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第百五十九話 集会、二

今回は集会での会話がメインとなります!

では第百五十九話です!

 青白く光る輝石が埋め込まれた円卓は、それを囲う五人の冒険者たちの顔を照らし出していた。その光は強くなったり弱くなったりと、まるで呼吸しているかのように小さな点滅を繰り返す。

 俺は椅子の背もたれに大きく体重をかけ、右足を左足の上に置くような形で組みながら、話し出した第一位の言葉を聞いていた。

 漂っている空気は完全に張り詰めており、呼吸をすることさえも難しく感じてしまうほどだ。実際この冒険者達のレベルはよくわかっていないが、力とは関係ないなにかが俺に襲い掛かってきている。

 とはいえさすがにキラや神核、もとの世界では十二階神との戦闘を潜り抜けてきている俺からすれば何の苦もなくその場に佇むことができた。これがもし普通の冒険者であれば泡を吹いて倒れていてもおかしくはない。そう、感じてしまうほどこの部屋の空気は次元が違ったのだ。


「それじゃあ、会議を始める前に軽く自己紹介といこう。今回から加入した新人君もいるみたいだし、そのほうがスムーズだろう」


 俺の斜め右に座っている第一位の美男子がそう口を開き話し始めた。確かに俺はイロアとイナアの二人のことは知っているが、残りの二人についてはまったく情報がない。それはその二人も同じはずで、初めの自己紹介というのは必要なものだろう。


「僕の名前はジュナス=リューカ。一応SSSランク冒険者の一位ということいなっている。よろしく頼むよ」


 次は順番的に言ってイロアの番だ。第一位のジュナスから始まりイロアに続く形で序列順に離していくらしい。


「私はイロア=ハーイル。黄金の閃光というパーティーのリーダーをしている。よろしく」


 そして次は序列三位である俺の番だ。この自己紹介は間違いなく俺のためにやっているようなものなので、出来るだけ言葉を選んで話す。


「ハク=リアスリオンだ。シルヴィニクス王国でラオから譲り受ける形でSSSランクに昇格した。以後よろしく」


 よし、これなら問題ないだろう。

 俺なりの精一杯だ。精神状態的には神妃化しているのでリアの雰囲気も混ざっているため、わりと落ち着いてはるのだが、とはいえ元の俺は人間なので多少緊張しているようだ。

 そして件の第四位。


「俺の名前はザッハー=マディライだ。俺の名前に関しては適当に呼んでくれていい。だが、堅苦しいのはなしだ」


 そして最後はイナア。


「私はイナア=フリージスだよ!私はソロだからいっつも一人なんだ。あ、果物が大好きです!よろしく!」


 うん、やっぱりそうなのか。

 会うたびに果物を持っていたからそうなのではないかと思っていたが、どうやら本当に好きなようだ。


「よし、全員の自己紹介も終わったことだし、さっそく会議に移ろうか。イロア、今回の議題を発表してくれないかい?」


 ジュナスにそう言われたイロアは腕を胸の前で組み淡々と話し出した。


「今回の議題はオナミス帝国の侵攻についてだ。この件は前々から上がっていたものだが、先日エルヴィニア秘境に勇者と名乗る集団を引き連れて攻め込んでいる。これは何とか対処したが、これから先もこのような被害はどこの国でも町でも起こりうる可能性があるはずだ。よって今回はその対策について議論していきたいと思う」


 これに関してはイロアから事前に聞いていたことなので特に驚くことはない。周りを見てみるとどうやら他の冒険者も知っていたよう特段慌てる素振りを見せるものはいなかった。


「そうだね、僕もその話は聞いているよ。エルヴィニアという秘境に大量の帝国兵が攻め寄るという事態はさすがに驚かされた。確かにあの秘境に攻め寄れるのだとすれば、それこそこの国や近隣の村々も危険かもしれない」


「そういうことだ。ゆえにこの場でその対策を練る必要があると考えている」


 ジュナスとイロアが立て続けに言葉を口にする。

 するとその話を聞いていたイナアがそれに続くように意見を述べる。


「えー、でもそれって対策を立てたところで意味なくない?さすがに私達でも帝国軍全てと戦ったらただじゃすまないわけだし、下手に刺激しないほうがいいんじゃないかな?」


「何の罪もない人を見殺しにしろというのか?」


 イロアが冷えた声でイナアに問いかける。


「うーん、まあそういうわけじゃないんだけど必要な犠牲ってやつだよ。帝国が滅びない以上多少の犠牲は間違いなく出てくる。それは避けられないし、助けることもできない。その場に私達がいる確率のほうが少ないんだから当然だよね」


 イナアはそう言うと一度言葉を切り、ニヤニヤと笑いを浮かべながらイロアのほうを向いていた。


「犠牲というものは限りなく減らす方向で考えるべきだよ、イナア。初めから誰かを傷付ける前提で話を進めると、助けられたはずの人まで助けられなくなる。これは前にも言ったはずだよ?」


 ジュナスが若干強さが篭った声でイナアに反対するが、それに答えたのはイナアではなかった。


「だがな、なんで俺たちがそれをやらないといけねぇんだ?そもそも冒険者は何でも屋じゃないんだぞ。確かに様々な依頼をこなしちゃいるが、それも全て自分が強くなるための手段でしかねぇ。そこを履き違えるなよ?」


 ザッハーはその言葉を口にすると両足を円卓の上に置き体重を思いっきり後ろに倒した。

 まあ、あまりわかりたくはないが両者の意見の一応筋は通っている。

 確かにイロアが言っていることができれば最善手だ。しかし現実はそんなに甘くはない。対策を講じただけで帝国軍を封じ込めることができるならとっくに他の国々が実践しているはずだし、そもそもどこに、いつ現れるかわからない勢力を対策し続けるというのは物理的に無理な話だ。


「ふむ、では君はどう考えるかな、ハク君」


 ジュナスが俺のほうを向いて問いかけてきた。俺としては考えは一つしかないのでそれを即言葉にのせる。


「俺はイロアの判断に賛成する。冒険者というのは確かに何でも屋というわけではないが、それでも力を持つものにはある程度の責任が発生するはずだ。まして俺たちは冒険者という肩書きを担いでいる。自分を鍛えることを優先したい気持ちはわからなくもないが、今はお互い手を取り合って解決に乗り出すべきだろう」


 その言葉にイナアとザッハーはあからさまに嫌そうな顔をしたが、対照的にイロアはほっと胸を撫で下ろしているようだ。


「確かにハク君の言うことも一理あるね。だけどね、君がそういうことを言っていいのかということも僕は疑問に思ってるんだよ」


 するとジュナスは俺に鋭い眼差しを向け言葉を投げつけてきた。


「というと?」


「君は先程イロアが言ったエルヴィニアの騒動の中心にいたと聞いている。そのときに攻めてきていた帝国軍も君とその仲間達が撃退したことも理解している。だが、君は他でもないイロアとそのパーティーを攻撃したそうじゃないか。その話を聞いた後だと、君の言葉は物凄く薄く感じてしまうよ」


 ほう、なかなか鋭い考えを持っているようだ。確かに俺はあのときイロアたちを傷つけた罪悪感から今回の会議においてイロアの意思に賛同している。ゆえに怪しまれても当然のだが、それとは別にしっかりと俺自身の意思があることを忘れてもらっちゃ困る。


「言っていることはわからなくもないが、仮にも俺は自分のパーティーメンバーを帝国軍に殺されかけている。それだけでも十分にイロアの意見に賛同する材料になるはずだが?」


 俺はジュナスのほうを同じく睨み返しながらそう呟いた。その言葉にジュナスは返答をしてくることはなく、睨みあっている時間だけが続いた。


「つってもなあ、俺たちはまだお前のことを信用できてねぇんだよ。冒険者になってたかだか数ヶ月でこのSSSランクに上ってきたこと自体怪しんでいるんだ。そんな奴の言葉なんかおいそれと信じられねぇよ」


 まあ、それはもっともだと思う。実際俺自身もそこに関しては驚いていることでもあり、こんなに猛スピードでSSSランクになっていいものなのか少々疑問に思っているくらいだ。

 だが、俺とて嘘は言っていないので引くわけにはいかない。


「それはこっちも同じだ。お前から滲み出ている気配の質が悪すぎてその言葉を信用する材料はまったく感じられないそ。気配は人の裏側まで如実に表す。それが汚れている奴がSSSランクという時点で驚きだ」


「なんだと!!!」


 ザッハーはもの凄い表情で俺を睨むと円卓に立てかけてあった槍を掴み取って俺に向けてきた。


「調子に乗るなよ、お前が何を考えているかは知らねぇが俺はお前を絶対に認めねぇ!命が惜しけりゃさっさとSSSランクから身を引くんだな」


「お、おい!何をやっているザッハー!武器を収めろ!ここは戦場じゃないんだぞ!」


 イロアがそのやり取りを見てすかさず止めに入る。それはイナアとジュナスも同じようで、動きまではしていないまでも力強い視線を俺とザッハーに送ってきていた。

 随分と喧嘩早いようだが、忘れてないだろうか。

 このようなときのために護衛というものを連れてきているということを。そしてそれがこのような場面を前にして動かないはずがない。


「席に座るがいい、下郎。次動けばその首が吹き飛ぶぞ?」


 そう高らかに言い放ったのは俺の護衛として連れてきているキラであった。キラはザッハーの首に根源で作り出した光剣をつきたてとてつもない殺気を放って脅しにかかっていた。

 その動きは俺以外の全員が反応できていないようで、ザッハーの護衛も動くことすら出来ずに硬直している。


「ぐっ!?く、くそ!…………わかったよ、大人しくしてりゃいいんだろ」


 ザッハーはキラの殺気を前にしてもあまり驚いている様子はなく、しぶしぶ構えていた槍を地面に下ろした。


「とはいえ、確かに俺もSSSランクに昇格すること自体早すぎたと思っている。だから俺を信用できないというのはわからなくもない。だが、今この場にいる以上ここにいる人間の存在価値は等しく平等だと思うがのだがどうだ?」


 俺はキラを下がらせると、この場にいる全員にそう問いかけた。

 こうでも言っておかなければこの連中はまた俺の意見がどうのこうのと騒ぎ始める。それはこの後の進行のためにも極力避けたいのだ。


「ああ、わかっているよ。僕も少し君を試すようなことを言ってしまった。謝ろう」


 ジュナスはそういいながら軽く頭を下げると、再び表情を元に戻し話を再開した。


「ならば、とりあえず多数決といこう。このまま話していても無駄だからね。帝国軍の侵攻に対策すべきかすべきでないか。この二択だ。どちらかに手を上げてくれ」


 ジュナスの言葉に深く頷いた俺たちは、心の中で自分の意思を固める。


「ではイロアの言うように対策を講じるべきだと思うものは挙手してくれ」


 その言葉に手を上げたものは、俺とイロア、そしてジュナスの三人だった。


「チッ!」


 その結果にザッハーは思いっきり舌打ちをし、目線を大きく逸らした。

 イナアは面倒くさそうな表情をしていながらも、しっかりと結果を受け入れているようでニコニコと顔に笑みを浮かべている。


「賛成が三票入ったということは過半数を超えたということで、この議題は可決だ。ならばこれからはその対抗策について考えて行こう」


 俺とイロアはその台詞に再び頷き、とりあえず胸を撫で下ろした。


 ここまででようやくスタートラインに立った。

 これより先はイロアがザッハーを追い詰めていく流れになっている。先程から高飛車な態度を取っているザッハーの化けの皮が剥がれていく様を想像しながら、俺は気持ちを引き締めるのだった。


次回はイロアがザッハーを追い詰める回になります!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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