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第百八十六話 祝賀会

今回はギャグ成分多めです!

では第百八十六話です!

「「「「「「「「「「乾杯――――――――!!!」」」」」」」」」」


 三日間に渡って行われた競技祭の予選は俺がバーリに勝利することによって全ての日程が終了し本選である全学園対抗競技祭の代表メンバーが出揃った。

 結果的に俺たちのパーティーメンバーが全ての枠を掻っ攫う形になってしまったが、それは初めからわかっていたことなので今さらと言えば今さらな話である。

 で、現在。個人戦が終了したその後。

 丁度、日も暮れ始めていたということで俺たちはそのまま夕飯を街に出て食べることになったのだが、そこで色々と困った事態が起きていたのだ。


「いやー、やっぱり私達の圧勝だったね、ハクにぃ!」


「………ああ、そうだな」


「私とシルのコンビネーションには誰だって勝てません!」


「…………ああ、そうだな」


「ふふん、私の剣捌きに皆見とれてたよねー!」


「……………ああ、そうだな」


「ん?どうしたマスター?手が動いていないようだが?」


 そこで俺は今まで堪えていた気持ちを爆発させるように頭を抑えながら声を上げた。


「お前らが食べすぎなんだよ!!!って、そこ!なんでちゃっかり混ざってんだよ!」


 俺が指差した先にはグラスとギラン、あろうことか学園長までが食事の席に参加していた。


「「「いただいてまーす」」」


「うるせえ!!!」


 ちなみに俺たちが今いる場所は学園王国でもそれなりに有名な居酒屋のようで比較的料理の値段は安いのだが、それでも俺のパーティーメンバーの消費量を考えるとやはり財布事情は肥えるものではない。というか減る一方である。

 見ればキラやルルンは既に大きな酒樽を空けてしまっており料理代に酒代までつかされているようだった。

 この世界の飲酒規制は十八歳から解除されるらしく、そのルールに則れば俺は飲むことができるのだが、やはり元の世界の法を意識してしまいなかなか手を付けられない。

 やたらとキラが酒を勧めてくるのだが、丁重にお断りしてお茶をすすって箸を動かす。しかしその間もアリエスたちは流し込むようにご飯を頬張っており、楽しそうな雰囲気が伝わってくる。

 だがそこにしれっと一番容認できない人物が入り込んでおり、埋もれるように酒樽を囲んでいる光景が目に飛び込んできた。


「で、なんでお前までここにいるんだよ、フレイヤ」


「あら、私だって頑張ったんだからこれくらいの報酬はあって当然じゃない?」


「どこがだ!!!基本的にお前ら神は酒豪なんだからここに居られると困るんだよ!!」


「よくわかってるじゃない。だったらほら、あなたも一杯どうかしら?」


 フレイヤは目じりをすっかり落としながら俺に酒が注がれた器を差し出してくる。


「飲まねえよ!!!いいからお前は早々に消えろ!与えた魔力もそろそろなくなるだろ!」


 俺はフレイヤに怒鳴るようにそう呟き、再び自分の料理に手を伸ばした。

 すると隣にいたアリエスがこちらを向き頬を膨らませながら言葉を投げてくる。


「もう、ハクにぃ!女性にそういうこと言ったらだめでしょ!男性はいつでも女性に優しくなくっちゃ!!!」


「え、あ、はい。なんかスミマセン………」


 いやいやいやいや、なんで俺が謝る展開になってるんだ!?

 世の中理不尽だな、おい!


「いやー、にしてもまさか教え子に奢ってもらう日が来るなんてなー。ギラン先生感激ですよ」


 ギランが俺たちのやり取りに割ってはいるような形で声を上げてくる。


「ですよねー。私もそれは同感です。年長者の私が奢られる日が来るなんて思いませんでしたー」


 それに続くように学園長までも言葉をおもむろに吐き出してくる。


「いや、先生たちは自腹ですから。というか学園長、口調変わってますよ………」


「何!?ハク、お前俺からもらった恩を忘れたのか!?」


「そうです!?私だってあなたちのそ、つぎょう、をー………」


「って潰れたんかい!一番飲めそうな見た目しておいて弱いな!というか先生に恩なんて売った覚えないですからね」


 俺は本当にどうしようもない大人たちを眺めながら、再度自分の料理に手を付け始める。

 だがそこで一つおかしいことに気がついた。

 先程までは俺に目の前にゴブリン肉のから揚げが五つほど置かれていたはずなのだが、今はその姿がどこにもない。

 隣にはアリエスと珍しくサシリが座っている。犯人として考えられるとすればこの二人だが、さてどちらか。

 そう考えた俺はまず何も言葉を発さずにサシリの方を見てみることにする。

 するとそこには口に明らかにから揚げの油をつけて、モグモグと頬を膨らましているリス型の吸血鬼が佇んでいた。

 わかりやすいな!!!もう少し隠すとかしないのかよ………。


「あー、サシリさん?ここに置いてあったから揚げどこにいったかわかる?」


 俺は出来るだけ優しい口調でモグモグしているサシリに問いかける。その言葉にサシリは無言でこちらに首を動かすと、数秒俺と目を合わせた後何事もなかったかのように目線を元に戻した。


「そんなので誤魔化せるわけないだろおおおおお!!!」


 俺はまたしても叫び声をあげ、その場で蹲る。

 な、なぜ俺たちのパーティーの食事会はこうも悲惨なことになってしまうのだろう。俺か?リーダーである俺が悪いのか?

 お願いだから、教えてくれ神様!!!


『主様が既に神じゃろうに………』


 リアが俺に冷静な突っ込みを入れ呆れた顔を心の中で俺に向けてくる。

 ちなみにリアは俺の中に居るとはいえ、こっそり自分で作り出した酒を精神的に飲んでおり、すっかりほろ酔い気分を味わっているようだ。

 さすがは神妃、もはやなんでも有りだな……。

 と思っていると後ろからグラスの声が静かに聞こえてきた。


「なあ、先生?俺たち友達だよな?だったらギラン先生たちには奢らなくても俺には奢ってくれる………か?」


 はあ…………。

 なにを言っているんだ、こいつは。

 俺はむしろそのグラスに笑いかけながらその肩をガッチリと掴み言葉を返す。


「いやいや、友達だからこそこういうときは助け合いだろ?だから今日の料金半分持ってくれよ?それが友人ってものだろ?」


「うっ!?え、遠慮しておきます………」


 グラスはこれはまずい!と判断したようですごすごと俺の腕を払いそのまま自分の席まで戻っていく。

 お前に奢るのは俺に一撃でもくらわせてからだ、と内心呟くとサシリに食べられてしまったから揚げをもう一度注文して食事を再開した。

 どうやらアリエスたちの食欲は下がるどころか上がる一方のようで、伝票に書ききれないくらい大量の料理を注文しているようだ。

 これは、さすがに俺も腹をくくらないといけないかもな……。

 そう思い蔵の中にある金貨の枚数を確かめようとしたとき、ギランが不意に話しかけてきた。


「まあ、奢りの件は前向きに検討してもらうとして、今日の事後報告だ」


 いや、奢らないよ?絶対に。


「というと?」


「シラフとバーリのことだ。お前が個人戦においてバーリに勝利した後、シラフは逃げるようにして特別観戦席から出てきたんだが、そこを俺と警備隊がしっかり取り押さえておいた。というのも前々からシラフの奴の悪業はいくつかあったから警備隊も動いてくれたし、証拠もある程度集まっていたから潮時だったってことだな。そのままシラフは王城に連行、今は王城の警備隊から取調べを受けているところだろう」


 へー、なかなか動きが早いんだな。あの試合が終了してからまだ数時間しか経っていないはずなのに、ここまで事態が進むとは。

 意外にこの国の警備隊とやらは優秀なのかもしれない。


「で、残っているバーリのことだが、確かにお前に悪意を持って攻撃してきたかもしれないが、どれも糾弾できるものが少なくて、結果的に学園内での処分ということになった。本来ならそこの学園長が説明するはずだったんだが、この状態だとどうしようもない。だから詳しく聞きたかったら明日にでも聞いてみるんだな」


 まあ、確かにバーリは平たく言えば決闘を仕掛けてきただけなので処罰しようと思ってもなかなか出来ないのだろう。

 ギランは俺にそれだけ呟くとまた新しい酒樽をあけ豪快に喉に流し込んでいく。

 結局その後も約三時間ほどその宴会は続き、解散までかなりの時間を消費したのだった。







 会計は一応、パーティーの分は俺のほうで持ち、グラスと学園長、ギランは先程の言葉に反して大人しく自分の代金を払って行った。おそらく半ば冗談だったんだろう。

 ギランとグラスは倒れて動けなくなっている学園長を引き連れて夜道を歩いて帰り、残された俺たちもそろそろ帰ろうかとしていたとき、突然アリエスが赤い顔をこちらに向け倒れかかってきた。


「うにぃ……。は、はくにぃ……?ま、まだたべられる………よ?だから、まだここに……」


「お、おい、どうした?」


 するとエリアがしまったという顔をしながら自分のコップを持ち上げながら言葉を呟く。


「多分ですけど、私のお酒を間違えて飲んだんだと思います………。ですから完全に酔ってますね……」


 え、マジで?

 それはなんというか………事故だな。

 やはり十一歳という小さな体には酒という飲み物は早かったようで、アリエスはそのまま小さな寝息を立てて眠ってしまった。


「うーん、これはどうするか………」


 俺はそのアリエスの体を支えながらそう呟いた。


「では、ハク様。アリエスを少しだけ夜風に当ててやってくれませんか?そちらの方が酔いが覚めると思いますので」


 シラが少しだけ笑いながらそう呟く。


「それはいいが、シラたちはどうするんだ?」


 俺が仮にアリエスを外の風に当てたとしても、それではシラたちは暇になってしまう。ここで待たせるというのも悪いだろう。


「私達は先に寮に戻っておきます。確かキラとサシリは今日、トイレ掃除でしたよね?」


「「あ」」


 忘れていたな、この二人………。


「ですから、少しだけ早めに帰らせていただきます。ハク様はアリエスを連れて女子寮の近くまで来ていただければ私が迎えにいきますので心配しないでください」


 まあ、それなら問題ないか。夜中ではあるけれど女子寮に侵入するわけではないので問題はないだろう。


「よし、ならそれでいこう。店主、会計はここにおいておくぞ」


「へい、毎度あり」


 俺は金貨の入った袋を机に置くとそのままアリエスをおんぶして学園王国の夜道をゆっくりと歩き出した。

 空を眺めれば満天の星空が広がっており、空気は驚くほど澄んでいるようだ。


「ほら、星空が綺麗だぞアリエス」


 俺は寝ているアリエスに返答を求めるわけでもなくそう呟き、ひたすら学園の寮まで歩き続けた。つい最近まで賑やかだった街も今は落ち着いており、風の音だけが耳を刺激する静かな空間が俺たちを包んでいる。

 するとその中で小さく響くようにアリエスは目を閉じたまま口を動かしていた。


「ハクにぃ…………大好き………だよ………」


 それは寝言といえば寝言なのかもしれないが、しっかりと気持ちがこもっている言葉で、俺は一瞬ドキっとしてしまった。だがすぐさま目線を前に戻すと誰にも聞こえないような声で俺も言葉を呟く。


「俺も好きだよ、アリエス」


 それは恋愛対象として言った言葉なのかは俺自身もわからなかったが、アリエスという存在が俺の中で特別になっていることを如実に現しているようだ。

 とはいえまだアリエスは十一歳だし、仮に恋心が芽生えたとしても付き合うのはまだまだ先になるな、と俺は苦笑しながら学園の寮まで足を向けたのだった。


 俺はその後アリエスをしっかりとシラの下まで送り届け、自分の寮に戻った。そしてそのままこれからの学園生活に思いを馳せながら眠りにつくのだった。


今回のお話は全て最後のアリエスが持って行きましたね(笑)

しかしこの作品においてハクとアリエスの関係というのはかなり重要になると考えています。それが恋なのか、はたまた別の感情なのか、それはおそらく読者の皆様の受け取り方次第で変わってくると思います。

当然、アリエスはハクに好意を持っているのでその気はあるのですが、肝心のハクは微妙な反応しか返さないのです。

しかしそれこそ読者の皆様に想像してほしいことですので、これからもこの作品を末永く読んでいただけると幸いです!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

次回の更新は今日の午後五時以降です!

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