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第百三十一話 明日に向けて

今回も日常パートです!

ようやくサシリが皆と打ち解けてきます!

では第百三十一話です!

 ハクがサシリの過去を聞いてからさらに一日が経過した。

 とあるカフェに集まっているアリエスたちは各々好きなスイーツを口に運びながらのどかな時間を過ごしていた。

 するとアリエスが何かを決心したように目を見開き勢いよく立ち上がると、声高らかにこう宣言した。


「いつも私たちのために頑張ってるハクにぃに料理を作って労おうと思ってるんだけど、みんなどうかな!」


 それはもの凄く突然で、ケーキを食べていたエリアは慌ててそのフォークを落としそうになる。


「い、いきなりなんですか、アリエス……」


「だから、ハクにぃに感謝の気持ちを伝えるの!」


 アリエスはエリアにグイっと顔を寄せながらそう声を上げた。

 確かにアリエスたちは今までハクに助けらてばかりなのは事実だ。アリエスであればルモス村の一件、シラとシルは奴隷からの解放、エリアは自分を神核の攻撃から守ってくれたことと自分の我侭を聞いてくれたこと、ルルンは命の恩人。

 とまあ上げだすとキリがないのだが、たくさんの迷惑をハクにはかけてきている。正直本人はまったく気にしていないのだが、助けられた側となるとやりきれない気持ちが込み上げてくるのだ。


「そ、それはわかるけど……。本当に突然ね」


 シラが紅茶を啜りながら返答する。


「しかもなんで料理………?」


 シルも姉に続くように首をかしげアリエスに質問をぶつける。

アリエスのハクを労いたいという気持ちはみんなわかるのだが、それでも何故料理にこだわるのか、という点が疑問になっていた。料理という方法も悪くはないのだが、他に出来ることはあるだろう?という意思がアリエス以外の皆から湧き上がった。


「女子といったら、やっぱり手料理が大切だよ!気持ちが込められるしね!」


 アリエスはみんなの視線などまったく気にしておらず、人差し指を立てながら軽くウインクをして、そう呟いた。


「言いたいことはわからなくもないけど、具体的にはどうするの?さすがにこの人数が入れるキッチンがあるところなんてないんじゃない?」


 ルルンが口にクリームをつけながら当然の疑問を投げかける。サシリを含めれば六人という大所帯が全員入り込めるキッチンなんて、それこそ高級レストランクラスでなければ借りることはできないだろう。しかもその後にハクとキラを交えて食事会に発展するのだから、どこかの飲食店を貸しきるくらいしなければ実現はできない。

 するとおずおずとその話を聞いていたサシリが静かに手を上げた。


「そういうことなら………。明日、月に一度の立食パーティーが城であるから、そこでやってみたら………?」


「「「「立食!?」」」」


 エリアを除く4人の声が完全に一致し、大きな響きへと変える。

 エリアは、何か不思議なことでしょうか?と言いたげな雰囲気を醸し出しており、さすが現王女である風格を見せ付けていた。


「り、立食というのは、一体どういう……」


 ルルンが恐る恐るサシリに聞きに掛かる。

 本来立食というのは王族や貴族が何かめでたいことがあったときによく開くものでその文字の通り、立ちながらテーブルに並べられている料理をつまみ、お偉い方に挨拶することが趣旨とされるパーティーだ。

 皆その事実を知っているからこそ驚きの声を上げたのだが。


「ああ、ここの立食パーティーはそんなに硬いものじゃないわ……。そもそもカリデラには貴族はいないし、服装だってラフなもので来る人もいるから、普通のパーティーとなんら変わらないのよ………」


「は、はあ………。で、でもそんなところに私たちの料理を出すとなると、少し気が引けるわね……」


 シラが手を顎に当てながらそう考察する。実際シラとシルの料理は下手な飲食店より遥かに美味なのだが、それでもさすがにカリデラ君主直々に開く立食パーティーの場に置かれるとなると緊張してしまう。


「それも心配いらないわ………。パーティーの後別室に用意するから、そこで渡せばいいのよ……。それにキッチンだってカリデラ城のものを使うなら問題はないはず………」


「あー……。で、でもそうしたら私たちもその立食パーティーにでないといけないわけだよね………?」


 アリエスがサシリにそう問いかける。

 この立食パーティーはカリデラ城下町において月に一回行われているもので、毎回住民の中から抽選で何十人か招待して行われているものらしい。住民からすれば数少ないサシリと出会える場なのでかなり倍率は高いのだとか。

 だがそれを自らサシリが言い出してくるということは、つまり。


「サシリは…………私たちに参加してほしいの………?」


 シラは全員が思っていた心の言葉を口に出しサシリに問いかけた。

 するとサシリは顔を真っ赤に染めながら俯き、小さく頷く。


(((((なんだ、この可愛い生き物は!?)))))


 と、どこかの真っ白青年のような感想をアリエスたちは心の中で木霊させ、その光景を見つめた。

 サシリからすれば初めてまともに話をすることが出来た同性の友人たちだ。その友人を誘いたくなる気持ちはアリエスたちもわかっているし、こうなった以上断るわけにもいかない。


「はあ……。仕方ないわね、それじゃあ今から材料調達に行きましょう。今日のうちから下ごしらえしておかないと、間に合わないわ」


 そのシラの言葉にサシリは目を見開きながら顔を上げる。


「そんな心配しなくても、一声かけてくれれば私たちは参加しますよ?サシリは少し回りくどいです!」


 エリアがサシリの顔の前に人差し指を立てながら笑いかけながらそう呟く。


「よーし!ハクにぃにばれない様に今からお料理開始!さっそく市場に行こ!ほらサシリもボーっとしてないで早く!」


 アリエスは座っていたサシリの右手を掴みあげるとそのまま店の外まで引っ張っていってしまう。


「あ、ちょ、ちょっと………」


 サシリは驚きの声を上げるものの、内心では幸せな気持ちでいっぱいであり、明日の立食パーティーに初めて心躍らせるのだった。


「はあ………。まったく皆慌しいねー」


「本当です………。でも、なんだかいいですよね、こういう雰囲気………」


「うん。くだらないけど、絶対に必要な時間だよ。それが今までサシリちゃんには足りてなかったってことだろうね」


 ルルンとシルはそんな皆を眺めながら冷静に、しかし優しい目で分析すると、もう一度二人合わせてため息を吐き出すと、そのままアリエスたちを追いかけるのだった。








 場所は変わり、宿屋。

 日は沈みかけており、時間を確認すれば既に午後五時を回っている。

 この日も俺はずっと鉛筆を手に取り勉強していた。昨日購入した問題集を解きあさり、消しゴムと鉛筆の残量を減らしていく。

 キラはその光景を隣でじっと見守りながら、時々手の中に根源を呼び寄せ軽く遊んだりして一日を過ごしていた。


「よし!これで、この本も終わりだ!」


 俺は勢いよく鉛筆を机に叩きつけながら、真っ黒になった参考書をまじまじと眺める。

 うーん、なかなかいい景色だ。ここまで気持ちよく解けると痛快な気分になる。

 言い換えれば、この問題たちは魔物そのものなのだ。それを公式やら定理という武器を使い、倒していく。この感覚を掴んでしまうと、どの問題も簡単に見えてきてしまい、俺の腕はありえないスピードで動き出していた。

 その動きはキラも驚いているようで、しばし口をあけて俺を見ている。

 どうだ!これが今年受験勉強をひかえていた高校三年生のパワーだ!

 一度スイッチさえ入ってしまえば、この程度造作もない!ハハハ!

 俺はもはや解けない問題などないと言わんばかりという態度で、椅子にふんぞり返る。

 さすがにこれほど長時間机に向かっていると、肩や背中が凝り固まってしまい、全身が少しだけ痛い。

 その姿を見ていたキラが俺の参考書を掴み取り、無言でそれを眺める。


「どうだ?解けてるだろ?いやー、俺もやれば出来るもんだぜ!自分を褒めたくなる…………ん?なんだこれ?」


 キラは高らかに笑っている俺に、一枚の紙を差し出してきた。


「妾が作った問題だ。これが解けたら合格にしてやる」


 ふん!何をいまさら!

 今の俺に解けない問題など在るはずがない!

 俺はそう思いその紙を机に置き、鉛筆を走らせる。

 が、その腕は途中で動きを止めた。

 今までの問題のどのパターンにも当てはまらない字面がそこには並んでいたのだ。


「言っておくがここまで啖呵を切ったのだから、出来なければ覚悟は出来ているな?」


「え、えっと………。そ、それはどういう………」


「そうだな、今夜は全身抱き枕の刑ってことで」


 …………。

 絶対嫌だ、それは認められない。


「それじゃあああああああ、やってやりますともおおおおお!!!」


 俺は自分でも良くわからない声を上げながら、その問題に立ち向かう。もはやこれはラスボスではなくて、その上を行く裏ボスだ。

 こちらも全力で行かなければ、勝てるはずがない。

 俺はそう思うと鉛筆を指の中で勢いよく回転させると、机が割れるかという力でその問題に立ち向かった。

 その光景を見ていたキラは恍惚とした笑みを浮かべながら、夕日を反射するその艶やかな足を組みなおしながら、再び根源を集め手遊びを始めた。

 くそ!絶対解いてやる!

 この余裕ぶってる女王様をギャフンと言わせてやる!

 俺はその一心で鉛筆を握り、黒い文字を書き連ねていく。

 今取り掛かっている問題は魔力学の問いだ。魔力学は基本的に整えられたパターンがいくつか存在する。それは属性ごとに異なっており、本来ならそのどれかに当てはめていくだけで解くことができるのだが、今回キラが出題してきた問題は、七属性魔術全てが合わさっている混合系の魔力学論だ。

 難易度でいえば最上級。そもそも理論だけで実現すらしていない魔術の問題を突き出してくるなど馬鹿げているのだが、この女王様は何を思ったかその理解不能問題を出題してきたのだ。

 やはり、難しい………。

 そもそも理論すら成立するののか、これ?もはやどこを触っても破綻する結果しか見えないぞ?


「残り十分だ」


「な!?それは鬼畜だろ!?」


「マスターはやれば出来るのだろう?ならばこれくらいは余裕だよな?」


「この陰険精霊が!!!」


「ははは!妾はマスターの抱き枕が手に入るなら手段は選ばんのだ!」


 キラはやはり何かと理由をつけて毎日俺のベッドで寝ている。

 ゆえに今さらではあるのだが、それに抵抗できなくなるというのはなんとしても避けたい!

 俺は歯を食いしばりながら、その紙面に再び目線を戻す。


 するといきなり俺の目の前にある窓に何かがぶつかった。


「おわああ!?」


 それはぶつかった衝撃で、地面へと落下しそうになるが何とか持ちこたえたようで、ふわふわと翼をはためかせながら、宙に浮いている。


「こ、これは、コウモリか?」


 窓の前にいるその生き物は真っ赤であったが形は完全なコウモリであった。よく見ればその口にはなにやら手紙の様なものがくわえられており、ついでにサシリの魔力の残滓が感じられる。

 俺は仕方がないので窓を開けそのコウモリを中に入れてみる。

 その瞬間、そのコウモリは一度赤い液体に姿を変えたと思ったら、一瞬で蒸発してしまい消えてしまった。

 床にはそのコウモリが運んできた手紙だけが落ちている。

 俺はそれを拾い上げると、差出人の名前を見てなんとなく事情を察した。


「誰からきたのだ、マスター?」


「アリエスたちからだよ。中は………なになに?今日はサシリの城で泊まって来るから宿には戻らない、あと明日カリデラ城で立食パーティーがあるから午後六時にキラと一緒にきてほしい、だそうだ」


「は、はあ………。よくわからんな、どういうことだ?」


「まあ要するに、俗に言うお泊り会ってやつだろ。それと明日立食に来い、だとさ。まあ断る理由はないが、どうする?」


「妾はマスターに従うだけだ。好きにするといい」


 と言われてしまったので一応アリエスたちの意思を尊重しつつ、参加することに決めた。


「にしてもわざわざサシリの力で連絡するなんて大げさだな」


 俺はそういいながら気配探知でアリエスたちの位置を確認する。

 どうやら本当にカリデラ城にいるようだ。


「それはいいが、とっくに十分経過しているからなマスター?」


「………。しまったああああああああああああああ!?」


 この瞬間、俺はキラの見事な作戦にはまってしまったのだった。




 というわけで明日はカリデラ城で、なにやら立食パーティーらしいです。


次回は立食パーティーです!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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