第29話:学生生活
「田丸は、仕事が忙しいらしくて今日の会議は欠席よ」
皐月は、三人分のコーヒーを入れてそれぞれに配りながら報告する。
「けっこう忙しいのね、用務員って」
「そうみたいよ。何しろ田丸以外はけっこういいお年の方々だからいいように使われているみたいね」
「大変なんですね」
「誰かさんと違ってね」
「これでも色々大変なんですよ。教師ってのも」
大祐は、弱弱しくも沙紀に反論をしてみる。
「どこが?生徒に囲まれてずいぶん嬉しそうじゃない」
しかし、沙紀に一刀両断されて終わる。
そして大祐はがっくり肩をおとして落ち込み、沙紀は冷たい目で一瞬だけ見た後は、我関せずとばかりにコーヒーを飲んでいる。
そんな2人の姿を見て皐月はやれやれと苦笑する。
沙紀が潜入捜査をすると決めたあの日から一週間後には、沙紀は生徒、大祐は教師、皐月は養護教諭、田丸は用務員として鏡花学院に潜入する準備が整った。
そして、今現在に至る。
「それにしても意外だったわ。大祐君が教員免許を持っていたなんて」
「警察大学で一応取ってみました。いざという時、何かしらの資格は持っていた方がいいと思ってけっこう取りましたよ」
「ふーん。じゃあ、将来食いっぱぐれることはないわね」
「資格だけあっても中身が伴わなきゃ無理」
「確かに、教師って大変ですよね。今回、身にしみて分かりました」
大祐は沙紀の皮肉に気づいたのかそれとも気づいていないのかそのままスルーする。
「で、捜査状況は?」
「うーん、保健室の記録によると被害者達はやっぱり不眠症だったみたい。何度か利用記録に名前があったわ」
「被害者達は、学校での素行に問題はなくクラブとかに出入りはなかったみたいです。現在数名が休学してますね」
「ふーん、情報通りか」
「で、生徒間ではどうですか?」
「これと言って噂はない。放課後は、図書館で勉強していたとか礼拝堂の掃除をしていたとかいう話ね。でも、かなり優秀な子達だったみたい。大半の子は大学もそのまま付属に進むけど彼女達は外部進学を希望していたらしいから」
「噂通りなら青田買いってことかしら?」
「そうかもね。次の模試でどうなるかってとこ」
「でも、大丈夫なの?最低でもこの学院内ではトップにならないと」
「大丈夫」
沙紀は自信たっぷりに頷くと校庭へと目を向ける。
校庭では少女達の声が響き楽しそうに授業を受けている、それはごくありふれた日常の一コマ。
こんな平和な日常を壊す物などさっさと自分達が排除しなくてはいけない。
「意外と楽しいものなのね。学校って」
沙紀から出た言葉に大祐と皐月は意表をつかれる。
忘れていたが本来なら沙紀は、高校に通っていてもおかしくはないのだ。
「…………沙紀さん」
大祐や皐月の顔に一瞬だけ困惑の表情が浮かぶ。そんな二人を見て沙紀はにこりと笑う。
「変な顔しないで、二人とも。まずは、敵をいぶり出さないとね?」
パソコン用のホムペをリニューアルしてみました。
頑張りました、本を片手に(笑)




