第37話:真夜中の病院
真夜中の病院の廊下で特異課の面々は、沈痛な面持ちで待っていた、医師の診断が終わるのを。
ガチャ。
病室のドアが開き、中から課長が現れる。その顔は、特異課のメンバーの誰よりも悲しみと怒りに満ちた表情だった。
「待たせたね、皆」
「課長、さっちゃんはどうでしたか?」
皐月の言葉に課長は、一度深呼吸をして答える。
「予想通り、原因不明だそうだ。今までの被害者達と同様薬物反応もまったく無い」
「ちくしょう!!一体誰が!!」
田丸は、壁を思い切り殴りつける。
「最後に会ったのは、保健室。それから、さっちゃんは図書館で勉強していたらしいわ。その後の足取りは不明」
「誰かと一緒だったんでしょうか?」
「生徒会長と一緒に勉強してたみたい。校内の防犯カメラに2人で図書館に入るのが確認されているわ。その後は下校したようだけど」
「とりあえず、君達は帰りなさい。後は私が見ているから」
課長からの申し出に大祐達は、後ろ髪をひかれながらも自分達がここにいても出来ることはないと思い帰ることにした。
「大熊君」
「何ですか?」
「これ、沙紀君が持っていたんだけど何か知ってる?」
課長から手渡されたのは、小さい袋。大祐は首を捻りながら中身を手の平に出してみる。出てきたのは、小さい黒い玉の数々だった。
「何でしょう?……でもあまりよくない物の気もします」
「君もそう思うか。何だってこんな物を持っていたんだか」
「課長。この袋預かってもよろしいですか?」
「別にかまわないが、大丈夫かい?」
「大丈夫だと思います。玉の中からは嫌な感じがするんですけど、玉じたいはそんなに嫌な感じはしないんです。言っていること、めちゃくちゃなんですけど」
頭をかき途方にくれたような顔を見せる大祐を見て、課長は少し考えていたが袋を渡してくれた。
「君がそう感じるならそうなんだろう。これは君に預けるよ、ただ紛失したり破損させたりしないようにね。沙紀君に怒られるから」
どうしても暗くなってしまう雰囲気をなごませようと課長はわざとおどけて言った。
「はい。では失礼します」
それに応えるように大祐も少しだけ表情を緩めたのだった。
しばらく大祐に頑張ってもらおうと思います。