第87話:希望は彼女の手の中に
「何なんだよ、アイツラ!」
田丸は近くの壁を蹴り飛ばす。
「そんなのは後よ。今は大祐君達をどうにかするのが先決よ。田丸は彼女をお願い」
「ああ」
田丸は、床に倒れている沙織の状態を確かめる。が、その傷を見た瞬間顔を険しくした。
「まずいな。こちら田丸、至急医療班をこっちによこしてくれ」
通信機を使い待機している別班を呼びよせると、沙紀をなだめる皐月の元へと向かう。
「タロ。どうしよう、私のせいで……。タロ……」
「さっちゃん、落ち着いてちょうだい。ね?」
沙紀を落ち着かせようと皐月は声をかけるがひどく混乱している沙紀には届かない。その様子を見ていた田丸は、大祐にすがる沙紀を無理やり自分の方へと向けさせた。
「ちょっと、田丸?」
「姐さんはちょっと黙っててくれ」
そう言うなり田丸は、いきなり沙紀の頬をピシャリと叩いた。
「九重刑事。現場の指揮官であるあんたがうろたえてどうする?」
その行動と言葉に皐月は言葉を失う。
あの田丸が女に手を上げ、その上沙紀を九重刑事と呼んだのだ。あの普段は軽い男が。
「あいつらが言ったのが本当なら今、しなくちゃいけないことはなんだ? 大祐を救うことだ! 泣くことじゃない!」
沙紀の両肩を強く掴み、大きくゆする。すると、その言葉に答えるように沙紀の目には正気が戻ってくる。
「私がしなくちゃいけないこと」
「そうだ」
沙紀は床に倒れている大祐と心配そうに自分を見る皐月達を見て大きく頷いた。
「私が助ける、絶対に」