第47話:過去・1
「焔の一族? 精霊?」
突然現れた男・炎輝の言葉に杉浦以外の人間は困惑する。
「貴方は、以前会った少年と一緒にいた方と同じなんですか?」
「少年? ああ、お前は会ったことがあるんだったな。そうだ、あの男と同じ人ではない」
炎輝は普通に答えたが、大祐達からすれば人ではないとはっきりと肯定されると恐怖を抱かずにはいられない。
大祐は、腹に力をこめ己を奮い立たせる。
「炎輝さん、焔の一族というのは何なんですか?」
恐怖と闘いながらも自分と目を合わせて質問してきた大祐を見て炎輝は笑みを浮かべた。
「お前たちも知っているだろう? この国の裏側で異能を使い暗躍してきた一族を」
「特例名簿の人達ですね。教えてもらえませんか、彼等と沙紀さんの繋がりを」
「それを聞けば、お前達も傍観者ではいられないぞ。いやがおうにも巻き込まれる、いいのか?」
大祐達を試すかのように、炎輝は一人一人に投げかける。
「かまわないわ」
「かまわん」
「かまいません」
3人から同時に決意を込めた強い返事を返され、炎輝は破顔する。
「いいだろう、少し長くなるが説明しよう」
炎輝は、そう前置きするとゆっくりと語りだした。
まず、特例名簿に書かれた人々・某一族と略される一族について。
その一族の総称は、扉の一族。この日本の各地にある天の扉というものを代々守護する一族のことを指す。そして、この一族は力の性質でそれぞれ各一族を形成しているという。
光は光輝、闇は闇珠、風は青嵐、地は地涯、水は水鏡、そして火は焔。
「じゃあ、沙紀さんは、焔の一族の出身なんですか?」
「そうだ。それも本家の跡取り娘だ」
「え?」
その言葉に皐月は思わず疑問を投げかける。
「確かさっちゃんってお姉さんがいるんじゃなかったかしら?」
「ああ。だが別に跡取りは生まれた順で決まるわけではない。その身に宿る力の大きさで決まる。小姫の姉もかなりの力の持ち主ではあったが、小姫は我々に選ばれた特別な存在だからな」
「特別な存在ですか?」
「ああ、代々一族の総領は先代から宝刀を受け継ぐことで跡を継ぐ。我々と契約してな。だが、大体その契約は承認するという意味での契約で我々の主として契約をするというわけではない。しかし、まれに我々宝刀に宿る精霊と真の契約を結べる人間がいる」
「それがさっちゃんってことか」
「だから、跡継ぎなのね」
「つまり、某一族の中でもかなりの家柄ってことですよね? それなのに両親を殺されて記憶喪失になるって……」
「もしかして、同じ焔の一族の中でもめ事ってこと?」
嫌な状況が目に浮かび顔を曇らせる大祐達を見て炎輝は首を大きく横に振る。
「それは違う。小姫の両親はよく一族をまとめていたし、他の一族とは違い大昔から結束だけは固い一族だ。皆、当主夫妻を尊敬していた」
「なら何故?」
「扉の一族のトップを務めているのは、光輝の一族当主だ。その光輝の前当主夫妻と娘が交通事故で亡くなったのが全ての始まり」
炎輝は、瞳に暗い光を宿らせ言葉を続ける。
「その事故の首謀者として小姫の両親に嫌疑がかけられ、ろくに調べもしないまま光輝の連中が処刑したのだ。小姫の目の前で」
一族の説明は、話に盛り込むことにしました。
おかげで過去話は、1話では終わらないようです。
ちょっと時間がとれないので小出しで更新します。