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第48話:過去・2

 炎輝の言葉に三人は、言葉を失う。

 「しょっ、処刑って………」

 「ありえないだろう、普通」

 田丸と皐月はあまりの衝撃的な事実に顔を青ざめる。

 大祐も予想を超えた事実に頭が働かなかったが頑張って思案する。

 (確か調書には犯人はまだ捕まっていないって)

 「確か、調書には犯人を示すような証拠もなくてあと数年で時効だと」

 「そうだ。あの事件はあくまで一族内でのもめ事として処理されている。へたに手を出して自らを破滅に追い込みたいと思う人間はいないだろう?」

 その言葉に三人は、言い返せない。

 特例名簿という存在に加え、社会の隅々にまでその力を行き渡らせているのだ権力とい名の力を。そんな一族に正面から喧嘩を売るような気概の持ち主はいない。警察上層部や政府にも。

 「でもいくら記憶喪失になったからってさっちゃんの存在を隠すことなんて出来ないんじゃないかしら?」

 「出来たから今の小姫がいる。まぁ、いくつかのからくりを施したとだけ言っておく。だが、それも完全では無かったようだがな」

 炎輝は溜息をつく。

 「完全では無かった?」

 「ああ、その証拠があの男だ」

 軽く顎を振る炎輝の視線の先には、杉浦がいた。

 「杉浦さん?」

 大祐の疑問の眼差しに答えるように杉浦は言った。

 「噂が流れたのです。火精の宿った炎を使う少女が東京にいると、だから私は情報を集めました。そして、沙紀様にたどり着きました」

 「ちょっと質問なんですけど火精って何ですか?」

 「火精というのは、火に宿る精霊です。一族の使う炎には宿っていて、皆さんが使用する火には宿ってはいません」

 「でも、それならもっと早くに気づく人間がいるんじゃないかしら?」

 皐月が指摘すると杉浦は頷く。

 「そうです。それに沙紀様が普段使われている炎に火精は宿っていないのです。そこから考えられることは一つ。沙紀様の存在を知った誰かが故意に流したということ」

 「あのさ、一族なら調書を手に入れることなんて簡単なんじゃないのか?」

 「あの調書は、作られたもの。あくまで沙紀という少女が両親を誰かに殺されたというものだ」

 「それがからくりの一つなんですね? 沙紀さんを守る為の」

 「そうだ。そして小姫の炎に関しては普段封じの枷をつけている。だが、一度だけその枷が外れた時がある」

 「それはいつなんですか?」

 「学園の一件の時だ、あの時一度だけ枷を外したまま炎を使った。一瞬だが、気づく者はいるだろう。それが、春の事件を裏で手を引いていた者」

 「杉浦さんはその首謀者について知っていることは?」

 「直接会ったことはありません。知り合いの情報屋を介してあの二人を紹介されただけです。ただの特異能力者だとばかり思っていました、けど信用してはならないとだけは分かりました」

 春の事件で会った、少年と少女。一族について説明を受けた今ならば、彼らが一族の人間だったということは推測できる。ただ、杉浦さんとは違い彼等には沙紀さんに対しての敵意が存在していたと思う。

 「焔の一族は、他の一族から憎まれてたんでしょうか?」

 「正直それはないと考えている。他の一族の当主達ともうまく折り合いがついていたし、あの少女が属する一族の本家の若君と小姫の姉の縁談話が進んでいた。少年が属する一族は、権力争いに興味がないからな」

 「だったら個人的な怨恨が原因なのかしら?」

 はっきり言って謎が多すぎて何が真実なのか分からない。でも、沙紀さんの置かれている状況は少し分かった気がする。

 「沙紀さんは、俺達を争いに巻き込みたくないんですね?」

 大祐の言葉にハッとした皐月は、沙紀のいた病室へと視線を向け口に手を当てると黙り込む。

 (ひどいことを言ってしまったわ)

 皐月の胸には、自分が沙紀に放った言葉に対する後悔の念が広がるばかりだった。


1話で終わらせる過去話等がどんどんと話数をのばしていってます。


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