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第72話:人形師

 「ちょっと、大祐君! 何してるのよ!!」

 その光景を目にした皐月が悲鳴にも似た声を上げる。

 「分かりません、体が勝手に動くんですよー」

 大祐も一体自分の身に何が起きているのか把握しきれないでいた。分かることは自分の意思に反して勝手に体が動き田丸に対して攻撃しているということ。

 「さっちゃん!! 何なのこれは!?」

 「そうだよ! おい、大祐! いい加減にしやがれ」

 攻撃をかわし続ける田丸の顔にもあせりの表情が浮かぶ。実戦での経験差でどうにかかわしてはいるが、大学でみっちり訓練をしているだけあって大祐の蹴りや突きはかなりするどいのだ。こちらも本気でかからないと大祐を止めることは出来ない上、互いに無傷ですむはずがなかった。

 「皐月ちゃん、とりあえず香で動きを封じてみて」

 「分かったわ。田丸、距離を取って!!」

 「了解っと」

 田丸は、思い切り後方へ飛び退く。それと同時に皐月は、痺れ効果のある香水を大祐の足元に投げ付ける。

 皐月と沙紀も田丸と同様に大祐から距離を取り、様子を窺う。

 「嘘でしょう!」

 一瞬、動きが鈍ったものの大祐の動きは止まることがなく尚も田丸に襲いかかる。

 「お嬢」

 「何? 今、忙しいの!」

 インカムから聞こえてくる声に半ばやつあたり気味に返事をする。

 「さっき拘束した奴らの身元が分かった。ある警備会社の社員なんだが、その会社の社長はあいつだ。連絡が来てるだろう?」

 「そういうことか! 私にケンカ売るなんて百年早いのよ、あの馬鹿!」

 手にした電灯で大祐の体を上から下へと照らしてある物を探す。すると首元にキラキラと光を反射するある物を発見した。

 「見つけた。タロ、少し熱いけど我慢しなさい」

 沙紀は、自分の手の平に野球ボール程の大きさの炎弾を作りだすとそれを大祐に目がけて投げつけた。

 すると大祐の首元についていた細長い糸に火が燃え移り、首元からその糸は切れた。

 「あちちち、殺す気ですか!! …………あれ? 自由に動ける」

 「うわぁ!」

 糸に燃え移った火は、その糸を辿り大祐を操っていた人間に燃え移る。そして熱さに耐えかねた人間が天井付近から床に落ちてきた、火を消そうともがきながら。

 その人物の元に歩み寄った沙紀は、ホルスターから銃を取り出し相手のこめかみに銃口を突き付ける。

 「私にケンカ売ろうなんて考えるからいけないのよ。人形師さん?」

 「一応、仕事だからな。まぁ、かなうはずないとは思ってたけど」

 「沙紀さん、この人は?」

 「学園の同期で警備会社の社長のはずなんだけどね?」

 「うちみたいな零細企業は裏の仕事もしないと食っていけないんだよ」

 「ふーん、とりあえず傷害で逮捕ね。それとも殺人未遂がいい?」

 にっこりと笑う沙紀に人形師と呼ばれた男は、土下座した。

 「勘弁してください」

 「なら今すぐ部下を連れてここから撤退。プラスこの施設ついての情報を全て置いていって。あとは、部下と共に今晩は留置所に泊まってね」

 「分かった。悪かったな、坊主。お前が一番すきがあったんでな」

 「逮捕しちゃいませんか?」

 面と向かって馬鹿にされた大祐は、さすがにカチンとくる。そんな大祐に対して沙紀の返答はかなり男をへこませた。

 「これから先、色々と使い道がありそうだから駄目」

 男は、肩をがっくりと落とし後悔すると同時に悟った。どうやら、自分はこれから先ただ働きを強いられそうであると。


左京以外の学園の同期登場です。

ちなみに蜘蛛も同期です。

変わり者の集団の中心人物かな。

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