終章:旅立ち
以上がここ数日の出来事だ。
結局、沙紀がどこに行ったのかは分からなかった。分かったのは、大祐の元を訪れる前に一人の女性と話している姿が署内の監視カメラに残っていただけ。
「どこに行ったんだろう?」
沙紀が姿を消した直後は、皆慌てたが課長の「大丈夫、帰ってくるよ」という言葉に落ち着きを取り戻していった。
「お嬢様なら大丈夫ですよ」
突然響いた声に大祐は、体を強張らせ、声の主を探す。すると、扉の前に見知った人物が立っていた。そこにいたのは左京だった。
「左京さん、いつのまに」
「ノックはしましたよ。聞こえていなかったようですが」
「すいません。でも、何でここに?」
「今日はこれを届けに参りました」
そう言われて手渡されたのは、白い封筒。
「手紙?」
送り主は誰かと裏返して見るとそこには沙紀とだけ書かれていた。
「これって!?」
「では、確かにお渡ししましたよ。それでは」
左京は、驚く大祐をそのままに病室から去って行った。
大祐は、急いで封筒を破り中身を取り出す。中に入っていたのは、便箋が一枚。そこには大きくこう書かれていた。
『少し旅に出るわ。お土産は買ってくるから待っててちょうだい』
「これだけ?」
その簡潔に書かれた手紙は、沙紀らしかった。
(待っててちょうだいか…………)
「待ってますから、早く帰って来て下さい」
大祐は、一人呟き窓の外に目を向ける。
そこには雲ひとつない青空が広がっている。旅立ちには絶好のお天気だ。
その空に大祐は願った、沙紀の旅の無事を。そして早く沙紀が自分達の元に帰ってくるようにと。
以上で完結になります。
最後まで読んでくださった、皆様に感謝です。
読んでいただいた通り、続きます。
沙紀の旅については、天の扉の方で書きたいと思います。
特異課と天の扉シリーズに関しては、自分が納得の行くところまで書きたいと思っているので、また見かけましたら読んでやってください。
そしてよろしければ、感想や評価を頂ければと思ってます。
2008.4.8
楓