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第百話 vs勇者、五

記念すべき百話目です!

投稿開始から一ヶ月と少しが経過し、ようやく百話に到達することが出来ました!

予想より多くの方に見ていただいており、本当に感謝しております!

一日に三本投稿という無茶をやっていますが、それでもこのスタンスは変えるつもりはないので、これからも一緒についてきていただけたら幸いです!

またブックマーク、評価、感想、レビューもしていただけると今後の励みになりますので、是非よろしくお願いします!

では第百話です!

(これで通算十回目ですか…………)


 エリアたちはヘルに言われたとおり、残っている帝国兵を排除していた。その数はゆうに五百人を越えていたのだが、その数はもはや百人を切っている。

 それもそのはず、今エリアの目の前に広がっているものは通常ならば絶対に考えられない光景だったのだ。

 新緑を放ちながら輝いていた草木は純白の雪に覆われその姿は見えず、空気中の水分は全て凍りつき霰となって降り積もる。さらに気温は既に氷点下を下回り、吐く息は一瞬にして細かい雪の結晶に変わり肌を刺す。

 この現状を異常と言わずになんと言えるのだ。

 太陽は既に沈みかけているとはいえ、それでも真夏の今日は本来なら三十度を越えていてもおかしくない。それなのにエリアがいるこの空間は極寒の大地と化していた。


「あ、アリエス!さすがにもう氷の終焉(アイスインフェルノ)は打たなくていいです!このままではここの生態系が崩壊してしまいます!」


 エリアは気象変化の現況であるアリエスに向かってそう叫んだ。

 ヘルと分かれた後、エリアたちは目標の帝国兵を発見するとそのまま流れるような動作で攻撃を開始した。

 エリアは剣で、アリエスは魔術で、近距離と遠距離のコンビネーションで打ち倒していくはずだった。

 だが、結界的にそれはたった一人の魔術のみで完結する。

 アリエスは帝国兵を見つけた瞬間、すぐさま氷の終焉(アイスインフェルノ)を唱えた。魔力の回復した今の状態ならばこのレベルの魔中を使用しても問題はない。そう、ここまではエリアも納得できた。

 しかしアリエスの魔術はここでは終わらなかった。

 立て続けにもう一度氷の終焉(アイスインフェルノ)を発動したかと思うと、もはや残魔力量など考えていないくらい無茶苦茶に氷の終焉(アイスインフェルノ)を連発しだしたのだ。


(アリエスの魔力量ならば氷の終焉(アイスインフェルノ)は打てても最大三回。ですが今はもう既に十回も使用している。これは…………一体どういうことなのでしょうか)


 仮にヘルから回復してもらったときに魔力を多めに授けられたのだとすれば辻褄が合うが、エリア自身の最大魔力量は変わっておらず、またヘルも回復したと言っただけで上限値を上げたとは言ってない。

 つまり明らかにおかしな状況だ。

 それに今戦っているアリエスの目は今まで見たことがないくらい、鋭く輝いていて近寄ることさえも少し躊躇ってしまうほどだ。

 するとそのアリエスがエリアの言葉に返事を返してきた。


「え?あ、ああ、うん、そうだね………。でもまだ帝国兵は残ってるから別の魔術で蹴散らすよ」


 アリエスはそう言うと左手に持つ魔本を勢いよく開き、その中に書かれている一つのページを指で挟みながら、その魔術の名前を唱えた。


樹地の星根(プラネタルガビリア)


 それは地響きと共に巨大な木の根っこを地中から呼び寄せ、その全てを操って兵士達を吹き飛ばしていく。氷の終焉(アイスインフェルノ)によって作られた氷盤を軽々と砕くそれはまさに星の息吹そのもの。星の生命力を全て注ぎ込んだかのようなその魔術はアリエスの体から迸る魔力を遠慮なく吸い取りどんどん巨大化する。

 だが当のアリエスは涼しい顔でそのまま攻撃を続けた。

 ちなみにこの魔術はこの世界にあるものではなく閑地万却の雷(ティタグラム)と同様にリアが開発したものであり、その威力は閑地万却の雷(ティタグラム)を遥かに越える。

 さすがにこれはまずいと判断したエリアはすかさずアリエスの元に駆け寄り、言葉を投げかける。


「アリエス!魔力の残量は大丈夫なんですか!今使っているその魔術は氷の終焉(アイスインフェルノ)より遥かに大きな魔力を感じます!このままでは先程のように倒れてしまいますよ!!!」


 エリアは本当にアリエスの体を心配してそう問いかけた。


「そんなに心配しなくて大丈夫だよ、エリア姉。何だか今は力がどんどん湧いてくるの、だから今のうちにあの軍隊を殲滅しなきゃ」


 その身から迸る力を間近でみたエリアは、そのすさまじい力を操るアリエスを確認すると、ため息を一つだけ吐いて一歩後ろに下がった。


(確かにとてつもない魔力ですが、見ている分にはアリエスは平気そうですし、このままでもいいのかもしれません…………。ですがこれはなんというか………まるでキラのような戦い方ですね)


 そう、今のアリエスはまるで星に愛されているかのように無尽蔵に魔力を纏い、それを魔術に変換している。その光景はキラが根源を使用するときの姿に似ていたのだ。

 それは例えるならば、無限の魔力を星から掬い上げているような、なんとも言い表せない姿だった。

 アリエスの魔術は同音と共に一人、また一人と帝国兵を蹴散らしていく。当然その命までは奪っておらず、氷の終焉(アイスインフェルノ)の下敷きになっているものたちもまだ辛うじて息はあるようだった。

 そうしてアリエスたちはヘルに言いつけられたように見事帝国兵を吹き飛ばし、鎮圧に成功したのだった。


 それから数分後、空中を浮遊しながら無傷のヘルがアリエスたちの下にやってきた。


「あら、これはまた随分派手にやったわねえ。ここだけヘルヘイムになる前のニブルヘイムみたいじゃない」


 ヘルはその光景を見ても一切表情を変えずアリエスたちに話しかけた。


「あ、あの、さっきは本当にありがとうございました!」


 アリエスが深々とヘルに向かって頭を下げる。それと同時にエリアも同じポーズをとり、ヘルに感謝の気持ちを伝えた。


「別にいいのよ。これもあの人に頼まれてやってることなんだから。それでエルフがどこに捕まっているか聞いたの?」


「はい、なんでも南の里門から近くにある空き地に集めているそうです」


 これに関してはヘルが来るまでの間に伸びている帝国兵から聞き出しておいたのだ。このあたりはさすが王女と言うだけエリアは抜かりない。王国は常に国民を最重要保護対象にして物事を考えている。ということでその王女であるエリアにも国民を第一に考える思考が出来上がっており、エリアはこの場を鎮圧するとすぐさまエルフたちの所在を聞きだしたのだ。


「そう、ならもう心配はいらないわね。あそこには精霊の女王様もいるみたいだし。それに私はそろそろ限界」


 そうヘルは言うと突然ヘルの体が霞み始めた。


「え!?」


「あの人が私に渡した力を使いきったのよ。だから私とはここでお別れ」


「そ、そんな………」


 アリエスが泣きそうな顔でヘルを見つめる。

 ヘルはそんなアリエスを体に抱き寄せると、静かに微笑みながら言葉をかけた。


「あなた本当に泣き虫なのね。少しだけあの人の気持ちがわかったきがするわ。でも、またいつか会えるわ。そのときにはたくさんお話しましょう」


「う、うん……」


 その言葉に頷いたアリエスをヘルは確認すると、一度エリアのほうを向き口を開く。


「あとはよろしくね」


「はい、アリエスは私達の仲間ですから絶対に守ってみせます!」


「フフフ、それだとあなたのことは誰が守るのよ。正義感が強いのもいいけど、ほどほどにしなさい」


 そしてヘルは最後にアリエスの耳元に口を近づけ一言呟いたのだった。


「あの人は絶対に振り向いてくれるわ。だからこれからも全力で頑張りなさい」


「ひえあぁ!?」


 アリエスがその言葉に反応して顔を上げたときには既にヘルの姿はなくなっていた。

 エリアは一体何がおきたのか理解できず、首を傾げていた。


「どうかしましたか、アリエス?」


 するとアリエスは顔を真っ赤にしながらブンブンと首を振った。


「な、なんでもないよ!そ、それより、早くエルフの皆を助けなきゃ!」


 と、アリエスは口早に呟くと、一人でズンズンと南の里門に向かって歩き出すのだった。


「あ、ちょっと待てください!一人で行くのは危険です!」


 エリアはそのアリエスを追いかけながら、ダンジョンの前で戦っているであろう、自分の想い人の姿を想像した。


 (こちらはなんとか切り抜けました。そちらはどうなっていますかハク様?)


 その心の声は風に靡く木々のせせらぎによって空を舞ったのだった。








 同時刻。

エルヴィニアの周囲を探索しているクビロは、自身の影の力を使い帝国のものがいないか調べていた。

 クビロの影の能力は自身の影だけでなく他人の影に対しても有効なので、逆にこれを利用することで人物の気配を辿っていたのだ。

 つまり人のいるところには影がある、方式でその動きを出来るだけ広範囲に使用しながらクビロはエルヴィニアの周りをグルグルと移動していた。

 その途中にキラやアリエスたちの気配も感じられたが、今は自分の仕事に専念するべく余計な感情を排除し観察を続ける。

 すると、里の東側の方から明らかにこの里の人間ではない気配が感じられた。


『ようやく、見つけたのじゃ』


 クビロはその気配を探知するとすぐさま、元の姿に戻り全速力でその場所に向かう。普段人のいるところで元の姿に戻ろうとすれば、確実に大きな騒ぎになってしまうが、今は人も殆どいないので気にすることなく突き進む。

 クビロの全長は百メートル程なので本気を出せばものの数分でその場所にたどり着く。その代わり、とてつもない音を周囲に撒き散らしながら移動することになるので注意は必要であるが。

 そしてとうとうクビロはその気配があったところに到着する。

 そこには明らかに先程の勇者の仲間であろうと思われる三人の少年少女の姿があった。


「ぎゃあああああ!!」


「な、なに、この蛇!?」


「ば、化け物だ!?」


 その三人はクビロを目撃した瞬間、とても人間らしい反応を返してきた。


『むう、どうやらお前達が勇者とかいうやつらで間違いなさそうじゃのう』


「しゃ、喋った!?」


 するとクビロは今まで隠していた殺気を全力で放ち、刺々しいトーンで勇者達に問いかけた。


『お前達はこの罪もないエルフの里と人間をおそったのじゃ。それ相応の覚悟は出来ているじゃろうな?』


 その言葉に対して一人の勇者が、声を震わせながら返答する。


「う、うるさい!お、俺たちだって、命令されたんだ!し、仕方ないだろう!」


 それはもはや完全な八つ当たりなのだが、クビロはまったく聞く耳を持たず、戦闘態勢を整えた。


『構えろ』


「「「え!?」」」


『どうやら一度その性根を叩き直さんといけないらしいな。手加減はするが気を抜くと死ぬぞ?』


 その瞬間クビロは自身の影を操って勇者達に攻撃を仕掛けた。





 そうして勇者と地の土地神(ミラルタ)の戦いが幕を開けたのだった。


次回はクビロの戦闘回になります!

百話に到達しましたが、第三章はもう少しだけ続きますので楽しんで読んでいただけたら幸いです!

誤字、脱字が多く読みにくいところもあるかと思いますが、今後ともこの作品をよろしくお願いいたします!

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