第11話:学園の同期
事件の捜査を開始して数日後、沙紀さんの予想通り被害者達に共通する点は無く早くも行き詰まり始めていた。
「・・・・・・・・やっぱり、病気か何かじゃないですかね」
「確かに、あれ以降被害は出てないようね」
沙紀は、手にしていた新聞を机に投げる。
「・・・・・・・・・・仕方ない。あそこに行くしかないか」
ポツリと沙紀は呟く。
「あそこって?」
「日本のありとあらゆる裏情報が売買される街。歌舞伎町」
「歌舞伎町ってあの歌舞伎町ですか?」
確かに昔から夜の街として有名な場所だ。
「そのはずれに私が利用する情報屋があるの。そこなら何か情報があるはず・・・・・・・」
「何か嫌そうですね?」
「分る?」
「はい。かなり眉間に皺が」
沙紀は、溜息をつき眉間を指でほぐす。
「情報屋としては、多分この東京で右に出るものはいない。ただ・・・・・・」
「ただ?」
「その趣味が問題なの。私にはどうしても理解することが出来なくて」
「長い付き合いなんですか?」
「ええ、学園の同期なの」
「学園の!!」
学園―それは、政府が特異能力を持つ子供を集め教育していた学校。今は存在していないが卒業生は皆、国の中枢機関に勤めている。
「でも、卒業生は沙紀さんのように色々な機関で働くのでは?」
「あー、私と付き合いのあるメンバーは、濃くて変わりものが多いから。他の生徒からは、変人同盟って呼ばれてたわ」
「へっ、変人ですか?でも、沙紀さんは普通だと思いますけど」
「私の場合は人付き合いが苦手で誰とでも仲良くなれるわけではないし。普通の子は近寄ってこなかったの。近寄ってくる人間は、図々しいか極端なマイペース人間だから」
昔のことを語る沙紀は、別に普段と変わりない沙紀だった。でも、その変わった友人達のことを語る時だけは、少し嬉しそうな顔をしていた。
「じゃあ、私は準備してくるから。時間がかかるから先に昼食でも取ってて」
そう言うと沙紀は、皐月の元へより耳元で何事かを囁き、手を合わせて頼んでいる。
「何なんだろう?」
大祐は疑問に思いつつも言われたとおりに食事に行くことにした。