xxiv.
あれはたぶん──。
小路にまだ気配が残っていた。奏は確信する。彼女は狙われているのだ。
「あれ、奏。どこ行ってたんだよ、おまえ」
聞き覚えのある声がして、奏は振り返った。結城が店から出てきたのだ。
「何時だと思ってんだ。遅刻だぞ、遅刻。職場に住んでて遅刻なんて、あり得ないだろ普通」
大袈裟な仕草で腕時計を示した後、結城は辺りを見回した。
「今、この辺に誰かいたか。変な人がいるって美少女がさ」
口を噤んで奏を見る。
「まさか、おまえか」
「違いますよ」
たぶん、と心の中でつけ加える。
「だよなあ」
結城は店に行き、ドアから首だけ突っ込んで何かいった。
再び奏の元へ来て、
「あれ、ひげ伸ばす気か。なかなかよさそうじゃないか。ちょっと老けて見えるけどな」
呑気にいう。
「いや、これはちょっと、剃る暇がなかっただけで」
「何でだよ。あ、まさか、女のところにいたのか、おまえ」
「違います」
「まあ、何でもいいから早く店に出てくれ、店長」
「まだ店員でしょ。それに店長といっても代理なんだし」
「もう今日から入れ替わってもいいんだ、おれは」
結城は既に気持ちが旅先に飛んでいるらしくハイテンションだ。奏の肩を店の方へと押しやって急かす。
「ほらほら、早くしろよ。あの子たち、占いしたいんだとさ」
魔物は気になるが仕方がなかった。奏は先に歩き出した結城について店に入った。二人の女子高生客が、にこにこして彼を迎える。彼女らに愛想よく笑顔を見せつつ、奏は先ほどの少女を窺った。
彼女は怯えたような様子で目を伏せた。もしや怖がられているのは自分では、と思い当たり、奏はまたショックを受けた。サイドミラーで確認した姿を思い出す。まあ、確かに怖いかもしれない。そっと溜息をついた。
それにしても綺麗な子だった。奏は改めて感心する。あまり眺めては更に怖がってしまう、と思いつつ、しかし蒼ざめた彼女の様子は気にかかった。大丈夫? と問うと、彼女は小さく頷いた。
彼女が見た男についても訊いてみたかったが、いきなりそんな質問は無茶だろう。少女は一層怯え、不審に思うに違いない。少し様子をみる方しかないか。
奏は追及を諦めて、身支度を整えるために店の奥へと向った。今度は自分の力が効いてくれればいいけど、と思いながら──。
このお話は、これで終わりです。おつきあいくださいまして、ありがとうございました。
彼らの物語は、まだまだ続きます。よろしかったら、またお読みください。




