第36話:眠りにおちた沙紀
(ああ、遅くなってしまった)
時計を見て大祐はため息をつく。
今日の報告書を手に大祐は本部へと向かっていた。きっと、沙紀さんや皐月さん達はもう本部にいることだろう。
ただでさえ、この頃沙紀さんの機嫌が悪いのに。
駐車場に車を止めると、そのまま2階の本部へと向かった。すでに夜の7時を過ぎている。もう沙紀さん達も帰っているかな。
「課長の机に置いて帰るか………」
扉を開けて室内に入ると部屋の電気が煌々と燈っている。
「誰かいるのか?」
しかし、部屋に入るが人の気配がまったく無かった。
「消し忘れか……。あれ?」
自分のデスクに隣、沙紀のデスクの椅子に誰か座っている。デスクにつっぷして眠っているようだ。
デスクに近づくとその正体は沙紀だということが分かった。
「沙紀さん?こんなところで眠ったら風邪ひきますよ?」
沙紀の肩を軽く叩き、起こす。しかし、まったく反応がない。
(疲れているのかな……、でもこのままにするわけにもいかないし)
大祐は、今度は肩をつかみゆする。さすがにこれだけすれば起きるだろう。しかし、さっきと同じく反応がまったく無かった。
「沙紀さん!!」
大きな声で呼びかけても反応は無く、嫌な予感がした。手首をつかんで脈拍を確認し、呼吸も確認する。
(もしかしてこれって………)
「沙紀さん、沙紀さん!起きてください!沙紀さん!!」
大祐は沙紀の体を思い切りゆすりながら声をかけ続けた。
「何をそんなに騒いでるの?」
「どうかしたか?大祐」
そう言って現れたのは皐月と田丸だった。
「皐月さん、田丸さん。沙紀さんの様子が変なんです。全然起きないんです!!」
「何ですって!!田丸、救急車」
「おう」
皐月はそう指示を出すと沙紀に駆け寄り様子を窺う。
「これは、眠り病かもね」
「そんな」
皐月の言葉に大祐は言葉を失う。
(そんないつだ?用心深い沙紀さんにいつ薬を飲ませたんだ)