第9話:警告
本部に行くとちょうど沙紀さんが戻ってきた所だった。
「ごくろうさま、タロ。そう言えば、取調室のこと言ってなかったけど大丈夫だった?」
「田丸さんに教えてもらいました」
そんな2人のやり取りを聞いていた田丸は、再び大きな声で笑った。
「さっちゃん、聞いてくれよ。俺が帰ってきたら玄関ホールに途方にくれて体を丸めた大型犬がいてよ」
「田丸さん!!」
「何だよ!ほんとのことだろが」
田丸が大祐をからかっていると沙紀がボソリと呟く。
「しょぼくれたタロ。見たかったわ」
「沙紀さーん」
沙紀のあんまりな言葉に大祐は落ち込む。
「冗談よ。さっさと調書とって終わりにしましょう。あ、タロ打ち込みお願い」
大祐は自分用のノートパソコンを持ち、心なしかすねた声で返事をする。
「了解です」
そして早速聴取を取り始める。
子供達は素直に答えてくれるのでこのまますんなり終わると思っていたのだが、薫と名乗った青年の力の話になった時、疾風と名乗った少年がある連絡先を取り出して沙紀に見せると沙紀さんの眉が一瞬しかめられたのが分る。
(あっ、機嫌悪くなった)
パソコンを打ちながら大祐は沙紀の様子を伺った。
「・・・・・・・・・分りました。少し待ってなさい」
沙紀はそう言うと携帯に映し出された番号をメモし、部屋から出て行った。
数分後、沙紀が部屋に戻って来るなりこう言った。
「解放よ。タロ、この子達を家まで送り届けなさい」
「はっ、はい」
「あの、いいんですか?」
疾風の言葉に沙紀はニッコリと物騒な笑みを浮かべこう告げた。
「椿に伝言を頼める?これ以上権力を振りかざすなら、振りかざせないように家宅捜索すると。貴方達、一族の屋敷ならさぞ後ろ暗い物がざくざく出て来るでしょうってね」
沙紀は、そう言い残すと部屋から出て行った。疾風は、沙紀の言葉に固まってしまう。
(もしかしてこの子達もあの特例名簿の?)
沙紀の機嫌の悪くなった理由が分り納得する。
(仕方ない。あとであれを差し入れするように頼むか)
そう思いながら疾風に目を向けると沙紀の迫力に押されたのか疾風は固まっていた。
「じゃあ、行きましょうか」
3人を促し大祐は来た時と同じように車でマンションまで送り届けた。
車から3人を降ろし、大祐は一応釘をさしておくかと思い3人に向かって話す。
「そうだ、自己紹介がまだでしたね。自分は、大熊 大祐といいます。これは、警察からのお願いですが警報が鳴ったらもう外へは出ないでください。今回は薫さんのおかげで助かったようですが本当に危険なんです、東京は。そして、特異能力者である貴方方には、どうかその力を犯罪に使用することがないように願います。もし、一般人に被害が出るようなら我々は、どんなことをしてもそれを止めます。その為、私達には、能力者を射殺する許可が政府からおりておりますので。では」
一気にそこまで言うと大祐は軽く敬礼をして車に乗り込んだ。
調べ物の件ですが、自分でも目にするものが簡単なものに変更したので案外更新順調に行く予定です。