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第百五十話 ギルド本部にて

今回はまた一人登場人物が増えます!

では第百五十話です!

 この学園王国にある冒険者ギルドというのは他の国や町にあるものとはかなり趣が違ったものになっている。

 というのも学園王国の冒険者ギルドは各地に点在するギルドを総括するギルド本部として有名なのだ。そこでは通常の依頼や業務のほかに、各ギルドの管理や調整、冒険者の実績集計など、幅広い仕事を受け持っている。

 今回開かれるSSSランク冒険者の集会もその一部で主催はこのギルド本部が行っている。ちなみにSSSランクの上にある人外未踏の領域、EXランク冒険者になるにはこのギルド本部での承認が出ない限り昇格することはできないらしい。

 つまりはそれだけこの学園王国にある冒険者ギルドは特殊ということだ。

 学園や、学校を卒業したものの中には冒険者に就職するものも多く、その場合は学園のレベルにもよるがそれ相応のランクが初めから付与されるらしい。まあ、学生のレベルをよく知っているわけでもないのでとやかく言えることではないが、戦闘慣れした学生をわざわざ最底辺から進ませる必要はないとい判断なのかもしれない。

 というわけで俺たちは関所を抜け、イロアの手紙に従うように冒険者ギルドを目指すことになった。

 一度来たことがあるというエリアが今回は先頭に立って俺らを引き連れていく。

 城門を潜り開けた場所に出ると、そこには大量という言葉でさえ霞んでしまうほどの人間が道を闊歩していた。よく見てみるとそれは殆どが学生で、色とりどりの制服に身を包んでいる。やはり元の世界とは違うようで、大分派手な制服が多いようで俺の中二心を擽ってくる。

 あー、俺もこんな世界で学生生活を謳歌したかったぜ……。

 と、一瞬思ってしまうのだがよく考えれば今から俺もその学園生活を始めることを思い出し思わず苦笑してしまう。


「うわー、凄い人だね!」


「これは迷子になってしまいそうです」


 アリエスとシラが各々感想を口からこぼしている。確かに人は多いのだが、その大半が俺たちと同じくらいの年頃だというのは、なかなか異様な光景だった。見れば露店や出店の中で働いている人も学生だったりするので、本当に学園王国なんだな、と改めて思ってしまった。

 しかも!しかもですよ!

 なんと言ったってそんな異世界の制服に身を包んでいる女子学生は可愛いんです!

 ええ、もう本当に!

 どれもこれも個性が強い服ばかりで、普段から見慣れていない俺からするとまさに楽園のような空間だった。

 あ、男子勢の制服なんて眼中にありません。もとい男なんかに興味ないですから!

 でへーという効果音が鳴りそうなほど俺は表情を緩めて、エリアの背中を付けていく。


『おい変態主様。いい加減その気色悪い顔をやめるのじゃ。見てるこっちが気分を悪くするじゃろう』


 とリアが皆にも聞こえる声でそう呟いた。

 おい!馬鹿か、お前は!

 そんなこと口走ったら……。


「ごはあああ!?」


 案の定メンバー全員の拳が俺の体全体に突き刺さった。それらは相当な力が込められており簡単に俺の体をありえない方向に折り曲げる。


「「「「「「お仕置きだよ!!!」です!」です………!」です!!!」だよー!」だ」よ!」


「は、はい………」


 俺は戦闘でもないのに自分の体に完治の言霊をかけ、再び歩き出した。

 いやあ、こ、今度からは、き、気をつけよう………。

 心の中でも口ごもりながらそう決意すると改めてその都市の外観を眺めてみた。

 家屋の外観は基本的に赤レンガが多いのだが、その家々に取り付けられている装飾や飾り、ドアといった後付のパーツがかなり派手なものが多いようで、ここにきてザ、異世界!といった雰囲気を醸し出していた。

 靴裏にあたる石畳は何度も人に歩かれることによって光を反射するほど磨かれており、夏の日差しを俺たちに照り返してきている。

 その道を歩くこと十分ほど。

 エリアの足が不意に止まった。


「どうした、エリア?」


 俺はその顔を覗き込むように問いかけた。


「い、いえ。大したことではないのですが、あちらにいる方々、少しだけ変わった空気を感じます」


 と言われて俺もその方向を向き、エリアの言葉の真意を確かめる。

 エリアが指を指した場所は丁度八百屋の前で、腕を顔に当てながらひたすら何かを悩んでいる少女がそこには佇んでいた。

 その少女の腰、というかもはや体の後ろには双剣が交差するようにつりかけられており、服装は制服ではなく身動きがとり易そうなブレストプレートと長めのローブを身に纏っていた。


「ああ、なるほど。確かにあれは………」


 俺はエリアの意見に同意するように言葉を紡いだ。というのもその少女からにじみ出ている空気がはっきりいって普通のものではなかった。

 というのも。


「あの人、多分強いわね」


 サシリが俺の気持ちを代弁するように口を開く。

 そう、感じられる気配は完全に強者のものだったのだ。そこらへんにいる学生や冒険者とは比べ物にならないくらい力を有していることが読み取れた。さすがにキラやサシリほどの強さではないが、とはいえラオやルルンクラスの強さは持っていてもおかしくはない気配で、俺たちの注意を大きく引き付けている。

 だが、その少女はまったくこちらには気づいておらず、うんうんとその八百屋の前に立ち何かを考えている。

 俺の勘だが、間違いなくあのような存在には触らないほうがいいという発想が頭の中に渦巻き、その場を静かに去ろうと皆に促した。

 どうやらそれにはメンバー全員賛成のようで、俺たちは気配をなるべく消しながら姿を消す。

 それからというもの、大量にいる人を何とか体を捻ることで避けながらようやく冒険者ギルドらしいところに到着した。

 そこには既に厳つい冒険者風の人たちが群がっており、武器の調整や依頼書の確認を行っている。仮にもまだギルドの外なのだが、やはり本部となると集まってくる冒険者の数も相当多いようで中に入りきらない者はこうして外で装備を整えているようだ。

 よく見るとギルドの扉の前には赤字で、長居禁止!!と書かれている。そうでも書かないとおそらくギルドの中に人が溜まりすぎて回転数が落ちてしまうのだろう。そうなってはギルドの売り上げも必然的に落ちるわけで、人が集まるところでの嬉しい悩みというやつだろう。

 とはいえ俺たちはギルド内に入らないとお話にならないので、今度は俺が先頭に立ってその扉をくぐる。

 中に入ってみると、そこは思ったより開けていて長テーブルが大量に設置されており、そこにはたくさんの冒険者たちが腰を下ろしている。他のギルド同様、軽食も出されているようで酒やそのつまみを食べている人たちが多く見られた。ギルドの職員はやはり女性が多いのだが、冒険者となるとその数は激減しており、いないことはないのだが男性の十分の一程度しか見受けられない。

 俺たちが立っている右側を見渡せばそこにはシルヴィニクス王国の倍はあろうかとう依頼書が壁が見えなくなるほど貼り付けられており、その種類はSランクからFランクまで幅広く取り揃えているようだ。ちなみにSSSランクと、SSランク依頼についてはまず出回らないためこのような掲示板に張り出されることはない。もしその依頼が回ってくるとすればギルドを通して直接ということになる。以前の俺のようにクビロのようなSSSランクの魔物が緊急で攻めてきた場合は例外だが、基本的に冒険者の実力に会うようにギルドは配慮しているのだ。

 で、俺はさすがにこの中からイロアを目だけで見つけるのは難しいと判断し、気配探知を使用することにした。というものイロアがあの手紙を門番の少女二人に託したのは数日前ということなので、むしろ今もこの場所にいる確率のほうが低いはずなのだ。

 SSSランク冒険者といえども何もせず待ち続けるは地味に拷問だからな、仮に今いなくても文句は言わない。

 と俺は思っていたのだが、このギルドの一番奥の日当たりのいい席にその女性は青色の液体に口をつけながら腰を落としていた。

 ま、まじか……。本当にいるよ、あの人……。

 見つけてしまった以上声をかけないわけにもいかないので、しぶしぶ俺たちはその場に近づく。


「お久しぶりです、イロアさん」


 俺は立ち上がったまま椅子に座っているイロアに話しかけた。

 するとゆっくりとした動作でイロアはこちらに向き直り目を丸くし、声を投げかけてくる。


「おお!ようやく来たか!大分長旅だったみたいだな。その様子だと私の手紙も読んでくれたようで何よりだ。ささ、君達も席につくといい」


 イロアは空いていた空いていた席をアリエスたちの勧めると、自分も奥につめるように移動した。その言葉に俺たちは大人しく従うと、各々好きな飲み物を注文し始めるのだった。








 ギルドの職員が俺たちの注文の品を全て運び終えると、俺はイロアに向かって今回呼び出した理由を聞き出した。


「で、なんで王国に着いた直後に俺たちを呼び出したんですか?」


 イロアはストローを上手く使い液体を上品に喉に流し込むと口を開き話し始めた。


「ああ、そうだったな。だが、その前に君のパーティーのメンバーが増えてるようだが、そちらの赤髪の女性は?」


 サシリを見つめながら新たにパーティーに加入した存在の説明を求めてきた。それについてはサシリ自身がしっかりと目を見つめて答える。


「私はカリデラ城下町君主、血神祖サシリ=マギナといいます。以後お見知りおきを」


「な!?け、血神祖だと!?………はあ、まったく君はこの短期間のうちに何をやらかしてきたのだか……。正直言って想像もつかないな……」


 イロアは俺のほうをジト目で見つめそう呟いた。確かに精霊女王に加えあの血神祖が仲間になったというのは通常は考えられないことだろう。

 俺自身もこれは完全に予想外の出来事だったのでその気持ちもわからなくない、というのが本音だ。


「ははは………、ま、まあ色々ありまして……」


「はあ………、まあいい。で、私が君達を呼び出した理由だったな。ずばり言ってしまえばSSSランク冒険者の集会のことだ」


 それはなんとなく予想できていたことではあったが、やはり事前の打ち合わせをしておく気なのだろう。


「日付は三日後の正午から、このギルド本部四階の円卓室で行われる。そのための準備をだな………」


 イロアがそう言ってSSSランク冒険者集会について話し出そうとした瞬間、その声を掻き消すくらいの大きな声が俺たちに向けて発せられた。




「あーーーーーーー!イロアっちじゃん!!!久しぶりー!元気にしてたー?」


 その声をあげた少女は勢いよくイロアの元に駆け寄ると両手に抱えていた果物を咀嚼し始めた。


「「「「「「「あ」」」」」」」


 俺たちはその少女の顔を見たとき思ってしまった。いや気づいたといったほうが正しいだろうか。その腰に下げた双剣、胸をしっかりと覆っているブレストプレートは間違いなく先程八百屋で唸っていた強い気配を滲ませた少女その人だったのだ。


「はあ………。お前もSSSランク冒険者なのだから、もう少し品というものを身に付けてくれ……」


 イロアは額を押さえながらそう呟くと、俺たちにその少女の紹介をし始めた。


「この果物ばっかり食べているこいつ、はSSSランク冒険者序列五位イナア=フリージスという。かなり変わり者だが、まあ多少の会話は出来るだろう」




 イロアが発した言葉に理解が追いついていない俺たちは、ただ固まったままギルド内の喧騒に飲み込まれるのだった。


次回は本格的にSSSランク冒険者集会の打ち合わせをしていきます!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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