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第83話:解放、それとも?

 髪から紐を解くと自分に宿る炎が変化していくのが分かった。それと共に記憶が戻って来る。

 記憶と共に甦ったのは、家族を失った悲しみや怒り、恐怖の感情。あの時、幼い自分の胸に宿った感情達。そして何よりあの時自分を支配したのは、両親を殺したあの男とそれを認めた他の一族への憎しみ。

 あの病院での夜。

 病室で一人泣いている沙紀に華炎は言った。

 『封印が解け始めている。それを止めることは我等にも出来ない。ただ、もし過去と向き合いそれらと立ち向かう気になったのなら紐を解いて力を使えばよい。それで最後の枷は外れるだろう。そうすればあの日封印した全てのものが小姫に甦る。ただ、憎しみに囚われては奴には勝てない。怒りと憎しみに支配され自滅するか、それともそれら負の感情をも自らのものとし前に進むか。全ては小姫次第。もちろん、我等は主である小姫を信じているぞ』

 確かに華炎の言った通り、自分の中を支配する負の感情の強さは並大抵のものではない。感情の赴くまま力を振い自分から大切な物を奪った男やそれを他の一族を全て破壊してしまいたいという衝動につき動かされる。

 沙紀は俯き微笑むと手に握っていた紐を床へと落とす。

 そして紐が床に落ちた瞬間、数十個の炎弾を男達に向かって放つ。

 「さぁ、勝負開始です」

 沙紀の声と共に炎弾は、次々に男達を襲う。一つ避けてはまた一つと炎弾はどんどんと生まれ男達を襲って行く。

 しかし、男達も軽々とそれらの攻撃を避けている。

 「馬鹿じゃないの? 何発も撃てばいいってもんじゃないよ」

 「そうかしら?」

 「え?」

 不敵な笑みを浮かべた沙紀を見て涼が首を捻った直後だった。

 それまでとは比べモノにならない程の熱を持った炎が鬼面の男や千夏がいた場所を襲い、その場にあった移動用の水の陣を一瞬にして蒸発させた。

 「何を!?」

 「逃げられては困りますから。貴方達の退路は断っておかないと」

 「さすがね、じゃあこれはどう?」

 千夏がパンと両手を打ちならすと部屋の床を突き破り、2本の水柱が出現する。

 「なるほど、貴女を一番に潰しておかないといけなかったわね」

 沙紀が片手を突きあげると、沙紀を中心に炎が円を描いた。そして、「行きなさい」という沙紀の言葉に炎は千夏へと襲いかかる。

 「ちっ!」

 千夏は舌打ちをすると自らの周りを水の壁で覆うことで炎の攻撃をやり過ごす。しかし、一度消えたかと思った炎は、更に火力を増し千夏に襲いかかった。

 「ふざけんなよ! くらえ!」

 涼は風の刃を作りだし、沙紀へと投げつけるがその刃を沙紀はいとも簡単に振り払う。

 「貴方の相手はこの後です、大人しくして下さい」

  沙紀がパチンと指を鳴らすと、炎が涼を襲う。涼はとっさに体をずらしそれを避けるが全ての炎を避けることは出来ず、炎に触れた右腕から体へ炎が移る。

 「うわああああああああああっ!!」

 涼は、その場に倒れ込み何とか炎を消そうともがく。その様を見ていた千夏は、急いで呪を唱える。

 「清き水の流れよ。彼の者を捉える檻となれ!!」

 呪が発動すると沙紀を取り囲むように水の檻が出来上がり、沙紀の動きを封じた。その隙に千夏は涼の元へと駆け寄り、回復の為の術を施した。

 「大丈夫? 涼?」

 「…………何だよ! あいつ! この間のちんけな炎と全然違う。化け物みたいだ」

 「これが覚醒した彼女の力。彼女はあの煉獄と聖焔を操る人間なのよ。その身に宿る炎はけた違い。私達ごときの力でどうにか出来る人間じゃない。ただ………」

 「ただ?」

 「このまま力に飲まれるなら私達がどうにかしなくても勝手に自滅する」


さっちゃん、暴走?の巻。

さて、解放された力は、暴走なのかそれとも?


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