだ結構街は盛り上がってるね」


「そうだな。一応この後は何もないから、行きたいところがあったら言っていいぞ?」


 会場を出た俺たちは学園王国に残っている競技祭の余熱を感じながら街路を歩いていた。

 一応競技祭期間中は他の学園でも色々な催しをやっているので、それを楽しむこともできる。普段ではあまり関わらない学園との交流が持てたり、学園内部をよく見れるチャンスでもあるのだ。とはいえ正式なアポさえあれば通常時でも他の学園や学校には入れるので、場合によっては見慣れていることもあるらしい。

 俺はアリエスの言葉に反応すると自分も何か面白そうなものが無いかあたりを見渡す。

 するとシルが何かに目をつけてジッと目線を集中させていた。

 見るとそれは大きな飴が棒に取り付けられたお菓子のようで、日本で言えばりんご飴のようなで、果物を使ってはいないものの同等の大きさをほこる飴のようだ。


「シル、あれがほしいのか?」


「え!?…………い、いえ、お、お気になさらず……」


 シルはその言葉に羞恥を隠すようにして顔を俯けてしまう。

 シルは普段しっかりしているが、まだ七歳だ。他のメンバーが我侭なだけにあまり欲を見せないが、シルだってそういう気持ちは持っているだろう。

 俺はそのまま巨大飴を売っている出店に行くとその飴を一本だけ購入し、シルに手渡す。


「あんまり遠慮しなくていいからな。こういう時は普通にほしいって言えばいい」


 シルは渡された飴を嬉しそうに眺めると頬を赤くしながら、コクリと頷いた。

 このまま終わればまったくもって完璧だったのだが、そうは問屋がおろさない。


「ハク様ハク様!私にも、あの飴を買って下さい!そして私の口に突っ込んでください!それもう強引に!」


「あ!ずるいエリア姉!それなら私もほしい!」


「甘いものには勝てないのが女性ですよ、ハク様?」


「そうだねー。私もシルちゃんみたいに優しくしてほしいなー」


「マスター!妾はあそこにある激辛フードというのが気になるのだが!」


「私も飴ほしいわね」


 お、お前らな………。この状況でよくそんなことを言えるな……。


「だー、もううるさい!金は渡すから好きなだけ買って来い!それとエリアの言い方は少し卑猥だから街中で変なこと叫ぶなよ!あと、キラはもうどうにでもなってしまえ!」


 俺は息を切らしながらそう呟くと、メンバーを一度散開させ、各々好きな所に向かわせた。


「え、えっと………。なんかすみません、ハク様………」


「いや、シルは悪くないんだ。気にしなくていい」


 まったく俺のパーティーというやつは………。賑やかなのはいいことだが、少しくらい空気を読んでほしいものだ。

 結果的に俺とシルは近くのベンチに腰を下ろし、アリエスたちの気が済むまでそこに座っているのだった。








 散り散りになったメンバーが戻ってきたのは、それから一時間ほど経過した後で、皆手に抱えきれないほどの料理や品物を持っていた。

 当然それは持って歩くことが出来ないため、俺の蔵の中に収納されていく。今は部分的に蔵のスペースをアリエスたちに貸しているので、その中に各自買ってきたものを放り込んでおいた。

 それでもなお学園王国の賑わいは治まる気配を見せず、色々なところでその熱気が湧き上がっている。

 どうやら九つの学園だけでなく王国自ら盛り上げているようで、中には騎士のような者たちが店を出していたり、パフォーマンスとしてその剣技を見せている。

 もはやこれは元の世界のオリンピックかよ、と俺が心の中で呟いていると、急に耳をつんざくような鐘の音が鳴り響いた。


「なんだ、これ?」


 それはこの学園王国中に鳴り渡っているようで、競技祭の雰囲気を後押しするようなものではなく、むしろ危機感を煽るような音だった。

 すると先ほどまで柔和な表情を浮かべていた騎士たちが血相を変えて王城のある方向へと走っていく。

 そしてその直後、冒険者ギルド本部より、魔術の放送がかかる。


『警報。警報。ただ今この学園王国に得体の知れない大量の何かが、接近しているとの報告がありました。冒険者の方々はすぐさま関所前までお集まりください。繰り返します。ただ今……』


 おいおい、これってルモス村でも聞いたことのある奴じゃないか?

 あのときは俺とセルカさん、そしてジルさんが擬似的に起こしたものだったが、今回のはおそらく違う。

 完全に予想外の事態だ。

 俺たちは一瞬にして表情を引き締めると、転移を使い関所まで向かおうとした。

 だが、ここである一人のメンバーの様子がおかしいことに気がつく。


「ま、まさか、クガなの、か?い、いや、そんなはずは………」


 それはいつも超然としている精霊女王のキラで、顔色は非常に悪く冷や汗も流れ始めている。


「おい、どうしたんだキラ?」


 俺たちはそのあきらかに様子がおかしいキラに心配の目線を送る。


「だ、が、あれは、間違いない……。どうして……」


 それでもなおうろたえるキラを見た俺は咄嗟に気配探知を使用して、今接近してきているという大群の気配を探った。


「ッ!?こ、これは………」


 そこには一つの大きな気配と、それに群がるようにして蠢いている大量の小さな気配が捉えられた。

 しかもそれはかつて第二ダンジョンで神核の住処に篭城したときのキラたち精霊の気配と酷似していて、より一層俺は困惑したのだった。




 そしてこれより、過去におきた精霊の物語が紐解かれることとなる。


次回はキラの過去について描きます!

誤字、脱字がありましたらお教えください!


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