第1話:予兆
ある日、仕事を終えた沙紀は、居酒屋『海里』を訪れていた。未成年である沙紀にとってはあまり馴染みのない場所である。
別にお酒を飲みに来たのでは無かった。
ある人物に会いに来たのである。その人物とは、杉浦 仁、この春に立てこもり事件を起こし、その結果、特異課の非常勤職員にされた人物であり、昔の自分を知る数少ない男である。
「いらっしゃいませ。どうされたのですか?お嬢様がこのような場所に。お一人で?」
沙紀の来訪を前もって知らされていなかった杉浦は驚いた。
「話があって来たの」
「お話ですか?」
「うん。大事な話。私は知らなくてはならないから。知った上でこの先どうするか決めようと思う」
沙紀のどこかただならぬ様子に杉浦は、奥の人目のつかないテーブルへと案内した。そして席に着くと声を落としながら尋ねた。
「お聞きになりたいというのは、もしかして一族のことで?」
「うん。別に家を再興したいとかじゃなくて、知りたいのは・・・・・・・」
「御姉妹のことですね?」
「うん」
「私もあの事件の後、皆様をお探ししました。そしてやっとお嬢様に辿り着くことが出来ました」
「何故、今だったのかしら。だって今までだって私は力を行使してきたのよ」
「はい。以前訓練時にお嬢様が力を使われているところを見ましたが、火精の気配はしませんでした。ですから、おかしいとは思いました」
「おかしい?」
「はい。私は噂で聞いたのです。東京で発火能力を持つ少女がいる。その少女からとても強い火精の気配を感じたと」
「それは・・・・・・・・・誰かが故意に流したとみるべきか。だとしたら、何故今なのか」
「私がお調べしましょう。今の一族は二つに別れております。時枝につく者とそうでない者とに。どちらにも私の知り合いがおりますからそれとなく聞いてみます。今、一族で何かが起きてはいないかと」
「お願いするわ。でも、気をつけてね。私は、一族のせいで誰かが死ぬのを見たくない」
「もちろんです」
「ありがとう。あなたに危険なことをさせるのは本意ではないけれど、情報だけはいつでも仕入れておかないと。何かが起こったその時に知るのでは手の打ちようが違うもの」
「はい」
沙紀は、杉浦に別れを告げると海里を出て家路にへと着いた。
何かが起こってからでは遅い。
私は守る、昔守れなかった分だけ。今、側にいれくれる人達を。
沙紀達の続きを書くことにしました。
さて、さてどうなることやら。
暴走しなければいいんですけど。




