300年前
物語の舞台は、魔法が存在する世界―フォルグド―
人間・エルフ・獣人・悪魔の四種族が共存し、四つの国をそれぞれ人間の王が統治していたこの地は、300年前、魔本という脅威に平和な均衡を失うと共に、英雄を誕生させた。
―300年間人々に語り継がれる、魔本の脅威―
そして
―4人の英雄伝説―
均衡を狂わせた元凶である魔本の名は、『紅の魔本』と『碧の魔本』。
この二冊の魔本は、最もプライドの高い種族『悪魔』が自分達よりも劣等な『人間』に支配されるのを拒み、他種族を奴隷とするために作り上げた代物。
悪魔を統べる『当主』は、その二冊の魔本を駆使し、次々と人間を奴隷にしていくと、半年たらずで二国の政権を手中に納めるまでとなった。
悪魔による侵略は速度を増し、魔本への恐怖による混乱がフォルグドを覆い始め、世界は衰退の一途をたどり始める。
だが、そんな中、衰退を食い止めるために立ち上がった者がいた。
国を収める王家の次に権力をもった魔法貴族『レジーム』家の長女―
『マーリィン=レジーム』
―彼女こそが、後世にまで語り継がれる英雄の一人である。
まだ18才になったばかりの彼女は、双剣を携えて、後に英雄と称される仲間とともに魔本封印の旅へ出た。
旅の仲間であり、マーリィンの友人でもあった『エマ=ヴァイルダー』は、人間族よりも遥かに豊富な知識と、確かな弓矢の技術を持ったエルフ族の女性。
そして、世界の強豪達の集う『武術世界大会』で三冠を保持し、最強とまで謳われた魔法使い『ルシャ=ノアルド』と、その彼に次ぐ能力を持った魔法使い『ルワン=ドレーク』が仲間に加わり、最後に、ルワンの義弟である獣人の『ニール=ドレーク』も旅に同行した。
ここまでは確かに『5人』だった英雄達。
しかし、現代に語り継がれる伝説では、『3人』の仲間を集めたマーリィンがその後、1年の歳月を経て、悪魔の当主を討伐し、魔本を封印したと記されている。
真実は、300年前のその日、王家に隠ぺいされた。
それは、悪魔の当主の宙を舞う居城にたどり着いた5人が、ある問題にぶち当たったのが原因であった。
城に入り込むには、地上に存在する門を開かなければいけなくなり、それが悪魔の体でないと触れることが出来ないものだったのだ。
地上をのさばっている悪魔を捕まえて門を開かせようと考えたが、そうしようとするたびに悪魔が自ら命を絶ち、開ける方法が一つに限られてしまった。
その唯一の方法とは、仲間の一人が悪魔化して門を開けるということ。
悪魔化―
悪魔をたった一人で倒し、その悪魔の死骸の粉を飲むと悪魔になることができるが、二度と元の姿には戻れないという、魔法使い最大の禁忌である。
役をかってでたのは
ルシャ=ノアルド
悪魔化すれば二度と人間社会に戻ることが叶わない上に、不適合であれば数時間で命を落とす危険な行為に、彼は進んで名乗りを上げ、その体は悪魔化を遂げた。
そして、その勇気ある行動のおかげで、マーリィン達は悪魔の居城に乗り込むことに成功し、当主を討伐後
失明と引き換えに魔本を手に入れた。
戦いを終え、深手を負った5人は、王直属の医師団のいるウェストルダム城へと向かい、最悪の事態に陥った。
マーリィン=レジームは、魔本に触れたことにより、仕掛けられていた呪いで両目を失明し、治療不可。
ルワン=ドレークも、負った傷が深く、王の医師団でも治療不可。
エマ=ヴァイルダーとニール=ドレークは、軽傷で命に別状なし。
そして
ルシャ=ノアルドは、戦いの最中に悪魔化が不適合と判明し、既にムシの息となっていた。
王は、そんな彼の悪魔化を慈悲の一欠片もかけず、正義と認めなかった。
英雄としての救護治療ではなく、反逆者として処罰が下されたのである。
彼の受けた罰は、存在した証を消去・五百年間、指輪での幽閉(魔本を指輪にしたようなもの)というものだった。
その後、奴隷を解放した魔本を完全に消去するために、特殊な溶岩の流れる火口に捨てなければならなくなったが、エマとニールだけしかその危険な作業に順ずる者がおらず、あまりの危険さにマーリィンは、魔本をノーザン城の地下に封印することで事を収めた。
フォルグドに平和が取り戻されてから、英雄達はそれぞれの人生に幕を下ろした。
ルワンは、ルシャが歴史から消去されたことにより、繰上げで武術世界大会の三冠保持者となってから数日後に息をひきとった。
そして、マーリィンは失明の影響でストレスが溜まり、若くして他界。
ニールは寿命まで生きてその生涯を閉じ、エマだけは今でも健在している。
―こうして今に語り継がれる英雄4人―
女神『マーリィン=レジーム』
最強の魔法使い『ルワン=ドレーク』
美しき知能者『エマ=ヴァイルダー』
黒の異端者『ニール=ドレーク』
―魔本は、300年の年月をへて復活する―




