第百二十七話 初めてのショッピング
今回は日常パートになります!
戦いもいいですが偶にはこういうのもいいですよね!
では第百二十七話です!
サシリがシュエースト村で血晶病の患者を全て助けたその後。
俺たちはそのままカリデラまで転移を使って一瞬で戻るとサシリは城に、俺たちは適当な宿に向かうことになった。さすがに日も完全に沈みこんでいるので各々休むことにしたのだ。
アリエスたちはサシリと明日の日程の確認をしており、俺とキラにいたっては近くの書店に行きシンフォガリア学園入試参考書なるものを購入しに行った。
いざそのコーナーにたどり着いてみれば、もはやここは日本か?と言わんばかりの参考書や過去問題がズラーっと雁首をそろえており、シンフォガリア学園だけでなく他の有名校のものもたくさん見受けられた。
とはいえ俺たちはシンフォガリア学園のものしか必要ないのでキラに一度中を確認してもらい一番効果のありそうなものを購入すると、アリエスたちを引き連れ宿に足を向かわせた。
で、翌日。
「だから、そこは違うと言っているだろう。そのまま因子を加え続けたらもはや成立しなくなる」
というわけで俺は絶賛キラから学問もといこの世界の知識を叩き込まれているわけだが、これが元の世界の勉強より遥かに難しい。
実際のところシンフォガリア学園の入試に使う科目というのは全部で四つだ。
一つは算術。
まあこれは元の世界でもやっている数学とほぼ一緒なのでなんとかなりそうだ。むしろ定理やら公式があるおかげで元の世界の方が研究が進んでいるようで、さほど難しくはなかった。
二つ目は語学。
これに関しても神妃の力である言語理解のおかげで特に苦もなくこなすことが出来る。正直言って試験に完全なチートであるリアの力を使用するのは気が引けたが、まあさすがに言語だけは仕方がない。これを使わなければ話すことも出来ないのだから。
三つ目は歴史。
ここからが問題となってくる。当然住んでいる世界が違えば今までの偉人や歴史は大きく、というかまったく違う。普通なら小さいころから言い聞かされてきたり、知らずのうちに耳に入ってきたりしてなんとなくわかるものだが、俺にはそれが皆無だ。ゆえに一から頭に叩き込んでいるのだが、やはりそう簡単にはいかない。いくら俺が中二病を拗らせていようと、この量の知識を詰め込むとなるとかなり厳しいのだ。
そして、一番問題な四つ目、魔力学。
この学問は魔術や魔法を使用する際には確実に学んでおかなければいけないものらしく、これを満足に知らないものは魔術も魔法も使えない、とまで言われるほどだ。実際はそんなことはないのだが、それでも知っているとオリジナルの魔術が作りやすかったり、詠唱を省略できるなどメリットは確かにあるようでキラ曰く知っておいて損はない、とのことだ。
だがこれが俺の中で一番苦手な科目であった。
なにせ俺は今まで魔術を使うにしても、元の世界のものかオリジナルのものしか使ってきてない。こうなると魔力学のまの字も知らずに、その力を行使しているので、その知識が定着するはずがないのだ。
そもそもリアや俺が使う魔術とこの世界の魔術は根本的に違う。何がといわれると説明しにくいのだが、俺はやはりリアと同化している関係上、魔術と言う考え方はリアに依存してしまっているので、なかなか新しい考え方を取り入れようとしても難しいのだ。
「いや、でもこうしたほうが効率がいいと思うんだよ。だってこの変換効率が格段に上がるし」
「それはマスターほどの魔力量があってこそ出来るものだ!普通は出来るだけ魔力消費を抑えながら構築するのがスタンダートなやり方だ。基準を自分と同じレベルまで引き上げると、永遠に進まんぞ」
「えー」
とまあこのようなやり取りがもう何十回も続いている。
ちなみにシンフォガリア学園には俺のパーティー全員が入学する予定なのだが、あのセンスの塊たちは、俺が今必死に取り組んでいる参考書をものの一時間で全て解きさってしまったのだ。こうなると、俺は何も口を出せなくなるので、大人しくキラの抗議を受けているという流れである。
「いいから、早く次の問題に進め。特段出来ないというわけではないのだから、あとは応用していくだけだろう」
そう言われて俺は一息つこうとテーブルの上に置かれていた、オレンジ色の飲み物に手をつけようとする。これはシルが息抜きにどうぞ、ということで置いていってくれたものだ。味はほのかなりんご風味でとても飲みやすい。
しかし俺がそのコップに手をつける瞬間、キラがそのコップを奪い取った。
「…………おい、なにをする?お前のはそっちにあるだろう」
「その問題を解き終わるまで没収だ」
ぐっ……。
せ、殺生な……。
俺はそんなキラに無理やり意欲を掻き立てられながら、再び鉛筆を握り魔力学の問題と向き合い始めた。
下手をすると神核よりも強敵だぞ、これは………。
いっそ神妃化しようか?などという馬鹿な考えをめぐらせながら、ふと俺は今頃カリデラ城下町で楽しんでいるであろう仲間の姿を想像する。
いつもなら一緒にいるクビロが俺の机の上で寝ているので、どうやら本当に完全な女子会ということなのだろうが、今頃どうしているだろうか。
そんなことを考えながら、俺は一瞬だけ窓の外に視線を向けるのだった。
「余所見をするな!」
「いってえー!?わかったよ、やればいいんだろ!」
キラの拳が俺の脳天に直撃し、俺の腕は刻みよく動き出すのだった。
「あ!サシリさーん!!!」
ハクが宿の一室で勉強を開始したその頃。
アリエスたちはその宿の前でサシリの到着を待っていた。サシリは血神祖でありこの町の君主であり、なかなか来るのは難しいかと思っていたのだが、それでもサシリは時間ピッタリにやってきた。
「おはようございます、サシリさん」
「おはようございます………」
「気分はいかがですか、サシリさん?」
「よく寝れたかな?サシリちゃん?」
サシリはいつもの赤いドレスをラフに着崩すような服装で現れ、腰にさしていた長剣も今はなくなっている。
「おはよう……。それとサシリでいいわ………。あまり硬くされるのは苦手だから………」
するとその顔を覗き込むようにアリエスは笑顔で話しかける。
「それじゃあ、サシリ姉!さっそく行こっか、回るところはいっぱいあるんだから!シラ、お願いね!」
「任せて!昨日から既にチェックは済んでるのよ!」
シラはそう言うとなにやら赤いペンのようなもので丸く囲まれてる地図を取り出すと、それを右手に持ち、カリデラ城下町の中を歩き始めた。
「初めは軽くお腹にものを入れるわよ!」
シラが元気よくそう言うと、それに続くようにアリエスたちは声を上げる。
「「「「おー!」」」」
一人だけその流れについていけていないサシリもなんとか遅れて声をだす。
「お、おー………?」
その反応になんだか微笑ましくなってしまうアリエスなのであった。
「ほらサシリ姉!私のも食べてもいいよ!」
アリエスはそう言うと自分の持っていたアイスをスプーンで掬ってサシリに差し出す。
「え、で、でもそれはアリエスのだし………。悪いわよ……」
「いいのいいの!こういうのが女子会なんだから!ほら、あーん」
サシリは積極的なアリエスの態度に半ば押されるような形で、そのアイスを口にした。
「あ、あーん………」
その光景を見ていたエリアが目をキラーンと輝かせるように言葉を紡ぐ。
「サシリ?あなたのアイスもとてもおいしそうね。少しもらえないかしら?」
「え?別にいいけど………」
サシリはそう言われて自分のアイスを差し出す。
「では、遠慮なく……」
「あー、エリア姉!そういうのは普通私が初めでしょ!」
「ふふーん、早い者勝ちっていう言葉をしらないのかしら、アリエス?」
その風景にみんなの顔が笑い出す。それはもの凄く暖かいもので楽しいものだった。
サシリはそんな初めての体験をしながら、差し出されたアリエスのアイスを味わっていた。
(これが友達っていうのもなのかな………。よくわからないけど、なんか新鮮……)
するとシラが大きな声を上げて店員を呼びつけた。
「すみませーん!このデラックスジャンボカリデラパフェをください!」
それはカリデラ城の外観を模した特大パフェになっており、大きさは五十センチを越える代物だ。
もはやなぜ立っていられるのかも謎に包まれている一品でもある。
「姉さん………。今日はテンション高いね……」
「もちろろんよ!なんたって今日はハク様からたくさんお金をもらってるからね。使い放題よ!」
「ああ、ごめんねハク君………。私にはこの流れを止めることは出来ないや……」
ルルンは頭上の天上を見上げながら、今頃キラと一緒に勉強しているであろう青年を思い浮かべる。
当然ハクとしては、何を買っても問題ないように大目の金額をシラに預けているのだが、それはどう考えても一日で使いきれるものではない。
だがこの調子でいけば、それすらも現実になりそうな予感がしてならないルルンなのでった。
なんとか、というよりとてつもないスピードでデラックスジャンボカリデラパフェを平らげたアリエスたちは次に女子といえばこれでしょ!と言わんばかりの洋服店に足を運んでいた。
そこには見たこともない素材で編みこまれたワンピースやスカート、それにパーカーや靴など、とにかくありとあらゆるファッショングッズが並んでいた。
その店に到着した途端、アリエスたちは目を輝かせ勢いよく店内に突入した。
唯一サシリだけはどうしていいのかわかってなかったが、そこはアリエスが手を引く形で連れていったようだ。
「うわー!や、やっぱり、サシリ姉って美人だしスタイルいいよね……」
「そ、そうかな………」
サシリはアリエスに差し出された青色のパーカーにラフなショートパンツをはき、試着室から姿を現した。
それはサシリの長く綺麗な赤い髪の毛と対照的な色であったが、それが逆に目を引き付けるような姿になっている。
「ぐぬぬ………。私もいつかはそんなスタイルに……」
アリエスはサシリの姿を見ながら自分の将来を想像しつつ、今度は自分が試着室に入った。
サシリはとりあえずその服を着たまま辺りをうろうろと見て回った。今まで自分が着ていた服なんて城から支給される豪華なドレスくらいしかなかったのだが、いざこういうところに来て見るとサシリの心がくすぐられるものがたくさんある。
どれもこれもが夢のような世界で、こんなところが自分が治める町にあったということのほうが驚きであった。
そこでふと店内にあった鏡に目がいく。
映っているのは今まで見たことがないほど変化した自分の姿であり、なんだか気恥ずかしくなってしまう。
咄嗟に着ているパーカーで顔を隠すが、その顔は嬉しさを堪えているような表情をしていた。
(こういうのも凄く楽しい………)
ちなみにサシリにいたってはハクが軽い隠蔽術式を使っているので、余程敏感な者でなければ気づくことがないように設定されている。
するとそれぞれ大きな袋を持ったシラたちがこちらに寄ってきた。
「あ!凄く可愛いじゃない、サシリ!」
「うん、似合ってる……」
「す、スタイルは負けてないはずです………」
「いいね!やっぱり女の子はお洒落するのが一番だよ!」
サシリはそう言われてますます恥ずかしくなったのだが、それでも心の高揚感が抑えられなかった。
「そう言えばアリエスは?」
ルルンが徐にそう呟く。
「アリエスはあっちにいるわ………」
サシリはアリエスが入っている試着室を指差すと、そこまでみんなを案内した。
するとその中からいきなり大きな声と共にアリエスが姿を現した。
「じゃーん!これはどうかな?結構いいと思うんだけど!」
それは誰が見ても目を引くような赤色の長いカットソーに身を包んだアリエスの姿だった。
「やっぱり……、これには敵わないわね……」
「まったく同じ意見だよー」
シラとルルンがため息混じりにそう答える。
なぜならそのアリエスの姿は誰がどう見ても似合っていたからだ。アリエスの髪の毛が白色で、どの色を持ってきても似合うということも原因なのだが、それでも似合いすぎといっても過言ではないほどその服はアリエスにピッタリの服だった。
「凄く似合ってるわよ……」
サシリは率直にそう述べる。
「ありがと!サシリ姉!」
アリエスはその言葉に心底嬉しそうに答えると、そのままサシリの手を引き会計に向かった。
「それじゃあ、お会計してくるねー」
「あ、ちょっとアリエス!お金はどうするのよ!?」
そう言ってシラたちも慌ててその二人に追随する。
その光景をアリエスに手を引かれながら見ていたサシリはアリエスの背中を見つめながらふとこんなことを思った。
(なんか賑やかで楽しいな……。ずっとこの時間が続けばいいのに)
それはハクとの勝負でも感じたことだったが、同じ言葉でも気持ちはまったくもって違い、和やかな空気がサシリの心を暖めるだった。
次回は再びハクサイドに戻ります!
今回は甘いパートだったので少しだけ違ったテイストを入れたいです!
誤字、脱字がありましたらお教えください!




