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第百七話 次の目的地………?

今回はルルンが仲間になるお話と学園王国についてのお話です!

では第百七話です!

 俺たちはルルンの口から飛び出したその言葉に全員が固まっていた。


「あ、あの、ルルンさん?何を言っているのかよくわからないんですが………」


 ハルカが恐る恐る声をかける。その手はプルプルと振るえ持っているお茶を落としそうになっている。


「うん?いやだから、私もハク君の旅についていきたいのよ!なんだか、戦っているハク君を見てたら、昔の血が騒いで来ちゃって」


 いやいや、何を言っているんだこのアイドルは。

 そんなことをしたら、このエルヴィニアはどうなる?

 ダンジョンの門番がいなくなるだけでなく、この里の最強の守りが消えてしまうではないか。

 ルルンはシーナの師匠であるだけあってその実力は本物だ。それはこのエルヴィニアにおいてもおそらく最強クラスの力を保有しているはずなのだ。そんな存在をいくら自分の意思だとはいえ、引き抜いてしまうのはまずいだろう。


「さすがにあなたがこの里から抜けられると警備上の問題がでる。確かに我々や王国の力が参戦したところで、やはり所詮はよそ者。里に詳しいものが必要なのだ」


 イロアがルルンに真剣な眼差しでそう問いかける。

 するとムスッとした顔でルルンはその言葉に反論する。


「あら、イロアさんはそういった政略的なしがらみから人々を解放するために活動しているんじゃなかったかしら?その中心であるあなたがそんなことを言っていいの?金の守護者さん?」


「そ、それは………」


 イロアは世間の中ではとてつもない平和主義者というイメージが強い。それが今まで帝国の動きを牽制し、抑圧してきた。

 だが実際はただの平和主義者というだけでなく、しっかりとした目的があって行動していたようだ。

 だが今回はそれを上手くルルンに上手く利用されたらしい。


「だがな、やはりこの場所からお前が消えるのは問題だ。里の防御のこともあるが、ダンジョンだって門番がいなくなる。それはまずいだろう?」


「そうかしら?なにせダンジョンの一番危険な存在はハク君が倒しちゃったじゃない。そうなった今、私一人でも最下層に到達できるレベルになってるの。何も心配はいらないわ。それとも何?こんな五百歳過ぎのおばさんは要らないかしら?」


「あ、いやそれは全然。もう既に世界創成期から生きてる、年齢不詳の奴が二名ほど混ざっているからな」


「『何か言ったかの?』か?」


「い、いえ……。何でもありません………」


 俺がふと口にした言葉に、黒の章(インフィニティー)より早いのではないかというスピードでリアとキラが俺に言葉を刺してきた。


 こ、こえー………。

 今考えてみれば、こいつらは俺たちのパーティーの中でも最強クラスに強いんだった。これからは気をつけねば……。


「なら大丈夫よね!それじゃあ、早めに準備しておくわ!」


「いや、ちょっと………」


 俺はそう言うとパーティーメンバーを見渡す。一応確認を取らなければ、いけない問題だ。

 するとアリエスたちの表情は、もう好きにしてください、と言った風な投げやりな顔をしていた。

 ああ、そんな適当でいいのね………。

 しかし、俺の隣に座っていたアリエスは一人だけルルンの前に立つと人差し指を突き出しながらルルンにこう問いかけた。


「私はルルンさんがこのパーティーに入るのは嫌じゃないけど、でもそれだからってハクにぃにその体で誘惑しないでね!それは絶対守って!」


「ブーーーーーーーーーー!?」


 俺はその言葉を聞いた瞬間口の中に含んでいたお茶を全力で吐き出してしまった。


「そ、そうです!いくらここでアイドルらしいことをやっているからって、このパーティーではそういうことは禁止なんです!」


「お前が言うかお前が!!!」


 エリアがアリエスに続けて言葉を投げかける。


「それは私も同感です!」


「同じく………!」


「はあ、お前達は何の話をしているのだ……」


 キラが頭に手を当てて呆れている。

 そうだよな!そうだよ!この女王様はわかってらっしゃる!さすがは俺の契約精霊だ!


「そんなことをマスターにしたら妾が跡形もなく吹き飛ばしてやる」


 全然わかってなかった!?

 少しでもお前を信じた俺が馬鹿だったよ!!!


「ハハハ、そんなことはしないよ。あ、でお夜這いとかはしちゃうかも?」


「「「「「ダメーーーーー!!!」」」」」


 するとその光景を見ていたイロアとその隣にいるパーティーの副リーダーが口を開いた。


「面白い、パーティーですね」


「ああ、それでいて皆笑っている。あれは私達のパーティーにはないものだ」


「そ、それは、さすがに……」


「なんなら今晩、男衆を引き連れて私を襲ってもいいんだぞ?」


「え?」


「フッ、冗談だ。もしそんなことがあれば全員血祭りだ」


「は、はい、気をつけます………」


 おい!

 副リーダーの顔が真っ青になってるぞ!


「はあ………。では本当にルルンさんはこの里を出て行くのですね?」


「うん!そのつもりだよ!」


 アリエスたちとガヤガヤと喋っていたルルンが顔だけをこちらに向けながらハルカの問いに答える。


「でしたら、ルルンさんがいなくなっても大丈夫なような警備を敷かないといけませんね。どうしましょうか?」


 それは確かに考えないといけない問題だ。

 先程はルルンがイロアを論破してしまったから、あやふやになったが、それでもこの問題は避けられない。


「…………そうだな。おい、たしか障壁結晶を持ってきていたな?あれでどうにかならないか?」


 イロアが隣の副リーダーに問いかける。


「いいのですか?あれは希少な永続型ですよ?」


「かまわん。我々は結局の里にきて何もできていないのだからな」


「その障壁結晶とはなんですか?」


 俺は聞きなれない言葉があったので思い切って聞いてみた。


「障壁結晶とはその名の通り結晶から障壁を展開できる魔具の一種だ。それは個体によって発動できる障壁の大きさや時間が決まっているのだが、幸いにも我々が持っているものは、このエルヴィニアよりも広範囲に使用できるし、時間制限もない。また任意で進入できる人間を選別できるというおまけ付きだ」


 なるほど、確かにそれは便利そうなアイテムだな。それを使用しておけばかなりの確率で帝国の侵入を阻止できるだろう。


「で、ですが、そのような貴重なものを譲ってもらってもいのでしょうか?」


「心配ない。それぐらいしなければ我がパーティーとして示しがつかんからな。気にすることはないさ」


 イロアはそう言うと目を閉じて二杯目のお茶に唇をつけた。


「………というわけです、ルルンさん。ハクさんについていくなら早めに仕度をしておいてください。あまり迷惑をかけないようにお願いしますよ」


「わかってるよー。ハルカちゃんは心配性だなー」


 もはやこれではどちらが年上なのかわからないな………。

 俺は新たな仲間を歓迎しつつ、このままでいいのか?と少々パーティーの男女比について考えながらお茶を飲んだ。

 別に俺はやましいことをする気は断じてないのだが、さすがにここまで女性の比率が上がってしまうと、なんだか肩身が狭くなってしまう。


 うーん、真話大戦のときには絶対に考えられなかった光景だな、これは。

 そんなことを考えながらズズズと冷たいお茶を喉に通していると、イロアがこちらを向き話しかけてきた。


「それでハクよ。君達はこれから学園王国に行くといったな?」


「ええ、そうですが」


「ならばSSSランク冒険者の招集にも参加するのだろう?」


 それはシルヴィニクス王国のアトラス王が言っていたことだ。なんでも一年に一度SSSランク冒険者の集いがあるのだとか。


「まあ、参加はすると思いますが、それがどうかしましたか?」


 するとイロアは急に真剣な眼差しを俺に向けながら口を開いた。


「であれば予め私達の近くにいたほうがいい。というのも集会のときに一緒に入室する程度でいいのだ。あの集団はかなり異質だからな。私とラオがまだ普通だったが、そのほかは基本的に狂人か変人だ。それに付き纏っている人間も同じ。ゆえに明らかに私や第一位よりも強いであろう君は間違いなく標的にされる。それを私達で牽制してやるということだ」


「は、はあ、それはありがたいですが……」


 あのラオで普通の人格者として認識されているあたり、他のSSSランク冒険者は相当厄介な者たちが多いようだな。


「なに、君達の行動を制限することはない。ただ私達と君達は同盟のような関係だと示せればいいのだ」


「わかりました……」


 なんか上手く乗せられたような気がするが、このイロアからは嘘の気配が感じられない。本当に俺たちのことを考えての発現だろう。であればそこまでしてもらって受け取らないのも悪いだろう。


「それと、これは本当に言いにくいことなのだが……」


「なんですか?」


 急に視線を俺から離したイロアはそのままの状態で、俺の予想を遥かに上回る言葉を口にしたのだ。




「学園王国にある第四ダンジョンに入るには、王立シンフォガリア学園に入学しなければならない」


「はい?」

 俺はその言葉を聞いた瞬間、本日二回目のたらいを頭の上から落とされたのだった。







 その後、イロア達はパーティーメンバーを連れ、仕事があるので、と言い残して障壁結晶を設置すると早々とこのエルヴィニアから出て行った。

 で、俺はと言うと、先程イロアから言われた言葉を頭の中で反芻していた。

 

 まとめると、学園王国にある第四ダンジョンは王立シンフォガリア学園の中に存在しているようで、その管理は学園が全て行っているようなのだ。それは冒険者はおろかその学園の生徒であっても簡単には入ることが出来ず、卒業試験でようやく入ることができるらしい。

 またそれゆえこのシンフォガリア学園というのは毎年入学者の倍率が目を疑うような数字が出てくるらしく、入学するだけでも相当難しくなっているようだ。

 入学する年齢に特に制限はないのだが、とにかく受験者数がえげつないことになるらしい。入学試験は今から一ヶ月後らしいので、イロア曰くなんとか間に合うだろうとのことだ。

 そもそも学園王国というのは、数多くの学校や学園を積極的に運営している都市で、その学園たちと一緒に大きくなった都市とも言える。その教育は学術から戦闘分野にもわたり、国民の基礎的な戦闘能力が高い国としても有名なのだ。


 というわけで俺は、この世界に来てまで学校というものに囚われるのか、と思いながらハルカの屋敷にあるソファーに脱力しながらうな垂れていた。


『まさか、あれほど嫌だった学術にまたぶつかることになるとはな。本当に面白いぞ主様!』


「あのなあ、簡単に言うけれど、この世界の文化も歴史も知らない馬鹿が、そのとんでもない倍率の学園に入学できると思うか?」


『思わんな!だがその現実に打ちひしがれている主様は滑稽じゃ!』


「本当に、変態で陰険な神様だな、お前は」


 と、リアとまるで元の世界でのような会話を繰り広げている俺だったが、今その俺が何をしているかと言うと、端的に言ってしまえば待ちの時間であった。

 というのも。


『今日は、エルヴィニアで夏祭りがあるんですよ!本当は里がボロボロに破壊されていたので延期になる予定でしたが、ハクさんが直してくれたおかげで里の皆もはりきっているようなので、予定通り開催しますよ!』


 とハルカが口にしたことが発端だった。


 当然男の俺はそんなものには殆ど興味がなかったのだが、なにせ俺のパーティーは女性が多い。

となれば結果など見なくてもわかる。

 結局、アリエスたちはその言葉に目を輝かせ、俺たちの参加も決まってしまった。

なんでもこのエルヴィニアには夏祭りの正装があるらしく、それの採寸を今アリエスたちは行っていた。

俺はいつもの服でいい、と言ったのでその採寸をひたすら待っている状況なのだ。

 とはいえ暇というのは正直言ってかなり辛い。

 今まで常に何かをやってきたので、いざ何もしない時間というのは退屈なのだ。

 少し外でも見てくるか。

 そう思い至った俺は俺の腹の上で寝ていたクビロをつまみ上げ、肩に乗せるとそのまま屋敷の扉を開けて外に出た。

 そこはいまだに青い空が浮かんでおり、俺の体を照りつけたのだった。




 夏祭り開催まで残り六時間。


次回は第三章最後のお話です!

戦闘ばかりだったキャラクターたちも休息は必要です!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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