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「あぁ、右腕がなくなっちゃったね…イヴン」
誰だろう…この人は…
お母さんとお父さんが動かないのに、なんで笑っているの?
どうして僕の名前を知っているの?
その血みたいな赤い大きな羽は悪魔の羽?
―「早く強くなって、僕のところにおいで」―
=SILVER SORCERER=
あれから14年。
ここは、魔法が存在する世界『フォルグド』
人間・エルフ・獣人・悪魔の四種族が共存し、四つの国をそれぞれ人間の王が統治している。
四つの国『ノーザン』『イースティック』『サウジグ』『ウェストルダム』は友好条約を結び、表面上平等な立場を保っているが、実際、最も軍事力の高い『ノーザン』が世界を動かす権力を握っていた。
今日は、その首都『セオドル』で、61代目のガーディアン交換式が行われる日。
300年前の魔本騒ぎ以来、悪魔から街を守るために張られるようになった魔法壁『シールド』。
そのシールドを張るのがガーディアンの使命だ。
各国一名だけ選ばれ、王家の次に権力を揮える4名のガーディアン。
61代目のノーザンガーディアンに選ばれたのは…
「イヴン、行くぞ」
写真立てと向き合っていた銀髪の青年に玄関から呼びかけてきたのは、腰の辺りまである赤茶色の髪を風に揺らしながら扉に寄りかかり、なんとも偉そうにしている若い男。
「はい。師匠」
銀髪の青年ことイヴンは、綺麗な紫の瞳を声の主の方に向けた。
今日は、待ちに待ったイヴンがガーディアンになる日。
これから、魔法の師であるアダムと、ガーディアンの交換式を行いに城へ向かうところなのだ。
「イヴーン!せんせぇ!まだ行かないの〜?」
二人を促すのは、猫の獣人である少女メアリ。
まだ11才程度の彼女は、黒い耳と尻尾をぴこぴこ動かしていて落ち着きが無い。
ついでにその場で、ぱたぱたと足踏みまで始めた。
「はやくー!」
「そんなに急がなくても平気だよ、メアリ」
イヴンはメアリにそう声をかけると、もう一度写真立てに向き直り
「行ってきます。父さん、母さん」
今は亡き両親に声をかけてから家を後にした。
―14年前、イヴンは6歳の時に両親と自らの右腕を失った。
イヴンからそれらを奪ったのは魔法貴族を殲滅しはじめていた人間の宿敵、悪魔の当主。
魔法貴族は人間の中でも稀有な存在で、魔法を扱うのに長けた身体をしており、代々ガーディアンを継いできた血筋だった。
ガーディアンを抜かして、王家の次に身分の高い貴族だったが、300年前の魔本騒ぎから力を蓄えていた悪魔たちにより、イヴンを残して全ての魔法貴族は死亡。
ただ一人生き残った奇跡の少年。
『イヴン=シャリオン』
しかし、実際は生かされたのだ。
「早く強くなって、僕のところにおいで」
悪魔の当主はイヴンの命まで奪わず、そう告げて姿を消した。
少年には特別な血が循っていた…。




