第14話:薬
「で、本題なんだけど」
沙紀は食べ終えると早速仕事話を再開する。
「官僚や警察幹部で流行っている眠り病」
「そう。薬物反応も病気の疑いもない。皆、原因が分らない」
「普通なら新種の睡眠障害で片付けられますね」
「でも、原因はあるはず」
「残念ながら僕にも何が原因かは断定できません。しかし、噂を掴みました」
「噂ですか?」
左京の言葉に大祐は反応する。
「何やら新種の薬が闇で売買されているらしいです」
「麻薬か何かですか?」
「そこまでは。ただ、それは無味無臭でそれを飲ませれば誰でも簡単に眠らせることが出来ると」
左京の言葉にどこか納得がいかないのか沙紀は首を捻る。
「だったらもっと患者で溢れてないとおかしい」
「いえ患者は出ています。しかし、その患者達は大抵二、三日で目を覚ますそうです」
「その薬の出所は?」
「そこまではまだ。ただある組織で作られ組織単位で動いているらしいとは聞きました」
「ふーん。分った、また何か分ったら教えて。タロ帰るわよ」
沙紀は、立ち上がりスタスタと部屋を出て行く。
「まっ、待ってくださいよ。じゃあ、失礼します」
大祐は敬礼をすると沙紀を追って出て行く。
「またのご来店をお待ちしています」
そう言って左京は笑って二人を見送る。
「ふふふ。いいコンビになりそうですね。皆が聞いたら焼もちを焼きそうですけど」
窓辺に飾られた写真たてを手にとり左京は、呟く。
その写真たてには、沙紀を中心に数人の人物が仲良く写っていた。