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第百四十九話 学園王国到着

今回はついに学園王国に到着します!

もう少し道中を語ってもよかったのですが、それはまた番外編などでお話できたらと思っています!

では第百四十九話です!

 結局それから俺たちは約二日間かけて学園王国を目指した。

 一応俺たちの下に広がる広大な大地の様子を確認しながら翼の布(テンジカ)で空を飛んでいるのだが、そこはカリデラの周りのような砂地ではなく、緑豊かな草原に変わっていた。

 日の光を反射してその黄緑の草々は揺らめいており、ほのかな土の匂いを醸し出している。

 始めは遥か上空を飛んでいた俺たちだが、今はいつも通り地面から五十センチほど上に浮遊しながら足を進めていた。

 エルヴィニアを出ていざ学画王国に行こうとしたら急遽カリデラに目的地を変更させられるイベントがあったものの、やはりこうやって辿り着くとなかなか感慨深いものがある。


「あ!あれが学園王国?」


 アリエスが翼の布(テンジカ)の天幕の中から顔だけ出してそう問いかけてくる。

 俺たちの目の前にあるそれはシルヴィニクス王国で見たような巨大な都市であり、そのどれもが今まで見てきたような一色に統一された建物ではなく、色取り取りの発色をしているものばかりで、造りこそは異世界風のものではあるが、かなり時代の先に進んでいる派手なものが目に付いた。

 よく見れば上空におきなバルーンが何個も浮かび上がっており、何分か置きに色のついた煙球も打ちあがっているようだ。


「ああ、多分な。みんなに声をかけておいてくれ」


「了解!」


 俺はアリエスにそう伝えると一応蔵の中からエルテナを取り出し、腰に装備した。まあ特段なにかがあるわけではないのだが、いつも通りということで呼び出しておくことにしたのだ。

 俺は翼の布(テンジカ)の上で立ち上がりいつものローブに袖を通すと、翼の布(テンジカ)の速度を緩め始める。

 さすがにこの段階まで近づいてくるといくつも馬車が見受けられ、大きな荷物を背負っている人たちが目につき出したので、外観が目立つ翼の布(テンジカ)は仕舞うことにした。

 すると天幕の中からぞろぞろとメンバーたちが顔を出してくる。皆、自分の装備を完璧に整えており、身支度も完全に終わっているようだ。

 唯一サスタに得物をあげてしまったサシリは手持ち無沙汰になっているが、いつもの赤いドレスはその存在感を際たたせ血神祖独特の気配を放っている。

 まあ、あとで蔵の中にある武器をあげればいいか。

 俺はそう考えながらも、翼の布(テンジカ)の動きを完全に止め、地面に飛び降りた。


「よし、こっからは歩いていくぞ。全員降りろー」


 そう呟いた俺は翼の布(テンジカ)を仕舞うために蔵の扉を大きく開けて待機する。その言葉に軽く頷いたメンバーはそのまま俺と同じように軽くジャンプしながら地面に降り立った。


「あれが学園王国ですか、確かに大きな国ですね」


 シラがおもむろにそう呟いた。大きさ的にはシルヴィニクス王国とさほど変わらないはずだが、色々なものが混在しているので余計に大きく見えてしまうのかもしれない。


「学園王国は学生がたくさんいますからね。その趣向にあった街づくりを意識しているのでしょう。私も前に来たことはありますが、私の国よりも人の数は多かったような気がしますので」


 エリアが体を伸ばしながらシラの言葉に反応する。やはりシルヴィニクス王国の王女であるエリアはこの学園王国に来たことがあるようだ。まあ、国家間での問題もあるだろうから関わっていて当然といえば当然なのだが。


「それじゃあ、エリア。道案内は頼むぞ?」


 俺はエリアにそう呟き歩き始めた。王国内に入るまでは問題ないが一度入ればその中を知っているエリアに任せたほうが効率がいいだろう。


「はい!お任せください!」


 エリアは嬉しそうにそう返答すると俺の後についてきた。それにさらに追随するように他のメンバーも歩き出す。

 前を見れば山のような荷物を一つの風呂敷にまとめ重そうに運んでいる若者や、見たことがない生鮮品を運んでいる商人の馬車などが数多く見られ、全員が学園王国に向かっていることが見て取れた。

 おそらくあの大きな荷物を抱えているのは、俺たちと同じく今月から学園に入学するものだろう。大量の学園、学校があるので一緒の学園を受験するかわからないが、その努力が是非とも無駄にならないでほしいものだ。

 続いて対するように後ろを見渡してみれば、メンバーの楽しそうに話している会話が聞こえてきた。

 シラとシルはこれから買わなければいけない日用品の確認、エリアとアリエス、ルルンはルルンの戦闘時の足運びについて話し合っていた。

 キラとサシリは高レベルの戦闘トークで盛り上がっており、俺でもわからないような単語が大量に二人の口からあふれ出ており、イレギュラーらしき高次元の会話を繰り広げていた。

 俺はその後景を一瞬見た後、自分もエルテナを何度か抜き差しするように手の中で遊び始める。

 やはり何といっても初めての国や町というのは楽しみなものなのだ。俺も皆もその顔からは高揚感がにじみ出ており、胸を躍らせている。

 十分ほど学園王国の大きな門まで歩いていると、ようやくその関所前までたどり着いた。そこにはやはり学生と思わしき人が大量に並んでおり、あろうことかその門番をしている二人の人間も学生だった。

 うわー、徹底してるなー。もしやこれはバイトなのか?

 と、元の世界の価値観を引き戻すように考えを巡らせながら、俺たちもその列の一番後ろに並ぶ。


「改めてみると凄いな。人間というのはここまで大きな建造物を作り上げてしまうのか」


 キラは大きくそびえ立っている城壁を眺めながらそう呟いた。その壁はいたるところに掘り込んだような装飾が見られ、人間や魔物の姿が形作られている。またピンポイントで宝石のようなものが埋め込まれている箇所があり、白塗りの壁の中でも一際輝いて見えた。


「確かにカリデラよりも大きいわね………。少しだけ悔しい気分になるわ……」


 サシリが呆れたような声を出しながらそう呟く。まあカリデラの君主からすれば自分の領土を誇りたいだろうし、それよりも立派なものというのはなかなか受けつけないだろう。


「まあ、そう言うなよ。カリデラはカリデラでいいところたくさんあるんだから。それはサシリの誇るところだと思うぞ?」


「う!?あ、ありがとう……」


 サシリは俺の言葉に妙に激しく反応すると顔を赤くして俯いてしまった。

 ん?俺なんか悪いことでもしたかな?

 周りを見ればアリエスたちがやれやれといった風に呆れ顔を浮かべている。


「まったくハクにぃは無意識にこういうこと言っちゃうんだもんね」


「ええ、これで落ちないほうが不思議だわ」


「姉さん……、さすがに歯軋りは止めてください………」


「ああ、私もあんな言葉をかけられたいです……」


「ははは、ハク君らしいね」


「はあ……。このやりとりは一体いつまで続くのだ」


 キラが最後に手を頭につけたところで、ようやく俺たちの番が回ってきた。

 そこにいたのはやはり学生のような少女二人で、紺色の短くカットされたスカートと白く輝く短めのローブを身に着けていた。

 おお!多分これが制服だな!

 俺は元の世界では絶対に見られないようなきわどい制服を見せ付けられ、若干興奮してしまう。


『どこが若干なのじゃ。心拍数が急に跳ね上がっているわい』


 リアが的確な突っ込みと放ってくるが今は完全に無視する。スラっと伸びた白い足はその短いスカートから輝きを放つように生えており、スカートの色とのコントラストがより目を引きつけていた。

 さらに俺は時間いっぱい観察しようとするのだが。


「………痛い痛い!あ、アリエス!?足を踏むな!」


「だってハクにぃがいやらしい顔してたし」


 その言葉に反応するように俺の後ろにいるメンバー達からどす黒い殺気が放たれる。

 あ、これはヤバイ。下手に関わらないほうがいいやつだ。

 俺は瞬時にそう判断すると、自分の冒険者カードを出しながら、その少女たちに話しかけた。


「あの、俺たちこの国に入国したいのですが」


「はい、大丈夫ですよ。では代表の方の身分証を提示してください」


「一人だけでいいんですか?」


 俺は思わずその言葉に聞き返してしまった。というのも今までの国、町、秘境、村では入国する全ての身分証が必要だったからだ。


「ええ、ここは学生が多いのでそもそも身分証なんて持っていない方も多いんです。ですから一応確認はしますが、万が一持っていなくても入国は出来るんですよ」


 ははー。なるほどそういうこともあるのか。実際警備的にはまずいのだろうが、これでもあの帝国に一番強い抑止力を放っている国家だ。今はわからないがそのシステムには何か意図があるのだろう。

 その話を聞いた俺は黙って自分の冒険者カードを差し出した。


「えーと、ハク=リアスリオンさん、SSSランク冒険者で……。えっ!?SSSランク冒険者!?」


 あー、やっぱりこういう反応になりますよね。いやわかってましたとも。

 シュエースト村でもカリデラ城下町でも似たような反応をされたのだ。もう大分慣れ始めてしまっている。


「し、少々お待ちください!」


 するとその冒険者カードを一度俺に返すと、その二人は関所の中に急いで入っていく。


「何か問題でもあったのか?」


「さあ………?」


 隣にいたアリエスにそう問いかけてしまうほどその二人は慌てており、よくわからない態度を示していた。

 そこから五分ほどその場に待機していると、二人の学生はなにやら白い封筒を持ってこちらに近づいてきた。


「お、お待たせしました……。入国の審査はこれで大丈夫です。そ、それとこれを預かっています……」


 俺から見て右手にいる少女がおれにおずおずとその手に持っていた封筒を差し出してきた。

 それを受け取り、差出人の場所を確認してみるがそこには何も書いておらず、表紙に「ハク君へ」とだけ綺麗な文字で綴られていたのだった。


「マスター、それは一体誰からだ?」


 俺の後ろから覗き込むようにキラが顔を出してくる。


「いや、わからない。名前が書いてないんだ」


 するとその様子を見ていた二人の少女が口を開いた。


「そ、それはですね……。数日前にこの町に訪れたSSSランク冒険者のイロア様の手紙です」


「ここに白いローブを着て自分と同じSSSランク冒険者が来たら渡してほしいとのことだったので……」


 なるほど。ということはこの手紙の差出人はイロアということなのだろう。

 俺はその場でその手紙を開封し、中を確認する。

 そこには色々と堅苦しい言葉が羅列されており、さすがはSSSランク冒険者だなと感心していたのだが、その手紙の最後の文には一際濃い文字でこう書かれていたのだ。




「この手紙を読んだら直ぐに冒険者ギルドに来てほしい、そこに私はいる」




 それは各地に散らばる冒険者ギルドの本部に俺を呼び出す言葉であり、さっそく俺たちの行動を決めてしまうものであった。

 

次回は冒険者ギルドの総本山ギルド本部に向かいます!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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