第38話:チームということ
病院からの帰り道、街灯の明かりに照らされながら大祐は、寮へと歩いていた。時間が時間なので人の気配はあまりない。
「それにしても何で沙紀さんが…………」
せめて沙紀が直前に調べていたことが分かればまた何か違ったことが見えるかもしれない。
大祐はそう思い立ち、寮ではなく本部へと走った。
夜の街を全速力で駆け抜けた大祐は、さすがに本部に着くころは息が上がってしまった。
そして本部ビルに着いて中に入ろうとした時、部屋に明かりが点いているのが見える。
(誰だ?もしかして!)
大祐は急いで階段を駆け上る。大祐の予測が正しければきっと中に居るのは……。
走った勢いのまま大きな音をたてて扉を開く。するとそこには予測した通りの人達がいた。
「ちょっと、大祐君。扉が壊れるでしょう? この建物けっこう古いんだから気をつけてちょうだい」
「壊したら、給料から天引きだぞ」
やはり部屋に居たのは、皐月と田丸だった。
「お2人ともどうしたんですか?」
「大祐君こそ、明日も授業なのにいいの?」
「そうだぞ、俺らは適当に休めるからいいけどお前は違うだろう」
「大丈夫です。体力には自信がありますから!!」
大祐の言葉に2人は笑い、一気に場の空気が和んだ。
大祐は室内に入り、自分のデスクに向かう。
「皐月さんは、何しているんですか?」
「うーん、さっちゃんがあの状態でしょ? 今度のテストは受けられないだろうし、潜入の目的が果たせないじゃない? だから別の方法はないかなと」
「そうそう。自分が眠っている間に捜査が止まってたら烈火の如く怒るからな。出来る範囲で進めておかないとな」
「そういう大祐君は?」
「直前まで沙紀さんが調べていたことが分からないかなと思いまして。怒られるかもしれませんがデスクを少し漁ろうかと」
そう宣言すると大祐は沙紀のデスクの前で、すみませんと一礼して謝ると机のファイルから手当たり次第目を通し始めた。
2時間後、デスク上のファイル全てに目を通したが今回の事件に関わる物は出てこなかった。
(あー、どこに置いてるんだ)
大祐は髪をかき回し苛立ちをつのらせる。するとスッと横から湯気のたったカップが目の前に現れる。
視線を上に上げるとカップを手渡そうと皐月が立っている。
「おつかれ。ひとまず休憩にしましょう」
「いえ、まだ大丈夫ですから…………」
断りを入れ作業に戻ろうとした大祐の足を皐月は軽く踏みつける。
「だ・い・す・け・く・ん」
そしてわざと区切るように自分を呼んだ皐月の目と視線がかちあう。
「私の淹れたコーヒーを飲めないっていうの? それといくら体力馬鹿とは言え休む時には休む! 余計効率が悪いでしょ? それともそんなことも分からない馬鹿なの?」
逆らったら殺すと言わんばかりの皐月の態度と視線に大祐は大人しく従うことにした。誰だって命はおしい。
チームワークは何事でも大切ですよね。
皐月達は、こんな時どうしないと沙紀が怒るかは
分かっているのでした。
あとは姐さんには逆らうなと。