第71話:からくり
「おかしいな」
「おかしいわね」
「おかしいですね」
田丸、皐月、大祐は、呟く。
何がおかしいかというと、先ほどのドアから奥に進み続けた結果、行き止まりにたどり着いたからだ。大祐達が立っているのは、何もない広めの空間。地下に存在する為当然のことながら窓などは一切ない。
「さっちゃん、どう思う? …………って何してるの!!」
部屋に着いてから一言も発しない沙紀に話を振った皐月だったが、目にした沙紀の姿に口をあんぐりと開けて驚く。
その声に田丸や大祐も振り返り同じように驚き、目にした沙紀の姿に固まってしまう。
「ちょっと黙ってて」
沙紀はそれだけ言うと何も説明しないまま一連の動作を続ける。何を続けているかというと床に這いつくばり片耳を床に当てては少し移動するということを繰り返しているのである。
「ここら辺か。蜘蛛、この床のスイッチの回線はどこに繋がってる?」
「お嬢の相方の左側にあるランプ型の電灯だな。左回りに半回転させてみな」
沙紀は立ち上がり大祐の隣に立つと大祐の近くにある電灯を指さして言った。
「タロ、あの電灯動くから左に半回転させてみて」
「これですか? ちょっと待ってください」
大祐は指示された通りに電灯を回転させる。
カチャリ。
壁に取り付けられている電灯はいとも簡単に回すことが出来た。
すると、床がかすかに揺れ始める。地震とまではいかないが何かの機械が動いているような振動が伝わってくる。
「嘘!」
皐月の声につられ後ろを見ると先ほどまで沙紀が這っていた辺りの床がせり上がり階段が現れた。
「おいおい、秘密基地じゃないんだからさ」
「うわー、すごいですね」
そのからくりに小さい頃に見た冒険物のアニメを思い出す。
「さぁ、行きましょう」
そう言うなりすたすたと歩いて行ってしまう沙紀を3人は急いで追いかけて後を追った。
階段を降りた先は、真っ暗で何があるのかも分からない。ウエストポーチから小型の懐中電灯を取り出し部屋の状況を確認する。
「おい! こっちに扉があるぞ!!」
「本当ですか?」
大祐は、扉を確認する為に田丸がいる方へと駆け寄る。その時、自分の体に若干の違和感を感じたが気のせいだと思いそれを無視する。
しかし田丸の背後に近寄ったその時、先ほど感じた違和感が正体を現す。
「うわっ! 何すんだよ!!」
「ええ!? 知りません、勝手に体が…………」
突然響いた声を不審に思った皐月と沙紀は、持っていた電灯を2人に向けた。すると、そこに照らされたのは、田丸に対して襲いかかる大祐の姿だった。