第39話:コーヒーブレイク
「どう? 少しは何か見つかった?」
「いえ、残念ながら。皐月さんのほうは?」
皐月は、首を振りくやしそうな表情を浮かべる。
その顔だけで皐月のほうも収獲がないのが分かった。
「そう言えば田丸さんは?」
室内を軽く見渡すが自分達以外の人間はいない。
「昔の仲間に会いに行ったわ。田丸にも懇意にしてる情報屋がいるから」
「そうですか」
「皐月さん。この事件って本当にただの薬物密売の事件なんでしょうか?」
いきなりの言葉に皐月は、少し困惑する。
「一応、そうだと思うわ、今のところはね。大祐君は気になることでもあるの?」
「うーん、カンですかね。ただ、最近の沙紀さんは少しおかしいなと思いまして」
「確かにね、訓練のしすぎで倒れることなんてこと今までなかったわ。でも、今回の事件と直接関係してない気がする。ただ……」
「ただ?」
「春に起きた立てこもり事件。あれには関係している気がするわ。結局、犯人の少年と少女は捕まっていなかったしね」
「杉浦さんなら何か知ってるんでしょうか?」
立てこもり事件での首謀者であり、昔の沙紀を知る人物。彼ならば何か知っているのかもしれない。でも、彼は話さないだろう。今は亡き主人の娘の意思を無視して。
「さて、大祐君。君は明日も授業でしょ? 仮眠室で寝てきなさい」
皐月は、大祐からカップを取り上げ、「分かっているわね」と先ほどと同じ物騒な笑みを浮かべ給湯室へ去って行った。
「了解です」
大祐は立ち上がり手を上に上げて背を伸ばす。肩を交互に軽く回した後、椅子をデスクの内側に押し戻そうと手をかけた時、奥の方に鞄が見えた。
取り出してみるとそれは沙紀の学校用の鞄だった。さすがに完璧な私物に手を出すのは一瞬ためらったが、意を決して開くことにする。
皮鞄の留め金を外し開くとそこには教科書と一緒に封筒が入っていた。
「何だ、これ」
封筒には数枚の書類が入っていた。中から取り出して見る。
「見取り図? 図書館のか?」
出てきたのは、学院の図書館の見取り図だった。