表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
169/1020

第百六十八話 学園長との対談、二

すみません!今回はまだ日常パートに入れませんでした!

では第百六十八話です!

 全学園対抗競技祭。

 それは一年に一度開かれるもので、その名の通りこの学園王国にある九つ全ての学園が競い合ういわば体育祭のようなものだ。しかも同時に文化祭のような側面を持つ催しであり、この期間中は各学園において色々な出し物も並立して出されるようで、むしろそちらをメインにするような考え方もあるらしくどの学園もとてつもない盛り上がりを見せるらしい。

 とはいえ全学園対抗競技祭と銘打っている以上、当然その競技祭というのが一番の集客になっており、その会場は例年地面が見えなくなるほどの動員数を見せている。

 で、その全学園対抗競技祭というのはどんなものかと言うと、各学園より選出された学生が他の学園の生徒と模擬戦を繰り広げるというものだ。

 競技祭というくらいなのでもっと種目的ななにかをするのかとも思ったがそうではないらしく、単純に実力を競い合う場なのだという。

 一見すれば完全にシルヴィニクス王国で行われた魔武道祭となんら変わらないように見えるが、これがまったくもって違う内容になっているのだ。

 というのもこの全学園対抗競技祭というのは三つの戦いのバトルが用意されている。

 まずは個人戦。

 これは各学園一人だけが出場できるものとなっており、九人のトーナメントを組み上げる事によって対戦していくものだ。去年の優勝校がシードを獲得して進められ完全な個人の実力が試されるステージとなっている。

 次にタッグ戦。

 こちらは各学園から二人を選出しタッグを組むことによって勝負が行われる戦いとなっている。二対二の勝負はいわゆるコンビネーションが重要視さ単純な実力比べではなくその連携が問われる試合形式のようだ。

 そして最後は団体戦。

 これに関しては各学園三人だけ出場させ、先方、中堅、大将と役職を決め一対一の戦いを二回繰り返すものになっている。この戦いは途中で役職の変換が可能なようで、どのタイミングでどの選手を出すかという戦略的な側面が問われるものらしい。

 そして一番大切なのが一人における出場回数だ。

 この競技祭において一人の出場回数は一回だけとなっており、例えば俺が個人戦に出場すると他の種目には参加できなくなるということだ。おそらく一人の力で全てを攻略させないようにするために取られた措置なのだろう。

 またこの競技祭は事前に各学園内で予選が行われ代表を選出するようで、中には他校の試合を観察しに来たりする輩もいるらしい。

 俺たちは学園長から一通りその話を聞き終わると、もはや殆ど残っていないお茶に手をつけ話し出した。


「で、その競技祭に俺たちが参加すればいいんですか?」


「ああ、そうしてもらえると助かる。この学園王国にある学園は全て四年制なのだが、その上級生と比べても君達は圧倒的に強い。その力を使わない手はないだろう」


 ん?四年制?

 ってことは本来なら四年間は通わないといけないところを俺たちは三ヶ月で卒業するのか。これって本当にやっていいことなのか?


「それは理解しましたが、四年制のところを三ヶ月で卒業してもいいものなのでしょうか?さすがに速すぎる気もしますが……」


「問題ない。現に飛び級という形で一年に数学年進級するものもいるのでな。それにこの学園が建てられた当初は一年制だったらしく、ダンジョンの結界もそれに合わせて展開されているから、心配はないのだ」


 そういうことなら問題はないか。

 とはいえまたトーナメントか…………。つい一ヶ月ほど前に魔武道祭に出場したばかりなのにまたしてもこの様な試合に参加することになるとは、ひどい偶然もあったものだ。

 この競技祭は完全な自主性で行われており、毎年多くの立候補者が名乗りを上げるが最悪出場しなくても問題はないらしい。しかし卒業のタイミングをかなり短縮してもらっているので断ることもできない。

 まあ、別に三ヶ月の間暇になるので別にいいか、と思っていたところなにやら学園長がボソボソと呟き始めた。


「ま、まあ実のところ緊急事態のようだし恩を売るつもりはなかったのだが………、このごろ我が学園の成績が芳しくないのでな………。さすがにこの辺りで一位を取っておかねば国王陛下から何を言われるかわからないのだ………」


 聞きたくなかった新事実!!!

 もう完全に私欲じゃねえか!

 そんなのでいいのか学園長!というか俺たちが入学しなかったらどうするつもりだったんだ………。

 だがまあ王国一と名乗っている学園が競技祭において勝てないというのも確かに問題といえば問題か………。

 するとここで寝そうになっていたルルンが学園長に質問を投げた。


「その競技祭で優勝したら何か商品とか出るの?」


 ルルンはいつも通りの口調で話しかける。まあエルフであるルルンはこの学園長より遥かに長い年月を生きているだろうし、敬語も使わないつもりなのだろう。

 そういえば魔武道祭のときも優勝者には商品というか、あのときは魔剣だったがなにかしら得るものがあったはずである。


「ああ、それはいくつかあるが、まあ皆がほしがる物といえば冒険者資格の譲渡と国王陛下から賜る栄誉賞くらいだろう。冒険者資格といのは卒業時に冒険者になる場合、競技祭で優勝経験があると自動的にBランクになれるというものだ。これに関しては君達には特段関係ないだろう。何せSSSランク冒険者のパーティーだ。取ろうと思えば他のメンバーだって問題なくSランクくらいは取れてしまうはずだからな」


 まあ今の俺たちに冒険者ランクが必要か、と言われればまったく必要ないといっても過言ではない。最初は生活費を得るために始めたものだったが、今ではこれまでの活動による褒賞金とシルヴィニクス王国とカリデラ城下町からの多額の支援金が入ってきている。というのもシルヴィニクス王国はエリアの護衛代と銘打って度々送られてくるし、サシリに関しては完全に君主なのでお金に困るということはまずない。

 よって今さら冒険者になる必要は欠片もないのだ。


「それと栄誉賞の件だが、これは競技祭の表彰式において国王陛下から直々に渡されるものだ。やはり国王陛下から直接渡されるというのは皆感激するらしく、そのために出場を決めるものもいるくらいなのだ」


 するとその学園長の言葉に続くようにエリアが口を開いた。


「ここの国王はかなり人がいい人ですので信頼が厚いんでしょうね。お父様もよく気が合うと言っていましたし」


 エリアはさすが王族ということもあってここの国王のことを知っているようだ。まあエリアがそういうなら、相当器の大きい王なのだろう。


「お、お父様?し、失礼、そちらの女性はいったい………」


 ああ、そういえば説明してなかったっけ?

 受験票には名前しか書いてないからわからなかったのか。

 その言葉を聞いていたエリアは軽く微笑みながら、自分の自己紹介を軽く述べた。


「はい、私はエリルミア=シルヴィニクスといいます。シルヴィニクス王国第二王女ですが今はハク様の冒険に付いていっていますので普通に接してくださって結構です」


「な!?こ、これは申し訳ありませんでした!!!このようなご無礼お許しください!!」


 まあ、あのシルヴィニクス王国の王女がいきなり目の前に現れたらこういう反応になるわな。

 俺は隣でその光景を見守っていたのだが、エリアは更に笑いながら言葉を紡いだ。


「ふふ、私に驚くのもいいですが他の皆さんのほうがもっと凄いんですよ?」


「へ?」


 その言葉をかわきりに俺のパーティーメンバーの自己紹介が始まった。今までやってきたことや、自分の出身、また俺との関係など、とにかくあらゆる情報をこの学園長に叩き込んだ。中でもキラの存在を知ったときは卒倒しかけたので慌てて支えに動いたのは余談である。

 その後俺たちは今後の予定を話し合い始めた。


「で、その競技祭の予選というのはいつから始まるんですか?」


「それは入学式から二週間後だ。正直ってこのタイミングに開催するのは入学して間もない学生に上級生の実力を今後の刺激にしてもらう狙いがあるのだが、君達の場合は関係なく全力でやってくれて大丈夫だ。だが、先程のように校舎を破壊するのは止めてほしい………」


 あ、ここでその話題が出てきたか。

 あれは少し調子に乗りすぎたところもあるので、次は心配要らないだろう。多分だけど………。


「わかりました。メンバーの選出はこちらで決めていいんですよね?」


「ああ、大丈夫だ。むしろ君達に決めてもらいたい。私達では君達の力を推し量れないのでね」


 見たところ確かにこの学園長も強いのだが、俺たちにパーティーに匹敵するほどの力は持っていないだる。おそらくアリエスが魔術を全力で唱えた瞬間何の抵抗も出来ずに吹き飛ばされてしまうはずだ。それなのに俺たちの編成を考えろというほうが無茶だろう。

 俺はその言葉を聞き終わると残っていたお茶を飲み干し、徐に立ち上がる。


「では今日のところは失礼します。次来るのは入試の結果発表のときになりますが………」


「それも心配いらない。実技はもちろん、筆記試験のほうも全員が満点だった。これほどの成績を見せられておいて不合格にするほうがどうかしている」


 お、どうやら俺のテストも問題なかったようだ。これはキラとサシリに感謝だな。あとで何かお礼でも考えておくか。

 いや、サシリはまだしもキラはまた抱き枕の刑と所望してくる可能性があるので慎重に行くべきだ。

 だってあれ地味に拷問なんだよ………。常に体に柔らかいものが当たってくるし、女の子特有の甘いにおいと、綺麗な顔が常に俺の理性を揺さぶってくるんだぜ?

あれを耐え切るのは本当に地獄なのだ。もちろん断じて変なことはしていない、断じて!

俺はその想像を頭を振って打ち消すと、そのまま学園長に軽く挨拶してその部屋から出ようとする。


「それでは、また入学式で」


「ああ、卒業とダンジョンの件は心配要らない。こちらに任せてほしい」


 その言葉を聞いた俺は先にメンバーを部屋から出すと、それに続いてその扉を潜ろうとした。

 だがここで学園長から不意に呼び止められてしまう。


「少し待ってもらえるかな」


「なんでしょうか?」


 すると学園長はもの凄く言いにくそうな顔を俺に向けながら話し出した。


「君のパーティーにいたあの獣人族の二人についてなのだが」


 そう言われた瞬間、俺は少しだけ威圧を滲ませる。

もしかするとこの人も獣人族を差別する人間なのか?

そう思った俺は単刀直入に聞いてみることにする。


「まさか学園長ともあろう人が人種差別をするのですか?」


「いや、そういうわけではない。この国は基本的にどのような人種の人間であっても快く受け入れる。もちろん私もな」


 俺はその返答に安心すると、さらに疑問符を浮かべて問い返した。


「では一体なんですか?」


「君は………。あの二人の苗字であるミルリスという言葉に聞き覚えはないのかね?」


 は?

 いやいや、そんなこと言われても俺にわかるはずがない。シラとシルは長い間森の奥で生活していたようなので苗字がどうだとか考えたこともなかった。


「い、いえ、まったくわかりませんが。それが何か?」


「いや、知らないのならそれでいいのだ。あの二人も話していないのならおそらく理由があるのだろう」


 学園長はそう言うと今度こそ俺を送り出し、再び部屋の中に入っていった。


 俺はその言葉の意味がわからないまま部屋を後にし転移で宿に戻った。


 だがこのミルリスという名前が後に大事件を引き起こすことになるとは今の俺はまったく予想していなかったのだった。


次回こそは日常パートを描きます!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ