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第百七十六話 初授業、二

今回も戦闘パートです!

では第百七十六話です!

 俺とキラの人外レベルの試合が終わったその後、他のメンバー達も次々と戦いを開始し始めていた。

 ルルンやサシリといったパーティー内最強クラスの実力を持つメンバーは何の問題もなく勝利を重ねていき、他のメンバーは勝ったり負けたりとなかなか厳しい戦いを強いられていた。

 中でもアリエス対シラの戦いは白熱し、試合時間三十分超えという破格の試合時間をたたき出し、お互いの体力を削り合う戦いが繰り広げられたのだ。シラは常日頃からサタラリング・バキという比較的軽めの武器を使用いていることからその動きは出来るだけ一撃を早く繰り出すことを意識しているようで、手首を捻ったり、腕を縮めたりといった細かい動作に重きを置いているようだった。反対にアリエスはまるで本当に絶離剣を振るうかのように一撃に全力を篭めるようなスタイルで動いており剣が振るわれる度、地面を震撼させるような衝撃を伝えている。

 まあ結果的にこの戦いは小回りのきいたシラが一歩上手に行っていたようで、アリエスの隙を突くような攻撃を仕掛けて勝利を勝ち取った。さすがにここまでの長期戦になってしまうとお互い疲れが溜まってしまい、試合直後は二人とも動けなくなるほど疲弊しているようで俺とキラが二人を休憩所まで運ぶという珍しい出来事まで引き起こしたのだ。

 で、当の俺はというとキラとの試合後も順調に勝ち進んでいったのだが、その中でもエリアとの戦いはかなり苦戦した。

 というのもエリアは魔武道祭で思い知ったように魔法だけでなく剣の扱いも超人並みに優れており、魔剣や能力なしの状態での戦闘は非常に困難を極めたのだ。俺が切りかかったと思えば、すぐさま弾かれカウンターが飛んできて、またそれをかわしたかと思えば、背後から攻撃が飛んでくるという常に追い詰められっぱなしの戦いが展開された。

 とはいえそこはなんとか経験の差と言うやつで勝利し、リーダーとしての威厳はと持つことが出来た。

 俺たちの戦いを見ていた担任のギランは終始目を回しているようで、初めのうちは評価するような言葉を口にしていたのだが、今となっては半分魂が抜けているような状態になっており、こちらとしても非常に申し訳ない気分になってしまっている。

 やはり普通の人間からすると俺たちの戦いは高次元過ぎるようで、周りで見ていた他学年の生徒も口を開けて固まってしまっていた。

 だが、問題はここからだ。

 次の試合は強敵であろうルルンとサシリが連続で続く。この二人に関しては間違いなくキラとの勝負より激戦となるはずだ。


「よ、よーし………。つ、次はハクとルルンだな………。頼むからこれ以上被害を広げないでくれよ……」


 今のギランは授業開始時に見られた禍々しいまでの覇気がまったく感じられず、もはや恐怖におびえる子羊のような顔になってしまっている。

 うーん、やっぱり授業にしても申し訳なくなってきてしまうな……。あとで何か埋め合わせでも考えておくか。

 俺はそんな想像を頭によぎらせながらルルンが待つ場所まで足を運んだ。


「そういえば私とハク君って戦うの意外となかったよね?」


「ん?そうだっけ?」


 確かに言われてみればエルヴィニアで行われた試験のときも俺には勝てないという理由で勝負を免除されたし、その後も基本分かれて戦う機会が多かったので直接対決というのは新鮮である。


「まあ、そういうことならこの戦い楽しませてもらうぜ?」


「ふふん、いいのかな、そんなこと言って?剣だけの勝負なら私も負けないよ?」


 俺たちがお互いを挑発するように言葉を投げかけていると、そこに試合開始の合図がギランから投げられた。


「試合開始!!!」


 その言葉がかかった瞬間、先に動いたのはルルンの方だった。そのスピードはキラほどではないものの洗練されており、動きに澱みがまったくない。

 一目見ただけでも危機感を煽られるその足裁きに若干押されながらもルルンが剣を抜き放つまで、じっと身構えていた。


「それじゃあ、いくよ!」


 ルルンは勢いよくそう叫ぶと俺の首元目掛けて重たい木剣を突き出してきた。


「ッ!?」


 ま、マジか……。

 この剣を片手で使って突き技かよ……。どんな筋力してるんだ……。

 ギランから支給された木剣は俺が使っているエルテナと同じくらいの重さを誇っており、普段レイピアを使っているルルンからすれば、相当重たいはずなのだが、それをまったく感じさせない攻撃が俺目掛けて飛んできた。

 俺は予想外の攻撃に一瞬反応が遅れたものの、その攻撃をなんとか受け流しこちらも攻撃を開始する。


「お返しだ!!!」


 俺が持っている剣はルルンの体をZ字を書くように移動し三連撃の斬り技を放つ。もちろんこれは剣を特段加速させているわけではないのでルール上問題はない。

 しかしルルンはその攻撃を軽やかなステップで避けると、すぐさまその流れを残しつつ剣を繰り出してくる。

 その動きはまるで舞台の上で踊っているような足捌きで、俺の中にある常識がまったく通用しない動作で、目で追おうとしても容易に追えるものではなかった。


「くっ!?さすがは舞踏姫と呼ばれていたことはあるな!」


「へへーん、どう?驚いた?」


 ルルンは俺に攻撃しながらもまだまだ余裕のようで、その速度と威力は落ちる気配がない。

 さすがにこのままではまずいと判断した俺は少し奇策を講じてみることにした。


「ああ、驚いたさ。だが、これはどうする?」


 俺はそう呟くと右手に持っている木剣を思いっきり地面に叩きつけ砂煙を巻き上げる。この状況になれば気配探知を使えない俺も相手の位置を捕捉できなくなってしまうのだが、それはもう一種の賭けのようなもので、ルルンの隙を見つけるために放ったものだ。


「な!?」


 どうやらこれにはルルンも驚いているようで上手く意表をつけたらしい。

 そのままルルンの背後に回りこむように動いた俺はおそらくルルンがいるであろう空間に剣を振り下ろした。


「これで終わりだ!」


 だがその剣は何故か何の物体にも当たらず空を切る。


「え?」


 その瞬間俺の背中に悪寒が走ったかと思うと、さらにその背後から五つの剣線が煌き俺の体に放たれていた。


「ッッッ!?」


 全力で前に転がるようにその攻撃を回避した俺は急いで砂煙の中から脱出した。


「ふーん、やっぱりハク君は強いね。今の攻撃はさすがに当たったと思ったんだけどなー」


「な、なんで俺の位置がわかったんだ?」


 間違いなくあの距離とあの速度なら俺の攻撃はおろかその動きすら読めないタイミングだったはずだ。それをこのエルフはいとも簡単に避け、あろうことか攻撃までしてきたのだ。その一連の動きに驚かないはずがない。


「うーん、まあそれは種族の問題ってやつかな。ほらシラちゃんたち獣人族も耳と鼻は利くでしょ?私達エルフも少しだけどそれに似たようなことが出来るってわけ。だから気配探知が使えない状態で私の背後を取ろうだなんて初めから無茶な話なんだよー」


 そ、それは初めて聞いたんだが………。

 というかやっぱり他種族ってチートすぎやしませんかね?

 え?お前が言うなって?

 いや、こういう状況になると種族そのものの個体値が大切になってくるわけですよ、はい。それを考えるとやっぱり人族って不利だなーって思っただけです!

 俺は改めてその事実を痛感すると、もう一度腰を落として戦闘態勢に入った。


「お、いいね。私もまだまだハク君と戦いたいよ!」


 くそ、本当に余裕ぶってるな………。


「ならこれでどうだ!」


 その瞬間、俺は今の状態で出せる全力の速さでグラウンドを駆けルルンに接近した。その速さは先程のキラと同レベルのスピードでルルンが動き出す前に俺の剣は動きだす。


「はああああ!!!」


 左腹を薙ぐように繰り出された剣はすぐさま上に上がり全力で振り下ろす。この計二連撃の太刀を俺はルルンに打ち放った。


「ッ!?」


 その攻撃は初めてルルンの剣を捉え、体に衝撃を走らせる。基本的にルルンのような戦い方をする奴は打撃というベクトルにめっぽう弱い。というのもレイピアの様な軽い武器を使用する場合、そもそも攻撃を受ける前に避けるか、さらに攻撃を打ち返すという超攻撃特化な行動スタイルを描き出すのだ。

 ゆえにいくら武器が重たい木剣に変わったからといって根本の弱点は変わらず、俺の攻撃はルルンの態勢を大きく崩した。


「ま、まだだよ!」


 しかしルルンもさすが舞踏姫と呼ばれただけのことはあり、その弱点についても熟知しているようで、その衝撃を上手く使い体を地面に倒すことによって難を逃れる。

 だがせっかく訪れた好機を逃すわけにも行かないので、そのルルンを追う形で俺も攻撃を放つ。


「逃がすか!!!」


 するとまるでその瞬間を待っていたかのようにルルンの表情が綻んだ。

 まずい!と思った時にはもう既に遅く、ルルンの剣がありえない速度で俺に突き出された。それはレイピアという武器を使っている者だからこそ出来る攻撃で、突き技だけの高速連撃というまさに超人的な攻撃を繰り出してきたのだ。これが実際にレイピアを使っているのなら特段おかしなことではないが、今はエルテナと同じ重さの木剣を使用しているのだ。この状況でこの技を使えること自体どうかしている。

 目の前に迫り来る攻撃を見つめながら俺はこの連撃をどう対処するかひたすら考えていた。

 というのもこの攻撃をどうにかする手段はないこともない。

 だがそれは間違いなく俺の奥の手なのだ。ここで使用してしまえば、この後に待っているサシリとの戦闘が絶望的なものになってしまう。

 しかしこのままでは、どれだけ回避しようと確実に一撃は受けてしまうことになるのも事実だ。

 やはり迷ってはいられないか………。

 結局そう思い至った俺は剣を構え、その技の文言を口にする。


黒の章(インフィニティー)


 それは本来であるならば魔力や剣に宿る力を全力で解放して発動するものなのだが、今回はそういった類の行為が禁止されているのでそれはできない。

 では俺は何のためにこの言葉を呟いたかというと、何のことはない単に黒の章(インフィニティー)の動きを再現するために口にしたのだ。

 確かに何の力も込めなければ、いくら黒の章(インフィニティー)とはいえただの連続技にしかならない。

 だがそれでも黒の章(インフィニティー)というのはやはり特別なもので動きだけでも洗練された剣線を描きだすのだ。

 俺は何の力も入っていない剣をひたすら黒の章(インフィニティー)の動きに合わせ振るっていく。

 それはルルンの攻撃を全て打ち落とし、その首筋に剣を突きつけた。


「今度こそ終わりだな」


 ルルンは自分の得意技が防がれたことに相当驚いていたが、しばらくすると持っていた木剣を地面に落とし降参のポーズをとる。


「まったく、今ならハク君にも勝てると思ったのに、本当に君は底が見えないねー」


 ルルンは嬉しいような悔しいようなよくわからない表情をしていたが、その声を打ち消すようにギランの笛が試合終了の知らせを運んだ。


 こうしてルルンとの勝負もなんとか切り抜けたのだが、最後に待っているサシリとの戦いに正直青ざめながら俺は再び剣を握るのだった。


次回は再びあのカリデラでの戦いが再発します!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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