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第91話:処分

 「まったく、困ったものだね。確固たる証拠もなく動きその上器物破損かね」

 総理官邸の一室。そこでは、今回の件に関する査問会が開かれていた。

 部屋の中にいるのはこの国を動かす人間達。その中央には、トップである総理の姿。

 「確かに物証は出ませんでしたが、あそこで問題の薬が売買されていたのは事実です。あの場の主催者自身がそう言ってましたので」

 沙紀は臆することなく自分の意見を述べる。今、この場にいるのは沙紀だけだ。課長はというと別室で待機させられている。直接現場にはいなかったという理由で。

 「そもそも何故特異課が薬物事件を追っていたんだね? 君達の管轄ではないだろう?」

 閣僚の一人である男は言う。その顔には、このやっかい者達がと書いてある。

 「もちろん、本来なら我々が追うべき事件ではありません。しかし、捜査命令が下されれば動かない訳にはいけません。それこそ、命令違反ということで処罰されかねませんので」

 「確かに命令は下した。しかし、それはあくまで睡眠障害の原因を突き止めそれを解決するようにと言ったはずだが」

 「君達は、それを治す薬を手に入れていたのだろう? そこで終わらせていれば良かったんだ」

 「お言葉ですが、その時点では出回っていた薬物の在庫が存在せずこれ以上出回らないという確証はありませんでした。もし、その薬物がまだ存在し一般に出回り続けていたらどうするおつもりですか? それとも貴方方は一般人の被害はどうでもいいとでも?」

 「失敬な!!」

 男達は沙紀の言葉に顔を紅潮させ騒ぎ出す。

 (うるさい。じじぃのヒステリー程うざいものはないわね)

 沙紀は、俯くと見えないように溜息をつく。

 「静かに」

 それまで黙って事の成り行きを見守っていた総理は、一声でその場を静める。

 「確かにその薬物がもう存在しないという点が分かっただけでも収穫だ。しかし、一般のそれも学校を破壊した点は許されない。よって、九重刑事。君を無期限の停職処分とする」

 「停職ですか? クビではなく?」

 「そうだ。君程の優秀な人材を手放すわけにはいかないからな。それに特異課発足時から君は長期休暇をとっていないだろう? せっかくだ、遊ぶなり何なりしてゆっくりすればいい。皆さんもそれでいいですね?」

 総理の言葉に男達は不承不承ながらもその決定を受け入れた。

 「では君はもう退室しなさい」

 「失礼します」

 沙紀は、一礼すると部屋を後にした。扉を開けるとそこには心配げな課長の姿があった。どうやら沙紀の帰りを待ち切れずに扉の前で待機していたらしい。

 「沙紀君、どうだった?」

 「無期限の停職処分」

 沙紀の口から出た処分内容に課長は絶句する。

 「まぁ、私一人だから。それに私が停職中でも皐月ちゃんと田丸がいれば事件には対処できるから問題ないんじゃないかな」

 「何を考えているんだ。あの人達は!!」

 課長は顔を紅潮させ怒りを現す。そんな今にも部屋に怒鳴りこみそうな課長の手を取り沙紀は歩き出す。

 「仕方ない、あの人達は東京に住んでないんだから。よく分からないのよ、あの街の現実がね。まぁ、何かあればすぐに復職させられるだろうし」

 「だけどね……」

 「せっかくだし、ゆっくり休むわ。もう、さっさと帰ろう。パパさん。私、首都って嫌いなの」

 そう言って顔をしかめる娘の顔を見て課長は怒りをおさめる。

 「沙紀君がそう言うならいいけどね。じゃあ、おみやげ買ってさっさと帰ろうか?」

 「うん」

 沙紀と課長は手を繋ぎ、総理官邸をあとにすると駅へと向かった。


とりあえず、最終話まで書き終わりましたので、チェックして順次アップしていきます。

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