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第百四十話 カリデラ防衛戦、三

今回はハクオンリーの戦闘パートになります!

では百四十話です!

 空中にいる六枚の翼を背中から生やした星神の使徒が俺を押しつぶすかのように大量の光の柱を放ってくる。それは直径二メートルはあろうかというほど巨大で、穿たれている地面は既に大量のクレーターが出来上がっていた。

 しかもその全ては抉られたのではなく溶かされたようにどろどろに融解しており、まるで太陽の光を凝縮したような攻撃で、その速さも尋常ではなく神妃化をしていなければ避けることさえ難しいレベルのものだった。

 俺はその柱の合間を潜り抜けるように移動し、その少女に近づいていく。ある程度接近したところで転移を使用し使徒の目の前に移動すると二本の剣を勢いよく叩きつけた。


「はあああああ!」


「ッ!」


 少女は俺の剣を両手で掴み取るとそのまま地面へと投げ飛ばす。


「な!?」


 まさか素手で受け止められると思っていなかった俺は驚愕の声を漏らしながら、その衝撃に抗うような形で地面すれすれのところで踏みとどまる。

 だがそんな俺に向かって使徒はさらなる攻撃を加えてくる。


「沈みなさい」


「がっ!?」


 それは言うなればラオの重力魔法を強化させたようなもので圧倒的な引力が俺を地面に叩きつける。それは俺の体をガッチリとホールドし身動きできなくする。

 まずい!このままではあの攻撃が飛んでくる!

 俺はそう咄嗟に判断するのだが、磔にされている俺の体はビクともしない。


「これで避けられませんね」


 案の定少女は先程から連続で使用している光の柱を俺目掛けて放ってくる。とてつもない熱量を秘めた光線は受け止めるなんていう行動を完全に取らせないような攻撃で、俺の身を焼き殺すかのように近づいてきていた。

 俺はリーザグラムを何とか動かし体の自由を制限している引力を吹き飛ばした後、そのまま地面を転がるような形で光の柱を回避する。

 俺のすぐ横を光の柱が焼き焦がし、その余波で俺は吹き飛ばされてしまった。


「ッッッ!!!」


 地面を何度かバウンドし地面と空中を行き来したあと、そのままエルテナを地面に刺すような形で体と天に突き上げると、空に駆け上がるように体を動かした。

 俺はその流れのまま使徒に剣技を放つ。


青の章(インパクトノヴァ)!」


 リーザグラムから放たれる剣撃は真っ直ぐ少女に進みその喉元を狙う。

 しかしその少女は何気ない動作でこの攻撃を吹き飛ばした。


「邪魔です」


 瞬間、圧縮された風が俺の攻撃を跡形もなく吹き飛ばす。

 だがこれは俺も想定済みだ。

 とっくに発動していた気配創造の刃を使徒の全方位に設置し掃射する。


「これを受けきれるか、星神のお使いさん?」


 その攻撃には第二神核と戦ったときよりも気配を乗せてあり直撃すれば間違いなくの身は完全に穿たれ内部消滅を起こすレベルの攻撃になっていた。

 しかも今回はそれが数えられないほどの大量に用意されている。避けることはおろか防ぐことすら困難なはずだ。


「…………なるほど。確かにこれはまともにくらうのはまずそうですね。ですが」


 俺はその声を聞かずにためらいもなく攻撃を開始する。

 無数の青白い刃は雹が舞うかのように空気を振動させ標的に迫っていく。

 だが使徒はその刃を避けるどころか防ぐことすらしない。

 よって俺の攻撃は確実に着弾し大爆発を引き起こした。もうもうと立ち込める煙は使徒の体を完全に覆い隠し視認できなくしてしまう。普通ならここで気配探知を使用するのだが、今回はそもそも気配がないのでそれ使ったところで負担にしかならないため、使うことはしない。

 本来なら攻撃が直撃したことに喜ぶべきなのかもしれないが、当の俺はまったくそんな気にはなれなかった。

 なぜなら確実に防がれたような感覚が走ったからだ。硬い障壁のようなものに阻まれるようなイメージで、明らかに気配創造の刃は悉く打ち砕かれていた。

 だが奴は攻撃を受ける直前までその様な障壁を展開する素振りはまったく見せていない。

 それが俺の心の中で疑問になっていた。


「悪くない攻撃ですが、それでもまだ私には届きませんね。随分と私もなめられたものです」


 煙がその場から晴れると透明なバリアーのようなものに囲まれている無傷の使徒の姿が出現した。その障壁はもはやあるのかないのかさえも判別できないほど薄いもので、しかし確固たる力がそこには通されている。


「今のは避けられも防ぐことも出来ないタイミングだったはずだが?」


「それがなめていると言っているのです。むしろあれほどの時間があれば脊髄反射を意図的に動かせば障壁ぐらい展開できます。まあ私は人間ではないので擬似的にですが」


 簡単に言ってくれるな。

 脊髄反射とは人間が危険を察知したときに脳の思考回路を通らずに体が無意識のうちに回避する現象である。

 それは当然脳と言う大道を通過しないので圧倒的な速さで動くことができる。しかし普通はそんなもコントロールしようなどと考える輩はおらず、例え思ったところで実現など夢のまた夢のような話だ。

 それを擬似的とはいえやってのけるとは、規格外にもほどがある。

 俺はとりあえず空中に飛び上がるとリーザグラムを仕舞い、絶滅する乖離の剣(アニシオン)を呼び出す。同時に次元境界の強度も上昇させ世界の均衡を保たせる。

 バチバチとスパークする絶離剣は俺の左手に納まると、うねりを上げながらその場に留まった。


「その剣が第三神核を打ち倒した剣ですか。どうやら本当に馬鹿げた力を内包しているようですね」


「俺はお前を殺す気だからな。生ぬるい攻撃じゃ傷一つ付けられそうもないと思ったから、こいつを呼び出したんだよ」


 俺はそのまま猛スピードで使徒に近づくと全力で両手の二本の剣を風に這わせるかのように振り回す。その光景は稲妻が迸るように光を帯び、空間を切り裂いていく。


黒の章(インフィニティー)


 無数の剣撃が使途の体を狙う。

 エルテナの攻撃はともかく絶離剣の攻撃は受けることも防ぐことも許されない防御不可の太刀だ。こればかりはいくら使徒といえど防ぐことは出来ない。


「ぐっ!?」


 予想通り俺の剣は少女の肉を絶っていく。だがそこには赤い鮮血はなく出てくるのは力の残滓のみ。返り血もなく綺麗なままの剣が俺の手にはあった。

 どうやら、本当に人間ではないらしいな………。

 俺はそう思いながらも無我夢中でエルテナと絶離剣を振るい続ける。

 それは複数の切り傷を使途の体に刻み込み、ダメージを与えていく。


「ちょ、ちょこまかと!その様な攻撃が通用するとは思わないことです!」


 そう少女が呟いた瞬間、俺の体に何かが纏わりつく。それは細く尖った糸のようなものでたちまち俺の体に絡みつくとその動きを完全に拘束した。


「な!?なんだこれは!?」


「どれだけ防御できない武器を使おうと、それが放たれなければ意味がありません。次はこちらの番です。覚悟はよろしいですか?」


 俺は咄嗟に転移を実行しようとするが、何故かそれが発動しない。


「無駄ですよ。この糸は空間そのものに縫いとめられています。転移はおろか通常の武器では切ることすらできません」


 使徒はそう口にすると右手に不気味な紋章が宿った先が三本に分かれた槍を出現させた。それは金属質のものではなく全てが能力で作りこまれたように発光しており、実体という実体が存在してなかった。

 その槍を少女は俺の体に深々と突き刺す。


「ぎゃあああああああああああああああああ!!!!!」


 三本に分かれた槍の矛は俺の腹と両腕に突き刺さり、大量の血を噴出させる。あまりの痛みでエルテナと絶離剣を地上に落としてしまった。


「私もあなたと同様にあなたを殺す気でいます。ですからこのままでは終わらせませんよ?」


「な………、なに……?」


 俺は痛みに堪えながら、その言葉に問い返す。

 もはや既に俺の意識は大量出血と痛覚の過剰反応によって消えかけており、その少女の姿を確認することも難しくなってきていた。


「こうするんです」


 視とは顔を始めて笑顔に変えると左手の中指と親指を勢いよく弾き音を鳴らした。

 その瞬間、俺に絡まっていた糸がいきなり動き出し、俺の肉体を全て切り裂いた。


「え?」


 俺は驚きの声を上げるのが精一杯でそれ以降はまったくなにも出来なくなった。

 感覚というものは完全に失われ、自分の体がどこにあるのかもわからない。空中から切断された俺の体のパーツらしきものが降り注いできている。

 頭部だけになってしまった俺は何も出来ないまま地面に落下し、そこで初めて意識を吹き飛ばすかのような痛みに襲われた。


「がああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」


 もはや痛いどころの騒ぎではない。体がバラバラに切り刻まれたのだ。血が噴出するなどという甘い話ではなく、文字通り人体模型のような形になってしまっている。

 俺は意識をなんとか保たせながら、事象の生成を使用し一瞬で体を再生させる。

 それは俺の生命力が尽きる前になんとか間に合い、完全復活を遂げさせた。

 だが、それでも俺の精神状態はかなり不安定なものになっており、息を切らす。

 ま、まさか、あそこまでバラバラにされるとは………。い、今のはさすがに死ぬかと思ったぞ………。


「はあ、はあ、はあ………。やってくれたな……。まさかこうあっさり瀕死に追い込まれるとは思ってなかったぜ」


「………やはり厄介ですね。普通なら今の攻撃で絶対に絶命しています。それをものの数秒で完全回復してしまうあたり、さすがイレギュラーというわけですか」


「黙ってろ。今にその余裕の表情を絶望に塗り替えてやる!」


 俺はそう呟くと、地面に落ちていたエルテナと絶離剣を呼び戻し、転移で少女の背後に回るとあの剣技を使用した。


赤の章(エリアブレイク)!!!」


 それは第一神核と戦った際に、その不死性を打ち砕くために使用したものだ。実際は空間及び世界という箱からその存在を切り離す空間干渉剣技なのだが、今はその絶大な威力を持ってただ単に攻撃を仕掛けていた。


「チッ!?それは第一神核のときに使っていた技ですか!?」


 ここで初めて使徒の表情に驚きの色が走る。

 それもそのはずだ。奴らはリア曰く本来誰にでもあるはずの気配というものを世界の理を無視して存在量というものに置き換えている。

 であれば今の状態で赤の章(エリアブレイク)を受けてしまうと、その存在量と世界の繋がりが途絶え、体をこの世界に繋ぎとめて置くことができなくなるのだ。

 使徒はその攻撃を防ぐのではなく、回避しようとする。

 だがそんなもの俺が容認するはずがない。

 エルテナは通常通りの起動のまま固定し、絶離剣のほうを手前に引き戻すような形で流れを変えると、そのまま奴の左腕目掛け突き出した。


「逃がすかああああああ!!」


「ぐあああああああああああああああ!?」


 その攻撃は見事に奴の左腕を付け根から吹き飛ばし切断した。

 痛みに怯んでいる少女を見つめ俺はそのまま更に上空から全力の回し蹴りを打ち放つ。


「くらいやがれっ!!!」


「ッッ!がはああああああ!?」


 使徒はとてつもない勢いで地面に叩きつけられ、この戦いで初めて土を被った。


 俺はその光景を見ながら先程俺に呟かれた言葉を奴に投げかける。




「あんまり人間なめるんじゃないぞ?」

 


 その言葉を顔をしかめながら聞いている使徒と俺は目線をぶつけ合わせ、さらなる戦闘に身を投じていくのだった。


次回はもう一度キラ、サシリペアの戦いに戻ります!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

次回の更新は明日になります!

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